ドラゴンボール coveR   作:やま おさ

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其之二百五十五之四

 そして、ドライビングスクールが休みの日。

 ブルマの口利きで、休日の間だけ悟空を教官にした運転教習が始まる。

「それじゃあ、やんぞ~!」

 やる気満々の悟空だが、

「何度も聴くが、お前は本当に免許を持っているんだろうな」

 悟空に対して、不安満々のピッコロである。

「当たり前ぇだ。この前、見せただろ」

 それは、ピッコロも知っている。

 しかし、ピッコロが思うのは、免許証を持っているからといって、人にものを教えられるのかというところ。

 どちらかといって、雑な雰囲気を持つ悟空に不安しか感じない。

 それでも、二人して教習所に立っていてもラチが開かないという事で、とりあえずの教習が開始する。

「よしっ、まずはエンジン掛けろ。知ってるか?、ピッコロ。この鍵って奴を差し込んで廻すんだ」

 その銀色に輝く金属片を指で詰まんで、ピッコロの眼前に掲げる。

 かなり初歩からの教習である。

「それは、すでに教わった・・。とりあえずは走る前の事はいいから、とっとと、運転を教えろ」

 確かに、先日の教習では車が走り出していたのだから、鍵云々の事は飛ばしても問題は無いだろう。

【ブロロロ・・・】

「おっ、エンジンが掛かったな。じゃあ、出発だ」

 幸先が良い出先である。

 と、思いきや、

【プス・・、プスン】

 エンジンが止まる。

「なんだよ、いきなりエンストか」

「うるさい。2、3回の内、1

回は走り出す事は出来る」

 確率3分の1・・・。

 それでも、車の運転どころか、機械に触れる事も少ない者にしてみれば上出来かと思えるが、確率が低いか高いのかは分からない。

 とはいえ、何とか車は動き出す。

 しかし、その運転は思ったとおりの不安が的中する。

 ピッコロの運転技術はともかく、悟空の運転指導が見ものだ。

「右、右!。道路からはみ出ちまうぞ!。それと、そのレバーをな・・?」

 運転席にはピッコロ、そして助手席に悟空。

 二人が乗った車が、誰もいない教習場を走る。

「お前!、本当に免許証を持っているのか?!」

 と、ピッコロが聴く。

 何故ならば、言われた通りのレバーを引けば、雨が降ってもいないのにワイパーが動く。

「おうっ!、持ってんぞ。昨日、見せたじゃねぇか」

 その割りには、まともな指導とは思えない。

 ウインカーとワイパーのレバーを間違えるのは、誰にでもある。

 しかしながら、キーキーと乾いたフロントガラスを磨くような音を鳴らすワイパーは悟空の指示のもとに動いている。

 それを止める方法も分からず、両手でハンドルを握り締めるピッコロ。

「ただ、オラが住んでいる所は田舎だから、運転は山ん中だけだ。  

だから、ちょっと教え方が間違うかも知んねぇけどな」

「じゃあ、街では誰か運転しているんだ?!」

 今も、教習場を曲がりくねりつつ進む車。

 その様子を見れば、誰か悟空の運転技術を信じるのか?。

「クリリンに決まってんだろ。オラは横に座ってんだけだ」

 要は、街中では通用しないということ。

 悟空もペーパードライバーに近い存在であると知れる。

 その言葉に、免許証を持たない故に何も言えないピッコロだが、一瞬の間だけ言葉を詰まらせながら口が開く。

「・・、アホか!。そっ、それを先に言え!!」

 と、言いつつ、悟空が座る助手席に顔を向ける。

「あぁっ~。ほら!、前向けって!。ぶつかんぞ~~!!!」

 車は顔を向けた先に曲がり、その先に見えるのは真っ白いガードレール。

「何ぃ!!!、どうすれば良いんだぁ!?」

「何って!、どうにかしろ!。ブレーキでもいい!」

 どうにかしろ!。とは、言い過ぎだ。

 もはや、教習生任せの指導でしかなく、ガードレールとの衝突を目の前にして何も出来ることない。

「あ~~!!」 

 と、衝撃を目の前にして、ピッコロが叫ぶ。

「あ~!。じゃあ、無いだろうが!!!」

 と、雑に極まりない指導も空しい。

 そして、純白のガードレールは歪む羽目になる。

「あ~ぁ・・」

 それでも、悟空は諦めない。

 凹んだボンネットから湯気の出る車から降りて、

「じゃあ、次の車に行くぞ!」

 降りた悟空は傷一つ無く、元気な様子を見せる。

 勿論、ピッコロも同じように怪我一つ無いが、吐く言葉は悟空と違う。

「ちょっと待て、いきなり車が一台壊れたぞ。また、教官とやらに何か言われるんじゃないだろうな?」

 などと、先ほどまで車と呼ばれていた物体に目を向けながら言う。

「ちょっと位、大丈夫だろ。多分、ブルマが何とかしてくれる」

 と、悟空は言うが、壊れた車が気になるのか、ピッコロからの返事はない。

「あ~。もういいから、早く乗れって!。時間が無ぇんだから」

 と、言い、ピッコロを次の車に押し込める。

「おいっ!、本当に壊れても良いのか?!」

 と、聞かれなくても、良い訳が無く、これから先に何台の車が破壊されてゆくのだろうか?。

 

 そんな感じの教習が続いたが、何台の車が壊れたかは数えていない。

 しかしながら、破壊に比例するだけの運転技術を会得して、流石に人並み程度の運転が出来るようになった。

 

 しかし、後日、ドライビングスクールからの請求書がカプセルコーポレーションに届く。

 その金額はゼロが7つか8つ程付き、結構な額である。

「ふ~ん。結構、掛かったわね」

 費用は勿論、ブルマ持ちである。

「俺が持っていた金で足りないのか?」

 と、手にしていた学科試験用の自動車免許教本から目をそらして、自分の運転により発生した請求額を気にするピッコロ。

 運転が上達したならば、次は学科試験がある。

 それに向けて、猛勉強の大魔王。

「100万ゼニーじゃあ、ちょっと足りないわね。でも、大丈夫よ。私が紹介したんだし、気にしないで」

 車が何台も壊れて、信号機に加えて様々な物が破壊された自動車学校。

 恐らく、金額は100万ゼニーの10倍でも足りないはず。

 しかし、ブルマが気にする様子はない。

「そうか、悪かったな。その内、埋め合わせはする」

 ピッコロが金の価値に詳しくないのは誰にでも分かる。

 それゆえに、一応の礼を言う程度で、再び手にしている教本に目を向けるピッコロ。

 歯を食い縛り、脂汗を掻きながらの姿は、やる気しか滲み出ていない。

 そのピッコロを余所目に、ブルマなりにも気になる事があるのか、クリリンを手招きする。

「ちょっと、クリリン」

「何すか?」

 近づいてくるクリリンに顔を寄せて、多少は聴かれるとまずいと思うのか、もう一度だけピッコロに目を向けてから聞きたい事を口にする。

「何だか、やけに素直じゃない?。ピッコロ」

 一応程度にでも頭を下げるピッコロ。

 その姿は、ブルマが知る以前のピッコロとは少し違うようだ。

「何か。時々、人間と関わっているみたいですよ」

「それって。私達以外ってことよね?」

「ええ、普通の人間らしいっすよ」

 先に話を聞いた、辺境の民や遊牧民の事である。

「ふ~ん。あのピッコロ大魔王かね・・・」

 と、その意外性に驚くブルマ。

 その辺りに、免許証を取得する理由があるのかもしれないとも思う。

 多少なりとも、身分証明書によって、人当たりを丸くしたいのだろうか。

「いいじゃないすか、こっちも近付きやすいし」

 と、クリリンは言う。

 すでに、親しみを見せる悟空達であるが、威圧感を滲ませる相手よりも人当たりが良い方が気楽に違いない。

「それはともかく、随分とブルマさんも気前が良くないすか?」

 クリリン曰く、車入りのホイポイカプセルや教習所の金を言っているのであるが、知り合いとはいえ払う金額が多すぎる。

「別に良いのよ」

 と、ピッコロに目をやって、

「昔はともかく、今は孫くんと仲が良いんでしょ?。だったら、車くらいはね・・・」

 と、ブルマは言う。

 その昔、ピッコロは世界を恐怖に陥れる存在であって、一時期には悟空やクリリン達と死闘に及んだ時がある。

 それが、親しげであるように見えるほどの間柄になっている。

 ならば、と言うところのブルマらしい。

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