そして、数日後。
「で、今日が試験日なのよね」
ブルマが電話機越しに聴く相手はクリリン。
長く掛かった教習所通いも終わり、残るは受験のみとなって、今日が試験日らしい。
「そうっす、悟空と一緒に試験場に行っているはずですよ」
と、受け答えるクリリン。
しかしながら、受話器を両手に持ち替えて、次の言葉を吐く。
「でも、受かりますかね?」
その言葉は、周りに誰が居る訳でも無いにも関わらず、少し小声だ。
そんなクリリンであるが、
「大丈夫なんじゃない?。運転は苦手でも、頭は悪くないはずよ」
などと、ブルマは大して心配はしていないように見える。
「本当かどうかは、分からないけど。運転免許をとる理由が人と関わりを気にした結果なら、解決に向かうだけの頭はあるでしょ?」
と、いうのが言い分で、それなりの根拠としては納得が出来る。
しかしながら、
「う~ん?、あのピッコロがですか?。確かに頭は悪くないと思いますけど」
クリリンにしてみれば、そこまでピッコロに変化が出たとは思えないらしい。
「でも、クリリンくんにとっても、何かと都合が良くなるんじゃない?」
「まあ・・、そうっすけどね・・」
かつて、強大な敵であったピッコロ。
同じように、新たな敵がいつ現れてもおかしくはない。
その時の為に、強い仲間は増えた方が良いという意味で、ピッコロの変化は喜ばしいという。
「まあ、私達は結果を待つしかないわ」
打算的ではあるがピッコロが身近な存在となる事に賛成であるに違いはない。
そして、運転試験場に舞台は移る。
すでに受付を済ませたピッコロと悟空。
その二人は試験の開始時間をロビーで待っている。
「しかし、しょうがねえとは言え、凄げぇ格好だな」
さすがに、試験場だけあって、かなりの人だかりである。
それ故に、ピッコロは目立つ事を避けるため、ターバンとマントは身に付けず、帽子とサングラス、そしてマスクをしている。
おまけに悟空から借りたスタジアムジャンパーは多少サイズが小さいようで、ますます怪しい服装に見える。
「お前が、顔を隠した方が良いと言ったんだろう」
と、ピッコロからは多少の不満も聴けるが、怪しい服装のお陰で騒ぎが起こってはいない。
違った意味で目立つが、結果は良しというところ。
「まあ、そうだけど。それだけ変装してれば、バレねぇって知れただけ良いじゃねぇか」
と、言いつつも、試験開始前のロビーを見渡す悟空であるが、取とりあえずは平穏無事な待ち時間となり安心はする。
しかし、ピッコロには気にすべき事がある。
「問題は受かった時の写真撮影だな」
試験に合格すれば、免許証には写真が必要で、しかも名前が記載される。
たかが、写真撮影ではあるが、
今日一日が無事に済むために最大の試練か。
「でも。まあ、大丈夫だろ。今日は飛んでいる訳でもねぇし」
楽観視する悟空。
一方、ピッコロの方は不安が消える事はない。
「そう上手くいけば良いな・・」
返事をする声は少し低い。
「ははは、そんなに気にすんなって!。写真撮影なんか、あっという間に終わっちまうし」
という、悟空の言葉を聴きながらも、ピッコロも変に視線を向ける者がいないかを気にして周囲を見回す。
そのうちに、
[・・・、受験生の方は各教室に入って下さい]
と、試験開始のアナウンスが流れて、周りの受験者が動き出す。
「試験が始まるぞ。ほれ、受けてこい!」
と、悟空が励ますようにピッコロの背中を押すと同時にピッコロの両拳に力が入り、
「ああ、行ってくる」
と、言って、口を一文字にして教室へと消える。
「なんか、凄ぇ緊張してんな」
恐らく初めてであろうペーパーテスト相手の戦い。
「別に、敵と戦うわけでもねぇのにな」
と、悟空の言い分も理解は出来るが、
「紙っぺら相手とはいえ、腕っぷしじゃあどうにもなんねぇか」
と、ピッコロの気持ちは分からなくもない。
そして、テストが始まり、静まり返る試験場内。
その数分後。
「あははっ!」
なぜか、教室内から笑い声があがる。
「何だ?・・・」
運転免許試験に相応しくない様子を不思議に思う悟空。
何故かと思い、耳を教室の壁に付けてみると、
「うん?・・、もしかして言葉が分からんのか?」
と、男の声が聞こえて、
「だったら、私が教えてやるよ」
と、女の声も聞こえる。
そんな会話が耳に入り、
「あははっ!」
最後に、先ほどと同じくような笑い声が聞こえる。
「何だ、これ?。訳が分かんねぇ」
と、いうことがあり、更に数十分後。
試験は終わり、早々とピッコロが教室から出てくる。
「あれ?、マスクとサングラスはどうしたんだよ」
教室から出てきたのは帽子だけを被った姿のピッコロ。
「試験中は外さないといかんらしい」
試験票との本人確認を行う為にサングラスとマスクを外されたらしい。
「よく騒ぎが起きなかったな」
帽子を被っているとはいえ、存在に気付いてもおかしくはない。
それ故に、悟空の言葉だか、
「いや、別の騒ぎは起きた・・」
「なんだよ、それ?」
そのような会話を続けている内に、教室から試験官らしき男が出てくる。
「おっ、shy boy。合格出来そうか?」
と、声をかけてくる。
どうやら、ピッコロに対しての声かけらしいが、
「何だ?。shy boyって?」
話の内容が、悟空には分からない。
続いて、教室から出てきたのは金髪の女性。
「あっ、foreigner!」
手を振りながら、ピッコロに声を掛ける。
「合格するといいな!」
やけに、親しげに過ぎる雰囲気を醸す。
それも、ピッコロに対する言葉らしいが、当の本人は一瞬の間だけ背筋が伸びて、隠れるように帽子を深くして悟空の影に隠れる。
「おい、ピッコロ。foreignerって、何だよ?」
foreignerとは諸外国出身の人という意味。
そして、先ほどのshyとは引っ込み思案という意味だ。
しかしながら、悟空が聞いているのは、言葉の意味ではなく、何故にピッコロがshy&foreignerと呼ばれているという事。
「うるさい。何でもないし、どうでもいい事だ」
悟空からの問いかけに、説明をする気は見せず、声を掛けてきた女性にも返事をする様子は見せない。
しかし、そんな事は気にしないように金髪女性は近づいてきて、悟空の後ろに隠れるピッコロに話し掛ける。
「隠れることないだろ?。合格発表まで暇だし、一緒に昼ご飯どうだ?。ついでだから、最後まで一緒に居てやってもいいぞ?」
と、言ってジェスチャーで食事をする真似をする。
「いや!、大丈夫だ!。もう、気にしてくれなくてもいい」
「大丈夫って、そんなことないだろ?。私がいたから、無事に試験が終わったんだから」
などと、未だに話の見えてこない悟空を尻目に二人の会話は続き、そのうちに悟空があることに気付く。
「お前ぇ・・、ランチじゃねぇか?」
と、女性の名前らしき言葉を口にする。
そして、その名前を呼ばれた方も、
「へっ?・・・」
と、気の抜けた返事をした後に、
「あっ!、その髪型!」
悟空の特徴である髪に気付く。
「お前、悟空か?」
と、悟空の顔を指差しながら、その存在に気付く。
このランチと呼ばれる女性。
かなり前から悟空とは知り合いで、同じく知り合いである天津飯という男を追いかけて、姿をくらませていた。
「お前ぇ、どこに行ってたんだよ」
と、久しぶりの再開だが、
「そんな事より、そっちのは悟空の知り合いか?」
と、ピッコロの事が気になってしょうがないらしい。
それでも、ピッコロにしてみれば対応に困る相手らしく、
「とにかく、もう大丈夫だから、気にしなくていい!」
「何だよ、そんなこと言ったって、私が気になるんだからしょうがなねぇだろ」
と、言って、ランチはピッコロの腕に手を廻す。
「おい!」
「いいだろ。助けてやった仲じゃねえか」
このピッコロとランチのやり取り。
悟空にしてみれば、さっぱり要領を得ない。
「何だか、良く分からねぇな」
しかし、悟空にしてみれば知り合いでもあり、
「けど、調度良いかもな。結果が分かるまで一緒にいてもらえよ」
女連れであればピッコロの素性が知れる隠れ蓑にもなる。
「そういう訳で、飯だ!」
「おい!」
先ほどから、「おい!」としか言わないピッコロ。
その様子から、現状に不満しか感じない。
ピッコロとランチの関係は、未だに理解が出来ないが、会話に出てくる助けたとは、試験時間中に何かあったのだろうと想像は出来る。
「さっき、教室で助けてやっただろ」
と、ランチからも言葉が出て、
「いいじゃねぇか。どうせ、飯は食うんだ」
と、言う悟空に舌打ちこそはしないが、腕から離れる様子も見せないランチを見下げながらりピッコロは口を開く。
「・・・・、まあ、いい。それで礼を返せるなら、飯くらい食ってやる」
まだ、何かを言いたげながら、ランチを連れながら食堂へと歩きだす。
「あははっ、面白れぇな。オラも何があったか知りてぇしから調度良いや」
と、頭の後ろに手を組みながら二人の後を追う悟空。