シトゥンペカムイの恩返し   作:金色のくじら

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気分転換に別の話も書き始めちゃいました。

白蛇で分かる思うんですが、人外夢主とか動物従える夢主が好きで(*´`)

もしかしたら続くかも。

匿名感想箱作りましたので、コメントいただけると嬉しいです(*´`)

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第一話

 

 

 

──────あぁ、なんて情けない。

 

 

 

 

 

目の前には木々が倒れて道を塞いでいる。

こいつはこの場所に辿り着くように仕向けていたのか。

 

後ろを振り向くと黒い巨体は鼻息を荒くし、今にも飛び掛って来そうだ。

逃げている途中、奴の爪が後ろ足を掠めて傷口からドクドクと血が流れている。

 

 

・・・つまり絶体絶命。

 

 

唸り声をあげながら後ずさると、相手は目をぎらりと光らせて襲いかかって来た。

噛み付かれる寸前で躱したが、今度は太い腕で岩に殴り飛ばされてしまった。

 

『キャンッ!!』

 

 

奴はその図体からは想像出来ないくらい素早い動きで私に近寄ると、満足そうに見下ろしてきた。

 

ここまでか・・・と目を閉じた瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

───────シュパンッ!!

 

 

風を切る音がして目を開けると、私を見下ろす巨体・・・ヒグマは「グオォォ!!」と雄叫びをあげ、ドスンと倒れた。

 

 

 

 

 

・・・助かった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったぞ、スギモト!!」

 

ハッとして前を向くと倒れたヒグマ越しに人間が歩いて来るのが見え、慌てて身体を動かそうとするが痛みで立ち上がれない。

 

 

 

 

 

 

「見ろ!シトゥンペカムイだ!!」

 

 

 

 

 

どうしよう・・・捕まったら毛皮にされて食べられてしまう。

 

 

自分の毛皮が人間の襟巻きになる想像をして、ぽろぽろと涙が溢れる。

そうしている内に、青い目の小さな人間と顔に傷のある人間はどんどん近付いて来た。

 

唸り声を上げて威嚇するが、全然怯まない。

 

「ヒグマにやられたのか、怪我してるよ」

「本当だ、だから逃げなかったのか」

「ふさふさで可愛いねぇ。背中が黒いけどこれもキツネなの?」

「そうだ!黒いキツネは"山にいる狐神"と呼ばれている。人の病気を癒したり、海に漁へ出て時化にあった時は助けてくれるカムイなんだぞ!さっき捕れた赤毛の"誑かすキツネ"とは全然違うんだ」

「へぇ〜、毛の色で随分違うんだね」

「キツネの中でも背中に綺麗な黒い十文字模様があるキツネは珍しいんだ。だから毛皮がものすごく高く売れるぞ」

「マジか!!じゃあ・・・剥いじゃう?」

「いや・・・こいつは殺さない。レタㇻと同じで数が少ないからな。それに黒いキツネは"人に危機の到来を告げる神"とも言われるんだ。・・・何か知らせに来てくれたのかもしれない」

「そっか。ちょっともったいない気もするけど、アシㇼパさんがそう言うなら逃がそっか」

「そうだな、怪我をしてるから薬草を塗ってやろう」

 

そう言って青い目の人間は懐から薬草を出すと、傷口に塗りつけた。

 

『ギャンギャン!!』

(痛い痛い!!)

 

痛みで思わず声を上げるが、しばらくすると血が止まって痛みが引いていった。

すごい、人間ってこんなことが出来るんだ。

男が包帯を巻いてくれて「これでいいだろ」とそっと立ち上がらせてくれた。

 

 

足を庇いながら人間から離れると、二人はヒグマを捌きはじめた。

 

「もう怪我すんなよ!」

「行こう杉元。白石達が待ってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

赤毛のキツネは気の毒だけど、自分の毛色が珍しくて良かった。

 

 

優しい人間もいるもんだな。

これからは気を付けなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 

─────少し前に親離れの儀式を終えて独り立ちした私は、食べ物を探して山を彷徨っていた。

捕まるのはネズミばっかりで、たまにはウサギとか食べたいなぁ・・・なんて思っていた矢先にヒグマに見つかってしまった。

 

気高い十字狐とあろうものが情けない・・・。

 

 

木の影から彼らを見送って巣に帰り、傷口をペロペロ舐めた。

しばらくは備蓄のネズミでやり過ごすか。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

二人に恩返しがしたい。

ヒグマの腹を満たす運命から救ってくれた人間。

 

しばらくして傷も治った頃、私は彼らの匂いを辿って山を出た。

 

 

 

キツネは人を誑かす、意地汚いなんて言われがちだが、別にそんなことはない。

美味しい木の実を見つけたりネズミを追いかけたり、人を騙して遊ぶより楽しい事なんて山にはいくらでもある。

どうして悪い印象を持たれているのか謎だが、実は義理堅い動物なのだ。

人間もそうだが、動物にも良い奴も悪い奴もいる。

ただそれだけの事だ。

 

 

 

 

 

────自慢の嗅覚と聴力で見つけた先には、山菜を食べる二人がいた。

 

いいなぁ・・・美味しそう。

この時期は食料がいっぱいある幸せな季節だよね。

思わずヨダレが垂れてきた。

 

 

 

・・・ハッと本来の目的を思い出して我に返り、辺りに誰もいないことを確認して頭に葉を乗せる。

その場で跳ねてクルリと一回転し、人間の女に変身した。

 

 

 

 

仙狐の母から産まれた私は変化の術を受け継ぎ、修行をしてやっと扱えるようになった。

長い時間変化するにはもっと修行を積まないといけないが、一日くらいは持つだろう。

 

ゆっくりと彼らに近付いて声をかけてみる。

 

 

『あの・・・私、旅の者なんですが迷っちゃったみたいで。町まで行くなら一緒に着いて行きたいのですが・・・』

 

怪しまれないようにたくさん練習した言葉と困り顔を披露し、情に訴えかける作戦だ。

 

「迷子か、私達はコタンに戻るところだ。そこからなら町はすぐだから、そこまでならいいぞ!」

 

やったっ!

 

「アシㇼパさん、いいのぉ?コイツ怪しくない??」

「こらスギモト!すぐ疑うのは良くないぞ!!服もボロボロだし迷って大変だったんだろう」

 

あー・・・可愛い服着たつもりだったんだけどなぁ。

逆に心配されて良かったけどさ。

服についてはまだまだ学ぶ必要があるなと思いながら『お願いします!!』と頭を下げた。

 

「もぉ〜、アシㇼパさんは甘いんだから!仕方ねぇ、コタンまでだぞ?変な真似したらぶっ飛ばすからな!!」

 

ヒェッ、怖い!

あの時と雰囲気違い過ぎるんですけど!

 

 

 

『ありがとうございます!私、結月って言います!』

 

「私はアシㇼパだ。こっちは杉元。・・・着いて来い!コタンはもう少し先にある」

 

そう言ってアシㇼパさんは前を向いて歩き出した。

杉元さんは私をギロリと睨みつけて、アシㇼパさんの後ろを着いて行く。

人間の足は遅くて不便だなぁと思いながら慌てて二人を追いかけた。

 

 

 

 

 

───少し歩くと木の枝で作られた家が見えてきた。

 

「キロランケニシパとシライシだ」

「おかえりぃ〜!」

 

向こうから坊主と髭面の男が歩いて来た。

 

「・・・んんん??そこのかわい子ちゃんだあれ?」

 

と坊主頭の男が手に持っていた魚をバサッと地面に落とし、すごい勢いで近付いて来る。

そして私の手を取り握ると、顔をずいと寄せて来た。

 

「シライシヨシタケです!独身で彼女はいません!付き合ったら一途で情熱的です!!」と目をキラキラさせた。

 

・・・コイツ臭いんだけど。

 

あ、でも頭は美味しそうな匂いするな〜。

私は齧り付きたいのを抑えて「結月と言います。よろしくね」と手をブンブンさせた。

頭をガブリとしたいところだが何とか我慢した。危ない危ない。

 

「おい!シライシ!ストゥで殴られたいのか!!」

 

アシㇼパさんは変な棒を持って手にパシパシと叩きつけている。

白石さんはキロランケニシパと呼ばれる髭面の男の後ろに隠れて「クーン」と鳴いた。

 

「このタコ坊主!全くしょうがねぇ奴だな。・・・俺はキロランケだ。よろしくな」

「よろしくお願いします。お二人は山で迷子になった私を助けてくれたんです。でもせっかくお知り合いになれたところですが、コタンに着くまでのお約束だったので・・・これで失礼しますね。ありがとうございました!」

 

魚を見るとお腹がグゥとなったけど、そう言う約束だからしょうがない。

 

「杉元が怪しいって言ったから結月が遠慮してるじゃないか!!」

「おい杉元!こんなかわい子ちゃんが怪しい訳ねぇだろッ!!」

「そうだぞ杉元。迷子になったんなら腹も減ってるだろ。せっかくイチャニウが捕れたんだから食わしてやってもいいんじゃないか?」

「うるせぇ!どう見ても怪しいじゃねぇか!!」

「スギモト〜?ひもじい思いをした結月を見捨てるのか〜?」

「うぅ・・・、みんなしてひどくない?」

 

杉元さんはシュンとした後こっちを向いて「・・・クソッ!食べたらさっさと行けよ!?」と睨んだ。

 

・・・優しくされた日を思うとここまで嫌われるのは切ない。

 

でも食欲には抗えず、結局いただくことにした。

 

 

 

 

「春に食べる汁物で一番美味しいイチャニウオハウだ」

『わぁ!お魚久しぶり!』

 

「「「「『いただきます!』」」」」

 

「うまいッ!辛かったプクサがすげー甘くなってる」

「長い冬を乾燥した食材で乗り越えたから、どのコタンでも新鮮な青物が食べられるのがとても嬉しい季節なんだよな」

 

うんうん、春は狩りに失敗しても草の根とか虫とか食べられるしね!

 

「フキもほろ苦いけどやわらかくて美味い」

「甘くてほろ苦い春の味だ!ヒンナヒンナ」

『ヒンナ?』

「食事に感謝する言葉だ。食べながら言うんだぞ」

『ふふ、そうなんだ!ヒンナヒンナ。いつもネズミばっかりだから沁みるよぅ』

「・・・えっ、結月ちゃんいつもネズミ食べてるの?」

 

あ、やばっ。人間の女はネズミ食べないか。

 

『えっと、狩りが下手だから大物が捕れなくて・・・本当はウサギとか食べたいんだけどね』

「くうッ!結月ちゃん苦労してんのね!女の子が一人旅は大変でしょ?どっか行きたいとこでもあるの?」

『特に目的地がある訳じゃないんですけど・・・ずっと山で育ったから色んな町に行ってみたいんです』

 

本当はアシㇼパさんと杉元さんに恩返しがしたいだけなんだけど。

 

『アシㇼパさん達はここのコタンの住人なの?』

「いや、私達も旅をしている。ここは途中立ち寄った親戚の家だ」

『そっか、ここに来ればまた会えると思ったんだけど違うんだね。残念だなぁ』

 

うーん、このまま同行させてもらいたいけど、そんな雰囲気じゃないし。

向かう場所をそれとなく聞いて、こっそりついて行くかぁ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

夜明け前、皆が寝静まっているのを確認してから家を出た。

 

 

変化を解いて森へ入り、姿勢を低くして狙いを定めて一気に走り出す。

獲物の首根っこにガブリと噛み付いて思いっ切り力を込めると、ウサギはすぐに動かなくなった。

 

それを咥えてコタンに戻り、家の前にそっと置いてその場を離れた。

 

 

優しくしてくれてありがとう。

少しばかりのお礼です。

・・・喜んでくれるといいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えッ!?結月ちゃんがキツネになった!?!?」

 

用を足しに外へ出ていた白石は、結月が変化を解いた瞬間を目撃して腰を抜かしていた。

 

 

 

 

「みんなーー!!結月ちゃんがキツネでキツネが結月ちゃんだったよぉ!!!」

「うるせー!シライシッ!朝っぱらから意味わかんねぇこと言いやがって!!」

「どうせ寝ぼけてたんだろ」

「結月がいなくなってる・・・どこいったんだ?」

「クーン・・・みんな信じてよぉ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く・・・かも?

 

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