現代ダンジョン弱者過ぎて書いたり消したりを繰り返して、やっと帰って来た。
もっと他の小説読まなきゃダメですね、マジで。
あと私のブリリアントパールにだけブロックルーチンが掛かってると思う、色ダークライどこ、どこ。メガ出たの、そろそろ出て。
その場所に入って、俺が最初に思ったものは恐怖や逃避、嫌悪感のような負の感情ではなく、寧ろ実家に帰ってきたかのような妙な居心地の良さと安心感だった。
かれこれ二年になるだろうか、毎日のように入っては数日、数週間と過ごした俺にとっての思い出の場所……なんて美しい記憶はないな、うん。
思い出せば頭を抱える程恥ずかしい黒歴史と血生臭い斬った張ったの地獄絵図しか蘇ってこない。腕が木切れかけたり、炭になりかけたり。
「あ、なんかお腹痛くなってきたかも」
とはいえ感慨深いのも事実。もうこんな大規模で潜る予定はなかったし、
なんて考えるのは今は後だ。走る速度を一定に保ち、指示を飛ばす。
「次、あと一〇m先、右に走ってすぐの壁をぶち抜いて下に降りる。その先、一九層の大広間。階層主は鷲見と鷹尾。前脚を壊して眉間に三発、ロスタイム無しの一〇秒で仕留めろ」
「「了解」」
「影野と築山は他の探索者がいれば交渉、面倒な手合いなら意識を奪え」
「人使いが荒いんですがねぇ、まあやりますよ。なんでこの山賊顔のケツ顎と一緒なのかは聞かないでおきますがね」
「仕方ない、被害が出ても困るしな。この胡散臭い糸目と同じなのは遺憾だが」
「適材適所って良い言葉……霧之介と爺さんは後ろの警戒を任せる」
「うっす!」
「おうおう、任せい」
しかし相変わらず、人類に迷惑しかかけない違法建築物だ。
とっとと優君にはこの粗大ごみを撤去していただきたい所存。
「ねえ葵、今の階層で何時間経った?」
「残念だけど、まだ十分も経ってないわよ。なんなら迷宮に入ってから、まだ二時間も経ってない」
後方の優君達がコソコソと何かを話している。
「ていうか、道中で魔物も全然見ないんだけど」
「ふっ、周りをよく見ている事で定評のある
「え、なにそれこわい」
休みなしで走り回っているのに、随分と余裕がありそうだ。
もう少しスピードを上げてもいいかもしれない。
「目標地点到達」
「鋼、頼む」
名前を呼ばれ、右足に魔力を込めて、眼前の壁に叩きこむ。
岩片が崩れ穴が開く。そこには底の見えない暗闇が続いている。
ゲームでもあった隠された抜け道、これを活用すれば迷宮の攻略は大幅に時間を切り詰められる。
今の階層は一五層。ここから一九層に落ちるって事は巨大ビルから飛び降りる事と同義な訳で。
「ほら、君達。お喋りも程々にして次に行くぞ。アリスはさっきと同じく二人の補助掛けろ、風で衝撃を殺せ」
「はい! 分かりましたの!!」
下層に潜っている探索者ならまだしも、まだ成長途中のあの子達だと怪我の心配もあったりする。
「ちゃんと今までの抜け道は覚えとくんだぞー。ああいう岩とか壁はなんでか普通の魔術でも壊せる」
何度も首を縦に振る三人、素直な子達って素晴らしい。
気持ち、顔が引き攣っているような気がしないでもないが。
先行した鷲見と鷲尾、その後のおっさんズに続き、俺も穴に飛び込む。
肌に触れる冷たい空気とどこまでも落ちていきそうな深い闇、数分もしないうちに先に光が見えてくる。
「
全身に炎が纏わりつき、勢いよく光の中に降下。
地面に接したと同時に眼前を向くと、そこには驚愕した顔で自分の方に向かってくる強面と対峙する巨大な二足歩行の狼が一匹。
どうやら他の探索者はいないらしい。周囲の雑魚狼を魔術で一掃する糸目とケツ顎。そして鷲尾が盾を構えて突進、態勢を崩した所を鷲見が締める。
早い、早いがどうにも連中は納得がいっていない様子。
拍手をしながら近付き、俺は言う。
「はい、皆さんが
「ノータイムで煽ってくるのやめろや」
「どこから取り出した、そのストップウォッチ」
ついでに走り出しからスイッチを押したから普通にガバ計測である。
まあ、煽れるなら煽るよね。人間だもの。
と、思っていると更に俺の後ろから着地の音と声。
どうやら全員到着したらしい。
「わぁ、本当に階層主が秒殺されてる、凄いや」
「当たり前よ、鷲見さん達は高等級の探索者なんだから」
「どうして葵が自慢げなんですの?」
何故か葵ちゃんがとても嬉しそうだ。馴染の店で時々遭遇する気のいいおっさん達が実はちゃんと凄い事を認識出来てテンションが上がっているのかもしれない。
分かるよ、平時だとそこら辺にいるただの顔の濃いおっさんだからね。
「へへっ、こんな雑魚相手にそう褒められてもな」
「当然だ」
お前等も嬉しそうだな、おい。
「鋼さん、周囲に異常は無さそうっす」
「相変わらず魔力数値は異常だがのう。通常の測定器は未だに正常値なのが不気味だわい」
通信機程の大きさの二つの簡易計測器を持ちながら、爺さんは顔を顰める。協会支給の方は緩やかな流れ。しかしもう片方、メルから送られて来た機器の数値は時折大きく波線のように動いている。
「了解、なら少し休憩を挟んで下に潜ろう。三五層にはまだ遠いが、ここからは抜け道は使わずに虱潰しで、何かあれば対処する方が良い」
大規模な群れ、そう簡単に登ってくる速度が上がるとは思えないが不測の事態なんてものはこの迷宮の中じゃ割と頻繁に起こる。
それにしても、
「あ、師匠。活性剤持って来たよ」
「おう、ありがとさん」
良い経験になるだろうと安易にこの子達を連れて来たはいいが、
迷宮氾濫を始めてみるヤツは、大なり小なり大概が最初は怖気づく。
ゲーム時代もランダムな操作キャラに『恐慌』のデバフが付与されて一ターン動けなくなる程だ。
勿論例外はいる。例えば蝦夷地で農業に営んでいる刀バカは旧都の時も目を輝かせて魔物を斬っていたし、心の強い聖女は結界をプレス機のようにしてミンチを量産していた。
だが、ここにいるのは年端もいかない少年少女達だ。あの美形の皮を被った異常者共とは違う。俺と同じ常識人枠の純朴な子達なのだ。
「うーん」
「師匠?」
それなら、先にそれよりも化物じみたモノを見せておけばどうだろう。
丁度二〇層にも入る。あいつが出ている間は無限湧きする死霊共の妨害もないし、何よりも高々六〇層の階層主程度の雑魚、処理は容易い。
いや、割といいかもしれない。
あの多腕お化け、有効活用出来ないかな。
一層から一五層は浜に捨てて来た。だって、この面子でスライムとかゴブリン倒してもね。ちょっと過剰戦力過ぎるって。