それでは、どうぞ!
連邦矯正局。ここは、各学園から『手に負えない』と判断された凶悪犯や、そもそも学園に通ってすらいない犯罪者を収監し管理する場所である。この場所は、日々凶悪犯を収監し、市民の安全を守っていると言っていいだろう。しかし、その場所は今
混乱の最中であった。
その原因とは、ある人物による『囚人の脱獄計画』である。
その計画に賛同した『七人の囚人』が、今回の騒動を引き起こした張本人と言えるだろう。
しかし、その混乱にまったく関与していない、それでいて、その七人の囚人と同等の凶悪さを持つ一人の『男』がいた。それが
『
(…‥朝か…‥ん?)
「…‥壁がぶっ壊れてる…‥誰のせいかな?」
「貴方は分かっているでしょうに」
起床と同時に、自分の部屋がほぼ崩壊状態になっていることに少し驚いていると、その原因である人物が自身の背後から現れた。
「はは。うん、分かってたよ。それでどうしたの?脱獄?」
「…‥とある者の手引きがありました。私以外にもあと6人程、その提案を受けた者がいるようです。」
「へーー…‥僕、そんなの無かったんだけど…‥へこむなぁ…‥」
「…‥それで、どうしますか?このままここに残るのか、それとも…‥」
「悪いけど、君にはついていけないかな。僕にはやることがあるからね。」
「…‥あの雌猫についていく気なら…‥分かっていますよね?」
「僕がどうするかは、君が一番よく分かってるでしょ?ワカモ。」
「…‥そうですね、貴方は恐らく「いたぞ!『災厄の狐』だ!」…‥」
「ほら、早くしないと捕まっちゃうよ?」
「…‥また、どこかで。」
「うん!どっかで会おうね!」
殆どの警備員がワカモを追って行き、その場には一時的に彼以外の存在はいなくなった。端から見れば、彼は牢屋に大人しくいる人畜無害な存在にしか見えず、余裕のない彼女達はそこに構っている暇がなかったためである。
(…‥ワカモが脱獄したってことは…‥今日がその日なんだね、セイア。)
しばらく会っていない『友』の顔を思い出しながら、少しの間感傷に浸る。
「…‥しばらくはなにもないけど、僕もぼちぼち出ようかな。ここにいても動きづらいし。…‥で、そこにいるんでしょ、アキラ。」
ワカモと警備員がいなくなった直後、入れ替わるように彼の牢屋の付近に一人の囚人が来ていた。
「良かったです。貴方があの雌狐に唆されなくて…‥」
彼女は『慈愛の怪盗』と呼ばれる、今回の騒動を引き起こした七人の囚人の内の一人である。
そして、彼のストーカーでもある。
「僕は自由に生きたいからね。ちなみに、君にもついていかないよ?」
「…‥駄目ですか?私達は、お互いの良き理解者になり得ると思うのですが…‥」
「そんな可愛い顔で言っても駄目。ていうか、ちょっと近い。」
「いいではありませんか、あなたの美しい顔を観察しているだけなのですから…‥」
「…‥…」
「あぁ…‥その顔もまた素晴らしい…‥」
「…‥はぁ…‥君の『神秘』はまだくれないの?正直、そろそろ欲しいんだけど」
「むぅ…‥もうその話をするのですか?」
「僕の生き甲斐の一つだからね。」
「まだ駄目です。貴方が完全に私の物になるまではあげません…‥だってこれをあげてしまったら、貴方はもう私に会ってはくれないでしょう?」
「別にそんなことないけど…‥僕個人としても、アキラのことは好きだしね。…‥まぁ、興味が薄れるっていうのは同意するよ。」
「!すいません、もう一度言って頂けますか?録音したいのですが…‥」
「…‥こんなにゆっくりしてていいの?ワカモみたいに追われてるんじゃ…‥」
「あら、私がそのようなミスをするとでも?ヴァルキューレの誰の目にも、私は映っていない…‥なぜなら私は、『慈愛の怪盗』なのですから。」
「大した自信だね…‥ほんと。」
「ですが…‥私もそろそろ行くとします。今の私に、貴方を口説けるような物はないですからね。…‥本当は、もう少し貴方を見ていたいのですが…‥遠くからで我慢します。」
(遠くからも見ないで欲しいけど…‥言っても聞かないのはもう知ってるし…‥まぁ、特に害があるわけでもないからいいかな)
「気をつけてね~」
「ふふっ…‥では、また。」
先ほどのワカモが去って行った時とは違い、まるで最初からそこに居なかったかのように一切の音すら立てず、アキラはその場を後にした。
「…‥ふぅ。じゃ、僕も出ようかな。安全が保証されてて、衣食住も完備されてる快適な環境だったよ。いままでありがと。」
「待ってください!」
「君は…‥あぁ、僕の看守さんか。」
「私には、貴方を止める義務があります!大人しくしてくれるならなにもしません!だからどうか…‥」
「…‥牢屋に居ろって?それは無理な相談だ。それに銃口が震えてるんじゃ、反撃されるよ?『
彼がそう呟くと、左手の中に開かれた状態の本が出現する。
(今はこれと、これかな。)
ページを瞬時に捲り、2つの箇所に先ほど右手に出現していた3つの栞の内2枚を1つずつ挟み本を閉じる。すると、光が彼を包んだ。
-攻撃、防御、回避、治癒、共に2段階上昇。特殊効果として、速力3段階上昇、攻撃速度2段階上昇を付与。指定装甲は軽装甲となります。-
(久々に使ったけど、上手く発動できてるね。)
光が晴れると手に持っていた本は消えており、彼の頭の上には神秘を持つ者の証である『ヘイロー』が浮かんでいた。
「っ!囚人の反抗行動を確認!武力行使に入ります!」
少女はその行動を視認すると、先ほどの戸惑いを押し殺しながら銃を構え、発砲しようとする。しかし
「遅いよ」
それよりも速く、彼は少女の目にも止まらない速度で動き、背後から無数の拳を叩き込んだ。
「なぁっ!…‥ぐふっ…‥」
「今回はスピード重視にしたから、反応できないのも当然さ。あっ、君の神秘も貰おうと思ってたのに…‥気絶させちゃった。」
(一瞬眠らせただけだから直ぐに目覚めると思うけど…‥それを待ってる暇はないね)
「惜しいけどしょうがない。また会おうね~」
(ここから出たら、まずはブラックマーケットの家を見てみるかな。…‥といっても借りてるわけじゃないから、盗られてるか壊れてると思うけど。)
この物語は、『神秘』に対し異常な好奇心を持つ男による
青春物語である。
今作の主人公の能力はHUNTER×HUNTERの謀団長の能力から着想を得ているので、所々似ていると思いますが、気にしないでください。
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