お隣のお嬢様により一層駄目人間にされていく件   作:凱くん

2 / 7
第二話 この巣?あいの巣?ふたりの巣?

第二話 この巣?あいの巣?ふたりの巣?

 

そんなこんなで初日の授業も終わり、放課後。IS学園は全寮制なので寮生活である。

6時間に分かれ(今日は入学式があったから4時間だけど)16時近くまでみっちりと続く授業に疲れきった俺は机に突っ伏してへにゃへにゃになっていた。

 

「ほら、睡蓮さん。授業終わりましたわよ。寮に向かいますわよ。」

「そうだな~」

「ほら、しゃきっとなさいませ。」

「ぐえ~」

 

ぐたりと机の上に投げ出した腕を引っ張られて引き釣り起こされる俺。

遠巻きに俺たちを囲んで声をかけてくるクラスメイトの方々。

あんまり顔と名前を覚えられる気はしないけれどもこういうのも徐々に覚えていかないと?

覚えられるもの?難しいかもしれませんね。ふふ。とくに貴方のような低能の方には。

心の中のイマジナリーセシリアがそう告げている。辛辣。

 

 

「うわ~セシリアさん~大胆~」

 

声をかけてくるクラスメイト。

こうして囃し立ててくるということはノリがいいのかも知れないという推測。

 

「あら、ルームメイトになるのだから、しっかりして頂くのは当然ですわ。」

そういいながらも注目を集めたからかほんのりと頬を赤らめるセシリア。

「でも男の子と同棲って大胆~!青春~!いろいろありそう~!」

 

周囲に集まってくるクラスメイト達。

 

「別になにもないよ。たぶん。いっち~はしらないけど」

「そ、そういえば睡蓮君とセシリアさんがルームメイトってことは、織斑君も誰かとこれから同棲ってこと!?」

「織斑君の隣の席は確か篠ノ之さん!?」

「おのれあのおっぱいおっぱいがでかいだけではなく、男まで奪っていくのか。」

 

騒いでいるクラスメイト。騒がしいクラスのようだ。

 

「ほら、帰りますわよ。」

 

ご同室のお嬢様はそんな喧騒のなかでも悠然と佇む。 

その絹糸のような金髪をかきあげるようにして手をやりながら、微笑むセシリア。

そして有無を言わさず取られる手。

もう逃がさないと言わんばかりに繋がれる手。

 

「あい。」

 

セシリアに手を繋がれ、引っ張られながら俺たちは学園の寮へと向かうのだった。連行ともいう。

といってもIS学園の寮は利便性を考え校舎を出てから50Mぐらいの距離という至極近い位置にあるようだ。

もし寝坊などをしても、ダッシュでクラスに向かいやすいといえるだろう。

しかしその前に隣の金色の悪魔に引きずられそうだった。

安眠よさらば。

 

ISの学園寮は赤煉瓦造りのまぁまぁいい感じの建物だった。

ま~あと100年ぐらい経てばそれなりに格好がつくだろう。

夕食の時間が18時から19時と決まってるらしい。

これが集団生活。Fuck!中指を突き立てましょう。

部屋に確かキッチンはあるって聞いたけど。

いざという時はセシリアに何か作ってもらうとしましょう。

セシリアさんは料理は出来るのかな?旨いのかな?

ご令嬢だからグルメで手料理も美味しくない筈がないじゃない。

英国令嬢セシリアオルコット手料理メシマズ説……

可能性がある……シュレディンガーの猫ってことぉ?

 

IS学園一年生寮のそれなりに気取ったロビーとラウンジを抜けると絨毯のような紅色のマットの敷かれた廊下を二人並んで歩いた。

 

「バーとか無いかな?」

「有るわけがございませんわね。」

 

その容姿に似合った涼しさに少しの甘ったるさの混じった声で一刀両断。

きんいろはようしゃがない。

 

「がっくし。」

 

しょぼ~ん。

 

「未成年の学園寮にお酒を呑むスペースが有るわけがございませんでしょう?寝言はお休みになってから仰ってくださいませ?」

「しょぼ~ん」

 

がっくし。

 

「英国の法律でもまだ未成年ですわよわたくし達」

 

落ち込んでいると声と雰囲気が柔らかくなるセシリア。

ルームメイトが優しい。優勝。

ルームメイトの金髪英国令嬢が優しすぎる件について。まる。

誰かの嫉妬ふれいむで殺されちゃいそうである。

 

「そう言ったって、セシリアだって吞むでしょ~?良いところのお嬢様なんだし~?」

「それは・・・・・・わたくしもそういったものを嗜まないとは言いませんが・・・・・・」

「ほらほら~」

 

押してみる。

 

「し、仕方ないですわね……適量ならば街や部屋の中でならで呑ませてさしあげますわ……英国のお酒だけですわよ?」

「ボウモア~わんもあ~」

「はいはい構いませんわよ。呑み過ぎは決して許しませんが。」

「おざなり~」

 

俺を引きずっていたセシリアの足が止まる。

目的地周辺です。自動案内を終了します。

 

「わたくしたちの部屋はここですわね。」

 

セシリアのほっそりとした指がカードキーをスライドさせ、電子音と共に扉がひとりでに開いた。

 

「つきましたわよ。」

「じがれだ~」

 

手錠のように繋がれていた腕と手が離れたので自由の身である。やったぜ。

 

部屋に入るとそこはスケールダウンされた品のいい洋館の一室だった。

ダークブラウンとブリティッシュグリーンをベースに落ち着いた色彩で基本的に纏められ、所々にワインレッドが艶やかさを加えている。

そして壁際で一際目を惹く空を舞い飛ぶ蝶の刺繍の入った天蓋付きのキングサイズベッド。上四隅には何段かのフリルがあしらわれ上品でありながら主張は欠かしていない。

 

そう。まさしく横の少女のような。

この世にある無数の物から何を選ぶのか。

選択には価値観が表れ、物にも魂が宿る。

 

「これ実家からお取り寄せ?」

「もちろんですわ。」

「気に入った~」

 

ただ豪華なだけではない、むしろ一見地味でも流れる時という容赦のない選別を経た真実のアンティーク。

 

「あら。睡蓮さんにもこういったものの魅力がわかりますのね。」

「もちろんさ~」

 

そのままふかふかの皮張りのソファーにねっころがってごろごろする。

う~んなかなか心地が良いぞ。頬をすりすり。ごろごろ。

やっぎゅ。満足。ち~ぎゅ。

 

「お行儀が悪いですわよ」

「もちろんさ~」

「はぁ。」

 

ため息をその場に一つ落とすと共にくるりと背を返すセシリアどうやらキッチンを確認するようだ。

そのまま紅茶でもいれるのかお湯を沸かし始めた。

英国人=紅茶 これ偏見のようでそうでもない偏見。

コーヒー豆に狂ってた時期もあるしコーヒーかもしれない。

でもやっぱり紅茶でしょうというよく分からない信頼感。

あ、わた睡蓮さんは珈琲派です。よろしゅう。

 

「さっきからぶつぶつぶつぶつと何を訳の分からない事をおっしゃっておりますの?」

「なんでもないさ~」

 

セシリアのじと~っとした梅雨の時期の霧雨ぐらいには冷たい視線を受けて答える応える身体に堪える。

 

「はぁ。」

「ため息をつくと幸せがにげるらしいよ~?」

「誰のせいだと思っておりますのかしら?誰のせいだと」

「ふんふんふふ~ん」

「それにもう十分わたくしの幸せはにげておりますわね。」

「そ~なのか~」

 

それからしばらくして、寮の部屋に持ち込んだマホガニーにワインレッドのビロードの張られたソファーに座り、

青と金の輝くウェッジウッドの茶器で紅茶を優雅に飲んでいたセシリアが言った。

 

「それはそうと、共同生活なのだから決まり事を幾つか定めないと問題が起きかねませんわね?」

「うひ~めんどくさそう~」

「特に睡蓮さんは自制心というものがお猿さんの如く低そうですからとりわけルールというものを決めなくてはならなそうですわね?」

「ウキー」

「あら。一夏さんと並んでお猿さん一号二号ですわね。二号はブリティッシュグリーンですわ♪」

「ん~・・・・・・そういえばサンダーバードって英国製だっけ・・・・・・確か・・・・・・」

「あれも英国が世界に誇るべき作品の一つですわね♪」

 

 

「ひとつ。睡蓮さんも殿方ですからむらむらしてしまうこともあるかもしれんませんが、えっちなことをしたいときは事前にわたくしの許可をとること。」

 

ぴっと小気味よく器用そうな人差し指が立てられる。

 

ひとつ。シャワーをわたくしといっしょに浴びたいときも事前にわたくしの許可を取ること。」

 

ピースサインの手。

 

「ひとつ。わたくしが着替えをするときは可能な限り後ろを向いていること。もしも着替えの最中に振り向いたならば……わたくしに気があると判断させていただきますわ。

ふふっ」

 

スリーポイント3本指。

 

「あいあい」

「今のルールはよろしいかしら?」

「あいさ~」

「貴方からは何かご要望ありますかしら?」

「ない。」

「では、とりあえずこれで行くとしましょう。何かあれば二人の協議で追加変更するということでよろしいですわね?」

「よい。」

「よろしい。」

 

 

「そういえば、教室でもちょっと話したけどせっかくだから明日の放課後ISの訓練に付き合ってくれない?」

「……構わなくてよ。わたくしの華麗な機動と射撃を学ぶとよろしいですわ。」

「んまぁ~大英帝国代表候補生にして入試次席の実力、楽しみにしておくよ。」

 

柳腰に手を当ててその美乳を張るように躰を少し反らせるセシリア。

 

「それならば、アリーナの使用許可を事前に取得する必要がありますわよ。」

「わかった。」

「専用機でなければ、レンタルの手続きも必要になりますが……わたくしは専用機を持っておりますので問題ありませんが」

「同じく。」

「…………あら。そうですか。それは楽しみですわね。」

「というか対戦するイッチーも一週間あったらそうなると思うぞ。」

 

Mad兎madeじゃなくてcustom中?今週中には届きそう。

 

「そうですね。いくらあのような挑発を受けたとはいえ、素人の量産機を一方的に叩きのめすのも外聞というものが余りよろしくはないでしょうし、そちらのほうが望ましいかもしれませんね。」

「風の噂によると~その機体は何処かの兎さんのカスタムした4世代機らしいよ~?、一応あんなんでも遺伝子改造人間だし、一応剣道とかやってるし、、余り見くびりすぎないほうがいいとは思うよ。」

「それを完膚なきまでに叩きのめしてこそ、セシリア・オルコットですわっ♪」

「ひゅ~!ひゅ~!かれん~!しょうしゃ~!おじょうさま~!」

優雅におほほと胸を張るセシリアには誇りが満ち溢れていた。

 

「だ……第四世代機と仰いました?まだ第三世代ですら各国試作段階ですのよ?」

 

おろおろしはじめるセシリア。

第四世代ってやつはとにかくすごいらしい。

 

「まぁ~一撃必殺剣一本しか武器無いらしいし現時点じゃ大したこと無いんじゃない~?見くびらなければ~?」

「……あの男が遺伝子改造人間とはなんですの?ドイツのアドバンスドのようなものですの?」

「ま~そんな感じ~?ちょっと質が高いらしいけどマッドな人たちの間ではそれぐらい日常茶飯事というかそんな珍しくも無いよ~?」

 

Viva mad 万歳三唱。

でも強化人間系って見かけ倒しなこと多いよね。

素でいかれてるのがさいつよ?

 

「……ということはもしかしてブリュンヒルデも?」

「記念すべき1000体目の最初の完成品らしいよ~?運がいいね~?一応本人たちには言わないでね~?多分あのおっかない先生キレルよ~?」

 

セシリアのおでこから一筋の雫が垂れ落ちていく。

 

「わたくしは秘密は守れますわよ。見くびらないで下さいまし?」

「……睡蓮さんはそのような情報を何処で?信頼のおけるソースなのかしら?」

「ソースは富良野農協ソースだよ~?」

 

セシリアがこんじきあくまモードになりそうだったので言い直す。

危険判別センサーが優れてなければ戦場ではとてもじゃないけど生き残れないのだ。

 

「入試主席は幼なじみのニンジャでそいつが言ってました~」

「くっすぐに超えて見せますわ……そもそも直接対決はしてませんのよ?お知り合いならば今度ご紹介下さいまし。」

 

プライドの高いセシリアにとって入試が次席に終わったことには納得がいっていないようだ。

まぁ直接対決しても結果は覆らないだろうけども。

 

「というか挨拶しに行かないと拗ねる可能性ある~?」

「そういうのは人として当然の事ですわね。」

 

 

 

 

脳内で中指を突きたてながら定められた時間に夕食会場に行くとそこには喧騒が広がっていた。

 

なにやら一夏が同居人の幼なじみである箒changに木刀でボコラレルという惨事を受けたらしい。

古武術の遣い手が木刀をぶんまわしたら普通に人が死にますね。

人造改造人間で良かったねいっち~。

 

「流石にかわいそうを超えたかわいそう」

「どうせあの男が何かやらかしたに決まってますわね。」

 

異なる意見が採用されているようだ。

 

「とはいえ何があったにしろいきなり暴力を振るうというのも淑女の振る舞いではありませんわね。この国の女性は大和撫子だと伺いましたが。」

「やまんば?」

「あら、箒さんにそれを言ったらさぞかし素敵なオブジェが出来上がりそうですわね」

「やっぱりやまんばはこわい」

 

列にならんで夕食を考えていると物見遊山の知らない女子達が声をかけてくる。

 

「睡蓮君とセシリアさんはここまで腕を絡めて手を繋いで来たって本当!?」

「校内でもそうやってセシリアさんが引きずってるの見たって!?」

「しつも~ん!二人はお付き合いしてる仲なんですか~!?」

 

「まさか、唯のルームメイトですわ。少なくとも今のところは。」

「それにしても、皆さま方意外と初心でいらっしゃいますのね、ルームメイトならそれぐらいは普通ですわ♪」

 

おほほと口元に手を当てながらしなだれかかってくるセシリア。

フィーバーする周囲。

 

「セシリアさん大胆~やっぱり海外の人は違うのかな~!」

「でも睡蓮君あんな美人と恋人っぽく手を繋いだり抱きつかれて何も動じてないってどういうこと!?」

「ま~ふつ~?」

 

ぐりぐりぐりぐり。胸と胸を押し当て潰すようにしつつ身体をくっ付けたまま足を踵で踏んづけてくるセシリア。

ふにゅう。ぼよん?

 

「痛いんですけど~踏んでるんですけど~」

「物事には必ず理由があるものですわね」

「事故?」

 

ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐり。

 

「ねじこまないでほしいんですけど~」

「自業自得ですわ♪」

「ところで夜ご飯は何にするの」

「ボロネーゼの予定ですわ♪」

 

攻撃は止まない。だんだん楽しそうな微笑みになっていく。

先生。ルームメイトはサディストみたいです。

 

「え~カツ丼で」

「不許可ですわ♪」

「え~。」

「昼も夜も揚げ物。お身体に障りますのでわたくしの目が蒼いうちは許可できませんわ♪」

「え~じゃ~」

「ちっく♪たっく♪ちっく♪たっく♪」

 

踏んづけている足をリズミカルにぐりぐりとネジ込みプレッシャーをかけてくるセシリア。

ひどい。人間の足はネジ式ではありません。

 

「えーっと4種の三浦野菜盛り葉山牛丼で」

「どんぶりから離れませんの?……まぁよろしいでしょう……」

「品目が少なくて食べるのが楽なのだ」

「そんなことだろうと思いましたわ」

「オーダーとサーブはわたくしがしておきますから睡蓮さんは席取りに行ってらっしゃいませ」

「かいほうだ~」

 

セシリアの足で繋ぎ止められていた足の甲が解放され晴れて自由の身に。

席を求めて今羽ばたかん。いざ。

時の人であるいっち~と箒んぐを発見。

 

「ここいい~?」

「あぁ」

 

たんこぶをいくつもこさえ、頬も腫らしたいっち~が頷く。

 

「それにしてもいっち~風の噂で聞いたけど大分やられたみたいだね」

「あぁ。丁度シャワー上がりの箒を見ちまってこの有り様だ。俺のタイミングもよくなかったとはいえ、流石に酷いだろ~」

「ふんっこいつが全て悪いのだ」

「同室なのは分かってたんだからさ~もう少しやりようも他にあったんじゃないのか~?」

 

箒changにジト目を送るいっち~

 

「それに比べてセシリアはおしとやかだし優しそうで……いやでもあの女俺には極東の猿とかバカのサンドイッチができるとかさんざん馬鹿にしてくれたな。まだ全然許せてねぇ。」

「よく睡蓮あの女と平然と付き合えるな」

 

掌に拳を打ち付けるいっち~

ゴリラみたいにドラミングしたら楽しそう。

 

「まぁそれぐらいは英国人の通常運転だね~あぁでもさっき足踏まれた。」

「木刀よりは良いだろ~それも剣道全国大会優勝者の!普通に人が死にますよ!?小さい頃から何故かちょっと身体が頑丈だったからギリギリなんとか良かったけどさ!」

「生まれに感謝だね~」

 

「ふん、そもそも男女同室なことが先ずおかしいのだ!男女7歳にして同衾せず!常識だろう!このままでは獣に教われてしまうかもしれない!」

「いや獣って箒さん一夏さんはそんな見境ない人間じゃありませんから!もう少しは信用してくれてもいいですから」

 

ぷんすかぷん。スチームドーザー箒chang。

コンロでお湯が沸きそうだ。

そしてほっぺが何かの菓子パンみたいに赤い。

 

「あら、男女の間でも共同生活を送ることで将来社会に出たときの為の経験にもなる。更にはこの学園には現在将来の有力者が集まりますから、その方々と交流し人脈を育む。それがこの学園に通う一つの意義ですわ♪」

 

そう言いながらトレーを両手に乗せて現れたセシリア。

 

「あら、手ひどくやられたようですわねおほほ。」

 

手を口元に添えて高飛車お嬢様のポーズ。

セシリアはこれがとてもよく似合う。

 

 

「それにしても殿方に少し裸体を見られたぐらいで折檻とは大和撫子というのも案外甲斐性がございませんのね。もう少しご自分に自信をもたれればよろしいのに。ふふふ♪」

「なっ!」

 

蒸気先進国だけあって釜に石炭をくべるのが上手いセシリアだった。

 

「ふんっ!何処かの英国痴女とやらと違って私には恥という感情があるのだ」

「あら、ずいぶん誇りが低いんですのね」

「ふんっ一週間後を楽しみにしているといい!私と共に鍛えた一夏がお前の驕りを打ち砕いて吠え面をかかせてやるし面前の前で恥という感情を打ち砕いてやるからな。」

「あら、一日千秋の思いで待ちわびさせてもらいますわほほほ」

「責任重大~」

「は~」

 

大きなため息をつく一夏。

 

「でも俺の因縁も解決してないしな。悪いけど来週は勝たせてもらうぜ」

「よく吠えましたわ。その粋だけは買ってさしあげますわ」

 

 

 

食事を終え、二人分のトレイを片付けてきたセシリアが帰ってくる。

 

「じゃ~そろそろ行きますか~じゃ~いっちーと箒また明日~」

「そうですわね、では皆様お休みなさいませ。」

 

腕をとって帰り道のナビゲーションを開始するセシリア。

自動案内を開始します。

 

「あ~そういえば知り合いに挨拶してくからセシリアは先に帰ってもいいよ~」

「例の主席の幼なじみさんですわね?ぜひわたくしもご紹介に預かりたいものですわ」

 

隣にぴたっとそのしなやかな身体をくっ付けたセシリアからごごごごごとオーラが立ち上る。

 

「その方が何処にいらっしゃるかご存知ですの?」

「えっとね~」

 

心のレーダーを捜索モードで起動。

食堂の机の一つを指差した。

 

「あそこの和服風制服の黒ロングの身長173cmぐらいの女だよ~」

 

気配で向こうに信号を送ると察知したのか反応がある。

待ってれば向こうから来そうだが。

というか食堂の時間もあるし食堂で会う必要もないか。

ラウンジの見学もしてもいいだろう。

ラウンジでと気配を送る。

 

「ラウンジで集合ということにしました」

「ISのプライベートチャネルでも使っておりますの?」

 

ISの専用器持ちはプライベートチャネル通信で互いに声を出さずに通信できる。

 

「そんな機能もあったね~そういえば。でもこれは唯の幼なじみの気配通信だよ~」

「人間やめてらっしゃいますの?ぽんこつですものね」

「幼なじみなら普通だよ~」

「それは絶対に嘘ですわね」

 

ラウンジの4人がけテーブルに座って幼なじみを待つ。

セシリアは飽きたのか俺の肩に腕を乗せて仔猫のようにしなだれかかってくる。

 

「飽きたなら帰ってもいいよ~」

 

返答は足をぐりぐり

はまってしまったのだろうか。そんなブームはすぐに過ぎ去って欲しいものだ。

 

「あら、そんなことはありませんですわおほほほほ」

「や~め~ろ~よ~」

「あら、ただの足つぼマッサージですわ♪」

 

幼なじみはそれから一分もせずに着物風の制服の裾を音もなく翻らせながら滑るように此方へ現れた。

テーブルの向かい側に立つと恭しく一礼。

そのまま顔を上げずに挨拶をした。

 

「あら睡蓮様ご機嫌麗しゅう。ようやくお目通り叶いまして、大変悦ばしく思いますわ。」

「あー忘れてた。ごめんごめんご」

 

伏せられていた頭が上がり、首が反って徐々にその面が露になる。

その特徴的な左目の紫の瞳が妖しく煽情的な光を帯びている。

 

「それで、如何なる御用向きですの?もしかして隣の身の程知らずの金色泥棒猫にはもう飽きてしまわれたのかしら?」

 

俺の頬に人差し指を滑るようになぞらせ、その黒と紫のオッドアイの瞳を覗き込むように近づけながら問いかけてくる。

 

「いやま~せっかく同じクラスなんだから挨拶ぐらいしておこうかな~と思って、まぁ立ってると疲れるだろうし座ったら?」

「後隣に座ってるルームメイトセシリアが挨拶したいって」

「……それでは失礼いたしますわ」

 

そう一言断るともう一度一礼した後にちょこんと椅子に腰かける。

 

「わたくし柳生椿と申します。そちらの睡蓮様とは全てを晒けだしあった仲ですわ。これから睡蓮様がご迷惑をおかけすると思いますが、いつでもわたくしに譲っていただいて構いませんですのでいつでもお声がけ下さいまし」

 

ごごごごごご。二人から立ち上る猛烈なオーラ。何故か二人の仲は良くないようだ。どっちもお嬢様なのに。やっぱり入試の成績?

 

「というか流石にひどくな~い?」

「「睡蓮(さん・さま)は今だけでよろしいですからそのよく回るお口を閉じていてくださいまし」」

 

ハーモニー。やっぱり二人の仲はお嬢様らしくとてもいいのかもしれない。仲良くできそうである。

 

「英国貴族たるわたくしにはnoblesse obligeの精神が有りますしルームメイトの世話をするのも当然ですからお気遣いは結構ですわ」

 

ごごごごごご。龍虎相打つとはこの事か。

二人の間でオーラが乱れ飛び争いあうのが見える。

お嬢様同士仲良くなるかと思ったがそれは逆転の発想のようだった。

 

 

 

 

 

「貴方……荷物それだけですの?」

「そうだけど。あ~あとスピーカーとラックとアンプ」

 

よれよれになった黒のトレンチコートと革張りの旅行トランクが一つ。

 

「……呆れましたわね……アクアスキュータムとは悪くない選択ですわね、でも手入れをしたほうがよろしくてよ。あらそれは初代ヴィトンですの?……本物かしら?」

「本物かどうかは心のなかにあります~」

 

丈夫でいいカバンなのだが有名な柄になる前のものなので偽物が沢山流通しているのである。

好事、魔多し。

 

キングベッドでごろごろしているとお行儀よくちょこんとソファーに座ったセシリアがジト目で見てくる。 

 

「制服でベッドに寝るなんて、制服が皴になりますわよ?」

「ん~?……といってもこれしか持ってないしな。」

「今なんとおっしゃいまして?」

「これしか服持ってきてないしな~。」

「……わかりました。今度の休みに一緒にお買い物に行きますわよ?」

 

白魚のように透き通った人差し指を突き付けてくるセシリア。

 

「え~、めんどくさい」

「お黙りなさい。ルームメイトの貴方の評判が悪いと、わたくしの評判も連動して悪くなってしまうのですから。わたくしの目が黒いうちは決して許しませんわ。」

人を指さすのは評判が悪くならないのだろうか。

「というわけで、よろしいですわね?」

「あいこぴ~」

「まったく……」

 

ため息を吐くセシリア。

 

「洋服に関してはサヴィルロウのテーラーに申し付けて急ぎで仕立てさせますので、今週中に採寸を取りますわ」

「え~」

「なにか仰いました?」

 

にこにこ。非の打ち所のない美少女スマイル。

でも背景に金色の悪魔が見える。こわよ。

 

「なんでもないです~」

 

「日用品だとか急場を凌ぐための物は必要でしょうから土曜日に横須賀に参りますわよ?くれぐれも予定は開けておいでくださいましね?」

「ごろごろする予定が……」

「よ ろ し い で す わ ね ?」

 

「……さすがにいくらなんでも下着ぐらいは持ってきておりますわよね?」

「たぶんないね~」

 

手のひらを額に当てて首を振るセシリア。

 

「別に数日着替えなくても死にはしないよ。うん。」

「わたくしが気にするのですわ!……このセシリアオルコットのルームメイトが臭いなどと……噂が立とうものなら……お願いですからくれぐれも気を付けてくださいまし。」

「お~」

「……最低限の着替えだけでも……明日の朝までには用意させておきますわ……」 

 

シャワールームの方からは水音に混じって爽やかな鼻歌が聞こえてくる。

随分とご機嫌のようだ。

 

シャワーを浴びた後バスローブを着たセシリアがやってきた。

髪が水を吸ってロールした部分が無くなり違う感じになっている。

 

「わたくし寝間着に着替えたいのですけれど……流石に少し恥ずかしいですから……睡蓮さんは後ろを向いていてくださいまし。……もし振り向いたら……先ほど申し上げました通り……分かりますわよね?」

頬を少し赤らめたセシリアが告げる。

 

「あい。」

 

 

ベッドの反対側の淵に座り、言われたとおりに後ろを向いてのんびりしていると、しゅるしゅるという柔らかい生地の衣擦の音が聞こえてくる。

 

「よろしいですわよ。」

 

ベッドにごろごろする体勢に戻ると、着替えていたセシリアはベッドの淵に座り、そのままドライヤーをかけはじめた。

ぼんやりと横目に見ていると、寝間着に着ている黒いベビードールの細かい刺繡の入った生地はとても薄く、色素の薄いその背中が透けていた。

 

「…………せ…………ませ…………」

 

ゆさゆさ、ゆさゆさ、ゆらゆら、ゆらゆら、波のように漂い揺れるような感覚。

そしてそれと矛盾するような地に足をしっかりとつけたかのような確かな重み。

うっすらと目を開けると、そこには揺蕩う金の髪と透明度の高い海のような蒼の瞳。

 

「ん~」

 

思わず覗き込む。

 

四つん這いのような体勢でセシリアが覆いかぶさっていた。

蔦と花の刺繍の散りばめられたベビードールが細さとしなやかさを感じさせる躰を包み、その薄手の黒き生地からは何一つ穢れなき新雪のような白が垣間見える。

そしてバランスを決して崩さない2つの胸果の突起の先端には一際目を惹く鮮やかな桜色。

 

「んあ?」

「貴方もシャワーを浴びてらっしゃいな。このまま寝ようとするなど許されませんし、わたくしの眼が蒼い内は見逃しませんわよ。」

「あ~……ふあ~」

 

あくびを一つ。伸びを一つ。

 

「ほら、まだ寝かせませんわよ。しゃきっとなさいませ」

「是非も無し。」

 

致し方なし。逃げ場なし。

しょんぼりしながら脱衣所で制服を脱ぎすっぽんぽんになってシャワーへ。

 

しゃわしゃわ。しゃわー。

セシリアが持ち込んだのかなんか石鹸のボトルが4本ぐらいある。意味不明。

何とかボディソープとシャンプーと書かれた奴を見つけて身体から汚れをシューッ超だるいティンッ頭も適当にごしごししてっとシャワーじょー。

これが肉体の3分クッキングといえる。

3分ウォッシング。

 

びしょ濡れにならない程度に適当に身体を拭き、髪の毛をごしごしして、パンツだけ穿いて脱衣場の扉を明け外に一歩だすとそこにはきんいろのあくまのすがたが。

 

「ぐえ~」

「はい捕まえましたわ。」

 

セシリアの二本の細腕が俺の身体に回され首の辺りでくっ付けられ、ぎゅ~っときっちり捕獲される。

これでは逃げ出すことができない。キャッチアンドホールド。

おわりました。

 

「はい身だしなみのお時間ですわ。」

「地獄だ~」

「はい逃がしませんわ。このセシリア・オルコットのルームメイトとして相応しい姿になっていただきますわ。」

 

再び脱衣所へ連行。釈放時間5秒。刑期未定。全身をタオルで丹念に拭かれ悲しみを背負う。

 

「烏の行水とはこういうことを言うのかしらね」

「推奨されてる。」

「禁止されておりますわ」

「おうぼうだ~」

「ここではわたくしがルールですわ♪」

 

鳴り響くルールブリタニカ。

横暴を極めた国家ユナイテッドキングダム。

英国令嬢恐るべし。慈悲はない。

 

「はい。服を着てよろしいですわよ」

「おわっだ~っ!」

「わたくしは服を着てよろしいですわよと申し付けただけですわね?そのよく聞こえるお耳で何を聞いてらっしゃったのかしら?ぜひわたくし伺いたいところですわね。」

 

耳をひよこを握るように優しく(笑)掴まれながら制服を再び着ると再び抱き締められるように身体ごと捕獲されソファーに座らされる。逃げ場はない。

 

手に持っているのはドライヤー。今度は灼熱地獄のはじまりです。

腰ぐらいまで伸びた髪を余すところなく熱される。

 

「ドライヤーだけではなくブラッシングも必要ですわね。」

 

棘のようなものが沢山ついた拷問器具?が髪の毛に押し当てられ、そのままそれで何度も髪の毛を上から下まで擦られる。

お嬢様から地獄の獄卒に転職したらしい。涙。

 

「普通にさらっさらですわね。艶も申し分ないですし。何かなさってるのかしら」

「洗ってるよ~……たまに」

「乙女の殆どを敵に回す解答ですわね……何もせずにこれということはわたくしが手をかければそれはもう最高の髪になってしまうのでは……末恐ろしいですわね♪」

「何でもいいからさっさと解放せよ~」

「いいえ、少なくとも後30分ほどは貴方の釈放は有り得ませんわね♪」

「おうぼうだ~」

 

 

「はい、もうよろしいですわよ」

 

散々に髪や身体をセシリアの手で凌辱され、解放されたときには既に精根尽きていた。

 

「ふひ~。」

「これからしっかり手入れをすれば更なる美が期待できますわ♪それはもう恐ろしいほどに」

 

自分のことでもないのにセシリアは何故かノリノリだった。

よっぽど俺を凌辱するのが楽しいようだ。ぐすん。

 

 

 

 

 

 

 




ぶえのすあいれちゅ('ω')

主人公とセッシーがいちゃいちゃしてるなか一方いっち~は箒さんに一方的に木刀で殴られていた(・ε・)
でもきんいろのあくまはこわいからトントンかも(*・ω・)

動じない主人公むずかちい。

イギリスブランドって大体駄目かイマイチになってない?(・ε・)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。