柔らかな光の射しこむ感覚に眼を開けると同じベッドで寝ている男の姿と温もりが。それも抱き締めるようにして眠りに落ちていたようです。
……そういえば今日から寮生活でしたわね。
それにしても目が覚めたときにすぐ傍に誰かが居てくれるというのがこんなに甘美な感覚だったとは思いもよりませんでした。
3年前突然の列車事故で両親を纏めて亡くして以来わたくしは両親の財産や立場狙いの不心得共の相手に心を擦り減らしながらずっとえも知れぬ孤独感を抱え続けておりました。
完全に天涯孤独の身だったわけではなく、まだ付き従えているメイドや執事など従者の皆様方はおりましたが。例え彼等がまごうことなき味方だったとしても、いえだからこそ、わたくしの弱みを晒したり心配をお掛けするわけには断じてゆきません。何故ならば彼ら彼女らこそいざとなれば貴族であるわたくしが身を投げ捨ててでも守らなければならない領民であるからです。
わたくしが例えまだ15の小娘に過ぎないとしても、わたくしには貴族として家を領地をそして何より其処に住まう民を護り導き繁栄させなければならない義務がある。それはわたくしがオルコットの家長として神に与えられた運命なのです。年齢や経験不足などその前には全て些事であり言い訳になどなろう筈もない。
ですがわたくしが今いるのは英国からは遠く離れた極東の同盟国の学舎。ここではわたくし、セシリア・オルコットといえど正真正銘ただの15の小娘にすぎません。
うふふ。ここでならば少しぐらい羽目を外しても構いませんわよね。わたくしもまだまだ恋に恋するお年頃の15の乙女なのですから♪
ベッドでぐうすかと呑気に寝ている睡蓮さん、大切なルームメイトの背中を胸を押し付けるようにして抱き締めながら、頬擦りをしながらわたくしはそう思いました。
時刻はまだ朝5時過ぎ。もうすこしこうやって幸せを味わうことにしましょう。そうですわね。具体的にはあと一時間ほど♪
それにしてもこの男昨日からわたくしが胸を押し付けてもまるで反応しないのは少しもやもやしますわね。大きさといえ形といえ手触りといえ、全てバランスの良い一流の美乳であるとこれでも自負しているのだけれど。
もしかしてお尻の方が好きだとか?それならばアプローチの方法を少し変えてみる必要がありますわね。
それともまさか男色家でいらっしゃる!?そそそそんな非建設的なご趣味はいけませんわ。彼にはたっぷり種を撒いて貰って次世代の礎としていただかなければ。この国には一姫二太郎という格言があるそうですが、やはり英国人たるものフットボールのチームが組める位には頑張りたいですわね。
万が一そうだとするならば直ちに正道なる路にたち帰って頂かなければ。その為にはこのセシリア・オルコット身を粉にして頑張らせて頂きますわ♪
このIS学園にイレギュラーとしてやってきた二人の男性。一夏さんは身長こそさほど高くありませんが、適度に引き締まった体躯、物腰、爽やかでありながらどこか芯、力強さも感じるトータルパッケージですでにこの学園でちはほやされているように思えます。
それに比べてルームメイトとなった睡蓮さんはどうか。顔のパーツや美しさは好みなどはあるかと思いますが一夏さんより上だと思います。であれば一夏さんより人気が出るのかといえばそうではない。寸分の狂いもない精密機械や人形のようなしなやかでどちらかといえば女性的かつ非人間的な美。そしてそれを後押しする腰まで伸びている烏の羽のような艶を持った黒髪。そういった美を持った外見に対してアンバランスなにやにや笑い、そして軽薄な態度。一夏さんより若干背が高いですが、ひょろひょろとした印象の細さ。ふらふらとしたゆらゆらとしたその振る舞い。それが多くの生徒に警戒感を与えているような。そんな印象を受けました。現時点で生徒の人気は一夏さんの方が遥かに上でしょう。わたくしが唾をつけている。そういった影響もあるかもしれませんが。
そして彼を語るうえで何より特徴的なのはその瞳。眼差し。目に入ればわたくしの存在事吸い込まれてしまいそうな深い深い虚無を称えた漆黒の瞳。それがわたくしの驕りも、悲劇に酔いしれていた様も完膚なきまでに否定し、そしてそれ以上に惹き付けて止むことがない。一体どれだけの修羅場を潜れば人間はこのように一切の光を吸い込み遮断するブラックホールの様な瞳になるのでしょうか。
どこまでも深い底なしの虚無を称えた目を宿した、印象的なにやけ笑いと軽薄な態度、そのアンバランスさが大衆を警戒させ、そしてわたくしを深く渇望させる。その仮面、その欺瞞を剥いでわたくしの力でわたくしの前に彼の獣の顔を曝け出してみたい。そういった、根源的な欲望。
彼の纏っている分厚いヴェールの奥の一端は今日のお手合わせで見通すことがおそらく出来るでしょうが……いえ、普通ならばわたくしが昨日今日乗り初めたばかりの素人に遅れを取る筈もございませんが……それと同時にわたくしには敗北を喫するという不思議な確信がある……彼も戦いは強いと言い切っているし……一番の問題はわたくしがそこから何を得れるのかどうか……
入学二日目の朝8時。IS学園一年生寮、食堂。
寮の部屋にはキッチンや冷蔵庫はあるので自炊も可能だが、食堂があるので基本的にはこちらを利用することになるようだ。
セシリアに頼んだらご飯作ってくれるかな。わくわく。今度試してみようかな。
大方のホテルなどと同じく朝食はビュッフェスタイルのようだ。
びゅっふぇ。ばいきんぐ。好きにして。
面倒だったのでセシリアに頼んだら、ため息をつきながらも頷いてくれた。
そして優雅に皿を二枚両手に持って戻ってきたセシリアの手の上にあるのは食パンとスクランブルエッグ、ベイクドビーンズにベーコンとソーセージというラインナップだった。
「英国的ラインナップでいいね、でもスクランブルエッグより目玉焼きのほうがよかったかな……」
え?英国の料理の評判は良くない?
そうですね。そんなことセシリアに言ったらとっても怒られそうですね。
それに朝ごはんは評判良いよ。
豆とかおいしいし。パンも至高。
まぁ学園の料理にそこまで期待はできない気もするけれど。
いくらそれなりにお金とかいろいろかかっているといってもねぇ。
白磁のような頬に片手を添えて小さくため息をつくセシリア。
「・・・・・・そういうことは先に言ってくださいまし。」
ルームメイトセシリアさんの柔らかいけど呆れた口調。
それはそうである。
でも言う。だって僕つよい。だから僕えらい。ふふ~ん。睡蓮さんですよ~。
「では明日からそれでお願いします。」
「……あしたもわたくしが給仕する前提ですのね……これでもわたくしそれなりに名の知れた名家のご令嬢であって、どちらかといえば給仕される側の存在であると自負しているのですが……飲み物は何に致しますか?」
「冷たいほうじ茶で~。」
「・・・・・・かしこまりましたわ」
客観視すれば僅かな間じと~っとした眼でねっとりと見つめられながら、セシリアはオーダーを取って振り返ると再び飲み物置き場の方へと向かっていく。
本人の言う通り名家のお嬢様なので何だかんだ奉仕の精神は骨の髄まで染み込んでいる。
一家に一台。家事から睦事までこなせる万能メイドセシリア!
好評発売中?欲しい?あ~げない。
トマトのコクのある旨味がインゲン豆にしっかりと染み込んだベイクドビーンズを食べ、それをおかずにスクランブルエッグをかきこみ、時折食パンをむしゃむしゃする。
フハフハむしゃむしゃ。
「・・・・・・お飲み物はいかがかしら?」
「もちろんもらいましゅ。」
戻ってきたセシリアがほうじ茶の入った安っぽい透明プラスチックのコップをテーブルに置いてくれる。
お洒落じゃないけどit's a じゃぱに~ずすたんだ~ど。
食パンにお口の中の水分を回収されたところでごくごく。おいちい。
そんな様を横目にセシリアも食事をしだす。ナイフとフォークで優雅に。でも速やかに。
そして紅茶がほかほかと湯気を立てていて、ときおりカップを傾ける。
「それにしても睡蓮さんは本当に手間がかかりますわね。」
「そうでもない~」
「そうでもありますわ。」
もしゃもしゃ。
食堂で俺とセシリアは隣り合って朝食を食べている。
20分ぐらいで朝ご飯を食べ終え食堂から退室する俺たちにゆらりと立ちふさがる金色のふわふわ縦ロール。
そして髑髏の髪飾り。
あの孤独なシルエットは。
「げぇっ曹操」
「ふふっ♪来ちゃった♪」
一息で滑るように間合いを詰め半月の弧を描いて振り下ろされる鎌。
セシリアが絡みついているので下手に避けるわけにもいかず、しかたないのでとりあえず白羽取りしてみる。
相変わらずその細腕から滅茶苦茶なパワーを放つのをまともに受けてしまうと非常にしんどいので食堂の床へと上から下に受け流してみる。
ふはは。今の睡蓮さんは人間電信柱だぞ~。
「床が、床がきしんでるんですけど~」
「あら、この私が一日待ってあげたというのに、挨拶にすら来ないというのは、ご挨拶♪いい度胸ではなくて?」
「そもそも居ることさえ知らなかったってば~」
「あら♪言うに事欠いてそれとはご挨拶ですわね♪それだけでも万死に値するというのに、隣に別の女侍らせてるだなんて♪」
ここで金髪縦巻ふわふわくるくるの二人の英才の視線がねっとりとぶつかり、火花を散らす。
「この背丈も胸も貧相で哀れな方はどなたですの?それだから態度だけはせめて大きく振舞おうとしてるんでしょうね。」
「え~?昔の知り合い~?」
「知り合いだなんて、いけずですわ、将来を誓い合った仲ですのに、ねぇ♪」
「それに覇王と呼ばれたこの私を背丈も胸も貧相だとは、みる目もない泥棒猫は困るわね?」
妖艶に微笑みながら、白羽取りされた鎌をぐりぐり押し込もうと一層力を籠めてくる曹操。
その姿はなんかこう。もしかして。
怒ってますか~?ぷんぷん丸?
「必要にして十分、密度があって揉み応え抜群♪ねぇ?睡蓮♪」
「え~?そうかな?そうかも?まぁ許容範囲内かも?
「ちょっと睡蓮さん?何揉んだことあるような口ぶりで話してますの?
そもそも誰ですの?この偉そうで暴力的な女は?」
鏡持ってきた方がいいかな?もしかして。 お前が言うな。
誇り高い覇王?にして文武両道あらゆる事が一流の淑女。
曹操さんだよ~?
「あら♪理解力のない女ね♪」
「なんでって~揉んだことがあるから~?」
今日も今日とて重い身体をセシリアに引きずられて学校へ通い、騒がしいクラスメイトと並んで授業を受ける。
学生の本分はおべんきょうらしい。寝たいだけ寝て好きなだけしたいことをして、戦いたい時に戦うあの日々は暫く帰ってこなさそうだった。
数学国語理科社会などの通常の授業?レベルの高い通常の授業?の合間をミシミシ破砕音を立てながら縫ってIS学園なので殺人兵器であるIS、どちらかと言えば殺エイリアンかもしれないけどを使いこなすための授業もある。
こちらの方が楽しそうだ。だがしかしそれも将来的なことであって、第一週である現在は退屈な基礎法規や基礎理論を学ぶ座学、そして基礎動作ぐらいしか行われていないのが現状だ。
「ところで織斑、お前のISだが準備まで時間がかる」
キーンコーンカーンコーンと鐘の鳴った授業終わりにブリュンヒルデのお姉ちゃんが弟くんにそう告げた。
「へ?」
「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」
期待のルーキーに対する特別扱いに騒ぎ立てる周囲のもぶ。
専用機ぐらい持ってないとねぇ。今のじだい~?やってけないんじゃないの~?どうなの~?そこんところ~?
「せ、専用機?一年の、しかもこの時期に?」
「つまりそれって政府からの支援が出てるってことで…」
「あ~。いなあ…。私も早く専用機欲しいなあ」
「え~っと?専用機?」
首を傾げる一夏くんに呆れるお姉ちゅわん。
昨日お勉強はしなかったのかな~?
「教科書六ページ。音読しろ」
キレテマス。おバカな弟にお姉ちゃんキレテマス。
ご愁傷様です。
「え、えーと…『現在、幅広く国家・企業に技術提供が行われているISですが、その一中心たるコアを作る技術は一切開示されていません。
現在世界中にあるIS2000機、そのすべてのコアは篠ノ之博士が作成したもので、これらは完全なブラックボックスと化しており、未だ博士以外はコアを作れない状況にあります。
しかし博士はコアを一定数以上作ることを拒絶しており、各国家・企業・組織・機関では、それぞれ割り振られたコアを・使用して研究・開発・訓練を行っています。
またコアを取引することはアラスカ条約第七・一項に抵触し、すべての状況下で禁止されています』…」
因みにこのIS学園には学生用、教員用含めて250機が割り当てられている。
未来への投資。大事ってこと。
ついでに男も乗れるし、より純粋で軍事的に近いMSは5000機ぐらいで調節されている。
2対5で覚えましょう。
「本来なら、IS専用機は国家あるいは企業に所属する人間しか与えられない。が、お前の場合は状況が状況なので、データ収集を目的として専用機が用意されることになった。
理解できたか?」
よかったね~モルモットさん。
もるもる。もるもる。
「な、なんとなく…」
まぁそういう建前なんですけどね~。
兎さんカスタムなわけだし。
「あら♪別にわたくしも専用機を持っておりますから、心配はなさらないで結構ですわよ?
むしろハードルが一つ縮まったことを喜びになっては如何かしら、お猿さん♪」
「・・・・・・さいですか・・・・・・はぁ・・・・・・」
どうにもいっち~はセシリアの物言いや立ち振る舞いが気に入らないようだ。
箒changより上品だと思うけどな~。
まぁ箒changも武の心得を感じる所作だけどね~。
今日のお昼は地元の三浦半島産の新玉ねぎと葉山牛の挽き肉とにんにくの入った生パスタのボロネーゼだ。
トマトの爽やかな酸味と新玉ねぎの甘味、そして上質な挽き肉とにんにくの癖は少ないのにしっかりとした旨味のあるコク。
これが三位一体のマリアージュです!まぁマトンみたいな野趣味あるのも睡蓮さんは大好きですが。
そんなことを思いながらくるくるフォークです巻き。南無。
「そういえばボロネーゼみたいな曲あったよね~クラシックなピアノ曲に~?」
「……それはポロネーズですわね……というか睡蓮さんは弾けますわよね?……」
品を失わない程度に器用に首を振って呆れオーラ。
「まぁセシリアよりは~?」
「ぐぬぬ……まぁ認めざるをえませんわ……」
「ある時はピアニスト、ある時はさすらいの人斬り、ある時は学生、ある時はエイリアンキラー、そしてまたある時は名家の当主、あまたの顔を持つ男とはこの柳生睡蓮さんの事よ~はっは~」
「前世紀に起きた2つの大戦前後より、この世界には2つの大きな陣営があります。今からその二つの概略を説明していきます。」
お行儀よく静まり返った教室に副担任の巨乳ロリハッピートリガー教師の甘ったるい声が響く。
歴史みたいだがISの授業の駒の一つだ。まぁISという強力兵器を扱うようになる以上軍に属したり、関連したりすることも多くなるだろうし、世界情勢を知っておくのも大事なことというわけだろう。
睡蓮さんは争いの中に飛び込んでみたり、引っ搔き回したりしてみたりなんかしてみちゃったりして実践して学ぶのも大事だと思いますけどね。
ふふ~ん。
「一つは大日本帝国、大韓帝国、大清帝国の三国によって成り立つ東亜三国同盟、大英帝国と旧英国の植民地を基本とした英国連邦、そして北欧スカンジナビア半島を中心としたデンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの4ケ国。
この3つが主として結びついたものが大連合、皇国連合などと呼ばれる集合体、同盟であり、象徴的な国家元首に王や皇帝を据えているのが特徴です。」
「もう一つは、アメリカ合衆国、ソビエト連合、フランス、ドイツ共和国を中心とした大陸協商、大陸連合等とよく言われている集合体、同盟になります。
特徴としては一つ一つの国家の面積が大きいことが多く、どちらかといえばランドパワー重視の国家が多いことが特徴となります。また、同盟国家同士が内陸で繋がってることも多いです。」
1936年から起きた二次大戦は概ね痛み分けのような形に終わったが、大陸連合は強かった、特にお米の国の生産ぱうゎ~は凄かったようだ。
お米チート。はんぱない。でもわが帝国もがんばりまちた。
ふわぁ。
おっかないブリュンヒルデの授業でもないし一層好都合。そろそろおねんねしようかな。
さりげなく隣をみると入試次席で真面目なセシリアがジト眼で見つめてくる。
もしかして。おこ?
「起立。礼。」
授業と最後のSHRが終わり放課後になった。
今は教師がやっているがクラス代表が決まったらこういう挨拶もクラス代表がやることになるようだ。うひ~絶対やりたくない。
「今日は放課後アリーナを借りてISの訓練をするんですわよね?」
「うん。」
「では早くアリーナへと向かいましょう。着替えもありますし。」
「そ~なんだ~」
何時も頭につけている青いヘッドドレス辺りを中心にして星が舞い散っていそうなるんるん気分のセシリア。
放課後は開放的。授業は長くてだるいよ。
覗きたければ覗いてもいいんですのよ?うふふ♪と言いながらアリーナに併設されている更衣室に入っていくセシリアを見送る。
ISの操縦は基本的にスクール水着みたいな見た目の特殊な耐衝撃耐圧スーツに着替えて行うのである。
そしてIS学園は本来女子高なので当然ながら男子更衣室はない。
別に俺は着替えないからいいんだけども。
ふぁ~拘り性で見栄っ張りなセシリアのことだから着替えも結構かかるんだろうな~。寝ちゃお。
まぁ外面気にして見栄を張らなければいけないのは貴族の魅力なんですけどね~
「睡蓮さん、お待たせいたしましたわ、ってみっともない恰好は止めてくださいまし、着替えも持ってないんですわよね?」
「そうだよ~?」
「わたくしの手間を増やさないためにも、わたくしの体面を保つためにも、今すぐ立ち上がって頂けませんこと?」
「あいあいさ~」
「立ち上がったらそのまま後ろ向きにおなりなさい」
「うぃ」
更衣室の前の地面に寝っ転がってうとうとしているとISスーツに着替えてきたセシリアがやってきた。
そして視線で無言の圧力を掛けられてしかたなく立ち上がる。
そしてセシリアがぱんぱんと手で土埃や砂埃を払っていく。
「はい・・・・・・もうよろしくてよ。というかなぜ睡蓮さんはまだ制服を着ているんですの?着替えの時間は差し上げた筈ですけれど。」
「…………もしかして、制服のままISに乗ろうとしてらっしゃいますの?」
「そうだよ~」
「ISスーツというのはISによってかかる負荷から己の身を守るためにあるのですが・・・・・・Gや衝撃の保護はどういたしますの?」
「そんなやわな鍛え方はしてないからね~」
「…………人間離れしてらっしゃいますわね・・・・・・もしかして単細胞生物ですの?」
「えっへん。」
「どちらかといえばわたくし呆れておりますわ。」
セシリアに呆れられながらアリーナへ。ISを展開してもぶつからない程度の距離を開けて向かい合う。
「睡蓮さんの専用機がどのようなものなのか、気になりますわね。」
「はるさくら(春桜)」
俺がイメージをコールすると共に身体の部分部分に機体のアーマーが装着される。
この、特定個人に調節された専用機と呼ばれるISは主に身体につけたアクセサリーなどから音声やイメージで量子展開出来るのは兎さんの頑張りの成果である。
そしてこの展開を刹那の間に行えるようになるのは搭乗者の頑張りである。そして意志持つ機体とのコミニュケーションの成果である。
白を基調とした機体に至る所には桜の花びらが舞い散るようなペイントが施されていた。
手にはひとまずビームと実弾を撃ちわけられるアサルトライフルを握っている。
「まぁ。メルヘンチックで美しい機体ですのね。機動性も高そうですわ。」
せっかくだから、ファンシーでお洒落な見栄えのいい機体を目指しました。
白装束は死に装束でもあり、返り血で赤く染まるとそれはそれでお洒落である。ぐへへへへ。
「だろ~?」
「それでは睡蓮さん、わたくしの機体もご覧あそばせ?」
セシリアが手を横に突き出すようにすると、2Mを超えるスナイパーライフルスターライトMK3を構えた青い流星のような機体がそこには纏われていた。
「それが第三世代兵器試験機体、ブルーティアーズか~。大英帝国の試作兵器、言葉だけで熱くこみあげてくるものがあるね。~」
防御性能はあまり高くなさそうだが、その分機動力とロングレンジなライフルの火力、そしてブルーティアーズの名を冠した自立機動兵器は実力者が使えば脅威になるといえるだろう。
機体のお披露目を終えると、お互いにある程度の高さまで高度を上げて距離を離し、再び向かい合った。
「さて、そろそろ始めますか。」
「レディーファースト、先手は頂きますわ♪」
その手に握られたスナイパーライフルから放たれる光の槍を半身になって躱すと共にビーム射撃フルオートにしたライフルをセシリアの回避方法を限定するようにばらまく。
「ところがどっこい」
セシリアがスラスターを巧みに吹かして避けながら、放とうとする続けざまの第二射、第三射に合わせてもう少し火力の高い単発式に切り替えたビームを直撃させた。
「くっやりますわね、まさかわたくしが先にダメージを負いますとは。」
身体の捻りとふわふわする半重力制御でセシリアの射撃を躱しながら、様子見をしていると、ダメージを負いながらもBT兵器が分離され、こちらを取り囲むように展開されんとするのを感じる。
ビット兵器の操作には高い並列処理や集中力を必要とするが。さて。目の前の誇り高く、負けず嫌いの少女はそれを持ち合わせているのだろうか。
現在のセシリアの座標めがけて腰に取り付けられたレールガンを試し撃ち。その後再び連射式に切り替えたビームライフルを連射してみる。
果たして。やはりまだ問題点はそれなりにのこっているようだ。
ビームよりは若干弾速の遅いレールガンはなんとか回避したようだが、ビットの操作に追われ疎かになっている機動を連射式のビームの雨霰で狙い撃ち、直撃させていく。
まぁ連射式だし、訓練ということで更に出力は下げているから大したダメージは与えられてないが、彼女の高いプライドには多大なダメージを負わせているだろう。
「……っでもここからはわたくしのターンとさせていただきますわっ」
「ビットか~」
妨害を受けていくらかのダメージを負いながらもセシリアの展開した4基のビット、機体の名となっているブルーティアーズが俺の全周を取り囲み、至る所から射撃を繰り出してくる。
ビットのサイズではそれほど強力なレーザーを放つことは不可能だが、死角からも含めた同時複数の多角的射撃はそれなりに脅威だといえるだろう。
そして何より英国令嬢の忠実な従者であるビット相手に意識を割けば、強力なレーザー攻撃を持ち精密射撃と射撃速度両方に長けた優秀な狙撃手、華麗なる蒼きご令嬢セシリア・オルコットの射撃が一層脅威になるわけで。
「ぶ~ん」
「これがわたくしのオールレンジアタックですわ♪わたくしと奏でるワルツを踊ってくださいまし♪」
「踊れ~死のダンスだ~」
山よりも高いプライドを傷つけられながらも、代表候補生に上り詰めたその実力の本領を発揮したセシリアが全方位から放つレーザーの雨霰。
前方のビットから誘いの射撃が、それを躱せば死角となる位置のビットから狙い定めた射撃が。
そうしてこちらの機動を制御しながら偏差射撃も活かして槍衾のようにセシリアのスナイパーライフルから強力で弾速の早いレーザー射撃が飛んでくる。
多撃必殺。
そう。おそらくこれこそがセシリア・オルコットが磨きぬいた大国英国の代表候補生に押し上げた強烈な三段攻撃。
俺は分析という名の様子見をしながらPICを利用してふわふわと漂いながら躱してゆく。
セシリアが集中を乱しすぎないように時々こちらからも単射と3点バーストの射撃を織り交ぜ、彼女に誘われたワルツにアクセントをつけながら。
彼女のような英国令嬢のお眼鏡にもかなうようなワルツを踊って見せないとね。
セシリアの機動は舞うように。
時に大きく、時に軽やかに。
フェイント以外で停止することは一度もなく、そして同時に思考が分割されて制御の難しいビットを4基を同時に操りながら。
そして攻撃は鋭く。絶え間なく。徹底的に。
俺の周りを多次元的に飛び回る4基のビットとその手の内のスナイパーライフルを途切れることなく、狙い澄まして、そして連動的に、熾烈に撃ち込んでくる。
そうして俺たちはお互いに一度の攻撃もヒットさせないままゆっくりと円を描くようにくるくると踊り続けている。
分析結果。ビット展開時にはまだまだ問題があるようだけど、それ以後の攻撃は及第点といえるかな。
ちょうど今の経過時間は4分弱、ここが舞踏会ならば優雅にくるくる一曲踊り終えましたというところだろう。
後は高い集中力を維持し続ける必要があるこの攻撃をどれぐらい持続させることができるかどうか。
このプライドの高い、そしてそれに見合った実力を持とうとする、彼女のようなノーブルレディーならまさか短時間しか踊れないということはないだろうが。
体力と意地と誇りに掛けて。意地を維持。クールだな。
「くっ……どうして当てられませんの?……一度たりとも……機動が追えないわけでもありませんのに……」
踊り始めてから10分程たったころ、未だに攻撃を当てられないセシリアが呟く。
彼女の新雪のような肌には玉のような雫が幾筋も浮かび、時折光を煌めかせながら上気したそのしなやかな躰を垂れ落ちていく。
成果の出ない行動を続けるのは疲れるものだ。それがオールレンジのような脳に負担をかけるものならより一層。
「あ~ま~いろいろあるけど?攻撃の狙いが正確すぎるから~?とか?」
「正確すぎる?」
焦れながらもスターライトが今また狙い撃たれるのを感じながら、円を描くのを止めてライフルを量子変換しながら瞬時加速、瞬く間にセシリアの懐に入り込みながら抜刀。
さぁ。中遠距離からテンポを上げての近距離戦これは対処できるでしょうか。
「逆風の太刀」
振り上げた刀を袈裟懸けに斬り下ろし、返す手首で逆袈裟で切り上げての二連撃。
「きゃぁっ」
急激な状況の変化でどちらも対処できなかったセシリアがまともに食らってシールドエネルギーが尽きて決着。
くぅ~疲れました。これにてお手合わせ終了です。
かき混ぜられた後の事とはいえ来週の勝負を考えると接近戦への対応には若干不安が残りますね。
「…………くっ…………参りましたわ」
敗北に項垂れながらも、敗者の責務として敗北を認めるセシリア。
「まさか、最近使い始めた筈の人間に敗北するとは……それもここまで無様に……」
「戦いはそれなりに強いって言わなかったっけか~?お前が弱いんじゃない、俺が強すぎるんだ。」
「……くっ……様になっておりますしこうまで敗北すると何も言い返せませんわ」
「なんちゃって。」
必要以上にボコボコにしちゃったかもしれないけど。
これから3年間互いに切磋琢磨するルームメイトと、今の実力を互いに知り合うというのも大事ですからね。
その方がいろいろこれからやりやすいと思われる。現時点を知るのが上達に大事。
特にセシリアプライド高いし。
「疲れた死にそう。」
そうは言いながらも腕を差し出してお手合わせの後の握手。
ノーサイドの精神。
アリーナのベンチ群にもどって休憩。
夏ならもちろんクーラーの効いた屋内の方がいいけど、この春の陽気なら開放的な屋外もいいでしょう。
「このわたくしのプライドをここまで無残に打ち砕いて下さったのですから、何かそれなりの対価だとかご指摘はもらえるんですわよね?」
そのセリフとは裏腹上気した顔で微笑みながら、何やら楽しそうなセシリア。
正直不気味です。はい。ハイってやつ?
アリーナのベンチにお淑やかに座るセシリア。
そのすべすべでありながら汗でしっとりとしたしなやかな膝の上に頭を乗せ、ぐで~と横たわっている俺。
うひ~疲れた。おうち帰って寝たい。ぐで~。
「わたくし今少々汗ばんでおりますし……その……気になりませんの?」
「何が?」
何が気になるのか顔を一層赤らめるセシリア。
「その……これ以上はいくらルームメイトといえど、流石に乙女として申せませんわっ!わたくしも乙女の端くれでございますのでっ」
どちらかといえば中心ではないのだろうか。知らんけど。
「ん~ま~の~ぷろぶれむ~かたいベンチよりはよっぽどいいし~」
「わたくし今少しイラッとしましたわ。このままそのかた~いベンチと抱擁して頂くことも検討いたしますわ。」
「なして~やめちくり~」
負担の多い戦術を続け、さらには何の成果も得られなかったセシリアには疲労の色が濃い。
「まさかこのわたくしがただ負けるにとどまらず、1ダメージも与えることができないとは……」
まぁビットを利用してある程度細かく手数の多い攻撃ができるとはいえ散弾とか爆発系兵器とか見なかったしなぁ。
「でもこれしきで挫けてしまうようなわたくしではございませんの」
「もう一度、もう一度お願いいたしますわっ!」
「……えぇ~?」
「それでは敗北を認めますのね?スタミナでわたくしの勝ちとお認めになって?それにわたくしにもお見せしてない手札はございますのよ?」
はたしてそれはここで開示していいものなのだろうか。
「は~元気だね~」
「たとえ力及ばず敗れたとしても決して折れず、何度でも立ち上がり克服する。それもまた強さであり、持つべきものの責務でもありますわ。」
「あ~ま~アリーナの使用終了時間までは付き合いますよ~もっとISの戦闘に慣れたいのも事実だしな~でも倒れたら介抱よろしく~」
「ご心配なく。ルームメイトとして御奉仕の責務は余すところなく果たしておみせいたしますわ♪」
「……ほいじゃ~ま~やりますか~」
セシリアのお墨付きをもらったので再び両端に分かれてアリーナの空へと飛び立つ。
「次からは普通に接近戦も最初から織り交ぜるよ~」
「望むところですわっ睡蓮さんも油断してるとわたくしに堕とされてしまいますわよっ」
ない。それはない。
そうして時折休憩をはさみつつも、アリーナのレンタル時間終了まで数時間俺たちはみっちりと訓練をしたのだった。
「うひ~じがれだ~。じぬかとおもっだ~。」
「睡蓮さんは体力不足ですわね。」
「ところでわたくしのブルーティアーズは如何思われましたでしょうか?」
「そうだな~一言でいうと格下狩りの機体かな~。」
「それはどういうことですの?…………確かにブルーティアーズは実戦のための機体ではなく、BT計画の先行実験機ではありますが」
やはり自分に与えられた機体に対する愛着は深いのか俺のいうことに少々むっとしたセシリアが問いかける。
「ビット打ち出して包囲攻撃といってもある程度の実力者相手には通用しないだろうね、現に今日だって一回も当たらなかったっしょ~?」
「ぐぬっ……しかしそれは認めたくありませんがわたくしの実力の問題ではありませんでしょうか?」
「ん~まぁ全くそういう要素がないかと言われたらあれだけど、そもそも背後だから見えないとかそういう生半可な死角はある程度実力積んだら対処されちゃうからね~」
「そういうものでしょうか…………」
「それにまぁあのサイズのビットのレーザーじゃぁ多少喰らったところで現状大したダメージ出ないだろうしね。」
「……それは従者であるブルーティアーズを牽制にしながらスターライトMK3で大ダメージを与える戦法で戦いますわ?」
「それはそうと、それって試作機じゃないの~?」
「睡蓮さん、学園の生徒の使う専用機はほぼ試作機ですわよ?・・・・・・まぁティアーズはそのなかでも特にBT計画進歩のためのテストベッドという趣が強いのは確かですけれど」
「BT計画ね~目のつけどころはまぁ良さそうだけど~」
「なんにせよ、これからも睡蓮さんと訓練を積めばまだまだわたくしも強くなれる伸びしろは沢山ありますわね♪」
セシリア、腰に両手を当てて胸を反らしたいつものポーズで謎のドヤ顔。
「ま~強くなってもらったほうがルームメイトとしても助かるかな?」
「それでは睡蓮さん、これからもご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたしますわね?」
「手取り足取り、なんなら腰とりでもよろしいんですわよ?ふふ♪」
くねくねし始めるセシリア。触手の様だ。
「随分と腰が低いね。」
「あら、今勝てそうにないのだったら大人しく教えを乞うていつか勝てる日までの糧にする方がはるかに効率的ではなくて?」
「ま~そりゃそう。さすがだな~セシリアは」
「それにしても実験機とはいえ遠距離管制戦特化過ぎて今の時期に使うには可能性をスポイルする感じであんまりおもしろくないな~」
「ま~実験機でありながらどちらかというとスタジアムより一対多、多対多を意識した実戦的機体ですとも言えなくもないけど~」
「う~んそうだな~この際だから機体のほうも弄ってみる?」
ぶつぶつ呟いている間じと~っとした視線で眺めているセシリア。
「……貴方もご存じだとは思いますが、開発企業及び国家の承認を得ないとわたくしの一存で決められることではございませんわ?」
「それならま~なんとかしよう」
「なにをなんとか致しますの?」
「ん~そうだな、明日の放課後にはNEWブルーティアーズをお披露目できると思うから、予定空けといてね~ま~もし気に食わなかったら元に戻せばいいし」
「Wait」
手を伸ばしてきたセシリアが俺のほっぺたをつまむとそのままぐにぐに動かしてくる。
「う~わ~や~め~ろ~」
「……ふふっ♪とても柔らかいんですのね♪マシュマロみたいですわ♪」
「て~を~は~な~せ~」
ぐりぐり。
「ちなみに接近戦は?」
「わたくしとて良家の子女、一通り嗜んではおりますわよ?」
「なるほど。おそらくいっち~の機体は接近特化だろうから、それについても考えたほうがいいかもね。」
「…………わたくしが初めて一週間の素人に、そこまで苦戦するとおっしゃいますの?」
「見てもないうちから憶測で相手を侮らない。覚えておいたほうがいいぜ?」
「それにあの男、世界一の姉に幼馴染の家は古武術の宗家、あぁ見えて結構なサラブレッドだぜ?ついでに改造人間。」
「乗り掛かった舟なので機体の改造許可については俺のコネでなんとかします。」
「そんなことが?」
「ま~ね~馬鹿と鋏は使いようってわけで~なんとかなるとおもうよ~」
食堂で夕食たいむ。ふひ~。体動かしたしおなかすいたでよ。
「わたくし普段はあまり夕食は頂かないのですが、流石に今日は普段より食べても良さそうですわね。」
「くう~ねる~やる~これ強くなるためのえんどれすわるつ~じゃんっ♪」
「折角ですから、今日は和食に挑戦してみようと思うのですけれど、睡蓮さんは何がよろしいと思いますか?」
「ん~季節の三重御重とかは~?色々な種類の料理を食べられるし、お嬢様らしさもあるんじゃないの~?」
「あら。わたくしのイメージも気にしていただけるとは、光栄ですわ。」
「ま~食べるのが面倒だから俺は嫌だけどね~」
「めんどくさがってはいけませんよ。……睡蓮さんは何になさるのです?」
「ん~。葉山牛のフィレステーキ定食大盛りかな~」
「では頼んでおきますから、いつも通りに席を取ってきてくださいまし」
「りょ~かい~」
列をふらふらと抜け出して食堂をふらふらと。
「お、いっち~と箒いた。ここいい?」
「あぁもちろん。」
「……まぁいいぞ。」
ということで席に座る。ふひ~。
「今日は道場でちゃんばらやってたんだって?」
「チャンバラって……いや普通に剣道の手合わせだけど……まぁチャンバラともいえるのか?」
「いや全然違うだろう。」
ばっさり斬り付けてくる箒chang。
「あ~剣道って重たくて前も見えないような防具つけるんだっけ?」
「そんなに重たくないし、前も普通に見えるけど、まぁそうだな。というか睡蓮はやったことないの?剣道?」
「ないね~」
「……竹刀を開発したのって柳生の一族じゃなかったか?」
首を傾げながら問いかけるいっち~。
「ぶっぶ~、でも当たらずとも遠からず?」
「そうだっけか。悪いな。」
「袋竹刀を開発したのは上泉伊勢守秀綱と言われているな。」
正解を答える箒chang
「ぴんぽんぴんぽ~ん。」
「あ~っと、新陰流の創設者の人だっけ……?」
「ぴんぽんぴんぽ~ん」
「睡蓮さんお待たせいたしましたわ。あら皆様ごきげんよう。いつものメンバーになりそうですわね。何のお話をしてらしたの?」
豪華そうな黒と紅の漆塗りの御膳とステーキの皿を持ってやって来るセシリア。
因みにIS学園の食堂で最も高いメニューの一つである。
「いや剣道大会全国優勝者である二人が放課後道場でチャンバラもとい剣道をしてたっていう話から剣道やったことないな~とか竹刀のこととか」
「剣道というと、剣で戦うのですか?JUDOのような?」
「まぁ大体そう。」
「やっぱり柔道はオリンピックとかで普及してるけど剣道はそんなに知られてないんだな~」
しみじみといういっち~。
「それにしても睡蓮が剣道やったことないのすげ~意外だな」
「でも人間は斬れるのでセーフ。」
「いや普通にアウトだと思うぞ。心技体っていうし。」
「だって防具重そうじゃん。動けなくなりそう~。」
「確かに睡蓮はすごい細くてひょろひょろしてるように見える……かな?」
「いやでも確か甲冑なんか30KGとか余裕で越えてただろ。」
「介者剣術ってやつだね~。」
「やっぱり睡蓮はそういうのも出来るの?」
「ん~無理。防具ごと纏めてぶった斬ったり、中の人間だけぶった斬ることなら出来るけど~。」
「……その方がよっぽどすごいだろそれ……というか最早人間離れしすぎてないか?」
「むふ~」
「私は介者剣術も出来るぞ。もちろん篠ノ目流のだが。」
「ひゃっは~。さすがだぜ~。」
「それにしても、睡蓮、前から思っていたが何時もセシリアに皿を二人分持ってこさせるのはどうなのだ?むしろ男としてお前が二人分持ってくるぐらいの気構えを見せるべきではないのか?」
「あら、箒さん。お気遣いは有難いですがお構いなく。それにただでさえしょっちゅうふらふらしている睡蓮さんにお皿を持たせて歩かせると、何が起きてしまいそうで怖いですもの。」
「適材適所というやつですわ。箒さんも先を見て動けないのでは一人前の大和撫子とは言えないのではなくて?」
「ぐっ!お前に言われる筋合いはないぞっ!」
「セシリアも戦いでもそれぐらい先が読めるようになればね~」
「睡蓮さんの精度と能力がどう考えても異常ですわよ、まさかあれだけ撃って掠りもしないなんて。というか、流石にもう少し否定の言葉もあってもよろしいんじゃありませんの?」
夕食後睡眠前ののんびりタイム。
大きなソファーに二人並んで腰かけ、セシリアが勉強をしたり、本を読んだり、BT兵器の脳波操作のトレーニングをしたりするのを、
俺は隣でぼ~っと眺めたり、ゲームや漫画で暇つぶしをしたりしている。
これがお嬢様とそうでないものの差。歴然とした差。
時折じと~っとした目をセシリアに浴びせられながら、入学二日目の今日も俺は非生産的な活動や怠惰に耽っている。
そして不意に思い出しました。
「お~そういえば~」
「何ですの?」
放課後ISの改造等について考えたこともあってそういえば入学の連絡を入れ忘れていたことに気づいた俺は通信機のスイッチを入れることにした。
通信をONにするとにゅっと現世に映し出されるファンシー且つとっ散らかった部屋とそしてその部屋の主であるうさ耳アリスちゃんのホログラム。
アリスといっても格好がそんな感じの可愛らしさなだけで、髪の色はブロンドではなくあずきバーみたいな色である。
「あ~!蓮くん蓮くん!やっぱり忘れてたね~!!入学したらその日の内には連絡するように言っておいたのに~!!!
この薄情者め~!うりうり~!!!」
「誤差24時間なので~。せ~ふです~。」
「アウトだよ~!!!ぜ~ったいアウトなんだからねっ!!!」
相変わらずテンションが高い。凶器。だからあずきバーみたいな髪の色なのか。そうなのか。もとい狂気。
そして突然寮内に広がった別の部屋とふしんしゃのホログラムに目を丸くしていたセシリアが復活してコミュニケーションを取り始めた。
「貴女はもしかして・・・・・・篠ノ之束博士ですの?本当に・・・・・・?
まぁ水蓮さんなら驚きすぎるほどの事でもないかもしれませんが・・・・・・これほどの技術力を今まさに見せられているわけですし。」
「そうだよ~」
「あ、そうだ、これあげる~」
「なんですの?」
「手のひら出して~」
「ええ。……あら……こちらは?」
制服のポケットに突っ込んでいた中央にサファイアの嵌め込まれた銀細工のペンダントを握り掴むとセシリアが出した手のひらに向けて投げ落とす。センターを狙ってシューッ。エキサイティンッ。
「はいこれお守りだよん。眼が蒼いし蒼も好きそうだからサファイアにしてみたけど~。」
「サファイアは好きですが……殿方が女性に贈り物をするのだからもっとムードというものを考えては頂けませんの?」
そのパウダースノーの新雪のようなほっぺたをぷく~と膨らませるセシリア。
「ムード?ま~何でもいいけど身の危険が迫ったときにそれに向かって念じるとご利益がある仕組みになってるから肌身離さず、外出時は特にきちんと持っててね~いいことあるよ~」
「……文字通りお守りというわけですわね……」
「でもこのような曰くを付けなくてもわたくし貴方の贈り物なら喜んでいただきますわよ?」
「?とにかく付けといてね~」
なぜか頬を赤らめてくねくねしているセシリア。おもしろい。
人気の簪chang の喋りわかんね~o(^-^o)(o^-^)o
最初の一週間も全然終わらないンゴ(´・ω・`)