戦前爺のウマ娘珍道中   作:越後屋松之進

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往生した後、ウマ娘世界

仏教において、人は死を迎えた後に六道を辿るという。輪廻転生が存在するとならば、人間道に生を享けたいものだが

 

「これは如何なることだ?」

 

性別は女、しかも耳が頭の上にあり、尻の上部に尻尾がある人間とは、予想だにしない事態である。人間道か畜生道か、五里霧中だ。

 

そのように考えつつ、今生の母から乳をもらいつつ判明したことは

 

「此度の世にはウマ娘なる存在があり、自分と母がそれに当てはまる」

 

という数奇な結果であった。恐らく人間道に近いと思われる。

 

まず、馬が存在しない代わりにウマ娘がいて、それらは全て女性であること。次に、ウマ娘にはウマ耳と尻尾があり、頭の上に一対のウマ耳、尻の上部に尻尾という外見である。無論、ヒトである女性と男性も存在する。

相違点は外見だけでなく身体能力に関しても存在し、ウマ娘は筋力と走力においてもヒトの女性どころか男性も凌駕する強さを備えていることが判明した。揺り籠に横たわりながら見ていると、母が両手に米袋を持って台所を行き来しているのだが、どう見ても一俵分の量を片手で苦も無く運んでいるから驚きである。などと言いつつも、自分も生後すぐに立ち上がって歩けたのだから、奇妙な心地である。

 

驚いたことはこれだけではない。テレビを見ていると競馬の馬が全てウマ娘に置き換わっていた。走る速度も前世の馬と変わらず、恐ろしいほどの迫力がある。さらに男の賭博である競馬が、国民的な娯楽に変わっていたことに愕然とした。観客を見ても女性客や若者が多く、タバコを咥えながら新聞片手に罵声を飛ばすような中年男が見当たらない。実に健全な雰囲気である。なお、テレビを凝視できたのは父が膝に抱えて座らせてくれたお陰であるのだが、テレビの見させ過ぎだと母に小言を言われていた。

 

そう言えば、名前に関しても目を剝くような気分だった。ウマ娘の名前は母親もしくは近親の者に

 

「三女神から授かる」

 

というらしく、一般的な親や縁戚が考えて名付けるのではないらしい。自分も生まれてすぐに母親から言われた三女神謹製の名前は

 

「ハルナコンゴウオー」

 

という女子には少々似つかわしくない勇壮な響きである。加えて、ハルナにコンゴウとは、あたかも軍艦の艦名ではないかと三女神に文句を言いたい気分だった。しかしながら、名付けられた以上は受け入れて、ハルナコンゴウオーという一人のウマ娘として生きていこうと決心した。

 

ところで、前世の長兄が戦艦榛名の砲手であったことを三女神は感知したのだろうか?全くもって奇妙な巡り合わせである。

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