戦前爺のウマ娘珍道中   作:越後屋松之進

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二人のウマ娘

尋常小学生もとい小学生になった。前世から数えて96年振りの小学校生活である。保育園ならびに幼稚園は通ったことが無かったので最初は新鮮な体験であったものの、戦前生まれの男にとっては精神的に苦痛であった。お遊戯などは二度とごめんだ。などと言うものの、抑留に比べたら遥かにましであるので、辛抱しつつ過ごした。

 

さて、小学生になると自由に過ごせる範囲が増えるので、今後の将来について探っていこうと思ったのである。百姓の子は百姓に、軍人の子は軍人に、という風潮が無いので、好きな職へ就けると心が弾む。ついぞ通えなかった高等学校へ入学するも良し、防衛大学校へ入学して大将目指すも良し、と夢を膨らませていた。ただ、前世で所縁の深い満州には再訪したい気分である。

 

入学式も終わり、教室に入るとヒトの男女に混じってウマ娘が数人いる。日本は世界有数のウマ娘人口を有するが、それでも人口比で約一割である。遠巻きに見ながら考えていると、こちらに気が付いたウマ娘に声を掛けられる。

 

「ねえねえ!名前なんていうの?」

 

「自分はハルナコンゴウオーだ。」

 

「へぇ~ハルナちゃんと言うんだ!これからよろしくね!」

 

「ああ、こちらこそよろしく頼む。」

 

「・・・ん~、ハルナちゃんは面白い感じの子だね!」

 

「特に剽軽な振る舞いはしとらんぞ、極々普通に過ごしている」

 

「ふふっ、これから楽しくなりそう!」

 

妙に気に入られたことを不思議に思いつつも、彼女は友人のウマ娘を呼んで紹介してくれた。

 

「この子はハルナちゃんって言うんだ!すごく面白い子だよ!」

 

「紹介に預かったハルナコンゴウオーだ。今後ともよろしく頼む。」

 

「こちらこそよろしくお願いします。・・・ふふふ、確かに面白い子ですね♪」

 

彼女たちは自分の何処に面白味を感じたのかわからないが、楽しそうに喋っている。ふと、彼女たちの名前を聞いていなかったので、改めて聞くことにした。

 

「そう言えば名前を訊ねていなかった。すまないが教えてもらえないか?」

 

「いいよいいよ!そんなに畏まらなくて教えるよ~。」

 

「そうですね、せっかくお友達になれたので♪」

 

黒い髪、鹿毛のウマ娘は胸を張って名乗った。

 

「あたしはキタサンブラック!マッサージが得意だよ!」

 

もう一人のウマ娘は淑やかに名乗った。

 

「サトノダイヤモンドと申します。クレーンゲームが得意です♪」

 

入学早々ウマ娘の友人が出来たのは天佑であり、有難いことであった。今後、ウマ娘としての生き方を学び切磋琢磨するうえでは、かけがえのない存在になると感じた。

 

「ところで、ハルナちゃんの得意なことって何かな?」

 

「私も知りたいです♪」

 

確かに、二人から得意なことを紹介されたので、こちらも言うのが筋だろう。

 

「相撲と射撃だな。大工仕事も得意としているぞ。」

 

「相撲に射撃・・・?あ、あっはは~・・・ハルナちゃんはかなり面白いね・・・」

 

「うん、思った以上に面白いね・・・」

 

「そうか?相撲や射撃を嗜む人間は多いはずだ。無論、大工仕事も。極々普通の得意なことだと思うぞ。」

 

特に奇矯な振る舞いなどしていないのだが、二人は苦笑しているようだ。

 

「む~、ウマ娘としては全然普通じゃないっ!」

 

「相撲や射撃、大工仕事が得意なウマ娘は聞いたことが無いです!」

 

ここまで断言されるとは腑に落ちないところはあるものの、入学早々親密に話し合えたことは僥倖であった。今後の生活が楽しみだ。

 

だが、もう一つ腑に落ちないことがあった。自己紹介カードを書きましょうと訓導に言われて書いたのだが、知らない漢字が書いてある、漢字ばかりで読めない、文字がおかしい等と苦情が出た。これには流石に閉口した。

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