戦前爺のウマ娘珍道中   作:越後屋松之進

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本の虫

ハルウララ姉との出会いからしばらくして、不肖ハルナコンゴウオーは学校の図書室に入り浸っていた。この世界の知識、ウマ娘やレースに関して知らないことが多すぎることを痛感した。よって、図書室へ赴いて乱読することに至った。なお、両親からはパソコンの使用を勧められたが、光る画面を見続けることが苦手という理由で断った。本心では学校の図書室で本を読み尽くしたいという願望故なのである。東京帝大の医科へ進まれた前世の恩師を真似したいという下心だが。

 

さて、実際に図書室へ籠ると何から読もうか悩むのである。特に興味のある分野は、歴史とレースについてだが、幼児向けの漫画から学生向けと思われる参考書まで備えてある。これは選び甲斐がありそうだと思いつつ、以下の本を借りたのであった。

 

 

 

・学研 まんがでよくわかるシリーズ ウマ娘のトレーナーのひみつ

 

 

 

・池田書店 勝ちウマ娘がわかるレースの教科書

 

 

 

・集英社 学習まんが 日本の歴史

 

 

 

本来ならば大人向けの書籍も読めるのだが、ウマ娘という未知の分野なので児童向けの学習漫画から読むことにした。加えて、今生においても学研の本があることは幸いであった。前世で息子二人の教育に大層使用したので、見慣れた出版社の本は頼もしい限りだ。

 

帰宅してから読み進めたのだが、驚きの連続だった。まず、ウマ娘がレースに出場するにはトレセン学園という全寮制の学校に通う必要があるという。一部例外はあるものの、高等学校の如く寮生活を送ることに郷愁と憧れを感じた。前世においては高等学校なぞ上流階級や素封家、もしくは篤志家から支援を受けた書生が行くような場所であったからだ。

 

無論、入学して終わりという訳でなく、厳しい競争に晒されて落伍したものは退学になるという現実もあるようだ。その後の進路は様々であるが、確固たる決意と覚悟が必要であると思われた。いやはや、高等学校とよく似ているなと感心してしまった。厳しさにおいては勝るとも劣らずで、入学だけでも一苦労なうえに留年も日常茶飯事であったと恩師が話していた。ドイツ語で赤点を取ってドッペる、なんて零していた。

 

トレセン学園の学校生活は高等学校と同じく勉学に勤しむのだが、異なるのがレースに関する授業を設けていることだ。入学したら模擬レースや選考レースを経てチームというものに所属する流れが一般的であるようだ。そこから各地の競馬場で行われるレースに出場するようだが、メイクデビューというレースで勝つ、もしくは未勝利戦というレースで勝てなければ退学となる仕組みだ。これに関しては高等学校よりも厳しいものだと痛感した。陸軍の予備役を彷彿させるものだ。階級が上がれば上がるほど、同期は予備役になっていく。低い階級であっても、年を重ねれば予備役となる。ウマ娘としてレースを志したのだが緊褌一番、気を引き締め直す必要がありそうだ。

 

同時に、歴史に関する本を読み進めたのだが、こちらに関しても驚きの連続だった。まず、歴史上の人物がウマ娘に置き換わっていた。大化の改新で滅亡した蘇我氏がウマ娘の一族と記されていた。どうやら大陸から帰化したウマ娘の名族とされている。次に牛若丸もとい源義経がウマ娘であったことには仰天した。一ノ谷の戦いにおいて高名な逆落としは、源義経が配下のウマ娘武将達を蹴り落した挙句、数名ほどが無事に駆け下ったので逆落としを実行したという。ウマ娘の武将ということにも仰天している上に、配下を蹴り落してから自分も駆け下るという無茶は想像を超えた所業である。なお、畠山重忠が配下のウマ娘武将を背負って駆け下った場面は、妙にページ数が長く割かれていた。おまけに、かのチンギス汗もウマ娘であり、フビライ汗もウマ娘であった。元寇についても書かれていたのだが、ウマ娘が主体の元が日本へ攻めてくるなんて、恐ろしいのやら可笑しいのやら不思議な気分だ。

 

時代が下ってもウマ娘が武者であることは変わらなかったが、馬子や飛脚もウマ娘の職業として記載されていた。前世では農作業で使う馬の世話をしていたので、妙に面白い心地だ。物資を運んだり畑を耕したりする馬が全てウマ娘に置き換わる光景を想像すると口元が緩んでくる。明治になると人力車婦に就くウマ娘も出てくるのだが、同時に輜重兵としても召集された例もあったようだ。やはり戦時中を描いたページには釘付けになる。この世界も前世と変わらない歴史を辿っているようだ。満州で砲兵大尉として戦った自分にとっては感慨深いものがある。野砲を馬に運ばせていた前世と異なり、ウマ娘が運んでいた図が描かれている。そして抑留に関しても、人間とウマ娘は同じ扱いだったようだ。ダモイを待ち望みつつ労役に身をやつした日々は決して忘れられない。エラブガの大地に眠った仲間も多かった。

 

結局、借りた本は一日で読み終えてしまった。一度、読むことに集中すると読み終えるまでのめり込むのは元々の癖だ。ウマ娘のレースと日本の歴史、どちらも今生を理解するうえで大切な知識であった。だが、ウマ娘のレースや日本や世界の歴史も、より一層知りたいという欲が出てきた。学校の図書室だけでなく市内にある図書館へ通い詰めるぞ、という強い気概が湧いてきた。ウマ娘が存在するだけで、前世と今生はこれ程までに大きく異なるのか。大きな衝撃であり、また未開の地を探検するような高揚感もある。何の因果か不明だが、ウマ娘が存在する世界に転生したことは

 

 

 

実に楽しい

 

 

 

味わい尽くしても尽くせない醍醐味を発見したみたいで、実に僥倖であった。

 

 

 

 

 

 

 

余談だが、次の日は寝不足から夜ふかし気味となってしまった。恥ずかしい限りである。

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