星界の小章   作:ケンタ〜

1 / 23
ユリュアという家(ソール・ユリュアル)

 ユリュア・ボルジュ=ティエノアル・センレーニュ。それが私の名前だ。

 

 ボルジュの姓称号の通り、地上人を先祖に持つアーヴだ。ただ、肝心のその地上人は千年近く前にアーヴになった人物なので、私は黎明の乗り手の子孫の次くらいに古いアーヴの家だといってもいいと思う。

 

 当時の皇帝(スピュネージュ)から直々にアーヴの姓を賜った誇り高き我が先祖の名前は、ユ・ティエノア――アーヴふうに言うと、『ユリュア・ボルジュ=ティエノアル・ティエノア』、と言ったらしい。古い地上世界(ナヘーヌ)、ディア・スージェという惑星の出身で、反物質工場(ヨーズ)の加速器部分の開発に大きな貢献をしたという事で、アーヴになることを認められたという。

 

 当時は帝国は創建されたばかりで、皇帝(スピュネージュ)という地位も現在よりかはわずかに民に近く――千年前の皇帝の地位が低いという事を意図している表現ではないという事を、一応記しておく――我が偉大なる先祖は皇帝から直々にその地位を賜ることができた。

 

 これは我が一族の誇れる事実のひとつだ。

 

 我が母上が誇らしげに語ることによると、そういうことらしい。

 

 だが正直、私はどうもピンとこなかった。

 

 別に皇帝に謁見賜ることに対して何か疑義を感じるとか言うことでは決してない。もし私の死後に誰かがこれを発見しても、帝国当局(ルエ・ラザスィア)に報告するなどという事はやめてほしい。万が一にでも皇帝陛下(エルミタ・スピュネグ)アーヴの御耳(ヌイ・アブリアルサル)にそれが入ってしまったら、この家の数少ない誇りのひとつが粉々に打ち砕かれてしまう。

 

 まあ、とにかく、私が言いたいのは、この家が特にすごくもない家であるという事だ。

 

 我がユリュア家は、ただの士族(リューク)の一家だ。

 

 それも、何かと名前を聞くエクリュアやコリュアとも違い、特に大きくもない、分家がいくつかあるだけの小さな家だ。

 

 千年前からいたずらに歴史を重ねただけの、特に面白みもない家。

 おそらく、歴史家にとっても、この家を見ることはほとんどないのではないだろうか。

 

 たぶん、ユ・ティエノアがこの家の最盛期だ。

 

 それ以降、ただ千年もいたずらに時間を連ねてしまった。

 

 しかもさらに困ったことは、歴代のユリュア一家が同じような焦りを持ちながら、結局何も成せなかったという事である。

 一応、この家の家風(ジェデール)として、研究者気質であるらしい。なので、何かを成そうとして行動を起こしたユリュアのものは、技術系の特殊兵科、例えば技術科や造兵科として星界軍に所属することが多いらしいが、結局特筆すべき名を残せたものは終ぞ出なかったらしい。

 

 私も一応、この長い歴史を持つ家の名誉のために調べてみたのだが、いいところが造船科の提督だった。だいたい数百年ほど前の、レンファーニュという名前の女性のご先祖だったらしい。たいそう頭の冴える女性だったのだろう、と思って昔の私は心を躍らせながら調べていたのだが、当時発生した帝国の内乱のために命を落としていた。当時これを調べていた少年センレーニュは、この内乱のことを大層忌々しく思ったものだった。

 もしこの人が生きていればこの家はもう少し歴史に見合った風格を持っていたかもしれないのに、と考えたものだ。

 

 まあ、現在のセンレーニュ青年は数百年前のことなんぞ考えても仕方がないと思想を改めている。

 

 ともかく、何が言いたいかというと、我がユリュア家は大したことのない家、だという事だ。

 

 何か素晴らしい貴族がたの叙事詩が見たかった人には申し訳ないが、この日記はただのしがないいちアーヴの日記だという事を分かってほしい。

 

 それでも、私のことを知りたいという、奇怪な思想をお持ちの方がいるのであれば、ぜひ、次の頁をめくっていただきたい。




 ルビなど間違っていたら教えてください。

 原作に出てきていないアーヴ語などは、アーヴ語の変化にのっとって、造語しております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。