数時間が経った。
あの少女のことが起きてから、数時間だ。
この数時間で起こったことを報告すると、こうだ。
まず、ようやく技師協会の人が
そして今、すでに
注文した
ちなみにその間、従業員の寝泊まりは
あんなことがあった後だが、男爵は全く意にも介さないという様子で技師協会を相手に面会や接待を行っていた。
その接待に、もちろん私も参加した。事前に男爵にダメ押しされた苦い記憶があったため、うまく行くか不安だったのだが、別に特に何もなく接待で来た。
何をしたのかというと、まず長旅の労をねぎらうために、男爵の
今回やって来た技師たちは合計で十二人ほど。そのうち三人が先任技師と呼ばれるものだそうで、彼らが今回の責任者であり、
その先任技師の中の一人、マハーという名の女性が、この中でも一番の指導者格であるらしかった。
彼女は
年の頃は三十に差し掛かったあたり、と事前の人事情報には書いてあったが、私にはかなり若く見えた。まあ、地上人とはいえ皆が同じように年をとるというわけでもない。特に遺伝子操作はアーヴの専売特許でも何でもないのだから。
ともかく、会食の接待はうまく行った。
男爵に否定された行儀作法を行う気にはなれなかったのでいつも通りの感覚で言ったが、特に何事もなく。
一つだけ言うと、食事を行っている十三人の食べている食事がおいしそうで少しうらやましかったというくらい。私は数時間、ずっと男爵の隣で侍り、必要があれば両者間の情報の受け渡しをし、最後には酔った客人の案内を行った。
ちなみに言うと最後が一番つらかった。
地上人はアーヴほどの酒耐性はないというのに、どうも限界を試して酒精を摂取するという悪癖があるらしかった。
困ったことに、十二人のうちの十一人がその悪癖を有していた。私の最後の仕事は彼らを引きずって、来客用の少し広めの個室に放り込むことだった。
男爵の前だから大丈夫だろうと私は油断していたのだが、彼らはお構いなしに酒を飲んで気持ちよくなっていた。
あとから聞く話によると、今回は彼らにとってはかなり大きな注文だったという。
それで気が大きくなるのはわかるが、そんな大事な仕事を注文した顧客の前で酔いつぶれるというのはいかがなものか。
と思っていたら、十二人のうち唯一酔いつぶれなかった一人……指導者格であるマハーがものすごく申し訳なさそうに謝罪をしてきた。
で、全員を客室に送り終わった後、帰ろうと思った瞬間に部屋の中から怒号が聞こえた。
するとその瞬間、客室にいた全員が自らの部屋を飛び出して、マハーのいる部屋に入ったのだ。
何事かと思ったら、すぐさま二度目の怒号が発生した。
それでそのあと十分くらいずっと怒号が響いていた。どうやらこっぴどい説教を行っていたらしい。
その怒号は私には理解できない言語で行われあたので詳細はわからない。
え? 翻訳しなかったかって?
いくら好奇心の高いアーヴだからと言って自ら熱湯に手を突っ込むほど馬鹿ではない。とくに私の場合、いかる女性の怖さは身に染みてよく知っている。
とまあそんなわけで、技術協会の方はうまく行った。
それで、客人を部屋に送り終わった旨を男爵に相談し、私のその日一番の仕事は終わった。
そして、私は居住区画に向かった。
居住区画の隣で休ませている、あの少女に会いに行くためである。
私は扉に
すると小さな音を立てて、扉が横に開く。
「落ち着いた?」
私は部屋の中にいる少女に声を変えた。
「………」
一瞬、少女は私と目を合わせ、すぐにそらした。
彼女は部屋の右側の椅子の上に座っていた。
その上には、いくつもの紙屑たち。
急いで用意したお菓子たちの残骸だろう。それらがてきとうに机の上に放りだされていた。
私は部屋の左側にある寝台に腰を掛けた。
程よい反発のベッドに腰が沈む。
少女の顔は、ひどくやつれていた。
最初はわからなかったが、今は注視せずとも理解できる。
その中で一番目に付くのは、彼女の目の下にある涙の跡だった。先ほどは無かったものだ。
三時間ほど、時間を空けて正解だった。気持ちの整理がある程度ついてくれていればいいのだが。
「えっと……お菓子とか、どうだった? 気に入ったならいいんだけど……。あ、そうだ、実は」
「nan itteuha wahan nai……」
「あっ」
そうだ、言葉が通じなかったんだ。
急いで
「これでどうかな」
「……」
まあ、多分了承を示す表情を貰った。
「あの……えっと、一応、これ……まだおなか減ってるかな? よかったら追加の食べもの持ってきたから、食べてよ」
私は腰を上げて、右手に持っていた籠を机の上においた。
それを開くと、中に詰め込まれたいろいろなものが見える。
おにぎり、栄養棒、
「っ……!」
それを見るなり、少女は喉をならした。
すぐに一つのおにぎりを取り、包装をはずして、かぶりつく。
海苔がばりりと破ける子気味良い音がして、彼女は無心に咀嚼をはじめ、そしてすぐに飲み込んだ。
「げふっ!」
「ちょ、急ぎすぎ……!」
咳き込む彼女に、籠の中に入れて置いた飲料水を手渡す。
彼女はそれをすぐに開いて口をつけ、喉につっかえたものを飲み込んだ。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……はむっ、むぐっ」
流し込んですぐ、彼女は二口目に取り掛かった。
一体どれだけ腹が減っていたのだろうか。無心で食べるその姿はいくらか痛々しかった。
「はむっ、ん、んぐっ……ふっ、ふん、ふむっ……」
しばらく、食べ物にかぶりつく音だけが響いた。
手が緩んだのは、三つ目のおにぎりに取り掛かってからだった。
「ふっ……んっ……ふぅっ……」
食べていくうちに、一筋の涙が目尻から零れ落ちた。
こぼれた涙を拭きもせず、しかし彼女の食べる手は止まらない。
「っ……んっ、ふっ……」
本当に、何日食事をしなければこんなふうになるのだろう。
とめどない涙の粒を落としながら、なおも食事にありつく人間を、私は生まれて初めて見た。
それからしばらく、私は彼女の食事風景を見続けた。
私が持ってきた食べものの大半を平らげ終わり、呆けるように椅子にもたれかかる少女に声をかける。
「……そろそろ、色々と聞いてもいいかな?」
「……」
椅子に座りなおしてから、こくり、と彼女はうなずいた。
その視線には、まだ幾分かの懐疑や不安の要素が混じっていた。だが、最初に会った時の絶望と殺気のこもった視線からすれば、まだ幾分かマシだった。
「君の名前を聞いてもいいかな」
「……」
しばしの沈黙が流れた。
彼女は目を泳がせながら、こう口を開く。
「アマレ……」
「へぇ、アマレ…………」
私はその名前を復唱した。
正直、私の耳にはかなりおかしな響きに聞こえる名前だった。
「私の名前は、ユリュア・ボルジュ=ティエノアル・センレーニュ」
「……?」
「あ、じゃあ……
アーヴの名前は、多くの地上人にとって複雑であるというのを忘れていた。
「センレーニュ……」
少女が私の名前を復唱した。
認識してもらえたようで何より。
『……あなたは……何?』
端末腕環を通じて、彼女の言葉が伝わって来た。
「何……私の種族、ということかな?」
「……」
こくり、とうなずく。
「私の種族はアーヴ。心配しないでくれ。君に害をなすような種族じゃない」
『アーヴ……』
まあ最初に気になるのはそこだろう。
「少し、遺伝子が君とは違うかもしれない」
『遺伝子……? 遺伝子改造をしているの?』
「まあ、そう言うことになるかな。君の生きていた世界では珍しい?」
『うん……』
彼女は気まずそうに首肯した。
『珍しい、というか……禁忌……とくに、人間に対する遺伝子改造は聞いたことは見たこともない』
「そういう人がいるというのは良く知っているよ」
しかしアーヴからすれば、なぜそこまで遺伝子操作を忌避するのか余計わからないのである。
生まれたころ、というか生まれる前の受精卵だったころからこうなので、今更それを恨みがましくとがめられてもどうしようもない。それに遺伝子改造を行って何かが悪かったということもない。
強いて言えば、今このように地上人の何割かの人に悲しい目つきで見られるくらいか。
『……でも、いい人そうだから……気にしないことにする』
「それは……どうも……?」
遺伝子改造を気にしなくとも、大いに気にしてもらっても結構なのだが。別にこちらとしては悪いことでも何でもないのだし。
「それで、まあ……いろいろと聞きたいことはあるけれども、まずは君が誰なのか、どこから来たのか聞いてもいい?」
『うん、もちろん……。私が住んでいた場所は、アシアラっていうところ……』
私はそれを思考結晶網で検索に賭けた。
結果は『情報なし』。
「それは星系の名前か何か?」
『ううん、違う』
首を横に振るアマレ。
『それは私が住んでいたコロニーの名前』
「ころにー? なんだそれは」
と、思考結晶が答えを返して来た。
どうやら、多義語であるらしい。
『コロニー:植民地 空間軌道都市 農作を行う場所』
「ああ、なるほど、軌道都市っていう事でいいのかな」
『うん、多分……私たちは、アシアラコロニーって読んでる』
「じゃあ、そこから来たと」
こくり、とうなずいた。
私は端末腕環に命じて、側に平たい立体映像を出した。
そこに片手で、今得た情報を書き込んでいく。
『それはホログラム?』
「ほろぐらむ?」
再び端末腕環を見る。
『ホログラム:情報媒体の保存技術 写真の表現技法 立体映像』
この場合は、多分一番後ろのものだろうか。
「これは立体映像だ。空間に映像を投影している」
『すごい……そんなものまであるんだ』
「ホログラム、という言葉があるのに存在しないのか?」
『ううん、存在するけど……不便だから使わない。使うとき不便じゃないの?』
「いや、特には……考えたこともない」
普段から使っているものだし。
『紙とかに描いた方が便利じゃないの?』
「紙……?」
一瞬、思いだすのに時間がかかる。
「ああ……白い植物繊維を沈殿させて固めた物理的な記録媒体のことか」
『え……? 紙のことをそんなふうに言うことある?』
「え、違うのか?」
『いや、あってるけど……』
「私は生まれてから一度も紙というものを見たことがないから……」
『そうなの? じゃあ勉強とか、どうしてるの?』
「それはもちろん、
『くりゅーの……』
私が掲げて見せた
『進んでるんだね……』
「そうだろうか」
進んでいる、というか、歴史をひもとけば、大放浪時代までさかのぼってもアーヴが紙というものを使ったことは数えるほどしかないのではなかろうか。そもそも限られた資源と空間の中で生きていたかつてのアーヴにとって、大地に生える木を使った紙は贅沢が過ぎる品物だ。
なので、進んでいる、というよりかは歴史や文化の違いではないかと思う。
それを口に出すとややこしくなりそうなのでやめた。
「それで、君はそのころにー……」
舌がつっかえそうだったので、思考結晶に『軌道都市』を『コロニー』に訳すように命じた。
「君はその軌道都市からやって来たと言ったが、君が住んでいたその……タハマガーラという場所に、有人惑星は無かったのか?」
『あった……けど、人口が多くなりすぎたから、宇宙空間にコロニーを建設して、人口を移してた』
「他の恒星系への移民などは無かったのか?」
『それは……ユアノンが、無かったから』
「ゆあのん……」
また、聞きなれない言葉だった。
『ユアノン:
ほとんど全部同じ意味だ。
それくらい『
じゃあ、この場合は『源泉粒子』が一番近いのか?
「その、源泉粒子がないという事は、どういうことだ? 君はついさっき、そこから出て来たじゃないか」
『いや、そうじゃなくて……あれは、つい最近発見されたユアノンだったの。もともと、私たちの先祖たちが、地球から乗ってやってきたユアノン推進の船があったんだけど……。それが、太陽系に向かって飛んで行った後に帰ってこなっちゃって……』
源泉粒子推進の船か……それについては、私もいくらか覚えがある。
現在『
源泉粒子は、常に膨大な――
燃料要らずのその源泉粒子は、かつて太陽系にとどまっていた人類の居住圏を、千年のうちに直径百光年にまで押し広げた。
新たに移民した場所で源泉粒子があれば、そこでまた新しく移民船を作り、更に植民した先で人口が増えれば、再び同じように……。
そういうわけで、人類のほとんどは、この源泉粒子に頼り、何光年にも隔たる真空空間の道を通行していた。
それはアーヴも例外ではない。
かつてアーヴは、都市船アブリアル――――八つもの源泉粒子をその腹のうちに収めた巨大船を駆り、人類宇宙を旅していた。
千年ほどの放浪生活を経て、人類社会のあちこちから最先端の知識と技術の粋を結集したアーヴは、この源泉粒子の新たな活用法を見出した。
それが『
源泉粒子が二次元宇宙と三次元宇宙をつなげる時空の穴であるという事を突き止め、それをこじ開けたことで、アーヴは別次元の宇宙を経由し、相対論的速度を超越して恒星間航行を行うことができるようになったのである。
それは今日に至るまで、
「なるほど、それで新たな源泉粒子を探したと……」
『うん。それが……恒星タハマガーラから一.五光年のところに見つかったユアノン。そこから、私はやって来た』
アマレは、眉をひそめた。
「どうした?」
『……そのせいで……私が住んでたコロニーは、破壊された……』
「なんだって?」
もしや――――彼女が住んでいた軌道都市は、源泉粒子を供給源として保たれていたのか?
そこにアーヴが無節操に調査に入って、内側から軌道都市を壊してしまったとか――――
実際に実例はある。飛行中のとある源泉粒子推進の宇宙船を、平面宇宙側から門を開いてしまったことによって破壊した悲しき事件が。
アマレの星系が有していたという門の情報にはそんなことは書いてなかったが、良心の呵責を覚えてしまった探査家たちが、それを黙っていたという事もありうる。
『その源泉粒子の一番近くにあったっていう理由で……当時戦争をしてた敵によって、アシアラコロニーは壊された』
私は胸をなでおろしかけて、やめた。
別にめでたいことでもないし、一つ安心しようとしたらまた別の情報が流れ込んでくる。
「君の星系は戦争をしていたのか?」
『……ねえ、太陽系ってどうなったか、知ってる?』
不意を突かれて私は呆気にとられた。
「それがいったいどうしたんだ?」
『……もともとはね、私の星系は、ユアノン船じゃなくて、星系からのレーザーで加速する光帆推進の船で太陽とやりとりしてたの。あ、もちろん、最初の植民はユアノン船が使われたんだけど……』
「少し待ってくれ。まず、君のいた星系は、太陽系と通常空間を経由してやり取りができるほど近くにあったのか?」
アマレはこくりとうなずいた。
『うん……と言っても、けっこう遠くて、十八光年くらい離れてた。光帆推進の船で限界まで加速しても、片道は百年近くかかった』
「なるほど」
太陽系とそれだけ近い場所に会った星系か。
かなり興味をそそられる。アーヴだけでなく、すべての人類にとっての共通のゆりかご。すべての人類はそこから出発したのだ。
『それでね……船が返ってくる予定の時期と、敵がやって来た時期が、一緒だったんだ』
「敵は星系外から来たのか?」
『うん……奴らは――――』
奴ら……最初に彼女が目覚めたときも、それを連呼していた。
『奴らは、地球からやって来たって言ってた。それで、この星系を明け渡せ、って。それで、戦争がはじまった』
アマレは悔しげに眉根を寄せた。
『彼らは地球からやって来た……。ユアノンを持ってるっていうなら、他のどこかの星系まで行けばよかったのに、なぜかわざわざ私たちの星系を欲しがった。でも、それだけの力もあった……ねえ、センレーニュ』
目を上げ、私の顔を見つめる。
『ここがどんなとこだかわかんないけど……太陽系について、何か知ってたら教えて欲しいの。それが分かったら、あの戦争の原因もわかるかもしれない……』
彼女の顔には、切実な願望が浮かべられていた。
「その戦争は、今も続いているのか?」
『わからない……けど、終わってはいない、と思う』
彼女は、自分の左腕を指で小突いた。
その瞬間、私は飛び上がりそうになった。
彼女の左腕の一部が開いたのだ。
そこには画面らしきものがあって、見知らぬ文字が浮かんでいた。
「遺伝子改造は忌避するのに、それはありなのか?」
『え? もちろん……』
訳が分からなかった。そちらの方がよっぽど魔改造的で怖いのだが。
『あった……。コンピュータが狂っていなければ……私は十年前にコロニーを出発してる』
「十年前……」
一.五光年も離れていれば、それくらいはかかるだろうか。
『……良かったら、助けてほしい。戦争に参加して、とは言わない。ここにもいろいろ事情があるだろうし……けども、少しでも多くの情報を持って、私はタハマガーラに帰りたい』
「帰る……君は帰りたいのか?」
こくりとうなずく。その彼女の顔には、確かな決意が宿っている。
『私が生まれた場所はもう、無いけど……。でも、確かにそこが私のいた場所だから』
「……君を返すかどうかは、私が決めるところではない。すまない。だが、報告はしてみよう」
『ありがとう……、それにしても、ここって一体どこなの? どこかの、軌道コロニー?』
「ああ、いや……そういえば、説明していなかったな。ここはどこの軌道都市でもない。星系外縁近くにある軌道城館だ。都市や植民地と言えるほど広くもない」
『じゃあ、星系政府はどこにあるの?』
「そんなものはここにはないよ」
『え、どういうこと? じゃあ、ここは何なの?』
「ああ……」
考えてみれば、彼女にとっては人がいる場所は、つまり地上世界がある星系、という認識なのか。
彼女にとっては、軌道都市も地上世界の拡張にすぎないのだろう。
「ここは星間国家であるアーヴによる人類帝国の一部だ。星系政府と呼べるものはここには存在せず、帝都であるラクファカールに唯一の政府が存在する。ここは領地のひとつだな。ここを治するのはアウポース男爵で、この領地は有人星系が存在しない半有人惑星。そしてここでは男爵が最高権力者だ」
『せ、星間国家……?』
呆気に取られてアマレは口をあんぐりと開けた。
「帝国は君が通って来た門を使って、星間国家の体を成している。だから君がやって来たのは事前に察知できたし、それで助けることができた」
『星間国家……しかも帝国……?』
アマレは顔を自らの手のひらで覆った。
『わけわかんない……』
「混乱するのも仕方がない。まだ君が起きて一日も経ってないし」
『ちょ、ちょっと待ってね』
彼女は片手の手のひらをこちらに突き出した。
『えっと……その……私がやって来たのは、どこか隣の星系とかじゃなくて、有人惑星が存在しないのに人がいる場所で……しかも私を迎えたのは遺伝子改造したアーヴっていう見たことない人種で……それでしかも帝政のある星間国家の一部っていうわけわかんない場所だったってこと?』
「まあ、そう言うことになる」
『わけわかんない……』
「まあ、今すぐ理解する必要はない」
私は言って、寝台から腰を上げた。
「しばらくすれば、男爵もお仕事が終わる。君の処遇はそれから男爵によって決められるだろう」
『え……』
アマレは不安そうな顔を浮かべた。
『男爵って、どういう人なの……?』
「ああ、気にする必要はない」
そういえば、地上人はアーヴの人種的特徴だけでなく、その統治体制に強く反発する場合もあるのを思い出した。
「いい人だ。きっと君の処遇について、良く考えて最善を尽くしてくれる」
『そ、そう……』
「じゃあ、また」
不安がるアマレを残して、私は部屋の扉を開けた。
人物紹介
種族:ヒト
年齢:三十一
身長:一六二ダージュほど
所属:サンシャーヌ技師協会 最先任技師兼副会長
地上人出身の国民女性。出身はアルラーフ伯国。
サンシャーヌ技師協会を設立した父イムラーニュ・イスハーシュの娘で、サンシャーヌ技師協会の次期会長候補。
長く黒い髪と、真っ黒な瞳孔の大きく丸い目を持つ。
実際の名前の順番と発音は『マハー・イスハーク』であり、父親の名前も『イスハーク・イムラーン』であるが、国民になるにあたってアーヴ風に発音と順番を変えた。
多くの地上人とは名前の仕組みが違う(名字や氏族名に当たるものを名乗らずひとつ前の父親の名前を継ぐ)上に順番を変えた弊害でよく名前を混乱される。
2025/03/20 追記
謝罪
投稿する際にロクに確認しなかったせいで、ボツ原稿の部分まで投稿してしまったことをここに謝罪いたします。見なかったことにしてください……