我々の目的地、
というわけで、一か月と少しぐらいぶりの都市船アブリアル。
正直なんの思い入れもないし悪い思い出くらいしかないのだが、二度目にしてもその規模に驚かされる。
なにせ、恐らく人類宇宙の中で最も巨大な軌道構造物である。
すべてのアーヴの始まりにして、
それが都市船アブリアル。
都市船アブリアルの別名として、『
文字通り、そこには
正直、
今回の目的地である
考えてみれば、この場所には多くのアーヴたちが身分関係なく入り乱れている。
最も貴き
かつてアーヴの世界の全てを内包していたこの船だからこそ、成せる芸当なのだろう。
二度目の
宇宙港は変わらずにぎやかだ。地上出身者、アーヴを問わず、多くの人々で賑わっている。少し離れれば売店もあるし、宿泊施設もたくさんあった。
「
『こちらです』
すぐに
「
『了解です』
かつて、呼ぶお金すら躊躇していた
だが、今はそんなことはない。
もちろん気にすることはあるが、お金は十分にあった。
なぜならば、
正直、もらった時は目が飛び出るかと思った。
私一人がひっそりと暮らせば、一年間は働かずに生きていけるくらいだった。これでは身も引き締まるというものである。
「乗ろう、アマレ」
「あ、は、はい」
連れがいるからである。
私一人ならば別に歩いてもかまわないし、何なら健康を気にして自ら歩きたいものだが、私事と仕事は異なる。
今回は、重要参考人たるアマレを連れているのだ。
彼女に何か無理をさせるわけには行かない。
それに、今回行く場所は、土足でずかずかと踏み込んで行っていい場所ではない。
アマレが
今回呼び出した
アマレが座った対面に私は座った。
「……」
アマレが、しばらく私のことを見つめる。
「あ、あの、センレーニュさん」
「どうしたアマレ」
「これから行く場所って……」
「ああ、
その正式名称を、
かつて
その時、都市船アブリアルにおいて、情報を司っていたアーヴの一族たちによって創設された機関だ。
「そこで、君とその情報を提供してもらうことになる」
「……」
「緊張しているか」
「はい……ちょっと」
つまり、かなり緊張していると。
今までは少し距離を取っていたが、今はそんなことを言っている場合でもないか。
今、彼女は少し心細そうにしている。
心細い人間は他人に頼りたくなるのが常だ。私の母親も何かそんなことを言っていた。
「落ち着けばいい。君は今、
「は、はい……。でも、タハマガーラのことが知れるって考えたら……ちょっと、楽しみです」
にへらと無理にアマレは笑う。
少しは緊張がほぐれただろうか。
そう言う私は、心臓が喉から飛び出そうなほど緊張していた。
この感情がアマレに伝わっていないといいのだが。いや、もしかしたらアマレの緊張は私の緊張が伝わってしまったからなのかもしれない。
生まれてこの方、一度も軍とお付き合いしたことはない。
そしてそれは、すべてのアーヴの中でも、少数派であるのだ。
ほとんどのアーヴは何かと軍とかかわることになるのに。
アーヴの生き方は三つほどあって、筆頭は軍士と交易商人、そして次あたりに研究者だ。
これだけで、貴族を除いておよそ九割五分のアーヴの生き方を分類することができるだろう。
軍士の才能がない人は商人に、商人の才能が無ければ軍士になる、という形式も多く訊く。
また、軍士にならずとも、自ら交易をする商人になるためには、必ず軍に入らねばらならい。
なぜならば、恒星間航行の技術である平面宇宙航法の知識は、軍でしか教えることが許されていないからだ。
研究職に就くにあたっても、軍との接点はある。
つまり、
しかし困ったことに、私はそこに分類されない、残りの五分のアーヴだった。いや、別に困ってもいないのだが。
軍にはいないし、研究もしないし、交易もしたことがない。
もちろん高貴な身分でもない。
そんな私にとって、
私が軍に入ろうと思わなかったのには理由がある。
いかなる形であれ、命を強奪することはしたくなかったからである。
いや、軍が人の命を強奪するための組織ではないことはもちろんわかっている。
軍は
そして、ここ百年ほど、
アーヴとして、
だが、どうしても。
人を殺す可能性が少しでもある職業に、足を踏み入れる覚悟は無かったのだ。
そのような覚悟がない中で軍に入るべきでないという強力な逃げ文句が、今の私の中では確立している。そして、多くの人はそれに対して理解を示してくれるという事も私の今の状況を後押ししていた。
ともかく、私にとって、軍は、今まで避け続けていた場所だった。
そして、強力な実力が伴う場所である、という印象があった。
万が一にでも、何かあったら……。
そのような疑念が、私の心の中心にわだかまっているのである。
アマレには色々と大丈夫だ、と説明していたが。実際に足を踏み入れるとなると、私自身が一番震えている。
そして、数十分の移動を経て、
既に人通りはほとんどなかった。
あれだけ賑やかだったのが嘘のように、全くと行っていいほど人通りがない。
この場所の性質故か……。
「着いたか」
自分の声が震えていないか……確かめる余裕もなかった。
アマレと共に、
私は目の前にある、巨大な扉を見上げた。
『
――――生まれて初めて、ここにきてしまった。
扉の両側に、二人の青髪のアーヴが綺麗な直立姿勢で警護をしていた。
そのうちの一人が私に気付いて、こちらに近寄ってくる。
そして、二本の指を掲げ、敬礼をした。
「アマレ、礼をするんだ」
言って、私は腰を折ってその従士に礼をした。
すぐ横で、アマレも同じようにしているのを
「
ちらりとアマレに目くばせをした。
「えっ、あ……同じく、ハミサラ・アマレ、ですっ」
すると、
「
全くの無表情に、そのソクリューズ
だが、これが軍という事か。個人の心情が入る余地はない、と。
「それでは、こちらへ」
そして、
おそらく、今回のこれは、多分に儀礼的な門のはずだ。
普通、
我々はそれだけ特別な来客という事なのだろう。
ソクリューズ
もう一人の警備の
すると、すぐに
さっきと同じ
「お乗りください」
「ありがとうございます」
「あっ、ありがとうございます」
ソクリューズ
門の向こうには、ひどく幅の広い道。
その道を、
見上げると、何百ダージュも向こうにある天井。
緩い弧を描くようにして、巨大なそれは湾曲していた。
そこに、びっしりと絵が描かれているのが分かった。
目を閉じてもわかる。それは
それは無限の宇宙の
その円が、星系の
その中には、私の知っている有名な
その中に、私は
そして、広道の中心当たりに来た。
あるのは、他のどんな円よりも、恒星よりも巨大にえがかれた大きな円。
そこには何の名前も書かれておらず、何の惑星も伴っていない。
ただ、その円の中心には。
私は身震いをした。
恒星アブリアルを示すであろう、その円の中心に。
八つの頸をもたげた、
ああ、私は今、
そう、理解してしまった。
私もその
そうして、永遠にも思えた『
これがこの船には八つもあるというのだという。それぞれの王国ごとに存在する
まるで
それが終われば、あとは開けた場所だった。
どうやら
ありがたいことに、幾分か賑やかだった。人々の往来があって、人々が思い思いに会話をしている。当たり前だが、すべての人は
そして、『
そこで、
ソクリューズ
そして、ソクリューズ
「ソクリューズ
すると、向かいのアーヴは答礼をする。
「了解いたしました。ソクリューズ
「お二人とも、
「はい」
「問題ありません」
と言ってうなずいた。
この人が、本物の
「それでは、私はこれで失礼いたします」
と、ソクリューズ
それを見届けて、私は残ったアーヴに向き直った。
「ようこそ、お二人とも。
言って、そのアーヴ男性は再び敬礼をする。
「私はソクリューズ・ウェフ=ソクノン・ウェーシュ
にこりと微笑んで見せる。
ソクリューズはにこりと微笑んだ。
先ほどの者とはかなり印象が違う。
だが、それだけに不気味にも思えた。
この者は
一声を発せば、私のような存在は、簡単につぶされる。
その微笑みも、本物かどうか。
彼は続けた。
「向こうで
言って、彼はアマレに目を向けた。
切れ長の目、そして金色の瞳孔。
優しいようにも見えて、しっかりとアマレを見据えている。
アマレが身を硬直させるのが分かった。
「色々と、お話をお聞かせください。もちろん、こちらからも最大限、情報をお渡しいたします」
再び、ソクリューズは口端を上げた。
みんな、何が気になる? 今後の展開を考えるのでよければ教えて
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