なお原作で図書室描写があったのはウェブ版のみ。書籍版だと教官がコノエに声掛けした場所が通路に変更されてますのでご注意を。
*2025年8月29日改稿。後半部に転生望まない人間がいるか疑問呈する内容入れました。
つまり後味がかなり変わります。申し訳ございません。く、くま……
*2026年5月20日。同人誌頒布に向けあちこち手を入れました。
ふらふらと学舎内図書室を見歩いてた君は、ふと書籍同士の隙間から一部がひょっこり飛び出てる紙を見つけた。棚の各種書籍は背表紙が綺麗に揃えられており、司書が見落としたにしては不自然な感じ。しかし君もできれば綺麗に本を並べておきたいたちなので、何か変だと思いつつその紙を引っ張り出してみた。
おや、紙のはみ出し部分が変色してるじゃないか。長期間放置されてたのかと思いつつ、こんな不審物がそんなにも見落とされるとは思えずで、いささか混乱してしまう。
学舎は部外者立入禁止の場所が多いものの、当図書室は君のような一般転生者にも解放されてる場所だった。
異世界知識欲しさでこの世界に召喚された君たちだが、各自の知識をある程度聞かれた後は、普通にこの世界で生きていけるよう手配がなされている。
そもそも召喚とは地球での死者の魂をこの世界に連れてきて、わざわざ肉体を再度与え蘇生してるのだという。知識得たら即サヨナラバイバイなんて、無駄がすぎる。人間の数が絶対的に足りない世界なので、新規住民は基本的に大歓迎らしい。
とはいえ常識の異なる人間が増えれば、どうしても色々問題は生じがち。よってこの世界での一般教養を学ぶ時間が設けられていたりもするのだが、夢物語な異世界へ来たのに勉強第一な人間などそうそうはおらず、当図書室の利用者は極端に少ないと聞く。更に今君がいるような部屋の奥々まで潜り込む人間となれば、皆無に近いかもしれない。
そんな閑散とした場所でも掃除は行き届いている。ホコリなど見当たらないものだから余計にこの紙が放置されてた経緯が気になるものの、さしあたっては関係ない話。
かくいう君も何かの目的あってここに来たわけでなく、懸案だった加護候補を決め終え暇だからなんとなく図書室探検してみようと思い立っただけで。今日もガランとしてたからあっさりと行き止まりまでたどり着き、偶然これを見つけただけだ。
自分の足音すら聞こえず不安が頭をもたげてたところだったので、発見の瞬間ヒャァと細く悲鳴を漏らしたのは内緒の話。
それを思い出し、気恥ずかしくて自分以外に誰もいないことを再確認した君は、再び紙に目をやった。一枚目に数行、二枚目以降はびっちりと文字が書いてある。幸い記されている言語は、見知ったもののようだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「探し上手な君へ」
やぁ。ようこそ図書室へ。この紙はサービスだからまずは落ち着いてほしい。
君はこの先を読んでもいいし、読まなくてもいい。所詮は転生した先人の書き込みで、たいして内容は無いよう。
もしここで少しでも笑ったなら、最後に頼み事あるのでよろしく願う。そうでなかったら、いかようにでも。君は自由だからね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
覚書をしておこうと思う。僕ら転生者に対しこの世界について色々教えられたものの、なんだか分からないことが多くてとても覚えきれない。違いを上げればキリがないけど、結局は異世界なんだと納得せざるをえなかった。
幸い言葉が一種類しかなく、それは召喚された時点で既に付与済みとあれば、後は個々人の意欲次第。
しかもふんだんに紙が与えられるから、記憶力がさほどな僕でも少しは知識を書き留めておけると思う。いや、覚える気がないから書き綴って忘れることにしたほうがいいかも。
よし、ここから適当に書き出していこう。これを読んでくれる人がいるかもしれないけど、そんな感じで僕が思ったことを書くから、適当に読み流してくれるかな。テスト勉強じゃないんだし、適当だよ適当にね。
そのテスト、異世界知識が身についたか定期的に受ける必要があるけど、出来が悪いからといって追試があるわけでもなく。一定期間後の身の振り方は各自思うがままに自由だ。
生前類似な職を選ぶのもよし、未知を求めて旅してもよし、訓練に身を投じてもよしで。ほとんどの人間は適当に散らばっていくようだ。
例外は、機械技師とその関係者あたりかな。工場で旋盤回してた人や設計者などは、出来れば学舎内の研究機関に入ってもらいたいようだ。食堂で小耳に挟んだら土下座された人もいるとか。僕はそうじゃないけど。
それで大規模輸送技術が欲しいとは聞いたものの、地球だって大して発達してたとは思えない。鉄道や自動車にしろ、陸上輸送で使われてるそれは輪っかを転がすだけだよ。
以前宇宙ロケット運搬車を動画で見たけど、あれの積載量はどれくらいだったかな。鉱山トラックのほうが大きかったかも。まぁ、どちらもデカいことに変わりはない。頑張れば将来的にあれくらい大きいのが作れるんじゃないかな。
その自動車、以前の転生者が頑張ったので既に試作品は出来てるらしく、今は量産に向けて試行錯誤の最中なんだとか。じゃぁ新たに召喚するなよな。やっと死ねたのに。
陸上でのもう一つの雄、鉄道のほうはなんと実現不可能だって。
でも理由を聞けば納得。この世界には魔物、つまり敵にモンスターがいて、無人だと施設が荒らされるんだそうな。レールを放置出来ないんじゃ確かに使えないね。
ところでごめん。さっきから伝聞形でしか書いてないけど、まだ街から出てもいない僕にそれを確かめるすべが今のところないから勘弁してくれ。
後日確かめるまで生きていられるかも分からない。ここ神都のような大都会でさえ襲撃受けるっていうんだから、僕のような一般人はどうにもならないじゃないか。
だから魔力使って自衛技術を磨いてほしいとも言われたけど、正直めんどくさい。
生前は運動神経壊滅だったから、この世界での僕もそうだろう。異世界チートなる言葉は聞いたことあったけど、魂が同じな以上改善される見込みは薄いよ。
鍛えればと言われてもさ、有象無象に何を期待してるんだろうね。さっき言った技術者たちがいればそれで十分だったんじゃと疑問に思う。
魔物がいても一応撃退方法を自前で備えてる世界は、しかし高速大容量輸送技術を欲して異世界に渡りをつけた。
魔力を鍛えれば個人でも音速以上で動けるのに、たかが時速数百キロ程度しか速度出ない自動車技術をありがたるその理由は、誰でも使えるからだってさ。はぁそうですか。
音速超えられる人間がいるなら任せればいいじゃんと言ったら、そんな人間はこの世界でも少数だからとても間に合わないって返された。日本みたいな飛脚制度は無理みたい。
じゃあ今までどうしてたのかって更に聞いたら、ワープ技術にも似た転移門ってのがあるって。だからそんな技術があるなら召喚を、まぁそれはそれとして。
問題は、魔物がいるなかでいかに荷物を運べるかだそうだ。転移門なら一瞬で大荷物を運べるとしても、その周囲は常に警戒が必要で、当たり前だけど門が設置されてない場所には運べない。そんな感じで転移門以外の輸送手段が欲しいんだってさ。
その他、洞窟内の敵居場所へたどり着く用にも出来ればと聞いて不思議に思った。地球での洞窟は這って進むような場所だからさ、運搬車あっても入らないだろと。
そんな僕をビックリさせたのが、話の前提となるこの星の大きさ。地球と同じくらいに思ってたけど、十倍以上は大きいんだってさ!
確か地球の円周が四万キロ。極点から赤道までの距離を地道に計って、その万分の一が一メートルだったはず。計測当時は自転での膨らみ補正が計算されてなく機械の精度も劣ってたから、後で変わったような? 今となってはどうでもいいけど。
それで、この星は地球よりずっとずっと大きいんだとか。隣町まで数百キロ、隣の国まで数万キロ、世界一周は更に遠く……どれだけ大きいんだ!?
最低十倍でも円周四十万キロになる。主要十ヶ国の他にも色々国があるから、その倍はあっておかしくない。キリよく百万キロと仮定してみるか。すると星の直径は三十二万キロで、地球から月までの距離三十八万キロより少し短いくらい!? 無茶苦茶デカいよ!
詳しい人がきちんと計算してたらしく、後で正確な数字を教えてもらったけど、僕の頭じゃその程度しか理解できなかった。月との距離が直径な星なんてデカすぎて想像が追いつかない。しかもその地下はまるっきり敵の支配下で、どこから侵略されてもおかしくないのがこの世界なんだって。恐ろしいな。
自動車でも駆けずり回るのは無理なんじゃないかなぁ。途中で燃料が尽きるよね。それに、星の密度はどうなってんだこれ。地球と同程度の自転速度じゃ重力相殺できないだろ?
でも召喚されてこの方、重力がことさら大きいとか一日が短いとか聞いたことがない。もちろん僕も全然不自由を感じたことなくて、地球と同じにしか思えない。
星の中身がスカスカならともかく、地中はちゃんと岩石や金属で埋まってるそうな。あちこち敵が洞窟ダンジョンとやらで穴を開けてるけど計算上は誤差程度。
その誤差の中身を攻略出来なくて移動手段欲したのは笑うところかなこれ。穴一つでも地球なら国一つがすっぽり入る大きさになるって、ちょっと目眩する。
そんな大きさの星で地球同様な環境を維持なんて、通常の物理法則なら出来ようがない。なのに僕はこうして普通に生きてられてる!?
ここで一つ、決定的に地球と違うことを僕は受け入れなければならない。
実はこの世界、神様が環境を維持してるから生活に何も問題ありません!
なんだその設定は。僕の考えた最強のチートじゃないんだぞ、物理法則に謝れよこら。神様に喧嘩売ってるの、その神様がオーケーしたってか。はいはい。
そんな物理法則を覆す存在がいながら、未だ敵のいる地下の探索が出来てないっていうんだから何か妙にチグハグだよね。まぁ僕は探索なんてしないけど。
頭の悪い僕でさえツッコミどころ多数なこの世界、僕以外の人間は割と気にいったらしくて不安そうにしてる人が見当たらない。選択可能な加護の話で盛り上がってるグループもいくつかある。近寄らんとこ。
加護を選べたとて、モブな僕らがこの世界でやるべきことは何も無いんだよね。確か『為すべきを為せ』だったかな? その役割が無い人間は何をすればいいのかね。
特に生きる目的を見失った僕のような人間に与えられる転生とは、地獄にも値するよ。絶望から跳躍した先は、やっぱり絶望でしかない。そこで善意に満ちた選択肢が与えられたとしても、行き着く先など一つしかないというのにね。
とはいえ、やっぱりアレはきつい。一回成功したけど、もがき苦しんだあの状態を二度味わうのは不本意すぎる。この世界では死が軽いものの、治癒魔法が発達してるから即死しなければ蘇生されちゃう可能性高いのが少し気になるところ。
高度な魔法の使用料は相応に高いとも聞いたしさ、中途半端で借金だけ負わされるのは勘弁してほしい。後遺症なく完治出来るから障害者制度は存在してないってよ。怖い。
つまりこの世界は『生か死か』。おぉ四大悲劇よ永遠なれ! 僕らモブをも平穏に導け!
願わくば有象無象の召喚など無くなってほしいものの、敵の親玉、邪神が倒されない限りは続くんだろうな。この星の広さが縮まらない以上、今後も移動手段は求め続けられる。
それに巻き込まれた、僕ら希求対象技術を持たない人間にも生きる能力を与えますと言われても、生きたくない人間はどうすべきなんだろうねこれ。
理解した限りなら僕が死ぬのは簡単で、この街を出て適当に歩けば魔物が僕を殺すはず。戦うための魔力があっても、戦い方を知らない今なら殺されるのはあっという間だ。
街を出るのが面倒ということもない。加護を授かる前だとて、召喚場所となったこの学舎に閉じ込められてもおらず、自由に僕は出ていける。
ゴッド・セレクト!? マイガッ、マイガッ! やかましい教室での叫び声を聞くことは鬱陶しいし、先生たちに今後の予定を聞かれることも面倒くさいんだ。静かになりたい。
でもさ、それで本当にいいのかって燻る心もある。そう、羨ましいんだ僕は。
他人とのしがらみなく一からやり直しが可能な世界で、彼らは何にでもなれる。他人を支配することも、好きな人を新たに選ぶことも出来る。お金を稼げば寿命を延ばすことだって可能だという。
魔物に殺されるかもって心配はあるけど、地球でだってその心配はあって、僕の妻は実際に殺された。
犯人は無事捕まったけど、裁判で述べられた犯行動機は無茶苦茶酷く『誰か殺したかった』なんて適当なもので。なのに『あれで実際に死ぬとは思わなかった』なんて言い訳で最高裁まで争ったのはどうしてだったんだろうなぁ。
判決確定までの長い年月をやっとのことで生き延び、肩の荷が下りてとく早く妻に会いに行ったはずが、こんな訳の分からない世界に呼ばれるなんてほんと思いもしなかった。
つまり僕の望みは、妻のいる世界への旅立ちだ。なのに残念ながら異世界への扉を開いても飛び出すことは叶わないと言われたら、何もやることがない。勝手に呼んどいてなんて言い草だ。思わず暴れようとしたら気配を察した先生が先に僕を取り押さえてね、実行は未遂。
その後の説教は長かったな。強く願えば叶えられると、その力は僕にもあると言われたものの、そんなの眉唾としか思えずで。記録あるので読んでほしいと図書室に連れてこられ不本意ながら従った結果は、その人達はそうだったんだろうとしか言いようがない。
二十キロ四方の結界を十日保たせた守護話あたりは願いが弱い方で、列挙されてる内容は敵討ちで魔物の頭を吹き飛ばしたなんてのがズラリ。とはいえ大概の例に本人死亡の文字が付されてるのはいかがなものか。
才能ある人間なら、努力で強い力を持つことは可能だそうな。この世界における最強職アデプトになった人たちは固有魔法なる一点ものの極大魔法が使えると書いてある。
人によって内容が異なるそれは、各人の願いが生み出した魂のあらわれだとか。ただし厳しい訓練を経ても発現まで相当時間を要するとも書いてある。
この世界、魔法は訓練技能なんだよね。願い叶うと言われても、努力できない人間は結局ダメなまま。固有魔法で世界を捻じ曲げるなんてチートには至れずじまい。
しかし例外は何にでもあって、さっき書いたように一般人の発現例もたくさん。その代わり自身が死んでるけどね。いや、死の直前に願う内容くらいでないと魔法にならなかったのかな。生半可な願いじゃ物理法則を超えられないだろうことはなんとなく分かる。
そうすると先ほどありえないと言ってたこの星における生活環境は、創造主である神様が強く願った結果だったんだろうか。どれだけ強かったのかと呆れるほどだよね。まぁ、地球にも七日で作った話があるし、逆に神様なら当然な内容なのかも。
あぁ脱線が過ぎた。色々書き連ねたけど、ようやく僕の道が整理できたと思う。
一つは、世界間跳躍の方法を探る道。
僕ら異世界人を呼んだ魔法は最近の発明らしく、まだ研究の余地があると僕は考えた。むろん術式を見せてほしいなんて今の段階で頼んでも断られるのが落ちで、信用してもらえるまで数年、あるいは数十年必要かも。でもその間初志を持ち続けられるかは、正直自信がない。
裁判の際は手続きの問題だけだったしね。待つのはかなり辛かったけど、とかく待てば有罪無罪どちらかの結果が出ると知ってたから問題なかった。本当に苦痛だったけど。
なのに研究に携われたとして、送致可能となるまでどれだけ時間がかかるのかは不明のまま。あるいは不可能の結論が出るかもしれなく、見通しは限りなく暗い。未来を見据えてなんて言葉が出る人間は、だいたいこの道を選ぶんだろうなぁ。努力と愛情で勝利するなら、実に平和的な道だもの。
お次は、その努力で自力跳躍を目指すもの。まぁそんな魔法は今までなかったし、僕ごときの努力で発動可能とも思えない。実に厳しいね。
でも僕は、もう一つの道を知っている。この世界に見切りをつけ地獄経由で旅立つ道だ。妻はなんていうかな。せっかく生きられるのに何を考えてるの、かな。
実に妻らしくて、声さえ聞こえてしまうよ。幻聴とは知ってても、もう一度声を聞けるとは思ってなかったな。犯人憎しが強すぎて顔すら思い出せなくなったというのにね。
願いが叶いやすいこの世界でも、僕の妻に会うことは無理だった。有象無象の一員として呼ばれたからには、それらしく退場するのが役目というものさ。
なので、これを書き終えたら僕は街を出る。封すらせずこの紙を図書室の一応は奥の方に残しておくから、というかここまで読んでくれたからには手元にこの紙があると思うけど、この紙切れをいかようにでもしてほしい。
先生に届けてもいいし、そっと図書室の賑やかしに戻しても構わない。他の人間に悪影響だとして焼いてくれてもいい。むしろ残さないほうが人のためとの自覚はあるよ。
でも魔法のある輝かしい世界で、僕のように絶望する人間がいたということを残しておきたい気持ちのほうが強いんでね。見つけた君はご苦労さま!
なんだ不快な話だったなと思えるなら、君は正気な証拠だ。僕が保証しよう。
生きて叶えられそうな願いなら、そのほうがいいのは間違いないんだ。ただ僕の願いはそうじゃないだけで、音楽性の違いと捉えるのがいいのかな。僕には確かめようないけど。
じゃあお元気で! 会ったことさえない君が願いを叶えられるよう一応祈っておくよ。
◯◯年△△月□□日 XXXX
追伸。
書くのを忘れてた。もし君が日本の生まれで、僕の妻殺人事件の犯人が結局どうなったか知ってたら、ここに書き込んでくれると嬉しい。
最高裁で死刑判決は出たんだけどさ、御存知の通り執行されるまで相当時間かかるんだよね。さすがに執行までは待てずにこの世界に来ちゃったんだけどさ、次の世界で結末を知れるとは限らない。
未練がましくて申し訳ないけど、この紙を見つけるほど暇な君ならそうしてくれると信じてる。今度こそじゃあね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
読み終えた君は、盛大に困惑した。こんなこと書かれても、何も出来やしないと。第一、男の妻とは誰のことか。書いた本人には自明の理だったのかもしれないが、第三者へ伝えるならきちんと名前を書くべきだった。
察するに通り魔的な犯行だったのだろうか。残念なことに君のいた日本ではそんな事件が多すぎて、犯人や被害者の名前など覚えきれないほどになってしまっていた。
講師に教えてもらった限りでは、転生者の生存時代は似た年代が多くて話題はだいたい合うらしい。しかも国が同じならニュースで聴いたことあるやもしれないのだが。
しかし君の死亡年月日が男のそれより後ならもしやな程度。他の転生者にしてもこんな生前の殺人事件話に相槌うってくれる酔狂な人はまず居ないとしか君には思えなかった。
そしてこの内容がまるっきりの嘘な可能性もある。というか、この世界への転生を望まない人間はそもそも召喚されないはずでは?
講師はそう言っていたと思う。少なくとも君は自分の召喚を肯定的に受け止めていたし、知る限りは否定的な人間がいるとも聞いていなかった。まるっきり常識が異なる異世界の人間を呼ぶにあたって、その召喚条件は厳密に定義したとそんな話だ。例外あるとも思えずで、急に薄気味悪くなってくる。
あるいは、手の込んだいたずらか? 転生者でもこの図書館を使うものは少なく、調べ物があったとしてもこんな奥まで来るような人間は更に少ない。知識欲に取り憑かれた稀有な人間だけだろう。そこにありえない内容の紙を置いておけば、知識ある人間ほど混乱する様が見られるわけだ。
とはいえ、ほぼ無人な図書室だから他人がいれば異様に目立つはずで。改めて見回しても観察者らしき人間は周囲に誰もいない感じ。なんとなくホッとする。
いたずらなら処分のため書いてあったとおり紙を燃やしてしまおうと君は思い立ったが、図書室は火気厳禁である。なので少し考えてから紙一式を司書へ預けることとした。
ひとつの証拠保全というやつである。筆跡から誰が書いたか明らかになるかもしれない。
更には面倒なことに、この世界は個人の意思が直接影響を及ぼす世界なので、こんな負の感情まみれな紙が呪物化している可能性も頭をよぎる。
紙の日焼け具合から判断するに、柚子の大馬鹿十八年まではいかずとも相当時間が経ってるようなのだ。今現在君の心身に不調はないので呪いの心配はないと思うが、君が見抜けないだけの可能性もある。実に厄介な。
同郷と思われる人間が面倒を仕掛けたことに若干腹を立てつつ、君は図書室を出てこの紙を先程の推測込みで司書に預ける。
はたして紙を受け取った司書は、何故か文字を見て首を傾げた。はて、日本語なんてとっくに解読されているはずだが?
司書が不勉強だとも思えず若干疑問あるものの、とにかくこれで紙を手放せた。司書の見立てでは君に何らかの呪いや魔法が掛かっている様子は無いとのことで、やっと一安心。
紙のその後は、然るべき調査をしますと司書は受け合ってくれた。君が気にすることではありませんとも聞いて更に安心する。
この件はあまりにも納得し難く記憶から消し去るのは難しいが、しかし君個人に関わる話ではなかったので、先人の一例として消化することは可能だと最終的に君は結論付けた。
嘘内容ならそれでよし。君が少し時間を取られただけですむ。
本当でも、君に出来ることは何もない。男には死後も願うほど強い思いがあったものの、それが叶うことはないだろうというのが君の見立てだ。愛に殉じるなら犯人のあれこれなど切り捨てて然るべきで、それが出来てない以上はまず無理としか思えない。
願いを手伝うことは出来ても、叶えるのは自分自身以外不可能。スッキリとはしないが、そんな感じで自分がこの世界で何をしたいか再度考える切っ掛けにはなったかも。
そして呪い対策になるような加護はあったかなと、君は既に決めていた加護候補の変更について思いを馳せることにもなるのであった。
ところで、今になって思い出したことがある。最初に落ち着き促すあの前書きだけど、いつかどこかで読んだことあるような……?
*お詫び1:忙しくてしばし投稿出来ず申し訳ございません。
今後も月一投稿すら厳しいと思いますので、先に謝っておきます。
*お詫び2:原作において当該星の大きさは未提示。仮定話として計算してます。
判明部分は、国三つの距離が十万キロ、国一つがユーラシア大陸相当、分神所在は十「大国」
これらから、国総数三十ほど星の推定円周百万キロ位と見積もりました。
地球と密度が同程度な場合、その質量は約15,550倍となり人間は重力で潰されます。
遠心力で重力と帳尻合わせても、自転周期約1時間26分でこれまた日常送れず。
低密度化もマグマの存在が明記されており不可能と、物理で説明出来ない世界。
だから神様がかわいい必要あったんですね!
以上、ファンタジーに無粋な内容を持ち込まないようにとの結論でした。
あと読んだ足跡に顔文字『(o´∀`)b』でも何でもカキコくださると嬉しいです!