転生程度世界でもモブだった件   作:凍幻

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*時系列は第五部終了後。唄を題材としたらこうなりました。
 本編終了してもコノエの二つ名はまだ分かりません。
 百年前の近衛は白と表されても読み方不明ですし、現コノエが同じになるかもさてはて。
 もし色々提示あった場合は速やかに改変させていただきますので予めご了承ください。
*2026年5月20日。同人誌頒布に向けあちこち手を入れました。
 テルネリカさんの噂話も加筆。あれで噂にならないはずないなーと思いましたです。


第九話「ロマンスは唄の潤い」

 アデプト様方は、みな英雄様です。長年にわたる過酷な修行を見事に修められてるだけありますよね。

 魔物退治にダンジョン踏破、果ては魔王殺し。いやはや本当に凄いです。

 おかげでどこの村を回っても、私たち吟遊詩人に求められるのはアデプト様の英雄譚。少し前まで一番人気はかの銀灯様。そう、教官様の話でしたが、最近は噂のコノエ様について唄ってくれないかとリクエストがありますよ。

 かのお方については、まだきちんとした二つ名が付いていらっしゃらないようなので唄い手によって少しずつその呼び名が異なっていますけれど、普段は真っ白ずくめなそのお姿から”白(しろ)”様と呼ばれるのが多いですね。

 厄災退治の白様、魔王殺しの白様、そして、天蓋竜殲滅の白様。

 というか私が勝手にそう言ってるだけで、他の方が別名をお呼びすることもありますよ。最近は鎧が全身金色になられたらしく、戦闘場面中心ですとどうしても金様と言われることも……え、それじゃさっきの呼称は多いと言えないのでは? 私調べでは多いということです! 貴方も広めてくれて構いませんよ。いや加担しない? まぁいいでしょう。

 どの呼び名が広まっていくか、これは吟遊詩人同士の競争ですね。自分の発案が広まれば今後百年、いえ千年は使われ続けるでしょうし、ここが頑張りどころとみんな頑張ってますからね。

 英雄譚として唄い継ぐに相応しい呼び名が個人の一存で決まるはずないですけど、同じ思いの方が多数いらっしゃれば。そう思って私は積極的に白様と言い続けてます。初披露した場所では結構盛り上がりますよ。

 二つ名が無いと偉業を唄っても終盤が少々寂しい感じになることに加え、前口上で事前に聴衆を集める際も本名だけでは分かっていただけない場合がありまして、あるとないでは大違いなのです。

 同業者が先に唄った後だと違うってツッコミ入ったりしますが、言い訳せず普通に続けることが肝要ですね。あるいは、最初にコノエ様を白様と呼ぶ旨宣言しておくとか。聴衆との駆け引きはなかなか面白いですよ。

 そうそう私が白様と呼ぶのは、あの方のアデプト衣装が白いからだけじゃないんです。何でも百年前に銀灯様が天蓋竜を打倒した際にも、白き力で神様を守ったなんて話を小耳に挟んでおりもしますれば。

 百年前は異世界人来てないだろ? それはそのはずなんですが、少し長生きな方々が最近になって当時白様の名前を聞いたことがあると言い出してるんですよ。天蓋竜絡みで邪神が集団忘却させたんじゃないかってもっぱらの噂。

 ええ、記憶だけなら不確かと聞き流せるかもしれませんが、不思議にもかの方にあやかったらしい名前がありましてね、かくいう私の名も、もしやそうなのかもな響きなんです。両親はもうおりませんので真偽不明なんですが……唄う際には名乗りますので、聞いてくださいね。後でのお楽しみです!

 そんなご縁もありまして、百年前に使われてたという白の呼称を、私はもっと広めたいと励んでるわけです。

 とはいえ、白様のいらっしゃるこの神国を回るだけでも容易じゃありませんけどね。なにせこの国の管理地域は広すぎでして、天蓋竜襲撃の際に――銀灯様が戦った際ですよ――滅亡した国を三つも併合してますからねこの国。単純計算で四倍。以前の神国は他国と比べ小国だったらしいので、実際にはそれ以上ですって。

 なのに大半の土地は百年経っても手つかずのまま。瘴気汚染もありますが、そも絶対的な人手不足ですよ。おかげで開拓村同士の距離が遠いこと遠いこと。いくら転移門で移動可能とはいえ、距離に比例して使用料が上がりますし、費用捻出は一苦労です。

 なので今から私の唄を聞きませんか! 今はいい? そうですか残念です。気が変わったらいつでも言ってくださいね。

 でも白様の話は、色々と唄とするのに難しい内容がありまして。かくいう私もまだ悩んでる箇所が。それは聞きたい? 聞きたいですか、是非にというならお話ししましょう。

 やはり誰もが首をひねるのは、白様と天蓋竜が戦ったその経緯自体でしょうか。百年前銀灯様が退治なされた相手なのに何故と、その理屈が解明出来ないのです。邪神がなにかしたのは確実なんですけれど、いくら魔物でも蘇生なんてあり得るんでしょうかね。

 あるいは新たに作り出したとも考えられますけど、当の銀灯様が同個体だと証言なさったそうなのであえなく却下。

 ならば邪神は時間干渉権能を持っていたとなりますが、それなら私たちはとっくの昔に滅ぼされているはずで。よく分かりません。まぁそこは唄だと大声で邪神のせいと言ってしまえば大概納得いただけますから、私たちが考えることでないのはありがたいです。

 そして戦いの推移ですが、多数のアデプト様方が詳しく目撃しておりますけれど、それでも理解及ばずとされてますのはほんと不思議。

 天蓋竜が突如として人間に化身したのは、まぁ分かります。既存の魔物でもデーモンとか人類似のが居ますからね、白様と戦うのに最適な姿へ変貌したのでしょう。

 竜のままでは不利を悟ったからと考えれば理屈は付きます。実際、最終的に殺されてますからね。ここも盛り上がりこそすれ聴衆の不満はほぼ出ません。

 でも戦いながら白様のお名前を連呼されてたとの内容は、どう考えても謎ばかり。天蓋竜が百年前撃破された際の相手、銀灯様の名前なら憎悪で叫んでいたのかもしれませんが。

 ええ、やっと力を発揮出来た相手に執着したらしいとはお聞きしてますよ。しかし百年前は全力でなかったのかと、その説も納得し難いのです。百年前に白様がいらっしゃったらしい話と関係するんでしょうかね。まぁ魔物が何を考えていたかなんて、我々人間に理解出来るはずもないので謎のまま唄い続けるしかないんですが。

 叫びながらの激闘は、体術を駆使した近接戦! これも魔物との戦いでは珍しいことではありますし、表現に苦慮する内容ですが、一応は許容範囲。

 そもそもアデプト様方は魔法同士でも武器のみでも戦えますからね。というか戦えねばアデプトになれないとお聞きしてます。生半可にしか戦えぬ人間をアデプトに任命するだなんて、銀灯様がお許しになるはずありません。

 曰く、腕が落ちたら足で戦いなさい。足を失えば這って噛みつきなさい。死んでも戦いなさい。無辜なる民の盾となりなさい。それがアデプト――だそうです。

 いや腕を失ったら痛いですよ。私なんて弦の引き過ぎで手指が痛くなっただけでひーこら言ってますからね。流石アデプト様というべきか、はたまた尋常じゃないと言いますか。

 いや尊敬はしてますですよ!? 悪口でおとしめているなんて勝手なこと言わないでください。敬えぬ方々を唄にするはずが無いでしょうに。

 嫌っている人間でさえ唄に出来るですって? それは吟遊詩人を誤解した言い方ですよ。確かに私たちは憎むべき相手、魔物を唄に落とし込んでますけど、それは明確に引き立て役としてです。決して魔物を称賛すべき相手として認識してるわけではありません。

 あと、アデプト様を尊敬せず誰を尊敬すべきとすべきなのですか。神様方だけ? それはまた極論ですね。そういや似た話を異世界人に聞いたことがありました。人間は堕落した存在だから神様のみを敬うべきだって。

 確かに神様方々は敬う存在です。特に生命神様がいらっしゃらなければ我々人類は生きておりませんから当然のことでしょう。でもですよ、その神々でさえ邪神の侵攻に手をこまねいた挙げ句、生命神様が十の分体に分かれてまで欲した戦う存在を、どうして無下に出来ましょうか。

 アデプト様の手を借りねばこの世界は魔物に支配されたままだったことを鑑みれば、同様に尊敬の対象ですよ。

 えええ討伐の代価で人さらい? ハレム王とか無理やり手籠めにって、どこの話ですか。そりゃぁ確かにあのお方の奥様方は凄く大勢いらっしゃいますけれども、皆様きちんと恋愛の末に嫁がれた方々ばかりですよ。常人では対処しきれない人数も、何でもアデプトに至れるまで身体を鍛えれば色々凄いらしいでしすしね。噂ですよ噂! 体験するはずないじゃないですか、ほんと人聞きの悪い。

 ところでお客さん、変な薬でも飲んでらっしゃいますか。先程から何か不穏当な悪い言い方されてますし、どうにも顔が赤いですが……命の水? 度数強めのを飲み過ぎた? はあぁ、早めに解毒したほうがいいですね、ちょっとお手を拝借――はい、これで良いでしょう。昼間から酔っ払ったまま話を拝聴したいなんて今どき流行りませんよ。あと、いい加減手を離してください! いつまでも女性の手を握りしめたままなんて、口説き文句付きでも蹴っ飛ばす寸前ですからね!! うん。よろしい。

 まったくもう。お酒の出どころは後で聞きますから、きちんと私の分をも用意していただきますよ。サービスじゃありません。私は唄うのが本業ですから、それ以外の解毒代金は別途しっかりいただきますからね! ふんす。

 そもそも、何で私に唄じゃなく話をとは……はぁ? 可愛くて声を掛けたかっただけ!?

 営業妨害っ、営業妨害ですよ! 私の唄う時間を取らないでください!

 暇そうに見えたとしても、それは詩作を練っている時間だからです! お客さんが来てないなんて、これまた人聞きの悪い。

 まぁいいでしょう。お代をいただけるなら、きちんと話を聞かせてあげます。え、金貨がこれくらい? 追加出費も可能? ……そうですね、何から話しましょうか!

 

 ええっ、そもそも何で吟遊詩人が居るのかですか?

 はぁ、異世界ではとっくに居なくなっていると。それは情報伝達が速くなったからで、こちらでは転移門あるのにそこまで速まっていないから不思議だと。

 どうやら、基礎の基礎も知らないみたいですね。召喚後に学舎で授けられた教えはどうなさいましたか。すっかり忘れたと言われましても、それで困るのは自分自身でしょうに。

 仕方ありませんね。では、転移門の概要から。これは設置に莫大な費用と膨大な資源を費やしますので、おいそれとは設置出来ないものなのです。転移には術が発動するまでしばし時間が必要なことに加え、魔物が紛れ込めないよう発動時は毎回念入りな下準備が必要なので、設置場所が相当限られてしまうのですよ。

 見張りが居れば問題ないだろうですか? ええ、発動時に合わせ出発側の準備は可能でしょうね。アデプト様がいらっしゃらなくとも、探知能力に長けた人材がちゃんと転移門に配置されてます。

 でも向こう側の様子は分からないのですよ。白様がシルメニアへお出になられた際も、それで苦労なされてますしね。使者と連れ立ってシルメニアへの門を潜り終えた直後に強襲を受け、身を挺さねば使者の命を救えなかったとか。

 アデプト様の反射神経をもってしてもギリギリな反応となったのは、偏に門の向こう側状況を知るすべが無いから。色々研究されてますが、アデプト様でさえ空間術取得は至難の業ですからね。なかなか進展しないのはある意味当然なのでしょう。

 転移魔法を常時使用されてるのは、先程のハレム王様くらいでしょうか。あの方は固有魔法の関係もあり気兼ね無く自前使用できてますが、ほとんどのアデプト様は、かの銀灯様でさえ長距離移動時には転移門を使用なさってるのですよ。

 転移門以外での移動だなんて、なんて無謀な。貴方は魔物を排除しながらどれだけ地上を進めますか。ここから隣村でさえ百キロ以上ありますよ。噂に聞く自動車だとて、戦いながらでは一日掛けてもたどり着けるかどうか。

 広いですからね、この世界。貴方のいう異世界の十倍以上はありますし。私には神国だけで十二分に広いのですが、更に他国へ遠く遠くはるか。個人の身では回りきれません。

 なのに邪神のせいで大半の土地は人類が住むのに適さない土地と成り果ててます。この村のように開墾従事者たちは頑張ってくれてますけれど、世界から瘴気の影響を消し去るまで何千年掛かることやら。瘴気発生元の核はダンジョン奥深くに設置されてるって聞いてますが、奥まで深すぎて常人ではたどり着けませんしね。

 いえ、そのアデプト様が全力で挑んでも最奥まで数日以上掛かるって話です。既存の街周辺に出現した場合は被害を抑えるため出動要請されますが、間に合わず滅びる街は当然ありますよ。

 先のシルメニア。さきほど言った街ですが、普通は滅んでいたはずなのです。どこからも救援が出ていなかったとお聞きしてますからね。なのでアデプト認可を受けたばかりの白様が出向くこととなられたのですし。

 救助却下は人道にもとる? すいません、言っている意味が分かりません。貴方は空間系魔法を取得されているのですか。この世界随一の転移魔法使いであるハレム王様でさえ諦めた道を、単なる感傷で非難されるのはお止めください。

 転移門には制限あると先程言ったでしょうに。住民全員を避難させるには、どのみち不足しま……ああ、通行量にも制限あるとは言いませんでしたかね。転移門の長期間解放は自然に反しますので今のところ不可能なのです。一つの街住民全員の避難にどれだけ時間掛かるかを鑑みれば全員避難は到底不可能、ゆえに取捨選択。当事者になれば確かに悔しいことですが、この世界では当然のことですよ。

 納得できないと申されましても、私ごとき一介の吟遊詩人に何をおっしゃいますか。下級魔物でさえやっと勝てる程度の戦闘力しか持ち得ていませんからね私は。悲劇があったとて、それを後世に伝えることしか出来ませんよ。

 もしかして、なんで救助にアデプト様以外が出向かないか知らないのですか。瘴気汚染区域とは、常に瘴気を浄化し続けねば死病を患い死んでしまう場所なんですよ。

 アデプト様でなくとも、高位治癒術を修めていれば死病を一応は治せます。しかし核から吐き出される瘴気の影響下で活動し続けたら再発してしまいますので、高位治癒術を修めたうえ戦闘力をも身に着けたかの方々以外は活動困難なのです。

 ですから、たった一人で街を救い得た白様は凄いと言うのです。救援出すこと叶わずな街へ出向き周辺魔物を粉砕したばかりか、七日七夜で生き残り全員の死病を全て治してのけたその御業、いくらアデプトだとて普通は数人がかりの難事ですよ。

 話を盛ってるだなんて、そんな馬鹿なこと現地で言ったら殺されますよ貴方。私自身でもシルメニアに赴いてますけれど、未だ直しきれない破壊痕があちこちにありますからね。あそこが領主城まで攻め込まれたのは確か。

 その状況を経ても住民が街を営んでいるのですから、白様が住民全員を救ったことについて疑う余地はありません。後日の移住だなんて、数千人単位での移住者をどこから集めてくるのでしょうか。

 私の唄ではカッコよく見捨てられなかったとしてますが、本当のところは分かりません。案外、使者が可愛い女性だったからかもしれませんよ。いえ、そんな噂もありますってことです……何ですか、その意外だみたいな顔。さっきのハレム王様と同じじゃないか?

 いいえ違います! どちらも愛情ですよ、欲望じゃないです勘違いしないでください。そして、いいじゃありませんかロマンス! それで街が救われたのなら、大いに吹聴すべきです。アデプト様たちも見返りなしで動けるはずがありませんからね、生きていくためには無報酬とはいきませんでしょう?

 それに、アデプト様ともなれば渇望に触れるかどうかは重要な判断材料とお聞きします。合致しないまま活動された場合、そのお力は著しく落ちてしまうらしいですよ。私たち一般人の渇望なんて些細な力しかもたらしませんけれど、渇望を糧に成長なされた方々ですからね、それもやむなしと私は思ってます。

 むしろアデプト様個人の渇望が世界を救いうるほど力を持つならば、いっそ推奨されるべきなのかもしれません。ふむ、白様のシルメニア出陣理由を練り直しておきましょうか。

 犯罪者が力を得たならって、その程度の欲望でアデプトには至れませんよ。愚直に自身と向き合い鍛えねば、絶対アデプトには成れないそうです。他人に迷惑掛けたいだなんて些細な欲望持ちは、そこまで自分に厳しく出来ませんでしょうし、そういうことです。

 そういえば白様の渇望についてはまだ伏せられたままでしたね。あれだけ活躍され、さぞかし強い渇望を抱いていらっしゃると思うのですが、どうやら目に見える形で示されたことが無いとか。

 金銭に執着せず、異世界からの転生者ゆえ土地にも執着せず、かといって遊び呆けることもなくアデプトになられ、噂では食事も簡素すぎて侍女が困ってるなんて話さえあるみたいですよ。

 自分でもよく分かってないらしい? ……そんなことありますでしょうか。固有魔法を取得されないままアデプト任命に至ったとはお聞きしましたが、不死魔王との戦いではついに看破系の固有魔法を発動なされたと。ですからその時点でご自身の渇望を自覚されてるはずなんですけれども。

 ところで、その不本意そうな顔をやめてくだいませんか。顔に出やすいというか、聞いたことが気に入らなさそうな際に視線が一瞬動くんですよ貴方。角度にしてほんの僅か一度分くらい。ほんの僅かですからそんなに気にするほどではありませんが、こちらも仕事で鍛えてましたので分かってしまうんです。

 でも、何がそんなに不服なのか分からず何か気になりまして……あからさまに言い過ぎまして、申し訳ございません。

 もしや私に見惚れ、って冗談です! そこで何で視線が動くんでしゅかっ! いくらモテない私でも傷つきましゅよっ!!

 ぐぐぐ、私も早くロマンス欲しいのに。あー白様が羨ましいっ!

 そこ、別にだなんて言わせませんよ。なにせ白様の女性話はいまや凄いことになってますからね。いまお側にいらっしゃる方がそのシルメニア出身らしいですし、アーキノルカの竜人フォニア様も近くにいらっしゃるんですって!

 竜人といえば戦闘能力が高いことで有名な人種ですが、フォニア様はなかでも王族出身なだけあって一等能力が高いらしく、あの訓練を十年で修められたとか。ほんと凄い人ですよねぇ。

 白様と一緒に不死魔王を討伐なさいましたし、銀灯様を除けば世界で五名しかいない魔王討伐者の一人ですよ。同じ女性として憧れますよね。プロポーションも凄いですし。

 いっ、いえ、僻んでるわけじゃありませんよ。何ですかどこを見てるんですか!

 油断も隙もない。まるでアデプト様のような観察眼ですね。謝罪する? はいはい。

 それで続きですか。そうですね、他にも同じアデプト様のメルミナ様もご執心とお聞きしてますよ。どこでそんな話がと言われましても、普通に聞こえてくるとしか。

 デート目撃情報は、フォニア様の話ですね。種族固有の凄いことをなさってらしたんですって。その直後に不死魔王討伐ですから、愛の力が二人を後押ししたのではってもっぱらの話です。

 ある意味、初めての共同作業ですしね! 異世界では結婚式の際に二人一緒でケーキ入刀なさるなんてしきたりあるらしいですけど、まさか魔王でなさるとはスケールの大きい話です。

 何でそんな話って、アーキノルカでは普通に話しされてますよ。結婚式が待ち遠しいって誰彼となく話題にしてますからね。あそこの国王様も祝福されたとかで、実にめでたいことです。お二方ともアデプトですから仲を割くなんて出来ようもないですが、王女としての立場を鑑みれば色々ございましょうに。

 ただ、お二方がご一緒になられると、フォニア様単独題材の唄は今後求められなくなりそう。不死魔王戦でのペア討伐と比べれば、どうしても格が劣りますもの。嬉しい悲鳴ではありますが。

 分かったからもういい? そうですか、ロマンス話はいくらあっても良いんですけれど仕方ないですね。白様には他にも銀灯教官様との話なんかもありまして、ってまたもや不思議そうな顔ですね。

 だって銀灯様ですよ。唄の人気が一番な、あの銀灯様が懸想出来るほどの相手となれば、これはもう白様しか居ないと評判なんですよ。

 銀灯様ご本人への評価になりますと、少々恐れ多いというか、隔絶しすぎて近寄れないといいますか、散々唄で稼がせていただいてますのでもう物語の住人としか見られないといいますか。もう英雄でしかない人です。

 年一度のお祭り時にご尊顔を拝見してますが、あの美人すぎるお顔がよろしくないんでしょうかね。お隣に男性がいらっしゃっても霞んでしまいがちなんですよ。いくらご活躍をお聞きしても、銀灯様の歩みには及ばないって先入観がありますし。

 その点、白様なら問題ありません! 何せ不死魔王の討伐実績ですよ。この千年封印しか出来ず、銀灯様でさえなし得なかったあの不死魔王殺し。もう偉業としか言いようがありませんからね。

 災厄級を二体屠っているのも立派な功績。災厄級は一年に一体くらい出現してますが、騎士団でも苦戦する相手。いくらアデプト様とて油断出来ようもないのですけれど。そしてトドメに天蓋竜の単独撃破! 白様が銀灯様に並び立たないなら誰も立候補出来やしませんって。

 今年のお祭り時は見合い相手が白様になるはずなので、そのままご成婚まで決まることを期待してます。

 いえ、当の銀灯様については、本人の様子はほとんどお聞きしてません。お忙しすぎてフォニア様のような分かりやすいデート話など出ようがありませんよ。

 じゃあどこからと……いえ、これは多分に願望混じりなのを否めません。だってですね、銀灯様ですよ。確かにあのお方は英雄なのですけれど、だからと言って個人の幸福を掴めないなんて酷いじゃありませんか。白様は既に英雄となられてますのに、それでも銀灯様に相応しくないなんてなったら、誰もお相手の条件を満たせませんよ。

 あのハレム王様でさえ銀灯様とは結婚出来ずでしたし、お眼鏡に適う方が少ないのは分かっておりますけど、今度こそはと思うのです。

 長年独身なお方といえばのもうお一方、聖国にいらっしゃる聖女様もまだ浮いた話ありませんし、どちらが先に結婚なさるのかしらと密かに始まった賭けも、もう数百年継続中となってしまいました。最初の関係者すら諸事情でかなり亡くなられてますので、そろそろ決着ついてほしいというのは我が儘な考えなんでしょうかね。

 私は祖母が銀灯様と申し込んだので、そのまま銀灯様で継続中です。銀灯様は名目上とはいえ年に一度お見合いされてますから、噂さえ無い聖女様より早いはずだって。聖女様も、どんな事情がおありなんでしょうね。

 でも銀灯様の話は、願望だけじゃないんですよ。実は先日、事態が大きく動いたと小耳に挟んだんです。何でも白様の侍女が、銀灯様の邸宅に引っ越されたのですって!

 白様本人はアデプト様ですから住処を変えたなんてご自身で言うはずありませんし、もちろんその侍女が吹聴することもありえませんが、普通にお買い物なされていればある程度察することが出来ますもの。これがどんなに凄いことか分かってらっしゃらないかもしれませんけれど、本当に凄い話なんですよ。

 そして、何となんと侍女ご本人も功績をあげられたそうなんですよ! 詳細はまだまだ検証中らしくて明らかになってませんけれど、邪神に一撃与えたって話です。

 いえ魔王が相手じゃないですよ? ええ、その魔王を作り出す親玉の話です。白様の話と混同してる? いえいえ勘違いなどしてません。そうじゃなくてですね、先の天蓋竜再襲撃のさい、何故か直接狙われたのだと。

 これが本当なら物凄い功績。ですが、どうやってとかアデプトでない方が標的にされた経緯とか天蓋竜戦以上に謎だらけな話なので、信じがたいと思われるのも分かります。

 なにせ数千年も隠れ潜んでた邪神の話ですからね。私自身も事が大きすぎて疑いたくなりますもの。でも、絶対に本当のことだと思います。

 だって白様との絆ゆえって聞いてますもの! 永遠に唄われるロマンス話となりますよ!

 武装メイド羨ましいじゃありません! ドンドコドンでもありません! それに何ですか、そのXXごときって言い方。使用人ならご自身で稼いで雇われればいいでしょうに。昼間からお酒に手を出されてましたし、当然に稼いでらっしゃいますよね。

 はぁ? いやさっきのは景気づけって、何てもったいない飲み方。異世界の作法は分かりませんが、労働せずして呑むことなかれですよ。まったくもう。

 あとですね。愛がゆえなら、結ばれてしかるべきですよやっぱり。それが強いお方相手なら、なおさらです。銀灯様とは愛でない? まだそんなこと言ってますか!

 そして他のフォニア様にしろメルミナ様にしろ、あの方々のどこに妬む隙間があると言うのですか! 人の恋路は、じゃありません! 強い思いとはすなわち愛! そうですロマンスこそが世界を救う鍵なのです!

 せめて唄にはしないほうがと言われましても、私はこれが仕事ですからね、きっちり唄わせていただきますよ。そうです、吟遊詩人は唄うのが仕事。愛の物語を万人へ届けるのが我々の役目なのです。

 それにしてはじゃありません! 私にだってロマンスくらいあります! やはり愛がなければこの世は成り立たないのですから当然なのですっ! 分かりましたか!?

 よろしい、ロマンスは心の栄養で世界の必須要素なこと理解していただけましたか。

 ではお代を、ってがめつくないです。詩作時間を当ててますからね、当然の報酬です。

 それに先程の解毒費用、高度数なお酒もまだいただいてませんでしたよね。もう少し時間いただきますよ。おしゃべりが過ぎましたから、心にも喉にも潤いを与えたいのです。労働の対価ですからね、これこそが正しい呑み方というもの。

 そして、後で私の唄もちゃんと聞いてもらいますよ!




 前話から三ヶ月、遅れに遅れて申し訳ございません。ここしばらく忙しすぎました。
 サブタイトルのネタ元はロマけ……げふんげふん。
 愛なくして偉業なしならば唄にも反映されてるはずが、ロマンスの聞こえない教官いと哀れ。
 コノエについてはハレム王に継ぐ勢いのロマンス続出ですからね。
 これは唄いがいあります! そんな感じで張り切ってる方多数だとの思いがこの話でした。
 賭けの内容は捏造でして、そも賭け事してる余裕無いかもしれませんが、どうなのでしょう。
 話相手となってる転生者男性は、コノエに嫉妬している設定で書いてました。
 強くてハーレムはズルいと言われても、その感情は愛へ繋がらないのにね。
 この二次小説も愛で書きたいと思ってます!

 あと読んだ足跡に顔文字『(o´∀`)b』でも何でもカキコくださると嬉しいです!
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