ガリュードの策略によりホエルがゴジュウジャーを辞めて数日が過ぎた。テガソードの里を出ていったホエルは今現在・・・。
「おかえりなさいませ。お嬢様」
コンセプトカフェで執事をしていた。
「まぁ、座れよ」
普通の喫茶店なら接客態度が悪いと言われておかしくない態度ながらも、ここはコンセプトカフェ。ホエルは『マイルドヤンキー系執事』という地位を確立して、このカフェでトップクラスの人気執事となっていた。
「ありがとな店長。こんなはぐれものの俺なんかを雇ってくれて」
「気にしないでいいよホエル君。むしろ店の売り上げは君が来てからうなぎ上りでこっちが感謝してるぐらいだよ」
逆に感謝を伝えられたホエルはそれに応えるためにも仕事に戻ると、新規の客らしき男が席に座っていた。その男の服装に見覚えがあったホエルはメニュー表で隠れていた顔を覗き込もうとすると、男は注文を決めたで顔を露わにする。
「このスペシャルサンドイッチってのと当店ナンバーワンコーヒーってのを頼む」
その男というのはホエルの予想通り、ファイヤキャンドルその人だった。
「ん?どうした?」
「あ、いや・・」
マスクで口元を隠していたためか、自分が遠野ホエルだと気づいていない様子のファイヤキャンドル。自分だと気づかれていないことを理解したホエルはひとまず注文内容を厨房へと持っていき、サンドイッチとコーヒーを提供しようとすると、なにやらファイヤキャンドルは何かにイラついている様子でわなわなとしていた。
「畜生!ムカつくぜあのバッテン野郎!」
突如として立ち上がったファイヤキャンドルは大声でそう叫んで店内が一瞬静まり返ると、何事もなかったように席に座り直す。
「バッテン・・・もしかして」
ガリュードであるクオンに何か言われたのだろうかと察したホエルだったが、仮にも敵同士。そのことを聞く関係ではないと考えたホエルは何があったかを尋ねることはせずにサンドイッチとコーヒーを提供した。
「いただきます」
先ほどまでイライラしていたというのに、手を合わせて『いただきます』というほどに切り替えて食事をし出したファイヤキャンドル。そして食事後も『ごちそうさまでした』と手を合わせると席を立ちあがる。
「1260円だ」
「ん?あぁ。この世界じゃ金を払うっていうのがルールだったな」
ノーワンワールドでは金を払うという文化がないながらも、こちらの世界で金を払うというルールは知識程度にはあったファイヤキャンドルは黒いカードを取り出す。
「これで払えるか?」
「悪いな。普段はキャッシュレスも対応してるんだが、一昨日レジの機械が故障しちまって、昨日今日は現金のみなんだ。店の前の張り紙に書いていたが・・・見なかったのか?」
「おいおい、マジか」
どうやら張り紙を見ていなかった様子のファイヤキャンドルはため息をつくと、店長がやってくる。
「お坊ちゃま。今回はこちらの都合ということもありますし、1週間以内にまたお越しくださるというのなら今回の料金はまた次の機会にということもできますが」
機転を利かせてくれた店長は支払えないかわりの提案をしてくるものの、義理堅いファイヤキャンドルは首を横に振る。
「いや、ルールはルールだ。金が払えないってんなら、そのぶんここで働こうじゃねぇか」
「・・・マジか」
展開についていけないホエル。さらに店長はとんでもないことを言い出す。
「君、顔がいいから彼といい勝負ができると思うよ」
「勝負ねぇ。いいぜ。やるからにはナンバーワンになってやろうじゃねぇか!てめぇ、名前は?」
「バトラー・ロンリーウルフだ」
こうして店の売り上げナンバーワンの座をかけたホエルとファイヤキャンドルの執事対決の火ぶたが切って落とされた。
「あいつ、いったいどうしたのだろうな」
ホエルが執事対決を始めた頃、禽二郎はテガソードの里を去ったホエルの事を心配していた。
「深入りはしないほうがいい。去るもの追わずさ」
「でもあれは抱え込んじゃうタイプよ。絶対ね」
ゴジュウジャーの面々はなんだかんだでホエルの事を気にかけていると、そこに1人の男が訪れる。
「君たちにホエルの何が分かる」
「あなたは・・・!」
ガリュードに変身していたクオンが来たことに一同は表情を強張らせる中、1人は即座に切り替えて名刺を取り出した。
「クオンAIコンチェルンの社長にお会いできるとは光栄です~」
角乃は名刺をクオンに手渡したのだが、一応受け取ったクオンはすぐにそれを投げ捨てた。
「トップ企業の社長がここにどのようなご用件で?」
「ホエル・・・『遠野咆』は僕の弟だ。僕は兄としてホエルのことを誰よりもよく知っている。自分の名前の漢字が書けないことも、辛い物が苦手なことも、寂しがりやなことも。ホエルは純粋なんだよ。地上に舞い降りた天使のようにね」
「ホエル君が天使?・・・フッ」
流石にホエルが天使というのはないと笑ってしまった陸王だったが、その笑いに対してクオンは怒りの表情を見せる。
「何がおかしい?ホエルは僕の愛。僕の希望。僕の大事な大事なお人形。だからさ僕がホエルを正しく導かなきゃならない。ホエルの友達は僕が決める。・・・まぁ、君たち全員失格だ」
指で×を作ったクオンは陸王たちはホエルの友として相応しくないと告げると、クオンという人物の異常性に一同はドン引きする。
「何こいつ、ヤバ」
「そんなこと。何故お前に決まられなくてはいけない!」
「どうかな?もう二度とホエルに近づかないと約束してくれないかな?」
「断るよ。僕たちと彼の好きにさせてもらう」
「そうか。だったら殺すしかないね」
白いテガジューンの指輪をはめたクオンは陸王たちの命を奪うことを判断すると一度辺りを見渡す。するとクオンはホエルと葵が写る1枚の写真に気づいた。
「ここじゃお互い狭いだろうし・・・広い場所に移動しようか」
その写真を傷つけたくないのか、クオンは場所を変える提案をしてきたので、一同はそれに従い場所を変えることにしたのだった。
「バトラー・ロンリーウルフVSバトラー・ファイヤキャンドル。売り上げナンバーワン対決、Ready?GO!」
2人の執事対決が始まると、先手を打ち客を迎えたのはファイヤキャンドルだった。
「溶かすぜぇ」
指から火を出したファイヤキャンドルはそれで手にしているマシュマロを女性客の前で炙ってみせる。
「お前ほどスイートじゃねぇけどな」
対するホエルも花瓶の花を1つ手に取って口に加える。そのワイルドさに女性客はうっとりした反応をしていた。
「ほらよ」
手にしたパイナップルを目にも止まらぬ速さでカットしたファイヤキャンドルは一瞬でお皿に盛り付けをするパフォーマンスをすると、複数の女性から歓声が上がる。
「ほっとけねぇな」
ホエルはほつれた服の裾を巧みな刺繍で元通りにすると、他の執事も含めた周囲から拍手をされる。
「いいねぇ。これは過去最高の売り上げだよ」
2人のバトルは熾烈を極め、互角のまま店の売り上げは過去最高のものとなっていた。
「お疲れ。一旦休憩に入っていいよ2人とも」
休憩に回された2人は階段で壁に寄りかかり、向かい合う事はしないながらも会話を始める。
「聞かせてくれ。そんなにナンバーワンになりたいのか?」
「あぁ。なりてぇ」
「ナンバーワンになることに何の意味があるんだ?」
「どうした?俺に負けそうだからってビビってるのか?」
「そうだ。俺は負けるのが怖い。誰かに裏切られたり失うのが怖い。誰かと関わることが怖いんだよ」
「フッ。お前は負け犬どころか、それ以下みてぇだな。ナンバーワンそのものじゃなく戦うことに、挑むことに意味があるんだよ。俺はあいつと戦いたい。その魂と覚悟を感じたい。・・・そうか、そうだったんだな。何度負けようが俺の炎は消えねぇんだ!ありがとよ!お前のおかげで目が覚めたぜ」
店長に一声かけたファイヤキャンドルが店を後にしていくと、ホエルはある声に呼び止められる。
『もう一度戦うのだ。遠野咆』
テガソードだ。
「テガソード。俺はあいつ等に牙を・・。仲間じゃねぇけど、一緒にいたってのに」
『戦え。お前自身の恐怖に閉じこもるのではない。戦うというのは向き合うこと。戦うというのは進むこと。戦うというのは自分の世界を切り拓くことだ』
テガソードにそう告げられたホエルは執事服を着替えるとゴジュウジャーの面々の匂いを感じる戦いの場所へと駆け出したのだった。
「「「「エンゲージ!」」」」
【クラップ!ユア!ハンズ!】
【ゴジュウレオン!】
【ゴジュウティラノ!】
【ゴジュウイーグル!】
【ゴジュウユニコーン!】
「エンゲージ」
【ガリュード】
ゴジュウジャーの面々とクオンがそれぞれ戦士と狩人の姿へと変身をすると、ゴジュウレオンたちはガリュードを取り囲みつつ、同時に攻撃を仕掛ける。それを両手と武器テガジューンの刃、そして左脚で受け止めたガリュードは回し蹴りで彼らを払いのけると、ゴジュウイーグルを刃で切り伏せる。
「ぐぅ!?なら」
【イーグルシューター50】
イーグルシューターでの射撃で複数の矢を雨のように降らせて攻撃を仕掛けたゴジュウイーグル。それをマントで防いだガリュードは3つの指輪をテガジューンにセットする。
【トッキュウジャー】
【ジュウレンジャー】
【ライブマン】
トッキュウ1号に恐竜戦隊ジュウレンジャーのティラノ戦士、ティラノレンジャー。さらには超獣戦隊ライブマンの超鳥戦士、レッドファルコンを召喚した。
「ハァ!」
ゴジュウイーグルとレッドファルコン。ゴジュウティラノとティラノレンジャー。ゴジュウユニコーンとトッキュウ1号がそれぞれ1対1での戦闘となると、必然的にゴジュウレオンが1人でガリュードの相手となる。
「そっちも銃なら・・!」
【センタイリング!】
【キラメイジャー!】
キラメイレッドへと変身したゴジュウレオンはレオンバスター50とキラメイバスターの二丁拳銃で銃撃をし、ガリュードに反撃の隙を与えまいと攻め続ける。
「キラキラしてるな。まずはその指輪からいただこうか」
ガリュードに撃たれたレッドファルコンはスーパーバイクのモトファルコンへと変化させられると、ティラノレンジャーがそれに跨ってキラメイレッドへと突撃していく。銃弾が当たるよりも速く駆け抜けるティラノレンジャーに中々攻撃を当てられないキラメイレッドはそのバイクによる体当たりを受けて、もとのゴジュウレオンへと戻りつつ、キラメイジャーの指輪をガリュードに回収されてしまう。
「リングハント。さぁ、残りも一気にいこうか」
さらにガリュードはトッキュウ1号も撃ち抜くと、その姿は両刃剣のレールスラッシャーへと変わり、もとの姿に戻ったレッドファルコンがそれを手に取る。そしてさらにティラノレンジャーまで撃たれて伝説の剣、龍撃剣へと変えられて、レッドファルコンはレールスラッシャーと龍撃剣の二刀流でゴジュウイーグルたちへと斬りかかる。
「「「うわぁぁっ!?」」」
「みんな、大丈夫か?」
その攻撃によって地面に転がされる3人にゴジュウレオンが近寄るとガリュードの合図でレッドファルコンは十字の斬撃を放ち、それを受けた4人は変身が解除されてその場に倒れ込む。
「強情だね。君たちはホエルと何も関係ないだろ。繋がりも、絆もない」
「確かに、我々とあいつには何も関係などない!」
「お前ら!無事か!」
竜義が繋がりがないことを語っている最中に丁度ホエルがやってくる。
「遠野!私はお前に言うべきことがある!貴様!うちのツケを払っていないだろう!」
こんな状況にも関わらず、竜義はツケが溜まっていることを述べてくる。
「そうだ。この間貸した漫画!延滞料金発生中だぞ!」
「バイトの紹介をしたんだから仲介料当然くれるよね?」
「僕のスマイル、有料なんだけど」
ほとんど難くせをつけるかのように無理やりにでも金の繋がりはあると告げてくる4人。
「この通りだ!絆とやらはないが、借金ならある!」
「ここまで言えば伝わるよね!」
陸王に投げつけられた指輪をつかみ取ったホエル。するとガリュードは4人とホエルの間に割って入るかのように立つ。
「無理だよホエル。お前には何もできやしない」
「俺は・・・」
躊躇いのあまり立ち尽くすホエル。そこに4人が叫んでくる。
「逃げるな!戦え!」
「戦うんだホエルっち!」
「遠野!」
「ホエル!」
4人に戦うよう言われ、ホエルは何のために戦うのかを自分の中で判断する。
「俺も、俺だってお前らと全身全霊で戦いたい!お前たちと!ライバルたちと!この世界と!」
【クラップ!ユア!ハンズ!】
【ゴジュウウルフ!】
「俺はゴジュウジャー!ゴジュウウルフだ!!」
ゴジュウウルフが、ホエルがそう吠えた瞬間、胸の円と指輪が赤く輝いた。ゴジュウウルフがそれに手を当てた瞬間、円から1本の赤い短剣が出てきたのだった。
次回「忍ぶ気のない負け犬の刃」