「帰ってこないね。竜義」
竜義がホエルとのナンバーワンバトルに敗れて1週間が経過した。テガソードの里にすら帰ってこない竜義を心配していたゴジュウジャーの一同は重苦しいとまではいかないが少し暗い雰囲気になってしまっていた。
「ここの店長は暴神さんなのに。店長交代かしら?」
「え〜。あの変っぷりじゃないとここの店長は駄目だよ」
飯島親子はテガソードの里の店長交代を考えていると、何やらホエルは腹部を押さえながら苦しそうな表情となる。
「ホエル、大丈夫?」
「や、やべぇ。流石に・・・」
賞味期限がかなり過ぎていたものを食べてしまった事により食あたりで倒れてしまったホエル。こうして彼は病院に搬送される事になってしまうのだった。
「賞味期限1カ月切れの乳製品は駄目だよホエル君」
「いけると思ったんだ」
3日ほどの入院をする事になったホエルのもとに陸王たちが見舞いに訪れると、病室の前の廊下を医師の集団が通り過ぎていく。
「あんなのドラマだけだと思ってた。ん?」
角乃はドラマみたいだと思っているとその医師らね中に見知った顔がいた事に気づいた。
「竜てゃ!心配したんだぞ!」
「何故ここに?」
「それはこっちのセリフって言いたいところだけど、そうか。ここは君のお父さんの病院だったね」
ホエルが入院したのは暴神病院。竜義の父親である暴神竜斗の病院だったのだ。
「ということはコチラの方が院長様ですね」
角乃は竜斗に名刺を渡そうとすると、竜斗は一連の流れを見て溜息をつく。
「竜義、友は選んだ方がいいぞ」
明らかに呆れたようにそう言った竜斗はその場後にすると竜義もそれを追うようにその場を去っていく。そして竜義は竜斗のいる院長室へと入室した。
「来たか竜義。これからは暴神家の跡取りとして院の経営のほうも学んでもらうぞ」
「はい」
「お前の幸せは私が決めてやる。お前は私の言葉に従っていればいいのだ」
「・・・はい」
父親に何も言い返さなかった竜義は院長室を後にする。そのすぐ後、竜斗はノーワンワールド、ドクターナンバーワンのノーワンに身体を奪われてしまうのだった。
「そう言えば以前竜てゃは言っていたな。『父も母も自分の事をただの暴神家の跡取りとしか見ていない。あの家に居たままでは私は人形になる』と」
「確かにあれじゃまるで親の言いなり。人形みたいだね」
「人形・・・」
思うところがあったホエルはゴジュウティラノの指輪を見つめていると、ノーワンのニオイを感じる。
「ノーワンのニオイだ」
ホエルの嗅覚でノーワンのもとに向かおうとすると、ドクターナンバーワンのノーワンが白衣を着たアーイーらを引き連れて廊下を歩いていた。
「私こそノーワンワールド、ドクターナンバーワンノーワン!」
「だろうな。こんなところにいるノーワンなんてそんなんだろうと思ってたぜ。とっととぶっ倒して・・・うっ!?」
ノーワンを倒しにかかるためテガソードを握るホエルだったが、胃の痛みですぐに立ち上がれなくなってしまう。
「大丈夫か2代目」
『見舞い品を特別に持ってきてやったクマ〜』
そこに真白も遅れてやってくると彼らは一旦その場を離れて医師たちが捕まっている場所へと向かい、アーイーたちを倒して医師たちを救出する。その中には竜義も紛れていた。
「丁度いい。こいつを一旦返してやるから手を貸せ竜義」
ホエルは竜義にゴジュウティラノの指輪を握らせて手伝わせようとするものの、竜義はそれを握る事なく足元に落とす。
「私に救える人間などいない。私がいなくとも誰かが指輪を集める。私などいてもいなくとも変わらん」
心が折れてしまっている竜義にホエルは溜息をつく。
「どうやら俺の知っていた竜義はもういないらしいな。陸王、金貸せ」
陸王は今?と反応しつつも財布を取り出すと、ホエルは半ば奪うように財布からお金を抜き取り竜義に渡した。
「これで店のツケは返したぜ。じゃあな」
「・・・君はこれでいいの?誰かの言いなりで自分の行く末を決められちゃってさ」
「だったら俺はどうすればいいんだ!!」
自分で自分を決められない竜義はそう叫ぶと、彼らの背後に零がやってきた。
「生きるのをやめてしまえばいいのさ。暴神家の御曹司くん」
ゴジュウティラノの指輪を拾い上げた零は厄災の指輪にそれを食わせながら竜義にそう告げる。
「零さん・・・」
「懐かしい場所だ。ここはまるで変わらないみたいだね。まぁ、俺たちは変わってしまったけどさ。エンゲージ」
【クラウゼロ】
「からの。さらにエンゲージ」
【ゴジュウティラノ!】
リングイーター、クラウゼロに変身した零は指輪の交換をせずに厄災の指輪を変化させて、ゴジュウティラノへと変身した。
「ゴジュウティラノ!?」
自分ではないゴジュウティラノに複雑な感情を抱いた竜義。
「「エンゲージ!」」
【ゴジュウイーグル!】
【ゴジュウユニコーン!】
禽二郎と角乃はゴジュウイーグルとゴジュウユニコーンに変身して竜義に襲い掛かろうとするゴジュウティラノを抑え込む。
「竜てゃ!早く逃げろ!」
「そうよ!てか陸王たちも早く戦いなさい!」
「「「エンゲージ!」」」
【ゴジュウウルフ!】
【ゴジュウレオン!】
【ゴジュウポーラー!】
ホエルたちもゴジュウウルフらに変身して戦闘に参加しようとすると、騒ぎに気づいたノーワンがゴジュウジャーを倒すため自分からやってきた。
「見つけたぞゴジュウジャー!何やら黄色と争っているようだがまとめて倒してくれる!毒針!」
「危ねえ!」
ノーワンは毒針を周囲に見境なく放つと、ゴジュウポーラーは竜義を庇い毒針を喰らってしまい、他の者たちもゴジュウティラノを除き毒針を受けてしまう。
「ったく。世話のかかるお坊ちゃんだ」
「医者のくせに毒を使うとは」
「あれ?そのノーワンの中身はもしかして」
ゴジュウティラノは厄災の力でノーワンの中身を見通す。
「ハハハ!やっぱりだ。お久しぶりですね。暴神竜斗先生」
「父上がノーワンに・・・ッ」
竜義は自分の父親がノーワンに取り込まれていたことに動揺していると、ゴジュウティラノはノーワンを容赦なく怪力で殴りつける。
「あれ?もしかしてお忘れですか?酷いなぁ。あの時俺を病院から切ったことは根には持ってませんよ。だけどただ貴方は気に食わない。昔からね」
するとゴジュウティラノは指輪から今現在行方不明となっている学園の生徒を1人外へと出すと、カクレンジャーの指輪を発動した。
【カクレンジャー!】
その生徒はカクレンジャーの指輪の力でニンジャレッドへと変身し、ニンジャレッドはシノビナックルで何度もノーワンを殴り、痛めつける。
「それじゃトドメは俺が」
ニンジャレッドと交代して中の竜斗ごとノーワンにトドメを刺そうとするゴジュウティラノ。そのタイミングで竜義が動いた。
「うおぉっ!」
竜義の体当たりでもビクともしなかったゴジュウティラノだったが、まさか竜義が動くと思ってなかったゴジュウティラノは彼に視線を向ける。どうやら竜義自身もどうして自分が動いたのか分からない様子だ。
「邪魔しないでくれるかな?俺は元々ここの外科医でね、それをあの中の男は長年尽くした俺を怪我で使い物にならないとリハビリ半ばで切り捨てた!あいつは人間を駒にしか思ってないんだ!」
「そうだろうな。確かに父は酷い男だ」
「だろ?じゃあやっちゃって問題ないね」
「だが父に縛られたままでは、私は自由になれない!だから私は家を出たんだ!」
「君の身の上話なんてどうでもいいよ。君も嫌いなお父様がいなくなったら清々するだろ?」
「確かに父は嫌いだ。だがやられそうになり体が動いた。動いたんだ。そう、私は父から逃げたんじゃない!自分を貫きたくて家を出たんだ!他の誰でもなく私が世界を変えたい。そう願うために!」
そう心から竜義が吠えると竜義は手を伸ばす。
「それが私の願い!指輪よ!来い!!」
竜義の願いに呼応するようにゴジュウティラノの指輪が輝き始める。するとゴジュウティラノの指輪は厄災の指輪から吐き出され、ゴジュウティラノはクラウゼロの姿に戻り、ゴジュウティラノの指輪は竜義の手に戻った。
「せっかくのクライマックスに水を差すだなんて。今日はここまでにしようか」
クラウゼロは厄災の力で空間を喰らうようにニンジャレッドとこの場を去ると、ノーワンは厄介な相手がいなくなったことを喜ぶ。
「邪魔者は去った!コレなら!」
「これならどうしたと言うのだ?」
意気揚々と毒で倒れてるゴジュウジャーの面々に振り返るノーワンに対して、竜義が向かい立つ。その手にはテガソードが握られている。
「テガソード様!力をお貸しください!!エンゲージ!」
【クラップ!ユア!ハンズ!】
【ゴジュウティラノ!】
「私のこの手で世界を癒す!怪力伝道師、ゴジュウティラノ!テガソード様とともに!」
「ナンバーワンバトル!Ready?Go!」
ゴングが鳴り響くと、ノーワンは真っ先に竜義が変身したゴジュウティラノへと大きなメスを振るって攻撃してくる。
「私のメス捌きに酔い痴れろ!」
しかしノーワンのメス攻撃をゴジュウティラノはすべて捌ききる。
「貴様、何故私のメス捌きに対応出来る?これほどの腕前をどうやって?」
「悔しいが父の腕がいいのでな。散々教えこまれた。私は医者だ。私は世界を蝕むものを切除し、治療する!」
「世界をだと、なんというスケールだ」
「父よ。・・・ハァッ!」
【フィニッシュフィンガー!ティラノ!】
テガソードの刃をノーワンに突き刺して竜斗を引き抜いたゴジュウティラノ。そのままティラノハンマーでノーワンを叩き伏せて撃破したゴジュウティラノは人差し指を天に掲げる。
「私こそ!ドクターナンバーワン!」
「ゴジュウティラノ!WIN!」
ゴジュウティラノがノーワンを撃破した事により解毒されたゴジュウジャーの面々は一安心していると、ノーワンの後ろにいた金アーイーのアニマ・ルハートがアイアイザーを駆り出してきた。
「先生の敵は私が討つ!」
「おいでください!テガソード様!」
【アウェイキング!】
「人神一体!」
【テガソード!イエロー!】
テガソードと一体となった竜義。するとテガソードは彼へと語りかける。
『よく戻ってきた。暴神竜義』
「テガソード様!この暴神竜義はやはり貴方と共に有りたい!」
テガソードはアイアイザーの巨大メスを受け止める。
「私のこの手で世界のしがらみを失くしたい。世界を救いたい!それが私の願いです!」
自身の願いを叫んだ竜義。テガソードはそれに応えてアイアイザーのメスをはじき飛ばすと、地面に突き刺さるメスの上にゴジュウポーラーが跳び乗った。
「お坊ちゃん。俺様からの復帰祝いだ。使いな!」
【タイムレンジャー!】
ゴジュウポーラーが指輪の力を発動すると、テガソードの両腕がタイムレンジャーの巨大戦力であるタイムロボαの両腕へと変化する。
『暴神竜義、お前の願い。しかと聞き届けた。行くぞ』
「いやさか!」
タイムロボαの剣、時空剣でアイアイザーを斬りつけるテガソード。するとテガソードは時空剣を開いて必殺の構えを取る。
「プレスブリザード!」
時空剣の一撃に斬られたアイアイザーは凍って爆発するように砕ける。
「タイムアウト!」
アイアイザーを撃破したテガソードは通常の姿へと戻って無事に竜義はテガソードの里へと帰ってくる。
「うん。やっぱりこの味よ!新しい店長を探さなくて良かった〜」
「ご迷惑をおかけしました」
飯島親子だけでなくゴジュウジャーの面々にもオムライスを提供した竜義は迷惑をかけたことを謝罪するとホエルへと振り向く。
「遠野、あの時の他の指輪はお前が持っていてくれ」
「頼まれても返さねぇよ。それより、このオムライスの代金。払えねぇからツケで頼む」
「フッ、あぁ。分かった」
笑って振り返った竜義は祭壇のテガソードに手を合わせる。
「テガソード様!私はこれまで以上にテガソード様の力となりましょう!そうだ!私はこれよりテガソード様のかかりつけ医となります!」
豹変した竜義に苦笑する一同。そんな中、陸王はふと真顔に戻って零が角乃の妹を別のユニバースに送ったと言っていた事を思い返す。
「角乃ちゃん。話があるんだけど、いいかな?」
「何?改まって?」
「君の妹さん。織戸ちゃんに関係する大事な話だ」
陸王は角乃に真実を話す決意を固め、零と織戸の話をするのだった。
陸王が角乃に真実を話す少し前。零は単身でノーワンワールドへと赴き、テガジューンたちの城へと向けて歩いていた。
「侵入者よ。これより先は通さん」
そんな零を迎え討とうとするMr.シャイニングナイフ&Mrs.スイートケークだったが、零は彼らを見てニヤリと笑う。
「やぁ。君たちに会いに来たんだけど、君たちから来てくれて嬉しいよ」
零は厄災の指輪から邪悪な波動を放つと、Mr.シャイニングナイフは苦しみ出す。
「うぅ・・・」
「ちょ!?大丈夫ダーリン!?」
「種は蒔いた。後は芽吹くのを少し待とうか」
やるべき事はやったとすぐにノーワンワールドを去っていった零。彼が蒔いた『種』が芽吹くのはそれから10日後の事だった。
次回「真の世界を選べ。最終究極剣」