「クオン!」
変身を解除したホエルは倒れているクオンに歩み寄る。
「思い出したよ。お前の昔の願い事をさ」
クオンは幼き日のホエルの願い事が『お兄ちゃんとたくさん遊ぶ』だった事を思い出して微笑む。
「本当に、憎たらしい弟だよ。お前は」
こうしてブライダンとの、クオンとの決着がついた。その場にいた殆どの者たちがそう思っていた矢先の出来事だった。
「ッ!」
突如として暗雲が出現して青く鋭い落雷が降り注ぐ。真白はその圧倒的とも言えるプレッシャーに覚えがあった。
「この気配!まさか最後の厄災が復活しようとしているのか!?」
そう、それは真白とテガソードがかつて封じ込めた厄災の親玉。厄災の王その気配だったのだ。
「このタイミングで厄災!?」
「皆、特にホエルっちが満身創痍だぞ」
万事解決といかないどころか最悪の事態になろうとしていた事に動揺する禽二郎たち。ホエルは気合いで立ち上がり厄災とも戦おうとすると、クオンがホエルの前に立つ。
「あの厄災はまだ完全に目覚めた訳じゃない。テガソードと同格となったテガジューンの力を持つ僕でも、いや、僕なら今のアイツを再封印できる」
「本当か!」
「あぁ、お兄ちゃんを信じろ」
「信じるぜ」
先程まで命をかけて戦っていたと言うのにホエルは兄であるクオンの言葉を信じて疑わなかった。クオンは迷いなく答えたホエルに少し目を丸くするとクスリと笑う。
「とはいえこっちも最大の力をぶつける為にそれなりに時間が必要だ。その間、厄災は雑兵を出してくると思う。時間を稼げるかい?」
クオンがホエルに『お願い』をするとモリスたちがあちこちに湧き出てくる。
「あぁ、兄ちゃんは俺が守ってやるよ!エンゲージ!」
【ゴジュウウルフ!】
ゴジュウウルフに変身したホエルはクオンに迫るモリスたちを相手にする。
「僕らも行こう!」
「「「「「エンゲージ!」」」」」
【ゴジュウレオン!】
【ゴジュウティラノ!】
【ゴジュウイーグル!】
【ゴジュウユニコーン!】
【ゴジュウポーラー!】
陸王たちも変身してモリスたちと戦い始めると、ファイヤキャンドルも烈怒に姿を変える。
「ザルバ!厄災相手だ。不完全燃焼分ガチるぜ」
『派手に暴れてやれ。相棒』
ザルバにボウケンジャーのセンタイリングを咥えさせた烈怒はその力を解放して、その戦隊の必殺技を発動する。
「レッドゾォォンクラッシュ!!」
ボウケンレッドの必殺技、レッドゾーンクラッシュを発動した烈怒は目の前のモリスたちを撃破すると背後から迫るモリスの攻撃に反応が遅れてしまう。
「ファイヤキャンドルさん!」
そこに現われたブーケは二丁拳銃の銃撃でそれを退けると、烈怒はブーケに詰め寄る。
「ブーケ嬢!心配したんだぞ!」
「申し訳ありません。色々と申し開きはありますが今は・・・」
「あぁ、今は厄災が再優先だ」
「見たところガリュードさんには何か策があるようですね」
『ファイヤキャンドル。ブーケ。お前たちに最後の命令を下す。ガリュードを守り、その作戦を支援せよ』
最後。ブライダンの敗北を認めているテガジューンのその命令を受け入れた烈怒とブーケは力を溜めているクオンを守護するように立ち回ると、500メートル級はありそうな巨大な黒い悪魔のような靄が出現した。
「まだ完全じゃないが厄災の王が、その力が俺様の封印から漏れ始めてるみたいだな。2代目!お前の兄貴が蓋をするまでテガソードで食い止めろ!」
「そうするしかなさそうだな」
【アウェイキング!】
【アライジング!】
「超越人神一体!」
【リョウテガソード!降臨!】
リョウテガソードと人神一体したホエルは世界を包み込まんとする勢いで靄を広げている厄災に両手の剣で斬りかかるも、靄なため物理攻撃ではまるで通用しない。
「なら、分身剣!」
剣先を分身させて、それを飛ばしたリョウテガソード。そのエネルギーの刃は黒い靄を貫くものの、その穴は程なくして元通りになってしまう。
「リョウテガバースト!」
【テガソード!インフィニティディバイド!!】
必殺技のリョウテガバーストで靄を薙ぎ払うも、瞬く間に靄は悪魔の形に戻ってしまい、ホエルは攻撃が通用してないのではと不安になる。
「諦めるなホエル!お前ならまだやれる!」
「クオン・・・。なんだ?指輪が!?」
そんな最中、ホエルの持つマジレンジャーのセンタイリングが輝き出す。
『どうやらクオンの家族を思う心が指輪と共鳴したようだ。今ならあの魔法を再び使えるだろう』
【マージ・ジルマ・マジ・テガ・ジンガ・ジン】
奇跡の魔法がコールされると、5色の魔法陣から5体のテガソードが現われる。そのうちの4体には陸王たち4人が人神一体してホエルのもとに駆けつけた。
『今なら、更なる高みの力を使える!』
【五神一体!】
【リョウテガソード!ファイブカラー!】
巨神リョウテガソードに5体のテガソードが重なると、ウルフデカリバー、レオンバスター、ティラノハンマー、イーグルシューター、ユニコーンドリルを部分的に合体させた名の通りな5色のリョウテガソードとなった。
「ん?なんで変身してんだ?つうか外じゃんか」
いつの間にかゴジュウウルフに変身していたホエルはリョウテガソードファイブカラーの頭部に乗っていた。他の4人も人神一体はせずにファイブカラーの担当部位に乗っている。
『共に決めるぞ!ゴジュウジャー!』
「「「「「ゴジュウジャー!ソードエンド!!」」」」」
【テガソード!グランドクロスアセッション!!】
各々の担当部位にエネルギーを収束させたゴジュウジャーは巨大な武器リョウテガソードを生成すると、リョウテガソードファイブカラーはそれを振り下ろして厄災を一刀両断する。
「さぁ、準備完了だ」
【ガリュード】
力を高めきったクオンはテガジューンガリュードへと変身すると1度その視線をテガジューンへと向ける。
「分かってはいると思うけど、ノーワンワールドとお別れはいいかな?」
「何だと!?」
テガジューンへの問いかけだったのだが、ノーワンワールドとの別れと聞いて聞き捨てならない烈怒は戦う手を止めてテガジューンガリュードへと詰め寄る。
「どういう事だガリュード!何でノーワンワールドと別れなんだ!!」
「復活しようとしている厄災に僕なら蓋をする事はできる。だけど蓋をするためには入れ物が、受け皿が必要なんだ。厄災という多大なものを入れれるの器は1つの世界が必要。これだけ説明すれば分かるだろ?ノーワンワールド以上に適任な器はないんだ」
「分からねぇ!分かりたくもねぇ!」
厄災は敵。それは烈怒、いや、ファイヤキャンドルも理解している。だがその封印のために自分たちの世界であるノーワンワールドが犠牲にならなくてはいけない事を彼は受け入れられなかった。
「女王!他に方法はねぇのかよ?」
『・・・すまぬ』
テガジューンは謝るだけで代案は出さなかった。
「参謀2人はなんかないのかよ?」
「すまない。この様な事態は想定していない」
「私たちにはどうしようもないわ」
Mr.シャイニングナイフ&Mrs.スイートケークも想定外の事態過ぎて策を練る事は出来なかった。
「慰めにはならないけどさ。君らは世界を消す罪を背負わなくていいよ。世界を消す罪と罰は僕が引き受けるから」
「なら少し時間をくれ。ノーワンワールドの連中を全員避難させる」
「残念ながらもう時間はないんだ。テガソードとテガジューンが少しは避難させたみたいだけど、これ以上は無理だね」
テガソードとテガジューンがロボの墓場に避難はさせたようだが、これ以上は諦めるよう告げられた烈怒はファイヤキャンドルに戻り、絶望から膝をつく。
「せめて楽に消えられるようテガソードやテガジューンに祈ればいいさ」
「祈り・・・か」
何か決意を固めたファイヤキャンドルはセンタイリングを強く握るとノーワンワールド最後の瞬間を見届けるために立ち上がる。するとテガジューンガリュードは空に浮かび上がって厄災の靄をその身に取り込み出した。
「おい、何してんだクオン!」
「いいから黙ってみているんだ」
ゴジュウウルフは厄災を取り込んでいるテガジューンガリュードに詰め寄ろうとするも、テガジューンガリュードは自分に近づかないように告げた。するとテガジューンはテガジューンガリュードの背後にノーワンワールドへのゲートを出現させた。すると彼から溢れる厄災の力がノーワンワールドに流れ込み、ノーワンワールドが崩れていく。
「ホエル。どうやら僕はお前の事を許せたみたいだ」
「待てよ。行くな兄ちゃん!」
「2代目!」
厄災と共に消えゆくノーワンワールドに沈んでいくテガジューンガリュード。そんな兄にゴジュウウルフは必死に手を伸ばそうとするも、ゴジュウポーラーはゴジュウウルフの身を案じてそれを止める。
「本当にいい友達を、仲間ができたんだね。羨ましいよ」
「いかないでくれよ。1人にしないでくれよ」
「何を言ってるのさ。お前は1人じゃないだろ?」
ゴジュウウルフの周りにいる仲間たちを仮面の中で羨ましそうに見つめたテガジューンガリュードは最後の言葉を彼に残す。
「ホエル。これからも強く生きてくれよ」
生きてほしい。その願いを残してテガジューンガリュードはノーワンワールドに入り切ると内側からゲートを消滅させて、巨神の世界とノーワンワールドの繋がりを絶ったのだった。
「全員助けきる事が出来なくてすまねぇ」
ファイヤキャンドルは部下であるアーイーを全員助けきる事が出来なかった事を悔しそうにすると、Mr.シャイニングナイフ&Mrs.スイートケークは彼の肩にポンと手を添える。
「仕方がない犠牲だった。とは言いたくはないが、それでもすべてを救うというのは無理だった。君の気持ちは痛いほど分かるが、あまり悔やみ過ぎるのは助かったアーイーと、助けてくれた女王様とテガソードに失礼だ」
「気持ちは分かるけど切り替えて行きましょう」
「あぁ。・・・俺が叶えたい願いは決まった。ゴジュウウルフ、いや、ゴジュウジャー。次に会った時はお前たちの指輪を頂くぜ」
叶えたい願いを決めたファイヤキャンドルは次に戦う時はゴジュウジャーの指輪を頂くと宣戦布告すると1人ブーケたちとは違う道を往く。
「ファイヤキャンドルさん。どちらに行かれるつもりですか?」
「指輪を集めて叶えたい願いができた。一緒にいられない訳でもねぇが、これは俺なりのケジメと覚悟なんだ」
そう言ったファイヤキャンドルは振り返るとテガジューンたち元ブライダンに深々と頭を下げた。
「皆、これまで仲間でいてくれてありがとう!」
「私たちはもう仲間ではないのですか?」
「・・・」
ブーケの問いかけにファイヤキャンドルは何も答えないままこの場を去っていった。
「兄ちゃん・・・ッ」
そしてクオンを、兄を失ったホエルは悲しみを堪えながらも最後の言葉である『生きてくれ』を叶えるために涙を拭い立ち上がる。そしてゴジュウジャーのメンバーと共にテガソードの里へと帰還して皆でクリスマスパーティーの準備を始めた。
「ホエル、なんか辛そうな顔をしてる」
「何かあったのかしら?」
葵とさゆりはクリスマスパーティーだというのに辛そうな顔のホエルを心配するも、さゆりを攫った犯人であるクオンがホエルの兄で、その兄が帰らぬ人になったと2人に話すことは出来ないと判断したメンバーは何も言わずにいた。
『辛気臭い顔をしてるねホエル』
「幻聴か・・」
クオンの声が聞こえた気がしたホエルだったが、気のせいだとため息をつくとテガソードの里に色が少し違うダークウルフデカリバーが飛んできた。
『元気を出しなホエル』
「クオン!?・・・なんだその姿?」
ダークウルフデカリバーから聞こえるクオンの声にホエルが戸惑っていると、察した真白はテガソードに問いかける。
「テガソード、お前の仕業だな」
『クオンの遠野ホエルと共に生きたいという願いを少しだけ叶えることにした。とはいえ肉体は厄災の器となっているため魂のみを剣に宿して、こちらの世界に引き寄せたのだ。剣として罪を清算するのだ』
『そういう事。クリスマスプレゼントはお兄ちゃんってわけ』
テガソードはダークウルフデカリバーにクオンの魂を入れたことを認めると、それでもクオンと再開できた事をホエルは喜び、少し笑った。
「プレゼントが兄ってキモいんだよ」
『嬉しいくせに〜』
ダークウルフデカリバー改めガリューデカリバーはホエルの周囲を飛び回るとホエルは嬉しさとウザさがせめぎ合う複雑な表情でガリューデカリバーから逃げ回るのだった。
次回「もえろ火の玉!科学忍者の決意」