青春メガホン
禽二郎&明久VS角乃&健の指輪争奪戦トーナメント当日。二組の指輪の戦士たちは戦いの場で対面し、その周囲には他のゴジュウジャーや学園のギャラリーが集まっていた。
「やはり、できん!」
「え!?ちょっと禽二郎さん!?」
「「・・・」」
戦いの直前、禽二郎は仲間である角乃たちと戦う事が嫌になったようでその場に回れ右をして走り去っていく。その場にいる学園のギャラリーのほとんどの者たちが『仲間何だから戦えないのは仕方ない』と思ってしまう中、ギャラリーに紛れていたMr.シャイニングナイフ&Mrs.スイートケークは彼の事を追いかけた。
「君たちか」
「逃げた理由はただ仲間だから戦えないというものではないだろう?」
「良かったら私たちに話してくれないかしら?」
「角ぽよの願いは妹の大事な世界とこの世界を行き来できるようにする事。言ってしまえば妹の、家族のための願いだ。対する儂の願いは真のパーリーピーポーになるという事で」
「真のパーリーピーポーってなんぞよ?」
「そう。それなんだ。真のパーリーピーポーというものが儂にも分からない。分からないものを目指したまま、願いを定めた角ぽよと戦う事など出来ない!」
願いに迷うまま願いを定めた角乃とは戦えないと語る禽二郎に夫妻は立ち上がる。
「ゴジュウイーグル。否、キンちゃん殿。貴公には恩義がある。道が見えぬと言うのなら手助けをしよう」
そう告げたシャイニングナイフは禽二郎を人気のない採掘場へと連れてきた。するといきなり夫妻は禽二郎にナイフを投げつけてきた。
「い、いきなり何をする!」
「ナイフを避けてケーキだけを食べてね〜」
「古来より典型者というのは極限の状態で悟りを得てきた。君も極限の状況で悟りを得るのだ!」
無数のナイフの中に紛れるケーキが禽二郎へと飛んでくる。禽二郎は必死になってナイフを避けつつもなんとかケーキを掴んでは食べる。その様子を角乃以外のゴジュウジャーが眺めていた事に禽二郎は極限状態のせいで気づけなかった。
「全く彼らは加減を知らんのか」
「あれ?爺ちゃん?」
卵が切れて本来の老人姿まで消耗させられた禽次は疲れ切った様子で町を歩いていると、偶然にもその姿で孫の大司と遭遇してしまう。そしてそのまま大司に連れ戻される形で瀧原家へと帰ってくることになった。
「何処に行ってたんだよ親父。心配したんだぞ」
「様々な場所で見聞を広げていたのだ」
息子の信二に心配していたと告げられると、見聞を広げていたと言い訳をして何をしていたのかをぼかす。すると禽次はテーブルの下に置かれていた1枚の絵に気がついた。
「ほう、これは」
それは家族を描いた1枚の絵。
「大司は美術大を目指して頑張ってるんだよ。親父」
「と、父さん。爺ちゃんには」
「大司」
言われてしまったと反応を怖がる大司に真剣な表情を禽次は向ける。
「大切にするのだぞ!自分の夢を!」
「う、うん!」
自分の夢を肯定された大司は嬉しそうに他の絵も禽次へと見せる。その日は久しぶりに一家団欒の時間を過ごした翌日。
「いっそのことこの姿のまま家族と余生を過ごそうか」
「なんて考えているんじゃな〜い」
禽次の姿でお茶を飲んでいると、いきなり夫妻が家にやってきた。
「お、お前たち。いきなりどうした?」
「何。茶飲み友達とお茶をしにきたのだよ」
家に他の家族がいないことを確認した禽次は卵を食べて禽二郎の姿に若返ると、夫妻にお茶を煎れる。
「君たちの言っていたこと。間違いではない。このまま答えが出ないまま戦うくらいなら、とな」
「真面目な方だ」
「房子にも。妻にも散々言われたよ。馬鹿真面目とね」
数年前に亡くなった妻を思い出しながら禽二郎は自分と房子のアルバムを取り出して、夫妻に見せる。
「言葉足らずだった儂にも愛想を尽かさずに共にいてくれた」
「愛し合っていたのね。2人の目が語っているわ」
アルバムの写真の数々から2人の愛を感じ取ったスイートケークは心からの感想を告げると、アルバムのページの間に何かが挟まっていたことに気づいた。禽二郎はそれに今まで気づかなかったようで、その1枚を手に取ると、その1枚は房子が亡くなる少し前に最後に一緒に撮った写真だった。そしてその裏には『馬鹿真面目。そんなところも好き』と短くも愛が語られていた。
「フッ、お熱いことだ」
「思い出した。房子が生きていた時、儂の胸はずっと今のように昂ぶっていた」
この瞬間。ようやく禽二郎は真のパーリーピーポーとは何かに気づいた。そしてそれから数時間後、再び集められた指輪争奪戦トーナメントで禽二郎と角乃はお互いの決意を胸に対面する。
「禽爺なら来ると思ってた」
「待たせてスマンな。もう逃げん」
「禽爺と過ごした時間。楽しかった。ありがとね」
「あぁ。僕もだ」
「なんかこれで最後みたいな会話ですね」
「2人は同じく巨神の世界を生きる者。今生の別れでもないだろうが、これが『最後』なのだ。言葉は伝えるべきだ」
「それじゃ、始めようか」
「あぁ。これ以上しんみりするのはな」
【クラップ!ユア!ハンズ!】
【センタイリング!】
「「「「エンゲージ!」」」」
【ゴジュウイーグル!】
【ゴジュウユニコーン!】
【ターボレンジャー!】
【ジェットマン!】
禽二郎と角乃、そして明久と健の4人が変身し、各々テガソードを構える。
「ナンバーワンバトル!Ready?Go!」
ようやく開幕した指輪争奪戦トーナメント1回戦。ゴジュウイーグルとゴジュウユニコーンが刃を交えると、レッドターボとレッドホークが銃を向け合う。
「禽二郎さんが自分の願いを、戦う覚悟を決めたんだ!僕も全力でそれに応える!」
「明久君。・・・いいだろう!君の覚悟、受け取った!」
レッドターボとレッドホークは2人の邪魔はしないと距離を置いて戦い始めると、その騒ぎを聞きつけたファイヤキャンドルがやってきた。
「キャッキャッキャッ!祭りの場所はここかぁ?俺も混ぜて貰おうか!」
「あいつらの邪魔はさせねぇよ」
【ゴジュウウルフ!】
乱入しようとしてきたファイヤキャンドルの行く手を阻んだホエルはゴジュウウルフへと変身すると、ファイヤキャンドルも烈怒に姿を変える。
「お前が相手なら面白くなりそうだ。お前が1番指輪の数も多いからな!」
「お前に指輪を譲る気はねぇよ!」
【メガレンジャー!】
「サイバースライダー!ドリルセイバー!」
ゴジュウウルフはメガレッドに変身するとサーフボード型ライドメカのサイバースライダーに跳び乗ってドリル型装備のドリルセイバーを片手に突撃する。
「銀河の光!」
対する烈怒もザルバにギンガマンのセンタイリングを咥えさせて、その力を行使。火球となってサイバースライダーで突撃してくるメガレッドとぶつかり合う。
「「うおおぉぉぉぉぉぉッ!!」」
激しいぶつかり合いはメガレッドが押し負けてしまい、チェンジマンのセンタイリングが烈怒の手に渡ってしまう。
「さぁ、まだまだいただくぜ」
「おいおい2代目。勝手に指輪を減らされてくれるな」
【フィニッシュナックル!】
まだゴジュウウルフからセンタイリングを奪い取る気マンマンの烈怒に対して、ゴジュウポーラーは横やりと言わんばかりに拳を振るってくる。その拳を槍で受け流した烈怒は凍った槍の一部を見ながら溜め息をつくと、ファイヤキャンドルの姿に戻った。
「チッ、冷めることしやがって。だが覚えておけゴジュウウルフ。いやゴジュウジャー。今回は引いてやるが俺は俺の願いを叶えるために、お前たちの指輪を奪い尽くす」
ゴジュウジャーに宣戦布告をしたファイヤキャンドルはその場を去っていくと、ゴジュウウルフとゴジュウポーラーは4人の戦いに再び意識を向け直す。
「エンゲージ!」
【ドンブラザーズ!】
「エンゲージ!」
【デカレンジャー!】
ゴジュウイーグルはドンモモタロウに、ゴジュウユニコーンはデカレッドにそれぞれ変身すると2人はそれぞれ銃を手に撃ち合いをする。銃での勝負は二丁拳銃のデカレッドが優勢だったが、剣に武器を持ち替えたドンモモタロウがダメージを顧みない特攻からの剣戟でデカレッドは地面を転がり、ゴジュウユニコーンに戻ってしまう。
「まだよ!」
【ダイナマン!】
「スーパーダイナマイト!」
ダイナレッドに変身したゴジュウユニコーンはスーパーダイナマイトによる大爆発でドンモモタロウの変身を解除させ、ゴジュウイーグルに戻す。
「くっ、ならこっちは妖怪っこで」
「隙あり!」
ゴジュウイーグルも負けじとヨウカイジャーのセンタイリングを発動しようとすると、そのセンタイリングをレッドターボを打ち破ったレッドホークが掠め取る。
「ごめん禽二郎さん!負けちゃった!」
「ズ、ズルいぞ!」
「この戦いはそういったのもアリと決めただろう!」
【ヨウカイジャー!フィニッシュ!】
狐火による攻撃でゴジュウイーグルを攻撃したレッドホークだったが、ゴジュウイーグルは翼を広げて空へと飛翔し、狐火によるこれ以上のダメージを回避しつつ、イーグルシューターで空から2人を攻撃する。
「ならばこちらも!」
「待って健さん。禽爺との決着は私が」
「・・・分かった」
レッドホークも空へと飛び上がって迎撃しようとすると、ゴジュウユニコーンは決着は自分がつけたいと彼を制止させた。その決着を任せたレッドホークは数歩後ろに下がって戦いの行く末を見届ける体勢を取る。
「決着をつけよう。禽爺」
【ユニコーン!ドリルアタック!!】
「あぁ。最後まで全力でいくぞ!」
【イーグル!アローシュート!!】
最後まで戦いを捨てようとしないゴジュウイーグルは空から大量の矢を放つと、ゴジュウユニコーンはユニコーンドリルで矢を弾きながら跳び上がってテガソードの刃を振るう。
【フィニッシュフィンガー!ユニコーン!】
関心の一撃。その一撃によって地面に落下したゴジュウイーグルは変身が解除されて、禽二郎の持っていたバイオマン、ゴーゴーファイブ、キョウリュウジャー、ドンブラザーズ、ゴジュウイーグルのセンタイリングが角乃の手に渡った。
「ゴジュウユニコーン&レッドホーク!WIN!」
「禽爺!」
勝敗が決すると変身を解除した角乃はゆっくりと起き上がる禽二郎へと振り返る。すると禽二郎は笑顔で彼女の方へと振り向いた。
「負けたよ角ぽよ。君の、君たちの勝ちだ」
「あ〜あ負けちゃった。健さん、後は任せたよ」
願いを健に託した明久は禽二郎の肩を支えながら2人でこの場を去っていく。
「スゴイ戦いだったよ!」
「皆カッコよかった!」
メガホンを手に叫ぶ生徒たちは彼らのナンバーワンバトルを讃える。ホエルはそれに驚いた反応をしていると真白が彼の背中をバンと叩いた。
「指輪争奪戦に参加出来なかったり、脱落した連中の願いを背負って戦うってのはこういう事だぜ2代目」
「よく、わかんねぇよ」
「願いを背負う。今は分からなくてもいいが、お前もそう遠くないうちに誰かの想いを背負う日がくる。その時が来たら、きっちり受け止めろよ」
真白にそう告げられたホエルは話題から逃げるように禽二郎と明久を追いかけていく。遠のいていくホエルの背中を真白は温かい目で見送ったのだった。
「そうか。勝負に負けたか」
「あぁ。だが、悔いはない」
夫妻に結果を報告した禽二郎と明久。そこに少し遅れてホエルがやってきた。
「禽二郎。お前、あの時本当に全力で戦ったのか?」
「もちろんだ。全身全霊!全力で戦った!そして全力で負けた!」
全力で戦って全力で負けた。清々しい表情で応えた禽二郎にホエルはただ「そうか」と呟いた。
「気づいたんだ。真のパーリーピーポーとは、房子のように周りの人も笑わせるような人のこと。そんな生き方を僕はこれからもしたいのだ」
真のパーリーピーポーとはなにか。自分なりの答えにたどり着いた禽二郎に明久とホエルは笑うと夫妻はホールケーキを取り出した。
「ならば皆で祝おう禽ちゃん殿。君のこれからを祝福しようではないか!」
「レッツパーリィタイムよ〜」
「イイね!皆で楽しもう!残念会だ!」
「なんで祝福なのに残念会なんだよ」
明久の言葉にホエルはツッコミを入れながらも彼らは前を見て歩んでいく。
「房子。見ていてくれ。儂はこれからも思うがままに生きていく。パーリーピーポーとして」
亡き妻の房子に誓いを立てた禽二郎は彼らの背を追って走っていく。その瞬間強い風が禽二郎の背中を押すように前へと突き出した。
「頑張って」
そう、聞こえた気がした。
「あぁ、ありがとう。房子」
次回「誰がためのLIVE」