「ハァァァァッ!!」
「ティィラアッ!!」
半日前に始まった指輪争奪戦トーナメント2回戦。長時間に渡る戦闘は互いに疲弊しきりながらも誰一人として脱落しないまま時間だけが過ぎていき、ギャラリーも解散しつつある中の事だった。
「こうなれば!百夜陸王!アイドルナンバーワンに返り咲くという願い。私が叶えてやろう!」
「え?」
その場にいるほとんどの者たちが驚きのあまり呆けた声をだしてしまう中、この日の戦いは一次中断という形で終了した。
「そんなにも長い間戦っていたのか。お疲れ様」
テガソードの里へと戻ってきた竜義たちに禽二郎は飲み物を提供する。すると自然と行われたその行動にホエルは疑問を抱く。
「おい禽二郎。お前どうして若いままなんだ?」
「テガソードが指輪争奪戦が終わるまではこの体質のままにしてくれるよう計らってくれた感じっこなんだ」
「それはそれは。流石はテガソード様」
「まぁそれはいいとしてさ〜、おじさんの願いはともかく、百夜の願いを暴神が叶えるって話はどういうことなの〜?」
ホシノの願いであるユニバース復活は竜義がテガソードの願いを叶えたいと願えば叶う。だが竜義が陸王の願いを叶えるとはどういうことかを問いかけると、竜義は意気揚々と答えた。
「百夜、お前の願いはアイドルナンバーワンに返り咲くこと!ならばこの私がお前をプロデュースしてやろう!そして願いが叶った暁には2人の指輪を貰おう」
こうして暴神竜義プロデュースの百夜陸王アイドル復帰大作戦が始まったのだった。
「まずは動画配信による知名度回復だ。そういうわけでテガソード様にも協力してもらい、イメージPVを撮影してみた」
「「「えぇ・・・」」」
竜義が作り上げた動画を観た一同は困惑して言葉を失う。そこには陸王の持ち歌である野生のカンをバックに陸王とテガソードが浜辺で追いかけっこをするなんともシュールな映像が流れていた。その動画に寄せられたコメントも『迷走』『一周回ってアート』『プロ精神』などと微妙な反応ばかりだった。
「確かに結構再生はされてるけど、イロモノ扱いされてるような」
「何を言う!テガソード様というこの世の神とのコラボだぞ!うまくいかないはずがなかろう!」
自信満々に答える竜義に対して陸王は微妙な反応をしていると、リクオニスト代表のブーケがテガソードの里に突入してくる。
「なんなのですかあの動画は!!」
「ブーケちゃん。いらっしゃい」
「あんな意味不明な動画、陸王様のイメージが損なわれますわ!だいたいテガソードも何をやっているんですか?あなたのプロデュースなんて認められませんわ!」
竜義に強気で意見するブーケ。すると竜義も負けずに反論する。
「ならばお前ならどうするというのだ?」
「どうやらトップリクオニストとしての真価を発揮する時のようですわね!」
そう宣言したブーケが取った行動とは。まずはビラ配りからだった。
「アイドル百夜陸王をよろしくお願いします!」
「意外と地道だね」
地道ながらも懸命に自分を布教してくれているブーケに陸王は嬉しさを感じていると、謎の集団が陸王たちを押しのけてブーケのもとに集まりだす。
「キミは何処のアイドルですか?」
「逸材だ!」
「よろしければお名前を教えてくれませんか?」
どうやら野良のアイドルオタクのようだ。
「私はブーケと申しますが」
「是非デビューしましょう!」
「推します!」
野良のアイドルオタクに推されたブーケが、彼女の推しである陸王よりもこの場は目立ってしまい、ブーケもタジタジになってしまうのだった。
続く竜義のターン。
「うへぇ〜。これはなんというか」
「ちょっと俺も、うん。何がどうとは言わないけど」
目の前のテガソードと陸王が存分に飾られている祭壇を前にホシノと和人はドン引きする。その悪趣味というより悪手に近い祭壇の頂点に座る陸王も流石に嫌そうな顔をするも、そこはプロ。恥ずかしがる事が恥ずかしいものだと切り替えてスマイルを周囲に振り撒いた。
「意外とやりますね。暴神さん」
「君も祭壇に対する知識も賞賛に値する」
「なんかこれで認めあってるし」
祭壇で認め合う竜義とブーケに和人は引き気味になっていると、陸王はアイドルスマイルを維持したままその場でライブを始める。それはイロモノ祭壇に反して大盛況を果たしていた。
「なぁテガソード。2代目の兄貴がその身とノーワンワールドを犠牲に厄災の親玉を封印したはずだよな?」
一方でその頃、真白はロボの墓場でテガソードとここ数日感じる気配の事について話をしていた。
『やはり熊手真白も感じとっていたか』
『父さん。熊手さんが感じている気配っていうのはいったい?』
『厄災の王、レクスだ』
知らないグーデバーンにテガジューンが教える。
『レクス?』
『厄災の頂天に立つ存在だ。あらゆる宇宙の因果律そのもの。私が人類の神ならばアレは宇宙の神。かつて私は熊手真白とともにユニバースロボの力を借りて厄災を退けた。だがその代償は大きく、数多のユニバースが犠牲となり手を貸してくれたスーパー戦隊も力の欠片であるセンタイリングを残して消滅してしまった』
『この熊手真白の願いで世界が創造されるのに合わせて1度この世界とノーワンワールドを接続したことがあるが、その際にガリュードがこの世界で会社を築き上げ、ゴジュウウルフもこちらの世界に戻ったようだ』
真白とテガソードはユニバース大戦の事を、厄災の王レクスとの死闘を思い出し、テガジューンもその後にノーワンワールドとこの世界を繋げた事を語る。
『つまり、厄災の王の封印が解かれかかっているということですか?』
『テガジューンの力を得ていたガリュードといえどもレクスを長くは抑え込めなかったということだ』
テガソードと同格にまでなったテガジューンの力を得ていたガリュードですら長くは封印出来なかったレクスにグーデバーンは不安を覚える。
『それ程の相手に、僕らは勝てるのでしょうか?』
『それは・・・』
グーデバーンだけでなくテガジューンも言葉を詰まらせる。だがテガソードは決意を胸に2人に語る。
『我々は勝たねばならない。この世界の、否。全ユニバースのあまねく命のためにも』
「喜べ百夜。お前の復帰ライブの日取りが決まったぞ」
祭壇騒動から数日後。テガソードの里に陸王が足を運んだ早々に竜義の口からそう告げられた。
「陸王様の輝きを大勢の方々に届けましょう!」
竜義とブーケのプロデュース活動により復活ライブまでたどり着いたことにホシノと和人は拍手をしていると、陸王は少し照れくさそうに笑う。
「ライブか。本当に久しぶりだな。あの頃、僕はすべてを持って輝けた。またあの頃みたいに輝けるんだね」
「あぁ。存分に輝けよアイドルさん」
「もっと輝いて、その先は・・・」
和人にアイドルとしての百夜陸王を応援された陸王だったが、その一瞬の表情の曇りをホシノは見逃さなかった。
「どうかしたの?」
「あ、いや。・・・ねぇ、会場はもう押さえたの?」
「抜かり無しだ」
竜義はパンフレットの写真に写るライブ会場を陸王に見せる。すると陸王はある提案をしだした。
「そのライブなんだけどさ、中止にできないかな?」
「説明してもらおう」
半信半疑に怒りも交じる目線を陸王へと向ける竜義。それに陸王は怯みつつも答える。
「百夜陸王の復活ライブ。どうせならもっと豪華な場所でと思ってさ」
「こういう時ぐらい本音で話せば」
珍しく真顔のホシノにそう注意された陸王は渋々ながらも本心を語る。
「本当はずっと不安だったんだ。前みたいにアイドルとして輝けても、いつまた足を掬われるか分からない。だからテガソードに願いを託したのかもしれない。そうすれば戦いに逃げられるから。君たちが考えてくれた新曲、読んだよ。素晴らしかった。だからこそそれで失敗したら、それは僕の落ち度だ」
「なるほど。呆れたぞ百夜。貴様がそんなにも弱い男だったとはな。今の貴様からは指輪を奪うことなど容易い。いくぞ桐ヶ谷」
「・・・そう、ですね」
少し腑に落ちないながらも、今の陸王に『強さ』を感じないと考えた和人は竜義と並び立つ。
「「エンゲージ!!」」
【クラップ!ユア!ハンズ!】
【センタイリング!】
【ゴジュウティラノ!】
【リュウソウジャー!】
「ッ!エンゲージ!」
【ジュウオウジャー!】
ゴジュウティラノとなった竜義とリュウソウレッドとなった和人は陸王へと迫る。するとホシノが2人から陸王を庇いながらジュウオウイーグルに変身する。
「小鳥遊ホシノ。その軟弱者を庇いながらでは我々には勝てんぞ」
ティラノハンマーの一撃に吹き飛ばされたジュウオウイーグルはすぐさま立ち上がり、リュウソウレッドの刃からも陸王を守る。
「言ってくれるね。エンゲージ!」
【ゴジュウレオン!】
陸王も守られてばかりではとゴジュウレオンに変身するも、変身するや否やゴジュウティラノの張り手に吹き飛ばされてしまう。
「貴様が現実逃避の為にテガソード様の指輪を利用した事を私は許せん!私はテガソード様とともに数多の世界を救ってみせる!」
自分がテガソードの願いであるすべてのユニバースの救済。それを叶えると宣言したゴジュウティラノはゴジュウレオンにトドメを決めようとすると、またもやファイヤキャンドルが乱入してくる。
「よう!邪魔するぜ!」
「邪魔するなら帰りやがれ!」
その乱入をゴジュウウルフが阻むとゴジュウレオンたちの戦いからファイヤキャンドルを遠ざける。
「キャッキャッキャッ!やっぱりお前が相手じゃなきゃ滾らねえよな!」
ファイヤキャンドルは烈怒へと姿を変えると、ゴジュウウルフは烈怒に蹴りを入れ、距離を取る。
「エンゲージ!」
【ライブマン!】
「ファルコンブレイク!」
レッドファルコンに変身したゴジュウウルフは烈怒の攻撃をファルコンソードで受け止めると、力任せに押し返して一太刀を入れる。
「やるじゃねぇか。もっと熱くなろうぜ!」
「勝手に熱くなってろ。コイツは俺が抑えておく!お前らは続けてろ!」
ゴジュウウルフに戻ったレッドファルコンはそのまま烈怒を押すようにこの場から遠ざける。するとジュウオウイーグルはゴジュウレオンに1つ提案をする。
「アイドルさん。あの2人の言う通りだよ。今のキミを守りながらあの2人を相手にするのは私でも無理。だから提案させてもらうよ。・・・降参しよう」
「え?!で、でも」
ジュウオウイーグルの降参という提案にゴジュウレオンは戸惑う反応をする。
「私の願いは店長が勝てば叶うからいい。だから、アイドルさんが諦めるだけで・・・」
「フレー!フレー!陸王様!諦めないで陸王様!」
ゴジュウレオンが諦めようとしたその時、ブーケの声援が響いた。
「私は陸王様を応援しています!だってナンバーワンリクオニストだから!私は推しの陸王様の思いを踏みにじりそうに、道を踏み外しそうになりました。だけどまだこんなにも推しています!何度ファンが離れようと、何度でもファンを虜にすればいい!陸王様はそれでいいんです!」
「ブーケちゃん。・・・ありがとう。ごめんねホシノちゃん。僕は諦めないよ。僕は皆のゴジュウレオン。百夜陸王だからね」
「そう。分かったよ。疲れるけど最後まで付き合ってあげる」
最後まで諦めない決意にジュウオウイーグルも応えることにすると、4人は再び全力でぶつかり合う。その結果は・・・。
そして数日後、百夜陸王の復帰ライブ当日。
「丸一日ファイヤキャンドルと戦って筋肉痛になるとは。お疲れ様だったな。ホエルっち」
「まったく、マジで疲れたぜ。そんな事よりいいのかよ竜義。お前陸王のプロデューサーだろ?店にいていいのかよ?」
ライブ時間。竜義はテガソードの里でいつも通り珈琲を客に提供していた。
「いいのだ。あいつにはもう私の手は必要ない。何処までも高く、上りつめるだろう」
「そうですね」
竜義の指輪ケースにはゴジュウレオンの指輪が輝いていて、和人もジュウオウジャーのセンタイリングを片手にカフェラテを飲んでいた。
「うへぇ〜。今頃アイドルさんは新曲を歌ってる頃かなぁ〜」
ホシノはぐったりとテーブルに顔を埋めながらもスマホで陸王のライブ配信を眺める。
「百の夜をキミと共に。僕こそ、アイドルナンバーワン!いや・・・」
更に上を。その決意を胸に陸王はリクオニストに宣言する。
「全ユニバースアイドルナンバーワン!!」
すべての世界で輝けるアイドルになる。全ユニバースアイドルナンバーワンこそ、今の百夜陸王の願いなのだ。
次回「救えぬ生命 最後の厄災」