ゴールデンバウム王朝成立前夜   作:名無し名人

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第1話

宇宙暦310年、惑星オーディンの旧連邦議会前において新しい暦になる瞬間を待ち望む者、または少数ながら絶望し酒に溺れる者それぞれが歴史の転換に立ち合おうとしている中でその喧騒から離れた居酒屋で一人の男が出された酒をのんでいた……

 

「アンタも物好きだね。こんな場末の居酒屋で酒と料理を頼むなんてな……アンタならもっと良い洒落た店に行けるだろうに」

 

店主はそう言って出来上がったトンカツ定食を男の前に出した

 

「私はそんな店は好きじゃないのは店主も知っているだろう?それに……此処のカツは美味いし、ゲン担ぎには丁度良い」

 

男はそう言ってフォークでカツを刺し頬張った

 

「嬉しい事言ってくれるが、食ってる暇なんかあるのかい?『国家革新同盟』党首ルドルフ・ゴールデンバウム殿?」

 

男……ルドルフは顔を上げてニヤリと笑った

 

「今だから食うのさ、これからは新しい国を造るのに忙しくなる。それこそ食べる暇が無い程にな」

 

「銀河帝国……か、アンタが帝政を選択するとは思わなかったよ。アンタをここまでのし上がった民主共和制には愛着はないのかい?」

 

店主はそう言って日本酒の熱燗を差し出した。ルドルフはそれを受け取り手酌で猪口に注ぎ一口含むように飲みながら言った

 

「確かに俺をここまでに押し上げたのは民主主義の恩恵あっての物だ………だがな、その『民主主義』に疑問を突きつけたのもまた選挙権を持った市民だ。当然だな、腐敗した政治家共による談合や汚職………数えるのも馬鹿らしい程に酷い腐り具合だったんだ連邦政府は、それを俺は市民の『民意』によって執政官になり民主主義を否定し帝政に移行するのは自然ではないか?」

 

「まぁ………否定出来ないなぁ、だけど今も民主共和制を信条としてる議員や市民がいるじゃないか彼等と協力するのは……」

 

「論外だな、民主共和制を信条としてるなら俺より先に連邦を改革していれば良かったんだ。それをしないで後から文句を垂れているのは筋違いにも程がある」

 

ルドルフはそう言って猪口に入ってる酒を煽った

 

「………アンタ独裁者と呼ばれるよ?」

 

ルドルフは再びニヤリと笑った

 

「独裁者、大いに結構!連邦の腐った土台を取り払い、新しい骨組みを造るには強権的な指導者がいるからな!」

 

「何年か未来で民主共和制を支持する人間が現れたら?」

 

「私が存命の時にそんな事態になるとは思えないが……まぁ、我々に協力するなら条件次第で民主共和制の自治位は認めても良いかもしれん。出来るならな」

 

ルドルフはそう言って残りのトンカツを食べ始めた。すると店の隅に置かれていたレトロな柱時計が零時を知らせる鐘を鳴らした

 

「……これで銀河連邦は正式に滅び銀河帝国になった…か」

 

「そう言う事だ……店主!金は此処に置くぞ」

 

ルドルフはトンカツ定食を平らげ酒も全て飲むと会計台に見慣れ無い紙幣が置かれていた

 

「何だいこれは?」

 

「連邦造幣局……もとい帝国造幣局に造らせた新紙幣『マルク』だ。これからの売り買いはこれが使われる。店主がその栄えある第一号という訳だな」

 

「は〜これが……ま、頑張りなよ。愚痴りたくなったらまた来れば良い」

 

「その時を楽しみにしていよう、さらばだ」

 

しかし後に民主共和制の支持者によるテロ活動により居酒屋も巻き込まれる事態になり店主も行方不明になりこの約束は遂に果たされる事は無かった。テロ活動を鎮圧したあとこの事実を知ったルドルフは一筋の涙を流したとも言われている

 

 

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