「余はヴァレンタインを廃止しようと思う」
旧銀河連邦評議会議長執務室でルドルフは突然こう言った。
「………はぁ?ヴァレンタインを……でございますか?」
ルドルフの横で書記官は呆気にとられてそう聞き返した。
「そうだ。今年は流石に無理だが来年は廃止とする」
「お、恐れながら陛下のお考えは凡夫たる私には理解出来ません。理由をお聞かせ願いませんか?」
恐る恐る書記官が尋ねるとルドルフは真面目な顔をして答えた。
「まず最初に勘違いしては困るが最愛の人に愛を告げるのは良い、友に友愛を告げる……これも良い、家族に感謝を告げる……これも良い……だが、それなら特定の日にしなくても良いだろう!?しかもチョコレートという特定の食品を使ってのイベント………私腹を肥やしたい企業の策謀ではないか!ただでさえチョコレートは品質が落ちてるのに!」
ルドルフは机を叩く。
「……あ〜、確かにチョコレートの原料のカカオの木の栽培が杜撰だとの報告が上がっておりますね。栽培プラントの老朽化も著しくて作りたくても作れない状況だとか……」
書記官は思い出したかのように自分の机に乗っている書類の山から関係する書類を取り出して内容を読んだ。
「そうだ!それで質の悪いチョコですら高額になってしまった!!こんな状態でヴァレンタイン等やる意味無いだろうが!!」
ルドルフはそう言って用意されたホットチョコレートを飲んだ。
「まぁ……そうですね、ただでさえ連邦時代はインフレやらデフレやらで物価が激しく変動していましたから、チョコレートに限らず嗜好品が手に入りづらかったですね」
秘書官も連邦時代を思い出して顔を顰めた。
「だろう?だから敢えてチョコレートを高級品にしようかと思う」
「はい……?老朽化した栽培プラントを更新してしまえば良いだけでは?」
書記官は怪訝な顔をした。
「そのプラントを更新するのに幾ら金がかかると思っている?しかも我が帝国は予算は限られている。そればかりに金を回せないぞ。ならいっその事質の高いチョコレートしか生産しなければ良い」
「はぁ……つまり民衆にはチョコは贅沢品になるという事ですか?」
書記官は戸惑っていたが予算が潤沢では無いのは事実なので一応納得した。
「そうなるな……まぁ、帝国の経済が廻れば栽培プラントの更新は出来るからそれまでの我慢だな」
翌年銀河帝国はヴァレンタインの廃止を発表した。そして再びヴァレンタインが復活するには自由惑星同盟が成立するまで待たなくてはならなかった。