「比企谷、なんなんだコレは」
教師を名乗る花畑チャイカという男が自身のデスクの上に置かれた俺の数学のテストに指を指し問う。
教師だというのにゴスロリを着たゴツいオカマにそう問われても、「なんなんだアンタは」という答えしか持ち合わせていない。
「いや、まぁそれは成り行きというか…」
「どんな成り行きだよ」
「そもそも花畑先生?は俺の担任でも数学の担当でもないっすよね?なぜ態々俺に…」
「なぜ先生に疑問符が付く?」
「鏡を見てください」
「人を見た目で判断するな!」
突然だからではなく案外まともな事を言ったことに驚く俺を見てため息を一つ吐き言葉をつづける。
「まぁいい。数学科の先生がお前の成績が一向に上がらない事を生徒指導である俺に相談したんだ。聞けば授業中に寝ることが多く話も聞いてないらしいじゃないか」
“生活指導である俺に”という所を強調しつつ、花畑(なんとなく先生と呼びたくない)はご丁寧に説明してくれた。
「はぁ、まぁそっすね」
「つまり、お前のテストの不振の最大の原因は授業態度だ、違うか?」
「...否定はしません、けど納得もしませんよ。俺は大学は私立文系志望だから受験に数学は必要ないし、卒業だけする分には追試を受ければパス出来る。納得していただけましたか?」
「...ふむ、なるほどな」
すると花畑はまるで納得したように俺の持論を受け止める。
おかしい、俺の持論はあくまで持論であって正論ではない。
それを教師が、ましてや生徒指導を担当する者が見過ごして良いはずがない。
何か嫌な予感がする...
「お前、部活は?」
「え?特に何も。けどなんでそんなこと」
「だよな。よし、着いてこい」
俺の言葉を遮り、花畑(敬称略)は席を立つ。
俺はこの後、嫌な予感の的中をすぐに知る事となるのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「着いたぞ」
花畑のやけに大きな背中を眺めつつ着いて行くとそこは職員室から一番遠い4階の最奥の空き教室だった。
花畑はガラガラッと音を立ててドアを開ける。
「よおクレア、ってアラ寝てる...」
中を覗き込むと頭にシスターベールのようなものを被る少女が空き教室の中央で学校用椅子に座り無警戒に寝ていた。
彼女の背には後光のように窓から光が差し、彼女の肩までかかったベージュの髪を照らし、その画はまるで神聖な絵画のようであった。
「ん...花畑さん?すみません、寝てしまって」
「いや、気にしなくていい。比企谷、彼女はシスタークレア。名前の通りガチのシスターだ」
「同じ2年のシスタークレアです。よろしくね」
彼女の言葉に一抹の違和感を感じながらも、それを無視して俺は返した。
「...ガチのシスターって...頭のそれ、コスプレじゃなかったのか」
自分の頭を指差して問うとシスタークレアは少し頬を朱に染め返した。
「うん...まぁ、学校ではここでしか被らないんだけど」
「逆に、ここではつけるんだな」
「これを被ると『やるぞ!』って気になって身が入るから...あははっ、なんか口に出してみるとちょっと恥ずかしいかも」
シスタークレアは照れくさそうに笑う。
「そういや、そもそもなんでここに連れて来られたんすか?そろそろ説明貰えませんかね」
言いつつ、花畑を見やると花畑はやれやれという風な仕草を見せ口を開いた。
「今日お前をここに連れてきたのは依頼があるからだ」
「俺に?」
「いや?クレアに」
「誰が?」
「私が」
「...誰の事で?」
「モチのロンアバウチュー」
バチコーン!とウィンクして俺に指を指す。
「で、どのような依頼でしょうか?」
シスタークレアは華麗なスルースキルで話を進める。
なるほど、花畑と接するには特別なスキルが要るらしい。
「こいつの捻くれた性格を矯正してやってほしい」
「はぁ?ちょっ、待ってください。そんなん聞いてないんですけど」
「まぁまぁ、比企谷君。別に花畑さんも意地悪したくて言ってる訳では...」
シスタークレアが焦ったように宥めてくるが納得などするはずもない。
「悪いが俺も頼まれた以上何か対策を講じる必要がある。直接俺が授業に参加してお前を見張るという案もあったが、どっちがいい?」
「...分かりました。で、具体的には何を?」
「ひとまず、この部に入部してもらおうか」
「入部?なんでそこまで...」
もっと手っ取り早い方法があるだろうし、長くやるにしても態々入部する意味は薄い。
ただ、変に反発してもさっきの様な
「てか、そもそもここ何部なんすか?」
「フッ、クレア説明を」
花畑は指を鳴らしてシスタークレアへ説明を促した。
「はい。比企谷君、この部は」
「待った!やっぱクイズ形式にしようぜ!」
「...承知しました。では比企谷君、この部が何部か当ててみてください。ヒントは」
「ヒント、というより答えを既にお前は目にしている。これ以上は何もあげられないゾ」
一度のみならず二度までも花畑はシスタークレアの言葉を遮る。
シスタークレア、流石にこれには口が笑っても目は笑っていられない。
気付いて冷や汗をかく当人を流し見ながら、思考をクイズに向ける。
花畑の言葉通りなら、答えを俺は既に見ている。
ここに来てから今までを一度回顧してみる。
すると、ある花畑の一言を思い出した。
『今日お前をここに連れてきたのは依頼があるからさ』
俺がここへ来た理由を聞いた時、花畑は確かにそう言った。
特に部活色のない空き教室...依頼...
「そうか、よし」
「整いましたか?」
「あぁ、ここは来訪者から依頼を受けそれに応える部。名前はそうだな...相談部、は捻りがないし依頼部、は意味を誤想させる可能性もある...」
シスタークレアの精神性を加味するなら...いやでもこれは流石に...
「他に何かあるなら、遠慮なくどうぞ」
「...そうだな。奉仕部、はどうだろうか」
二人の視線が痛いほどに突き刺さる。
やけに長く感じる沈黙の末、二人は口を開いた。
「...すごい。名前まで当てるなんて」
「クッ...!次はこうは行かないんだからね!」
シスタークレアは驚いた顔で手を叩いて祝福してくれ、花畑はどこからか出したハンカチを噛んで悔しがる。
「改めて、ようこそ奉仕部へ。神は我々の出会いを祝福なさるでしょう」
「おう...よろしく頼む」
シスターらしいことを言うシスタークレアに何か感動の様なものを覚える。
「それじゃもう入部届あるから書いてホラ、早く!」
「早っ!段取り良すぎだろ」
急かされるまま入部届を書き終える。
「これで公認を貰える人数が揃いましたね、花畑さん!」
「あぁ、これでひとまず安心だな」
「公認ってなんのことだ?」
「部が公認を貰える人数が三人で、比企谷君が入ってくれた事で晴れて我々奉仕部は三人揃ったの」
三人?他にもう一人いるのか。
「ほーん。そりゃま、おめでただな」
「うん!後三日で見つからなかったらこの部室が剥奪されちゃう所だったから、本当助かった。ありがとう、比企谷君!」
シスタークレアは嬉しそうに俺の手を握る。
あのですね、そういう何気ないボディタッチが女子に免疫のない男子を勘違いさせてですね。
今後は触らない、笑顔で接さない、男子の椅子に勝手に座らないを徹底してください。
「結構マズかったんだな...」
「こうなったら、意地でも
シスタークレアは握る手を強くしていく。ちょっと痛い。
「怖ぇ、怖ぇって。これじゃまるで俺の入部が目的だったみたいだな...」
するとピシッと空気に亀裂が走る。
「ソンナワケナイヨ。ネ?ハナバタケサン?」
「オウ、アタリマエダノクラッピョヘンダゼヒキガヤ」
「コイツ等、マジかよ...」
思えば、花畑はおろかシスタークレアまで言ってないのに学年を知ってたり、妙に段取りが良かったりと違和感を覚えてる所はあった。
お手本のような片言を披露する二人を見てその違和感の正体に気付き、俺は天を仰ぎ見た。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「お願い比企谷君、奉仕部辞めないで!今回の事は本当に謝るから!」
「頼むよヒキえも~ん!幽霊部員でもいいからさぁ」
「まぁ入部届書いちゃったんで、いいよもう」
幽霊部員で良いって言質も貰ったし。
「もう帰っていいですか?家で妹が待ってるんで」
「いや、悪いがこの後依頼があるんでな。それを解決してからにしてもらう」
「あん?何故」
「何故ってお前は奉仕部の人間だろ。それ一つやれば奉仕活動に参加させ性格の是正に努めたと数学科の先生に伝えるから、それだけ参加してくれ」
「...分かりました。けど文句を言うつもりはないんですが、三人目の人は来ないんすか?」
幽霊部員やってても依頼の度ここ呼ばれたら意味がない。
「そういえば、最近部室来ないですね」
「部室はおろか、学校にすら来てないらしいぞ」
「え...?」
花畑の突然の告発にシスタークレアまで口を押えて驚く。
「怪我で入院とかじゃないんすか?」
「いや、学校にそういう連絡は来てないな」
「ちなみに、今日で何日目ですか?」
「丁度一週間だな」
「そんな...悩んでる様子なんて全然なかったのに...」
シスタークレアの言葉を聞くに、兆候などは見られなかったらしい。
案外そういう奴の方が不登校になりやすいのかもしれない。
「私が...私がもっとちゃんと見てあげてれば」
シスタークレアは顔を手で覆う。
余程仲が良かったのだろうか?
「クレアのせいではないさ。見てあげられなかったというなら、我々教師の責任だ」
空気がどんよりとする中、コンコンと部室のドアが鳴る。
「入っていいぞ」
「失礼します!」
暗い空気を晴らすような元気な挨拶、いいね!助かった!
ドアから出てきたのは赤い髪の目立つ少女。
ピョンと跳ねたアホ毛がチャーミング。
「お、来たな。そこにかけてくれ、ふん!」
「そこ?ヒョエッ!」
花畑は何もない所を指さしたかと思ったら、椅子を一つそこに投げた。
投げられた椅子は綺麗な横回転で飛び、指さした方に着地した。
「おお...!」
「いや普通に危ないですよ!」
「俺は仕事があるから、その子の事は任せたぞ」
花畑が部室を出て、自己紹介が始まる。
「二年の獅子堂あかりです。今日はよろしくおねがいします!」
舌っ足らずな声と人懐っこい笑顔が幼げな印象を与える少女は、それでも俺等と同学年らしい。
「同じ二年のシスタークレアです。こっちも同じ二年の比企谷八幡君。よろしくね」
サラッと俺の自己紹介も済ましてくれた。ありがたい。
「よろしくさん」
「じゃあかりたち全員二年だ!良かったあかり敬語苦手だったから」
「それで、今日はどんな要件で?」
「実は、この前学校から帰った時猫ちゃんを拾ったんだけど...あかり自分の事で精一杯だから、猫ちゃんの面倒を見切れる自信がないの。だから里親を探してるんだけど、友達に当たってみてもダメで...」
「では、依頼はその里親探しという事で大丈夫?」
「うん!」
里親探しねぇ、地道だなぁ。
「一応二人に聞きたいんだけど、猫は大丈夫?」
俺とシスタークレアは顔を見合わせる。
「俺ん家は一匹飼っちゃいるが、今この場で『飼います』とは言えねぇな」
「多頭飼いはリスクもあるし、中々難しそうだね。家は教会だし子供たちは喜ぶだろうけど、アレルギーの確認もしなきゃだし比企谷君と同じで今この場で判断は難しいかな」
「なるほど...けど逆に言えばどっちも可能性はあるってことだよね?それだけ分かれば十分じゃない?」
「そうだな。俺達の可能性も残しつつ、里親募集の方法を考えるか」
小町に話を通しておくか、小町がGOサインをだしゃ母ちゃんは絆されるし親父は口を出せない。
俺はスマホを出して小町へメールを打った。
「まずは...ベタにチラシを作ろうか。他にはSNSで呼び掛けたり...あと何かあるかな?」
「保護施設や団体に預けるとかか?むしろそれが一番手っ取り早い。こっちで精査すりゃある程度信頼も置けるしな」
「うん...それは考えたんだけど、やっぱり里親は私が見つけて決めて、見届けたいんだ。なんて、ただのエゴかもしれないけど...」
「ううん、そんなことないよ。立派な考え方だと思う」
すると、制服のポケットに入れていたスマホがブルッと震える。
確認すると、小町からのメールの通知だった。
早いな...
『新しい猫!?お迎えしたーい!早くお持ち帰りして来てお兄ちゃん!』
「悪いんだが、見つかったぞ里親」
「えっ!?誰!?」
「俺」
そう言いメールの内容を二人に見せる。
「ホントだ...」
「何はともあれ里親が見つかって良かったね、獅子堂さん。獅子堂さん?」
喜ぶかに思われた獅子堂だったが、その反応は鈍い。
「えっ?あ、あぁ、ホントに良かった!けど突然すぎるっていうか、あ!そうだ比企谷が信用に足るか審査しなきゃ!それにいきなりは先住猫ちゃんのストレスになるかもだし、今日いきなりってのは」
「お前、もしかして本当は自分で飼いたいんじゃないか?」
「え...?」
「一時の保護のつもりが愛着湧いて離れづらくなってんだろ?」
「そ、そんな事...!第一あかりはあかりの事で精一杯って」
「確かに自信はないかもしれない。覚悟も半端だ。けど愛着湧く程世話してんなら分かるだろ、その猫が誰を求め、誰に飼われたいか。いや、分かってるから...手放したくないんだろ」
「
「名前のセンス...」
「こらっ比企谷君っ」
小声でシスタークレアに怒られた。
「うん、私決めた。
「そう...」
「今日はありがとうね。二人とも」
「いえ...私は特になにも」
「俺だって指摘しただけで特別なことはしてねぇよ」
「ううん、クレアは親身になってくれたし、比企谷は私の背中を押してくれた。二人がなんと言おうと、私は二人に感謝してる」
獅子堂は椅子を立ち、改めて向き直る。
「だから素直に受け取って。今日はありがと。それじゃあね」
「うん。今日も神の加護があらんことを」
「比企谷も。猫の事で分からない事あったらまた聞きに来るね。先輩!」
「お、おう...」
シスタークレアにはノータッチなのか、流石シスター。
獅子堂が去り、教室は静かになった。
時刻は五時を優に過ぎ、窓の奥の空は落ちかけの太陽が眩しい頃だった。
「そろそろお開きにしようか」
シスタークレアの言葉を皮切りに俺達は帰りの支度を始めた。
「なぁ、ちょっといいか」
「なに?」
「聞きたいことがあってだな。なんでこの部を作ったんだ?」
「...さぁ?」
「はぁ?」
「いや、だって作ったのは私じゃないし」
「じゃあ誰が、って決まってるか」
「うん、そう。花畑さんが作ったの。私も創設メンバーではあるんだけど」
「じゃあ活動自体は...」
「あぁ、おんなじような事はやってたよ。私シスターだから相談事はよく来てたの」
「大変そうだな、シスターって」
「そんなことないよ。それにシスターだから人助けしてる訳じゃないし」
そう呟くシスタークレアの顔は物憂げに見えた。
「じゃあ、なんで」
「...ほら、助けられるなら助けるべきでしょ?『隣人を愛せ』ってやつ?別に私キリスト教でもユダヤ教でもないんだけど」
「...おう、そうか」
今日会ったばかりだが、シスタークレアは正にシスターというべき精神性を持っている。
博愛的で慈愛に満ち、見る者話す者触れる者に安心感を与えるような柔和な人柄だ。
だから今の言葉に違和感を覚えようもなく、むしろ模範的とすら思えるはずであり、べきである。
だが何故だ。
何故俺はそれを聞いたその瞬間、嘘だと思ったんだろうか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
駐輪場へ続くガラス扉の下(ここの校舎は傾斜の激しい場所にあり、一階から二階への踊り場に扉がある)の自販機でマッ缶を購入し、傍のベンチに腰掛ける。
「よお、お疲れ比企谷」
「うおっ!?」
いつの間にか現れた花畑に驚きマッ缶を落としそうになる。
「びっっっくりした。いきなり出てくんのやめてください。化け物かと思った」
「それはどういう意味だ?」
「で、なんの用ですか?」
「うむ、獅子堂の件の労いにな」
「ダウト。偶々ならともかく、それだけのために態々二人だけになるような放課後に探しに来るわけないでしょ」
「おいおい、どんだけ勘が良いんだ貴様。ますます気に入った。俺の慧眼に恐れ入っちゃうね」
「はぁ?」
「俺が何故お前を奉仕部に入れたか分かるか?」
「奉仕部の公認のためでしょ」
「それもそうだが、それだけではない。クレアのためだ」
「シスタークレア?俺が奉仕部に入るのがどうして彼女のためになるんですか?」
「それを話すにはまず何故俺が奉仕部を作ったのか話さなければならない」
「俺が奉仕部を作るより前、クレアは人助けをよくしていた」
本人からも聞いてたことだ。
「ある日、クレアは教会の仕事と度重なる相談に耐え切れず体調を崩した。俺はそんな彼女を見かねて彼女に行く依頼を分散、調整するため奉仕部を作った」
「何故そんなになるまで、アイツは聞き入れたんですか」
俺は敢えてシスタークレアにもした質問を花畑にした。
「分からない。聞いたことはあったが、俺はそれを信じられない。ただ彼女は人を助ける、というか善行を積むという事に対して使命感のような物を持っている気がする」
「アイツはシスターですし、不思議な事でもないのでは」
「あぁ。確かにそうだが、俺はどうもそれだけじゃない気がするんだ」
「それは憶測の域を出ますか?」
「出ない。ただ俺はある種それを確信している。そこでお前に俺から依頼がある」
「依頼?」
「あぁ。『シスタークレアが何故、善行を積みたがるのか』その真意を調べてほしい。それと...クレアに頼られる存在になってほしい」
「頼られる存在?」
「クレアはああ見えて、一切人に頼りたがらない。しかも遠慮ではなく、拒否だ」
「それは何故...?」
「それも分からん。もしかしたら彼女の真意に関わるのやもしれん...」
「分かりました。けど何故俺に?」
「頼みの綱が不登校になったからに決まってるだろ。それにこれは勘だが、お前ならやってくれる気がするんだ。実際、獅子堂の件もたった一日で解決してしまった」
「それとこれとは別でしょ...俺がそんな面倒な話、受けると思いますか?」
「頼む」
そう言う花畑の顔は何時になく真面目で、誠実に見えた。
「...あぁもう、しょうがねぇな。やれるだけの事はやりますよ」
「おお、マジで受けてくれた。お前、押しに弱いタイプだな」
「コイツ...」
「それじゃ頼むぞ。私は仕事に戻る」
花畑はベンチから立つと、そのやけに大きな背中を見せつつ手を振って去った。
『助けられるなら助けるべきでしょ?』
決まったわけではないが、あの言葉はやはり嘘だったのか。
「人への手助けの使命感、人からの手助けの拒否。ノーヒントじゃ分かる気がしねぇな」
これまた憶測の域を出ず、ある種の確信でしかないのだがシスタークレアを悪人あるいは偽善者だとは思えなかった。
「悪いがその化けの皮、剝がせてもらうぞ」