性格の悪さを神様に買われて加護を得ました   作:フーツラ

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第11話 待ち時間

 日比谷公園のベンチで缶ビールを飲みながら時間をつぶす。

 

 どうやら公園の花が見頃らしく、周りは平日にも関わらずカップルの姿が多い。酒臭い息を吐く俺は場違いだ。

 

 何故わざわざ肩身の狭い思いをしてこんな所にいるかというと、日比谷公園のすぐ傍に日本エクスプローラー協会の本部があるからだ。

 

 第5階層のフロアボス、ハイゴブリンの落としたスキルオーブはなかなかのレアモノだったらしく協会のサイトにも情報がなかった。

 

 スキルオーブの種類は色とオーブに浮かんでいる文字で判別出来るのだが、既出のものとは当て嵌まらない。掲示板にスキルオーブの画像をアップして情報を求めることも考えたが、それで集まる情報が正しいとは限らない。

 

 残念ながらこのファンタジーな世界にはステータスを見る便利機能なんてない。レアなスキルオーブを使ってスキルを覚えても、なんのスキルか分からないのでは使えない。スキルを使うには、そのスキルを意識する必要があるからだ。

 

 そしてそれを解決する方法は一つ。スキルオーブを鑑定スキルで鑑定してもらうことだ。そしてそのサービスを行なっているのが協会だ。

 

 鑑定の対象はスキルオーブだけではなく、武器や防具、その他使い道が不明なものなど多岐にわたる。そして鑑定スキル持ちの人数は限られているもんだから、俺の様に鑑定待ちで時間を持て余す人が出てくるのだ。

 

「しかし遅い。遅すぎる」

 

 鑑定が終わると「冒険しよう!」アプリに通知が来る筈なのだがまだ来ない。もう1時間近く待っているのに。

 

 ため息を吐きながら周囲を見渡すと、何かおかしい。

 

 何がおかしいって、すぐそばに死神のような大きな鎌をもった女の子、少女と言うべきか、が居たからだ。

 

 彼女の方を見ると、思いっきり目が合ってしまった。一度目を逸らして再度見ても、やはり目が合う。

 

 間違いなく見られている。

 

 とりあえず手を振ってみる。

 

 少女は大鎌を振り返した。

 

 もう一度手を振る。

 

 やはり大鎌がふるふる動く。

 

 俺も大人だ。こちらから話し掛けるのが筋だろう。

 

 俺は立ち上がって少女に近寄った。

 

「よお。何処かで会ったか?」

「会った」

「そおか。悪いが俺には記憶がない。どこで会ったか教えてもらえない?」

「第5階層のボス部屋」

 

 その言葉を聞いて神経が昂った。やり合うことになるかもしれない。

 

「ほう。何を見た?」

「ゴブリンの集団がハイゴブリンをボコボコにするところ」

「なるほど。興味深い」

 

一体、こいつは何者だ。

 

「何が目的だ」

 

 俺は大鎌少女の隣に座り、兵站に尋ねた。こいつに悪意があるならもっと別のアプローチもあったはずだ。まだ事を荒立てるタイミングではない。

 

「……」

 

 そう簡単に答える気はないらしい。

 

「昨日、どうやって見ていた?」

「この目で」

 

 ふざけてやがる。話すつもりはないってことか。

 

「見ていたのなら分かるだろうが、俺の場合は召喚オーブでゴブリンを呼んだだけだ。別に何もやましいことはない」

「脅しにきたわけじゃない」

 

 見た目より大人びた話し方だ。冷淡といってもいい。

 

「じゃあ、なんだ?」

「タイプ」

「……どういう意味だ?」

「見た目がタイプだったからついて行っただけ」

 

 なんだこいつは。

 

「いつからいた」

「ボス部屋の前から」

「あそこにお前はいなかった筈だ」

「いた。見えなかっただけ」

 

 見えなかっただけ? 隠れていたのか?

 

「わからんな。どういうことだ?」

「話す」

 

そう言って少女は話し始めた。

 

 

 

 

 黛奈々。

 

 そう名乗った少女は自分の加護とその特殊能力についてあっさりと開示した。彼女に加護を与えた神様は死の神様。つまり死神だ。首の刻印もわかりやすく髑髏だ。

 

 で、問題の特殊能力がとんでもない代物だった。生き物の首と引き換えに、自分と身に付けているモノをほぼ完全に消すことが出来るらしい。姿は見えない、音も匂いもしない。完全なチートだ。

 

「どれくらいの間、消えていられるんだ?」

「首を捧げた生き物の格による。ゴブリンだと1秒」

「自分で自由に発動できるのか? その能力は」

「出来る。時間は貯めておけるし、発動も停止も自由」

 

 便利過ぎる。

 

「昨日は随分長い時間消えていたようだな」

「奮発した。また貯めないと。いっぱい首はねる」

 

 こいつの能力の怖いところは捧げる首が生き物ならばなんでもよいところだ。つまり、ダンジョンのモンスターじゃなくてもいい。多分人間でも問題ない。

 

「姿を消したまま首をはねられるのか?」

「それは出来ない。姿を現さないと生き物には干渉出来ない」

「それでも暗殺者としてはほぼ完成されているな。こんなこと俺に話して良いのか?」

 

 黛はじっと俺の顔を見る。

 

「タイプだから問題ない」

「俺の加護については話さないぞ?」

「別にいい。だいたい想像できる」

「言ってみろ」

 

 少し時間がある。頭の中を整理しているようだ。

 

「幸福の神様かなにか。ドロップアイテムに補正がかかる特殊能力を授かっている」

「何故そう思った?」

「召喚オーブはレアドロップ。市場にも出回ってないし、自分で落とさないと手に入らない」

「ふん」

 

 頭が悪いわけではないらしい。

 

「それにフロアボスが落としたスキルオーブも見たことないものだった。あれは相当にレア」

「だから協会の前で張っていたのか?」

「そう」

「よく見てるな」

「タイプだから」

 

 その時、スマホが震えた。見ると鑑定結果が出たらしい。

 

「鑑定が終わった」

「楽しみ」

 

 こいつ、ついてくる気か。

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