性格の悪さを神様に買われて加護を得ました   作:フーツラ

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第13話 五条美里の冒頭

「やぁっ!」

 

【刺突】のスキルを発動してオークの喉にレイピアを突き入れると、剣先はあっさりと首を貫通した。素早くレイピアを戻し、バックステップする。

 

 私と入れ替わるようにタンク役の窪田君がラージシールドを構える。オークは生命力の強いモンスターだ。窪田君に油断はない。

 

 オークの首から血が吹き出し、巨体が崩れ落ち、ややあってから煙になって魔石を残した。

 

「五条さん、ナイス!」

「美里やるー!」

 

 窪田君と桜が囃し立てる。なんだか気恥ずかしい。2人がお膳立てしてくれたから、私は【刺突】を決められたのだ。決して1人の力ではない。

 

 

 私達は今、第6階層に挑んでいた。先週末に第5階層をクリアし、それぞれがスキルオーブでスキルを覚えた。私は【刺突】で桜は【必中】、そして窪田君は【屈強】。

 

 元々、私達のパーティーは窪田君がタンクで私が遊撃、桜が後衛という役割をこなしていたのでスキルオーブの選択で揉めることはなかった。それぞれの特性にあったスキルを仲良く分け合った形だ。

 

 私が必ずパーティーでダンジョンに臨むようになったのは第2階層で死にかけてからだ。それまでは加護の力を過信してダンジョンを甘く考えていた。1人でも平気だと思っていたし、予備の武器なんて発想すらなかった。つまり、愚か者だったのだ。

 

 ふと、あの男のことが脳裏に浮かんだ。最近はポーションの買取依頼だったり、意味の分からない呼び出しとかもない。

 

「美里?」

「ごめんごめん。ちょっとスキルについて考えてた」

「スキルって凄いよね。20メートル以内だと絶対に的を外さないし」

 

 桜が短弓の弦を軽く引きながら言った。

 

「オークに殴られてもちょっと痛いぐらいで済むし!」

 

 窪田君が何故か照れ臭そうだ。窪田君はいかにも気が優しくて力持ちといった見た目をしていて、まさにタンクだ。

 

「美里、今日はこれくらいにしとく?」

「私、そんなに疲れてるように見える?」

「そんなこともないけど、明らかに美里だけスキルの使用回数も多いから、、」

「へーきへーき。私、こー見えても加護持ちなんだから!」

「あー、そうだったねー!インドア系の神様だけど」

 

 桜がニヤリと笑う。

 

「もう!絶対試験勉強手伝わないからね!」

「ちょっと2人とも!ここはダンジョンだからね!」

 

 窪田君が冗談っぽく諫めた。

 

「「はーい、ごめんなさい」」

 

 このパーティーでダンジョンに挑むのはとても楽しい。まだまだ先に進める気がする。

 

 

 

 

 そのモンスターを見かけたのは今日のダンジョンアタックを切り上げて転移石へと戻っている時のことだった。

 

「あれ、オークだよね?」

 

 桜が囁くように尋ねた。

 

「たぶん」

 

 今まで第6階層で遭遇したオークはどの個体も汚れた布を腰に巻いているだけだった。だが、遠目に見えるオークは違う。マントを羽織り、頭に何かを乗せている。

 

「一体だし、狩っちゃう?」

 

 桜が軽く言う。

 

「窪田君はどう思う?」

「うーん、何かあれば【屈強】で2人を守るよ」

「よーし、先制攻撃!」

「ちょっと、桜……」

 

 私が止めようとするのを聞かず、桜が弓を構える。

 

「やっ!」

 

 まだこちらに気付いた様子のないオーク?に対して桜が矢を射かけた。矢はまっすぐオークの方に飛んでいく。よし、当たる。そう思った時だった。オークはマントを翻し、剣で矢を払った。

 

「「えっ」」

 

「2人とも下がって!来る!」

 

 疾い! マントのオークは今まで出会ったオークとは比べものにならないほど俊敏ですぐに迫ってくる。私達を庇うように窪田君が前に出て盾を構えた。

 

「桜!牽制して!」

「もち!」

 

 後方から桜の放った矢がマントオークに迫るが、またも剣で払われる。

 

「来い!」

 

 オークは走りながら剣を大上段に構えた。窪田君もラージシールドを上に向ける。

 

「ぐえっ」

 

 オークは嘲笑うように途中で剣を手放し、勢いよく窪田君の股間を蹴り上げた。窪田君は股間を押さえて蹲り、それをまたオークが蹴飛ばした。窪田君はゴロゴロと転がる。

 

「やっ!」

 

 桜が近距離から【必中】を放つが、オークは事もなげに手で矢を払う。そして一瞬で桜に詰め寄り、殴り飛ばした。

 

「ひっ」

 

 ゴブリン達に追い詰められた時の感覚が蘇る。このオークには敵わない。でも、仲間を置いて逃げることも出来ない。そもそも、逃げても無駄だ。きっと追いつかれる。逃げるな!怯むな!立ち向かえ!自分にそう言い聞かせて、必死にレイピアを構える。

 

「……」

「……」

 

 オークと目が合う。オークの頭には王冠のようなものがのっている。マントの下には鎧を着ている。明らかに他のオークとは格が違う。

 

「ブイ」

 

 そう声を出すとオークはマントを翻して私達から離れていった。オークの姿が完全に見えなくなるまで緊張は続いた。

 

「……はぁ、助かった」

 

 自然と声が出た。レイピアを握る手がまだ震えている。

 

「うっ……」

 

 窪田君のうめき声がした。慌てて桜の方を見ると、桜も動いている。

 

「あ、ポーション!ポーション!」

 

 私は自分に指示するようにポーションを取り出して2人に飲ませた。2人とも殴られたり蹴られたりしただけなので、初級ポーションでなんとかなりそうだ。

 

「五条さん、ありがとう。助かったよ」

「美里、ありがとう。流石は加護持ちね」

「ううん。違うの。私は何も出来なかった。オークが勝手に立ち去ったの」

 

 2人は怪訝な顔をして黙りこむ。私にだって何があったのか分からない。でも、あの王様みたいなオークが普通のオークな訳がない。このダンジョンでは何かが起こっているのだ。

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