性格の悪さを神様に買われて加護を得ました   作:フーツラ

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第18話 神に誓って

 第8階層までの道のりは非常に容易かった。第6、7階層はオークに【変身】していればモンスターから襲われることはないし、エクスプローラーに遭遇した場合はさっさと逃げた。

 

 第8階層から出現するモンスターはリザードマン。戦った印象はとにかく硬い。下手な斬撃はその硬い皮で逸らされる。真っ向からやり合う場合、業物の剣を手に入れるまでは苦労しそうだ。

 

 もちろん俺が真っ向からやり合うことなどない。俺は神に誓って正々堂々とは闘わない。俺には【変身】がある。様々な性悪ムーブが可能なのだ。そう、このように。

 

「ゲコゲコゲコッ!」

 

 落とし穴に落ちたリザードマンが喚いている。多分、助けてくれ! なんてことを言っているのだろう。俺のことを仲間だと思っているのだ。たとえ俺がリザードマンだったとしても、落とし穴に落ちるような間抜けな奴は捨て置くがね。

 

 俺はしゃがんでウロコに覆われた手を差し伸べる。リザードマンの表情がサッと緩んだ。

 

 ここだ!

 

 俺は【変身】を解いて人間の姿に戻る。リザードマンの表情がくるりと変わって困惑が広がる。そして気付くのだ。人間にハメられたと!

 

「バカめ!」

 

 俺は冒険野郎で購入したばかりのスキル【土生成】でリザードマンを生き埋めにした。

 

 3分ほど経つと地面に魔石とリザードマンの結石が転がった。掘り起こす必要がなくてホッとした。

 

 リザードマンの結石は香水の材料として高値で取り引きされるレアドロップだ。デカイものになると100万近い値がつくらしい。

 

 もっとも、この"即身リザード仏"作戦には【土生成】と【土操作】の2つのスキルが必要だったので既に2000万投資している。利益が出るのは当分先だ。

 

 また、おまけと言っては何だが、【土生成】と【土操作】の2つを組み合わせると土の塊を弾丸のように射出することが出来るようになった。こっちの世界でいう魔法だ。俺の場合、この程度のスキルならばいくら使っても消耗しないので非常に使い勝手がいい。目潰しは性悪ムーブの基本だ。

 

「さて、仕事仕事」

 

 俺は周囲に気配がないことを確認してからリザードマンに【変身】する。そして一体でうろついているリザードマンを探して即身仏に仕立て上げるのだ。

 

 さっきのリザードマンは手を振りながらゲコゲコゲコ話しかけると真っ直ぐ走ってきて、綺麗に落とし穴に落ちてくれた。とても良い絵だったので明日は三脚を用意して動画に収める予定だ。これを観ながら飲む酒は美味い筈。

 

 俺は嬉々として探索を続けた。

 

 

 

 

「何ですか?パイセン。一緒にダンジョンだなんて珍しい。最初の頃に行ったきりだったのに」

 

 俺に呼び出された和久津は新宿ダンジョン入口の待機所でコーヒーを飲んでいた。ニット帽を被っているのでそこそこのイケメンに見える。

 

「少し1人では行き詰まってな」

「今は第8階層でしたっけ? 確かにソロだと時間かかるかもですねえ」

「うむ。やはり良い絵を撮るには囮が必要だと気が付いたんだ」

「えっ?なんて言いました?」

 

 コーヒーを持ったまま、和久津はキョトンとした顔をする。

 

「お、と、り」

「ちょ、なんで囮なんて単語が出てくるんですか? 良い絵ってなんです?」

「和久津には囮としてモンスターを釣って貰おうかと思ってな」

「パイセン!冗談はやめて下さいよー」

 

 はぁ。

 

「よく見ろ。これが冗談を言っている人間の顔か?」

「い、痛い! お腹痛い! パイセン今日は体調悪いので帰ります!」

「大丈夫。腹痛には囮が1番なんだ。俺の田舎では常識だぞ」

「パイセンの実家は東京じゃないですか!」

「いいからこれを着て準備しろ。和久津」

 

 俺はマジックポーチから甲冑を取り出して和久津の前にどんどん積み重ねていく。

 

「えっ、いや何ですかこれ!」

「甲冑だ。今日、和久津には落武者役をやって貰う。ちゃんと折れた矢も準備しているから心配いらないぞ」

「ごめんなさい。全然話が見えないっす」

「察しが悪いな。和久津が落武者の格好をしてダンジョンを徘徊する。モンスターが和久津を見つけて襲い掛かる。そこを俺がビデオに収める」

「いやいやいやいや! それの何が面白いんですか?」

「はぁ」

「なんで溜息!」

 

 和久津は額に青筋を立てる。

 

「和久津、俺はお前をスターにしてやる。約束する。だから今日は黙って俺の言うことを聞いてくれ」

「……パイセン。自分のためにそこまで考えてくれてたんすね。ってやんないすっよ!」

「和久津。これは国で決まったことなんだ」

「どこのですか!」

 

 手をブンブンとさせ、抗議する和久津。

 

「大丈夫だ。和久津を危ない目には遭わせることはしない。神に誓って!」

「パイセンの神様が一番信用ならないっす!」

 

 今日の和久津はなかなか手強い。一度場所を変えよう。

 

「周りを見てみろ。お前が騒ぐからみんなびっくりしているぞ。とりあえずダンジョンに行くぞ。続きは行ってからだ」

 

 俺は会話を切り上げて和久津をダンジョンに連れて行くことにした。しっかり首根っこを掴んでいるので逃亡の恐れはない。

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