性格の悪さを神様に買われて加護を得ました   作:フーツラ

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第20話 魔剣?

 魔剣。それはスキルが込められた剣だ。例えば炎の魔剣ならその刀身に炎を纏わせることが出来る。

 

 もちろんスキルを使った時と同じように体力は消耗するらしいが、単純な物理攻撃とは比較にならない効果があるという。

 

 俺が今使っているショートソードは冒険野郎で買った数打ちだ。そろそろワンランク上のものに買い換えようと思っていたところでの魔剣の情報。これはチャンスらしい。

 

 というのも、ある階層のモンスターハウスで出現する宝箱の中身には周期があるからだ。例えば一度、第8階層で魔剣が出たらしばらくは魔剣が続くみたいな感じだ。だから魔剣を狙うなら今! なのだ。しばらく忘れていたのだが。

 

 そして第8階層。

 

 残念なことに、似たようなことを考える人間はどこにでもいるものだ。魔剣は宝箱からでるアイテムの中ではかなり人気が高い。俺がモンスターハウスに辿り着いたときには何組もの順番待ちが発生していた。

 

 モンスターハウスは中に入った人数×10体のモンスターが現れる。普通のパーティーは安全を第一に考えて構成されているので殲滅力はそれほど高くない。つまり、めちゃくちゃ待ち時間が長いのだ。

 

 そしてその長い長ーい待ち時間。さっきから視線を感じる。オークキング騒動で生配信されて黛とのキャプチャー画像が広まったからある程度は仕方ないのだが、あまりにも無遠慮な視線。視線はある男からだ。

 

「何か用か? そんな熱っぽい視線を向けられても俺は応えられないぞ?」

 

 主導権を握るために俺は先に声を上げた。

 

「な、何を気持ち悪いこと言ってるんだ!」

 

 急に声を掛けられた若い男は狼狽える。

 

「おいおい。何故男同士だと気持ち悪いんだ?」

「何故って、気持ち悪いものは気持ち悪いだろ!」

「理解のないやつだ。で、何の用だ?」

 

 男の首の刻印が目に入る。加護持ちか。厄介だな。

 

「お前、黛さんとどんな関係だ!?」

 

 死神ちゃんではなく黛さんか。こいつ、黛の知り合いか何かか。

 

「奈々? ああ、向こうが勝手にくっ付いてくるだけだ」

「名前で呼ぶな!」

「向こうに頼まれて名前で呼んでるんだ。お前には関係ないだろ。お前は奈々の彼氏か何かなのか?」

「……ち、違うけれど、いずれ……」

「なんだ。ストーカーか」

 

 周囲の目が男に集まる。男の顔が赤い。男は立ち上がり剣を構えた。

 

「取り消せ!」

 

 周りのエクスプローラーに視線を送るが、誰も止めようとはしない。こいつもソロなのだろう。加護持ちだし。

 

「俺が取り消したところでお前がストーカーなのは変わらないぞ」

「違うと言ってる! だろ!」

 

 若い男が剣を振り上げながら踏み込む。まさかここまで馬鹿だとは。サッと身を躱して足を掛けると男は勢いよく地面に転んだ。

 

「クソ! クソ! クソ! クソ!」

 

 男は地面に転がったまま叫ぶ。

 

「クソ! クソ! クソ! クソ!」

 

 なんだ。男の様子がおかしい。

 

「クソ! クソ! クソ! クソォォォ……!!」

 

 立ち上がった男の身体の周りにドロドロと粘性が高く黒い炎のようなものが現れた。明らかにやばい。

 

 モンスターハウスの順番待ちをしていたエクスプローラー達が巻き添えを食わないようにすっと居なくなる。賢明な判断だ。

 

「黛さんは渡さない!」

 

 おい、なんだこの展開は。魔剣はどこ行った。

 

 

 

 

「うらぁ!」

 

 ドロドロの炎に覆われた男が剣を横薙ぎにした。

 

 振りに鋭さもないし予備動作も見え見えで全く怖さはないのだが、奴の纏う黒い炎が厄介だ。

 

 身体だけでなく奴が持つ剣にまで炎が及んでいるので大きく躱す必要がある。これがスキルなら燃料切れを待てば良いのだが、多分これは加護だ。条件さえ満たしていればいつまでも続く筈だ。なんとかしなければ日が暮れる。

 

 剣を躱しながらスマホで奴の加護を検索しているが、なかなか見つからない。結構レアな加護なのかもしれない。

 

「クソ! クソ! クソ! なんで上手くいかないんだよ!」

 

 攻撃が全く当らず、奴はますますおかしくなっていく。

 

「ははは!才能がないからだろ! 見るからに凡庸! 見るからにストーカー!」

「クソ! ストーカーなんかじゃない!お、俺は黛さんのことを……」

「なんだ? 妄想で犯しているのか? そーいうことは人前で言わない方がいいぞ」

「言ってない!」

「知っているか?奈々はあー見えてなかなか積極的なんだぞ」

「うわあああぁー!!!」

 

 奴の纏う炎がますます大きくなる。これは逆効果だったか。一回落ち着けた方が良さそうだ。俺はマジックポーチから麻痺珠を取り出して投げつける。

 

 ジュッ

 

 あっという間に黒い炎に焼かれて蒸発してしまった。全く意味がない。

 

「うらぁ!」

 

 奴が剣を振るとその延長線上が炎に焼かれた。半径10メートルは奴の領域だ。落とし穴に落としたとしても、近づけないので生き埋めには出来ない。一体、どうしたらよいのか。

 

 うん? ちょっと待てよ。

 

 俺は辺りにいくつも落とし穴を作る。

 

「いくらやっても無駄だ! お前は無能だ!」

「うるさい! 死ね!」

 

 奴は大上段に剣を構えて突進してくる。

 

 スポッ

 

 周りが全く見えてない男はあっさり落とし穴に落ちた。

 

「卑怯だぞ!」

 

 穴からは黒い炎がボウボウと吹き出している。なんて危ないやつだ。

 

「早く穴から出せ! この卑怯もの!」

 

 俺は男の声を無視してモンスターハウスへ急ぐ。そう。俺の目的はモンスターハウスの魔剣だ。こんな男の相手をすることじゃない。

 

「卑怯者ー! 卑怯者ー!」

 

 俺は心地よい罵りを受けながらモンスターハウスへと入った。

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