性格の悪さを神様に買われて加護を得ました   作:フーツラ

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第26話 和久津の名演

 和久津が後退りした。それをオークジェネラルがゆっくりと詰める。和久津とオークジェネラルの距離は5メートル程度だ。

 

 和久津の怯える様子を見てオークジェネラルがニタニタと笑う。

 

「ひ、ひいいい」

 

 和久津、渾身の悲鳴だ。これはなかなか凡人には出せない。選ばれし者のみがもつ情けなさ。

 

「ブヒヒヒヒヒ!」

 

 オークジェネラルがハルバードを振るって威嚇する。

 

「く、来るなぁ!」

 

 和久津が敵に背中を見せて走り出した。

 

「ブ、ブヒヒヒヒヒ!」

 

 オークジェネラルが巨体を躍動させて和久津へと迫る。よし、そろそろだ。俺は和久津とオークジェネラルの間の地面に【土操作】で空洞を作る。

 

 ふむ。硬いな。全然落とし穴が下に広がらない。

 

「ブッ、ブヒヒ!」

 

 地面の窪みに足を取られたオークジェネラルがよろけるが、すぐに体勢を立て直してまた走り出す。

 

「ちょっと! なんで落ちないの!」

 

 和久津が振り返りながら叫ぶ。その顔目掛けてオークジェネラルがハルバードを突き入れる。

 

「ちょ! 危ない!」

 

 逃げ足と回避に特化して成長している和久津はなんとか凌いでいるが、このままだと不味い。もう一度【土操作】だ。

 

 ズシャァァー

 

 土で作られた輪っかに引っ掛かり、オークジェネラルが凄い勢いで地面にダイブした。

 

「おっと! 勝手にこけてやんの」

 

 和久津が煽る。思ったより余裕がありそうだ。オークジェネラルは地面に倒れたまま肩を震わせている。これは相当怒っている。

 

 和久津はこちらに向かってサインを送ってきた。もう一度落とし穴! のサインだ。和久津に言われるまでもなく俺は先程からオークジェネラルのすぐ前に落とし穴を作っているが、やはり全然深い穴が出来ない。どうやらフロアボスの部屋は特別に丈夫みたいだ。

 

 オークジェネラルは足を踏み出して窪みにはまり、さらに怒りで震える。和久津がプークスクスをやっているが目に余裕がない。落とし穴チャレンジがほぼ失敗に終わったことを悟ったようだ。

 

 怒りに満ちた表情のオークジェネラルをアップで撮っていたら、だんだんとヤツの顔が黒ずんできた。カメラを引くと、全身が黒くなり湯気のようなモノが出ている。

 

「ハッ! って、えっ!!」

 

 覚悟を決めた和久津が短槍で【刺突】を放つが、槍の穂先はオークジェネラルの肌の表面で止まっている。むんずと素手で短槍を握って奪い取り、壁へ放り投げる。

 

「あっ、あははは」

 

 和久津が思わず笑う。

 

「ブヒヒヒヒヒ」

 

 オークジェネラルも笑う。ゆっくりゆっくり足を踏み出し、和久津は壁へと追い詰められていく。

 

「ひっ」

 

 和久津は背中で壁を感じ、自分が完全に追い詰められたことを知った。武器もない。絶体絶命だ。

 

「ブヒヒブヒヒヒ」

 

 覚悟はいいか? 俺にはそう聞こえた。オークジェネラルはハルバードを振りかぶる。

 

「くそ! 切り札っす!」

 

 和久津はマジックポーチから俺が渡した切り札、白い珠を取り出してオークジェネラルに向けて握りしめる。珠は強い光を放ちボス部屋が一瞬白くなる。

 

「えっ」

 

 和久津が惚けたように声をだす。その視線はオークジェネラルを通り抜け、中空を見ている。オークジェネラルはそんな和久津に構うことなく、ハルバードを振るう。

 

 ドサッ。

 

 先に頭が地面に転がり、首から血が噴き出す。ゆっくりと巨体が崩れ地面に伏した。

 

 カメラはオークジェネラルの首を刈った存在を捉えていた。それは襤褸切れを纏い大鎌を担いで宙を漂う、まさに死神であった。

 

 

 

 

「改めて礼を言う。いい絵が撮れた」

「いい。スキルオーブも貰ってたし」

「【浮遊】のスキルで死神として完成したな」

「まだ。いま髑髏のマスク作らせてる。それが出来て完成。この肉美味い。サブローも食べて」

 

 落武者チャンネルの撮影の後、俺は焼肉店の個室で黛の労をねぎらっていた。勿論、和久津はいない。

 

「今回の動画を投稿すれば間違いなくバズる。なんせ死神召喚だ」

「そんなに?」

「そうだ。ゴブリン召喚でさえ世界中で盛り上がったんだ。死神召喚が盛り上がらない筈はない」

 

 和久津、私って気が付いてなかった」

 

「それはそうだろ。お前が姿を消せるって知らないからな。本当に召喚したって思っている筈だ」

 

「あのオーブみたいなの何?」

 

 そう言いながら焼けた肉を皿にのせてくる。少々意外だが食事の時、黛は世話を焼きたがる。

 

「力を込めると閃光が出るだけの魔道具だ。モンスターハウスの外れドロップだ」

「そういえばオークジェネラルのドロップショボかった。残念」

「今回もなかなかの性悪ムーブだったんだけどな。トドメを刺したのが俺じゃなかったから加護の働きが弱かったのかも知れない」

「サブローの神様は性格悪い」

「そーいう神様なんだよ」

 

 俺の神様は俺自身が悪辣で性悪なムーブを取ることを望んでいるらしい。俺が計画したとしても俺自身が実際に動いていないと、レアドロップの確率はそれほど高くなることはない。

 

「そういえば、最近変な勧誘とかなかったか?」

「勧誘? アイドルの? このタンも美味い。サブロー食べて」

「いや、闇クランだ。アイドルのスカウトあるのか? ふむ、美味いな」

「アイドルの方は定期的に芸能事務所から誘われる。闇クラン?」

「ああ。協会未承認のクランのことらしい。俺のところにはカオスサーガって闇クランのやつが勧誘にきたぞ。カオス系の加護持ちを集めているらしい。お前のところにも誘いが来てもおかしくない」

 

 黛が瞳を大きくする。

 

「あっ。来たかも」

「大丈夫だったか?」

「大丈夫。ダンジョンで付き纏われたから、ナイナイした」

 

 ないないか。詳しく聞くのはやめておこう。

 

「俺の方は三毛猫社で酷い挨拶を受けたよ。必ずやり返す」

「楽しそう」

「まだ準備段階だが、時期が来たらお前も誘う。手伝ってくれ」

「デートに誘われた。嬉しい」

 

 どんなデートになることやら。

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