性格の悪さを神様に買われて加護を得ました   作:フーツラ

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第27話 現状確認

 午前中はコバルト採取、午後はフロアボス周回と落武者チャンネルの撮影。こんな毎日を繰り返している内に世界は新年を迎えていた。

 

 落武者チャンネルは順調に登録者数を伸ばし、年越しと同時に150万人を突破した。最近は召喚ゴブリンのゴ右衛門に日本語を教えるシリーズの再生回数がかなり伸びている。ゴ右衛門が初めて喋った日本語は"ワクツ"。2人はほとんど親子と言っても過言ではない関係だ。

 

 今後はゴ右衛門に日本食を与えるシリーズを検討している。ゴ右衛門は天然で愛嬌のあるゴブリンなのでこのシリーズもウケる筈だ。

 

 一部の動物保護団体がゴ右衛門を例に出して、モンスターにも知性がある! 保護すべきだ! と騒いでいるが、そーいう奴等は知性が足りない。普通のダンジョンモンスターと召喚モンスターを同一視するのは危険だ。

 

 一方で新宿ダンジョンの攻略は停滞している。資金とスキルオーブ獲得を優先しているので第11階層から先には進んでいない。やはり金策ではコバルト鉱山が最高効率だ。

 

 スキルオーブについては第5階層と第10階層のフロアボスを周回することによってそれなりに集まった。黛に渡した【浮遊】は第5階層のハイゴブリンからのドロップだ。ハイゴブリンは召喚ゴブリンチ作戦でスキルオーブが狙える。

 

 また、第10階層のオークジェネラルへの対処法も確立している。開心剣で過去のトラウマを刺激してから討伐すると3%ぐらいの確率でスキルオーブが落ちるのだ。

 

 さて、ここで問題となるのがダンジョンのモンスターに過去の記憶はあるのか? ということだ。これに関して、俺はハッキリと答えることが出来る。ダンジョンモンスターにも過去の記憶は間違いなくある。それもダンジョンの中の記憶だけでない。異世界の記憶もあるのだ。

 

 ダンジョンのモンスターは異世界の記憶を持っている。これは開心剣で記憶を読めるので間違いない。ただ、その記憶が本当にそのモンスター自身が経験したモノなのか、何者かに植え付けられたモノなのかは分からない。もし複数のモンスターから共通した記憶が読み取れた場合は、何者かに植え付けられた記憶と言えるかも知れないが、今のところそのような事例には出会っていない。

 

 モンスター達の異世界の記憶を検証するにはさっさと新宿ダンジョンを制覇するしかないが、それは今のところ俺の仕事ではない。俺は一歩一歩進んでいくタイプなのだ。先ずはそう。カオスサーガを潰すところからだ。

 

 さて、寝るか。

 

 俺は現状をまとめ終えるとベッドに横になった。明日もダンジョンだ。

 

 

 

 

「どーもー、こんにちは! 落武者ワクツです!」

「オーノー、コンギニワ! ゴーウェイモンテス!」

 

 召喚ゴブリンのゴ右衛門が和久津に続く。

 

「さて、本日は召喚ゴブリンのゴ右衛門に日本のコンビニで売っている食べモノをあげてみたいと思います!」

 

「ステ、ホニニワ、ショウアン、ゴゴニン、ゴーウェイモンニ、ホホニノ、ビニボン、デウテテテトべ、モミアゲ、マス!」

 

 ゴ右衛門の日本語が怪しくなってきた。やはりまだ長文はつらい。だが、そんな舌足らずなゴ右衛門の様子にギャラリーはわいている。多分、視聴者もそうなのだろう。

 

 ここのところ、第1階層で落武者チャンネルの撮影をしているとギャラリーに囲まれるようになってきた。第1階層は他の階層に比べて圧倒的に安全なのでゴ右衛門との撮影には最適だ。

 

「で、本日ゴ右衛門に食べてもらう食品はこちら!」

 

 和久津の手元にカメラを寄せる。

 

「ツナマヨおにぎりとアイスコーヒーです!」

「ナナマヨオギニ、アースコシデス!」

 

 ギャラリーから歓声が上がる。何に対してなのか全く分からない。

 

「早速いってみましょー!最初はツナマヨおにぎりです!」

「ショクショクテマショー!アーショハ、ナナマヨオギ、デス!」

「ゴ右衛門、ツナマヨの食べ方なんだけど先ずこのフィルムを剥がすんだ。見てて」

 

 和久津がコンビニおにぎりのフィルムを剥がし、ゴ右衛門はその様子を真剣に見ている。

 

「で、フィルムが剥がれたらそのままガブリ!」

 

 そう言ってツナマヨに齧り付いた。和久津の美味そうな表情をみてゴ右衛門が喉を鳴らす。

 

「さっ、ゴ右衛門もやってみて」

 

 和久津にツナマヨおにぎりを渡されたゴ右衛門はフィルムを剥がそうとするが上手くいかない。

 

「がんばれ! ゴ右衛門!」

 

 がんばれー!

 

 ギャラリーからも声援が飛ぶ。俺は一体何を撮影しているんだ。

 

「そうだ!もう少し!がんばれゴ右衛門!」

 

 どんだけ応援してもゴ右衛門はゴブリンだ。そこまで器用に出来ていない。プルプルと震えながらのフィルムを剥がす手元は危うい。

 

「あっ!」

「ギッ!」

 

 フィルムと海苔だけがゴ右衛門の手元に残り、おにぎり本体が地面に転げ落ちそうに。

 

【念動】を発動する。俺は食べ物を粗末にするのは嫌いだ。

 

 巻き戻すかのようにおにぎりはゴ右衛門の手に戻る。和久津に目配せをすると、軽く頷く。

 

「えっ!? ゴ右衛門、いまスキル使った?」

「ゲギョ?」

「スキル、使えたの?凄いじゃん! ゴ右衛門」

「ゲゲギョ? ゲギギョゲギョ」

 

 ゴ右衛門は事態を把握出来ず、完全にゴブ語に戻ってしまっている。まさか和久津、ゴ右衛門に押し付けるとは。

 

「【念動】ゴブリン! 爆誕!」

 

 おおおおおー!

 

 和久津がギャラリーを煽り、ギャラリーも応える。俺は和久津が【念動】を使った体で行こうとしたのに、斜め上へ行ってしまった。こうなっては仕方ない。俺は更に【念動】を発動し、ツナマヨおにぎりを浮かせ、中空で五芒星を描いてからゴ右衛門の口に放り込んだ。いきなりのおにぎりにゴ右衛門はむせる。

 

「ちょっとゴ右衛門! 大丈夫? これ飲んで落ち着いて」

 

 和久津はアイスコーヒーのキャップを外してゴ右衛門に渡した。

 

「ゲホーッ!!!」

 

 ゴ右衛門は盛大に吹き出した。この日、ゴブリンはコーヒーが苦手ということを人類は知った。

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