性格の悪さを神様に買われて加護を得ました   作:フーツラ

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第32話 誰の仕業

「今回の襲撃だが、サーカスの仕業だと睨んでいる」

 

 髪をオールバックに撫で付け、ギラギラした眼つきの権田が切り出した。耳のピアスもネックレスも金だ。日焼けした肌でまだまだ枯れない現役感が強めの50代。嫌いなタイプだ。

 

「監視カメラで確認する限り、相手はゴブリンが15体前後。統率された動きをしていることから【テイム】のスキル持ちが2名以上近くに潜んでいると思われる」

「ほほほほ。モンスターを飼育している闇クランなんてサーカスぐらいのもんですもんねえ。しかし、ゴブリン15体とは随分と舐めたことを」

 

 富沢が扇子をパタパタさせながら言う。まだ2月だぞ。

 

「外のゴブリンは陽動じゃないのか?」

「播戸の言う通り、ゴブリンは陽動だろう」

 

 権田に肯定された播戸が満足そうに頷く。承認欲求が満たされて結構なことだ。

 

「なら本命は?」

「……本命なんだが、んん」

「ほほほ。ボスにしては珍しく歯切れが悪いですねえ。一体どうしたんです?」

 

 権田がグッと奥歯を噛んだ後、口を開いた。

 

「いや。すまない。お前達を信じるしかないんだ。話そう。実は先日、召喚オーブを手に入れた。しかも非常にレアなモンスターの召喚オーブだ」

「ボス、本当なのか!? それは凄いな!!」

「ほほほほ! これはこれは」

 

 会議室の温度が俄かに上がった。

 

「どこからこの情報が漏れたかは分からない。だが、このタイミングでサーカスの野郎どもが仕掛けてくる理由はそれしか考えられない」

「ほほ。確かにサーカスの奴等なら他の闇クラン以上に召喚オーブを欲しがるでしょうねえ。表でも裏でも使える」

「で、その召喚オーブはボスが持っているのか?」

「そうだ。俺が持っているのが一番安全だからな。だが、サーカスの野郎どもも同じように考える筈だ」

「つまり、奴等はボスを狙ってくると?」

「ああ」

 

 権田に肯定された播戸がまた嬉しそうにする。ちょろすぎるだろ播戸。

 

「ほほ。で、ボスはこれからどうするんですか?隠し通路から……」

 

 ドンッ!

 

 権田がテーブルに拳を下ろした。

 

「富沢! 闇クランは舐められたらおしまいだ! ここで逃げてどうする! 俺は打って出るぞ!」

「ほほほ。結局、そうなるんですねえ。お供しますよ」

 

 富沢がやれやれと扇子をあおいだ。

 

「早速、俺の力をみせる機会が来るとはな」

 

 播戸が拳を握る。今度は俺の番か。

 

「仕方ないなあ。僕もいきますようう」

「「……」」

 

 あれ?

 

 なんだ。雰囲気がおかしい。権田が目を剝いている。富沢はポカンと口を開けてこちらを見ている。何だ。一体何が起きたんだ。俺の後ろに何かいるのか?

 

 権田の日焼けした肌が更に赤くなる。もしかして黛の透明化が解けてしまったのか。クランに勧誘してフラれた黛がこのタイミングで現れたら、間違いなくサーカスからの刺客だと思う筈だ。くそ。どう乗り切る。今、目々野として自然な行動はなんだ。何も動かないのはおかしい。

 

 ゆっくりと後ろを振り返る。

 

 誰もいない。

 

 ゆっくりと首を戻す。

 

 正面にいる権田の顔がもはや真っ赤だ。これはオークジェネラルが使っていた【硬化】の更に上級スキル【金剛】だろう。攻防一体で肉弾戦に滅法強いスキルだ。

 

「おまえは、誰だ」

 

 肌から蒸気を上げながら権田が問う。

 

「目々野をどこにやった?」

「目々野は僕ですけどうう」

「ふざける! あの目々野が自ら"行きます"なんて言う筈ないだろ! そもそもおかしかったんだ! 俺に呼ばれて10分以内に来た時点で!」

 

 権田が立ち上がった。

 

「ほほほ。確かに。目々野が会議中に寝ないなんておかしいと思っていたんですよねえ」

 

 富沢が立ち上がった。

 

「よく分からないが、お前は敵のようだな」

 

 播戸も遅れて立ち上がった。

 

「ちっ」

 

 くそおおおお! どうなってんだよおお! 目々野の野郎おおお!

 

「ニセモノは死ねぇぇぇ!」

 

 速い! 移動系のスキルか!

 

 権田の右の拳がもう目の前に迫ってきていた。咄嗟にヘッドスリップしてボディーにカウンターを合わせる。

 

 ガンッ!

 

 くそ、硬い。全然ダメだ。

 

「はははは! 効かんぞ! そらっ!」

 

 権田が掴みかかってくるのを躱して距離をとる。こいつに掴まれるのはやばい。強欲の加護でせっかく集めたスキルを奪われる可能性が高い。

 

「おらっ!逃げ回ってないで掛かってこい!」

 

 ちっ。普通の打撃は通らないしこのままではジリ貧か。

 

【変身】を発動中は他のスキルが使えない。スキルなしで権田の相手をするのは無理だ。正体を明かしたくはないが、背に腹。こいつらは全員処分だ。

 

 大きく飛び退き、いつもの自分を意識して【変身】を解除した。元に戻るのは一瞬だ。

 

「貴様は根岸!」

 

 誰よりも早く播戸が叫んだ。

 

「よう。ストーカー野郎。奈々のいやらしい画像やるから見逃してくんない?」

「名前で呼ぶなぁぁぁ!」

 

 播戸の身体から一気にドス黒い炎が吹き出した。あの厄介な加護の力だ。粘性の炎に触れたパーティションやテーブルがじっとりと燃え上がる。

 

「播戸、抑えろ! 拠点が燃える!」

 

 権田が焦って播戸を諫めるが、それは無理ってもんだ。それに、隙だらけだぞ。

 

【土生成】【土操作】【念動】【加速】【加重】

 

「吹っ飛べ!」

 

 ドンッ!

 

 土の弾丸が3人を襲った。権田と富沢はパーティションを突き破って隣の会議室まで吹っ飛んでいった。富沢に防御系スキルが無いならこれで仕留めた筈だ。権田は【金剛】で身体自体は無事だろう。しかし相当に消耗した筈。【金剛】が解けていてもおかしくない。そして問題は。

 

「根岸!死ねええ!」

 

 やっぱり全然効いてねえ! あの炎、反則だろ。なんでもかんでも燃やしやがる。リーチも長いし炎の形も自由自在。狭い所ではこちらが圧倒的に不利だ。とにかく場所を変えなければ。

 

「播戸、見てみろ! これが奈々から貰った誕生日プレゼントだ!」

「何いぃぃ!」

 

 バカめ。閃光珠が強い光を発し、会議室を白で埋めた。思いっきり珠を凝視した播戸の視界は今頃、白く焼き付いている筈だ。

 

 俺は【変身】でもう一度、目々野の姿になると会議室を出て走る。オフィスフロアにいた金髪女が驚いた顔でこちらを見た。目々野が走る姿がそんなに珍しいのかよ。

 

「サーカスの奴等がボスを襲撃したんだようう。ボスのマジックポーチが奪われたんだ。クランメンバー全員でダンジョンの入口を塞ぐんだ! 早くしろよう」

 

「は、はい! 了解しました! すぐに動きます!」

 

 目々野が普段になく語気を強めたのが効いたようだ。金髪女はスマホを弄りながらダンジョンの入口へ走っていった。これでしばらくは時間が稼げる。

 

 さっきまでいた第一会議室を振り返ると、もう入り口から炎が噴き出していた。どす黒く、ねっとりと滴るような炎。黛の誕プレがよほど悔しかったらしい。

 

「根岸いいぃぃ!」

 

 地の底から唸るような声。なんだこれは。負けイベントなのか?

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