性格の悪さを神様に買われて加護を得ました   作:フーツラ

35 / 44
第35話 名前はまだない

「さて、本日は前回召喚したモンスター、猫又に名前をつけたいと思います!」

 

 和久津の声に合わせて周囲から拍手が起こった。

 

 カメラの前には和久津とその肩に乗った猫又。周囲は毎度の如くギャラリーに囲まれている。前回程ではないが中々の人混みだ。今回はTwittorで特に宣伝はしなかったのだが、落武者の恰好をした和久津が歩いているだけでギャラリーがついてくるので仕方がない。

 

「それでは皆さんに考えてもらった名前を見ていこうと思います! ゴ右衛門、フリップ持ってきて!」

 

 ゴ右衛門がフレームの外から何枚ものフリップを持って小走りでやってきた。

 

「前回の動画では伝えられなかったんですけど、この猫又、付いていないのでたぶんメスです! それを意識して候補を選んできました! ただし、決めるのは猫又自身です!」

 

 猫又は興味無さげに前足で和久津の髪を弄っている。普段なら烈火の如く怒りだす筈の和久津だが、猫又には甘いらしい。

 

「では1つ目はこちら!」

 

 和久津の声に合わせてゴ右衛門がフリップを出した。

 

「テト! なるほど、これはバステト神からとったんですね。どう? テトは?」

 

 和久津が猫又に視線を向けるも、反応はない。

 

「うーん、いまいちのようです。では次に行ってみましょう! 2つ目はこちら!」

 

 ゴ右衛門が2枚目のフリップを出した。

 

「たねこま! ねこまたのアナグラムかぁー。どう? たねこまは?」

 

 またもや猫又に反応はない。

 

「よーし、サクサクいきましょう! 3つ目はこちら!」

 

 ゴ右衛門が3枚目のフリップを出した。

 

「リリー! 魔女宅かな? 谷崎かな? リリーはどうかなー」

 

 

#

 

 

「これが最後です!これで決まらなければ名前決定は次回に持ち越しです!20個目はこちら!」

 

 ゴ右衛門が最後のフリップを出した。

 

「夏目!どう?夏目は気に入ったかな?」

 

「ニャオ」

 

「えっ、いいの?夏目でいいの?」

 

「ニャオ」

 

「夏目!」

 

「ニャオ!」

 

 和久津の呼びかけに猫又が挙手で応えた。どうやら決まったらしい。

 

「名前も決まったところで夏目にはプレゼント! とあるルートから入手した魔道具の首輪です! この首輪には【回復】スキルが込められています! これで何かあっても安心! ほら、夏目」

 

 俺が準備した首輪を和久津が夏目につけた。夏目は満更でもない様子だ。

 

「では、今回の動画はこの辺で終わりにしたいと思います! 次回は猫又・夏目の能力に迫っていきたいと思います! この動画を気に入った方は高評価、チャンネル登録お願いします!」

 

ゴ右衛門がいなくなっていることに和久津が気が付いたのは、カメラを止めたずっと後だった。

 

 

 

 

「パイセンやばいっす! 召喚オーブが反応しないっす! 意識してもゴ右衛門が戻ってこないんです! ゴ右衛門の身に何かあったんでしょうか?」

 

 ゴ右衛門が行方不明なことに気付いた和久津はひどく取り乱していた。ギャラリーにゴ右衛門について聞いても、誰もが夏目に夢中で気にも留めていなかったらしい。

 

「召喚オーブを見せてみろ」

 

 俺は和久津の手から召喚オーブをとり、光にかざすようにして観察する。ふむ。異常はない。

 

「和久津。残念だったな。ゴ右衛門のことは諦めろ」

 

「えっ」

 

 目に見えて和久津が狼狽える。

 

「飼い慣らされたペットが野生に戻って命を落とすのはよくある話だ。召喚オーブがこの状態になったということは……」

「そんな馬鹿な! ちょっと探してきます!」

「落ち着け和久津!」

 

 駆け出していきそうになった和久津を制止する。

 

「ここはダンジョンだ! お前は煙を探すのか?」

「……」

「たかがゴブリンじゃないか。お前も何百体と倒しているだろ」

「でもゴ右衛門は! 自分はゴ右衛門のことを……」

 

 和久津は項垂れる。

 

「なんだ。まさかゴ右衛門はゴブリンじゃないというのか? 和久津。勘違いするなよ。ゴ右衛門はゴブリンだ。召喚ゴブリンとはいえ、ゴブリンには違いない。これまで散々ゴブリンの命を奪ってきたお前が、一ゴブリンの命に固執するのか?」

 

「……」

 

 ふふふ。ちょろい。

 

「散らかったフリップを片付けたら、今日はもう家に帰って夏目と遊んでろ」

「ニャオ」

 

 夏目が前足を和久津の頭にのせて催促する。

 

「……了解っす」

 

 夏目に頭ポフポフされながら和久津はフリップを集め、ダンジョンの入り口へと向かっていった。その背中はまさに落武者だ。

 

 俺はゴ右衛門の召喚オーブを手に第1階層を歩き始めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。