性格の悪さを神様に買われて加護を得ました   作:フーツラ

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第41話 来訪者

 三毛猫社の隅でいつものようにコーヒーを飲んでいるときだった。異様な雰囲気を纏った2人組がこちらに視線を定めたまま歩いてくる。

 

 ああ。またか。

 

 富沢の時と同じように、どうせ厄介事だろう。男はひょろひょろとした体格で首にスカーフを巻いている。刻印を隠しているのだろう。連れの女は男と同じくらいの長身ではっきりとした顔つき。いかにも勝気だ。女の首にも刻印。見たことのないものだ。

 

「お前が根岸か?」

 

 女の方がぶっきら棒に声を掛けてきた。その様子に男が慌てる。

 

「いえ、違います。根岸ではないです。人違いでは?」

「何! 人違いだったか! すまん」

「望月さん!チョロすぎますよ」

 

 ヒョロい男が女にツッコむ。

 

「どういうことだ? 三木」

「この人は根岸さんです。刻印も確認してあるので間違いないです」

「おい! 根岸! 騙したのか!」

 

 女が怒り出す。

 

「なんのアポイントメントもなしに現れる輩が何を言っているんだ。いきなり話し掛けてきてまともに相手してもらえるわけないだろ」

「き、貴様!」

「ちょっと望月さん! 根岸さんの言う通りですよ! いきなり喧嘩腰に声を掛けたのが悪かったんです」

 

 ひょろ男の方はそれなりに常識があるらしい。

 

「私は三木っていいます。で、こっちが望月です。エクスプローラーをやってます」

「知らんな」

「"ふんどしナイト"と"日本昔ばなし"って言えばわかりますか?」

「お前等、頭おかしいのか?」

「なんだと!」

 

 さらに怒る。

 

「もう、望月さん! 落ち着いてくださいよ! 事前にどういう人か教えてたでしょ?」

「だがしかし……」

「根岸さん、すみませんでした。少しだけ話をさせていただけませんか?」

「なんの話だ」

「新宿ダンジョンの完全攻略に関係する話です」

 

 ふん。面白い。

 

 

#

 

 

「へえ。新宿にこんな広い事務所を持ってるんですね。落武者チャンネル、儲けてるんですねー」

「夏目はいないのか? 夏目に会いたいぞ!」

 

 2人を事務所に連れてきたのは間違いだったかもしれない。

 

「お前等、遊びに来たのか?」

 

「くっ」

「ごめんなさい」

 

 二人に椅子を勧め、話しを進める。

 

「まあいい。で、新宿ダンジョンの完全攻略とお前達は何か関係あるのか?」

「つい先日、新宿ダンジョンの第19階層が攻略されたのはご存知ですか?」

「ああ。あれだけニュースでやっていればな」

「あの攻略チームは協会が日本政府からの要請を受けて結成したもので、選りすぐりのエクスプローラーが所属しています。我々もその一員です」

「"ふんどしナイト"と"日本むかし話"が?」

「そうだ!」

 

 なんでこの女は自分のあだ名を呼ばれて嬉しそうなんだ。理解出来ん。

 

「もう"ふんどし"じゃないんですけど、一度付いたあだ名ってなかなか消えないんですよ」

 

 三木が困ったような表情をするが、困っているのは俺だ。

 

「で、何故俺を訪ねて来た?」

「これを見て頂けますか?」

 

 そう言うと三木は自分の首のスカーフを外して刻印を露にした。その刻印は明らかに色が薄く、今にも消えてしまいそうだ。

 

「根岸さん、お願いします。加護の力を取り戻す手伝いをしてくれませんか?」

 

 三木は深々と頭を下げるのだった。

 

 

 

「三木はなんの神様から加護を?」

 

 ソファーに浅く腰を掛けた三木はさっきまでの浮ついた表情から一変して真剣だ。

 

「羞恥の神様からです」

「どんな特殊能力がある?」

「恥ずかしさを盾に変えることが出来ます」

「恥ずかしさを?」

 

 三木は気まずい様子で答えた。

 

「ええ。恥ずかしい気持ちが強い程、味方に強力な盾が形成されるんです。この加護の力で私はタンクとしてトップエクスプローラーの地位を掴んだんのですが……」

 

 苦悶の表情を浮かべる。

 

「何か問題が?」

「はい。最近、どんな格好をしていても、恥ずかしくないんです! むしろちょっと高揚感を感じるぐらいで、加護の力もどんどん弱まっていて」

 

 こ、こいつ人前で何を言ってるんだ。恥ずかしくないのか? いや、恥ずかしくないんだったな。

 

 夏目がいないことが分かってからつまらなそうにしている望月に話をふる。

 

「三木の加護の盾ってのはそんなにダンジョン攻略において重要なのか?」

「ああ、重要だな。ダンジョンの最深部ってのは本当にどっからでもモンスターがわいてくるし、遠距離からもバンバン狙われるんだ。それを三木の盾は自動で防いでくれていた。しかも味方全員をだ」

「今は?」

「すぐに盾が壊れてしまってな。第20階層の攻略は一旦、中断している」

 

 望月の言葉に三木が俯く。それほどまでに三木に依存しているのはどうかと思うが、急造のチームでは仕方がないのかもしれない。

 

「根岸さんはエクスプローラーの様々な悩みを解消するスキルをお持ちだと聞いています!どうか私に羞恥心を取り戻させてください!」

 

 こいつがどんな変態だとしても、新宿ダンジョンの攻略が止まっているのは問題だ。

 

「話はわかった。いくつか条件はあるが、出来る限り協力しよう」

「本当ですか! ありがとうございます! で、私はどんな格好をすればいいですか?」

「……いや、とりあえず格好はそのままでいい」

 

 俺の言葉を聞いて三木の表情が曇る。これは重症だ。羞恥心のカケラもない。俺はマジックポーチから開心剣を取り出して、応接テーブルの上に置いた。

 

「今からお前の深層を見せてもらう。この剣の先に指を滑らせろ」

「……はい。よろしくお願いします」

 

 三木の記憶が流れ込んできた。

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