性格の悪さを神様に買われて加護を得ました   作:フーツラ

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第44話 異世界へ

「なんか久しぶりっすねー。ファミレスに呼び出されるの」

 

 和久津の声に五条が頷く。今のところ、五条が帰り出す雰囲気はない。コーヒーカップにゆっくりと口を付けながら、こちらの様子を伺っている。

 

「事務所でも良かったんだが、ちょうどメシの時間だったからな」

「なるほどっすねー。で、話ってなんですか?」

 

 和久津はコーラーの入ったグラスをテーブルに置くと、不思議そうな顔をして尋ねた。

 

「何を言っている?話をするのはお前達だろ。俺に報告したい、いや、報告すべきことがあるんじゃないのか?」

「「えっ」」

 

 二人とも苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「べ、別に何もないっす!」

「本当にないのか?五条」

「ないれす」

「あるな。二人とも酷く動揺しているぞ」

「「……」」

 

 黙ってしまった。

 

「俺はな、落武者チャンネル公式Twittorの他にアンチ落武者チャンネルのTwittorも運用している」

「「はぁ」」

 

 二人がアホ面を並べる。

 

「意味が分からないという顔をしているな。いいか? アンチだって絶対値としてはファンなんだよ。アンチをコントロールしてはじめて、プロと言える」

 

 まだ二人は話が読めないようだ。

 

「そのアカウントにはアンチ落武者の人々から様々な情報が寄せられる。それこそ画像付きでな」

「「……」」

 

 顔を見合わせる。

 

「これは東京都在住の黛さんからのDMだ。和久津によく似た男と五条によく似た女が街ぶらデートしている画像が添付されている」

 

 俺はスマホの画面を二人にみせる。

 

「「……」」

「これも東京都在住の黛さんからのDMだが、ディ○ズ○ニーランドのフリーフォールで落下する瞬間の画像が添付されている。よく見ろ。二人でしっかりと手を繋いでいるな」

「ちょっと! どうやってこんな写真とったんすか!」

 

 五条は顔を赤くして俯いている。

 

「アンチ落武者チャンネルの情報網を舐めるなよ。我々は一国に値する」

「て、両方死神ちゃんさんじゃないですか!」

「で、どうなんだ。何か俺に言うことがあるんじゃないのか?」

 

 二人は顔を見合わせ、和久津が口を開いた。

 

「パイセン、実は自分、五条さんとお付き合いしてます」

 

 五条の耳が真っ赤に染まる。

 

「そうか。おめでとう。二人とも初めての彼氏彼女ってことだな」

「まぁ、そーなりますね」

「で、二人の出会いは?」

「あの、パイセンにこのファミレスに呼び出されて」

「つまり?」

「パイセンのおかげです!感謝してます!」

「素直でよろしい。で、実は二人に相談があるんだ」

 

 二人がゴクリと生唾をのんだ。

 

 

#

 

 

寝起きの靄のかかった視界でリモコンを見つけ出し、テレビをつける。テレビは淡々と朝のニュースを流し始めた。

 

電気ケトルに水を入れ、マグカップにドリッパーを仕掛けて5分弱。ゆっくりとコーヒーをいれているうちに、意識がはっきりしてきた。

 

ここ数日は準備に忙しくしていたせいで、どうにもまだ眠たい。もう一眠り。そう思った時だった。

 

テレビに緊急速報のテロップとそれを知らせる音が流れた。地震かと身構えたが、どうやら様子が違う。

 

『攻略チームが新宿ダンジョンを完全攻略。異世界へ』

 

 昨晩のうちにクリアするかと思ったが、待てども待てども。攻略チームは手こずっていた。最後までどれだけの人がライブ配信を観ていたか知らないが、今日の日本列島は寝不足だろう。

 

 テレビのチャンネルを変えても話題は同じ。事前に用意していたのか、攻略チームの特番が流れている局もあった。勿論、戦闘シーンはひたすらエジンがモンスターを一刀両断するばかりだ。

 

 さて、こうなったらゆっくりもしていられない。俺には俺でやることがある。コーヒーを飲み干し、腰を上げた。

 

 

#

 

 

「本当に大丈夫なんですかねぇ?」

 

富沢は額の汗を拭いながら心配そうに呟いた。カオスサーガの拠点はダンジョンの中なので一年中快適な気温の筈だが、富沢は別らしい。

 

「大丈夫だ。奴に渡す前に検証は済ませてある。マジックポーチが破けて中のモノが全部ばら撒かれるだけで、機能としては問題ない」

「ほほほ。それは怒られそうですねぇ」

 

富沢は嬉しそうにした。

 

「奴には賞金3億渡したからな。文句は言わせない」

「落武者チャンネルは大丈夫なんですかねぇ?」

「その辺は和久津と五条に任せてある。再生回数が落ちたらペナルティーだ! と脅してあるから大丈夫だろう。動画のネタに悩んだ場合は富沢に連絡するように言ってある。適当に珍しい魔道具やスキルオーブを渡してくれ。それだけで当分の間はネタに困らない」

 

 鷹揚に頷き、富沢は続ける。 

 

「分かりました。使い所に困っていた魔道具が沢山あるので問題ないです」

「カオスサーガはお前に任せる。権田の姿で現れるのも面倒になってきていたところだ。権田はサーカスに囚われたことにしよう」

「ほほほ! またサーカスはヘイトを稼ぎますねぇ」

「ああ、奴等には足を向けて寝られないな」

「……そろそろ行きますか?」

「ああ。見送りはいらないぞ」

 

 

#

 

 

『はいってまーすうう』

 

 ドアをノックしても返ってくるのはやる気のない声。金髪女から借りた合鍵でドアを開けると、布団の中から頭だけ出した目々野だ。

 

「な、なんで、ボス」

 

 目々野は迷惑そうな様子を隠そうともしない。

 

「久しぶりだな。目々野。ダラダラしてたか?」

「ダラダラですようう」

「そうか、良かったな」

「今日はなんの用ですうう?」

「ちょっと葛籠をな。上がるぞ」

 

 目々野の部屋には布団と葛籠しかない。ある意味ストイックだ。

 

「ボス、葛籠に入るんですかあ?」

「ああそうだ。よく分かったな」

「実は僕も考えていたんですようう。葛籠に入ったらもっとダラダラ出来るんじゃないかって」

「それはどうだろうな。今度教えてやる」

「お願いしますようう。ボス」

 

 葛籠の蓋を開けると、人間がすっぽり入っても余りある空間だ。一応、声を掛けておくか。

 

「黛、いるか?」

「いる」

 

 いつも通り全身真っ黒の黛がふっと姿を現した。大鎌を持っていないのは幸いだ。

 

「これから出掛ける予定だ。黛も来るか?」

「いく」

「どんな所かわからないぞ?」

「平気」

「いいのか?」

「いい」

 

 黛を抱き上げて葛籠に入り、身体を丸める。

 

「目々野、頼みがある」

「無理ですようう」

「そう言うな。頼む。蓋を閉めてくれないか?」

 

 さんざん勿体ぶった後、ごそごそと布団から這い出る音がして、視界が暗転した。目々野はしっかりと役目を果たしたようだ。

 

 葛籠が発光し始め、黛がぎゅっと身体を強張らせた。眠りに落ちる直前のように意識が虚ろになる。そろそろだな。

 

 次は異世界だ。




ここで、第一部は終了です! 第二部は異世界編! 応援、よろしくお願いします!
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