性格の悪さを神様に買われて加護を得ました   作:フーツラ

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第5話 初イベント

「おい、神が悪い見本として創った生き物! こっちだ!」

 

 斧を持ったゴブリンがドタバタと駆けてくる。

 

「なんだその走り方は! 気持ち悪くて滑稽で不快だ! やはり悪い見本だな」

「グギギギギ!」

 

 どういうわけか言葉が通じているようで、ゴブリンは激おこだ。力任せに振り下ろされた斧をサッとかわし、首筋にショートソードを滑らす。

 

 紫の血が吹き出し、ゴブリンは煙に変わった。残ったのは魔石と本来はレアドロップの【初級ポーション】。性悪の髪の加護の力は健在だ。

 

 

 ここは新宿ダンジョン第2階層。今日は1人でダンジョンに潜っている。和久津はいない。

 

 その分、しっかりと準備をしてきた。ユニ〇ロのスーツから戦闘用のボディースーツ。金属バットからショートソード。革靴からミリタリーブーツ。その他、便利アイテムも。全てエクスプローラーショップで買い揃えたものだ。

 

「この道を真っ直ぐか……」

 

 今日まで知らなかったのだが、スマホのエクスプローラー用アプリ「冒険しよう!」では日本の全てのダンジョンのマップが公開されていた。もちろん人類が到達した階層だけだが。俺は先人のナレッジを有効活用し、さくさく攻略を進めている。

 

「しかし、ゴブリンにも飽きてきたな」

 

 正直なところ、この階層でずっとゴブリンを狩っているだけでも生活は出来る。初級ポーションを売っているだけで贅沢も貯金も出来るだろう。

 

 しかし、全く面白くない。せっかく仕事を辞めたのに、ルーティンゴブリンとか全くナンセンス。死亡率ナンバーワンの職に就いたからには刺激が重要だ。

 

 たぶん、この好奇心には加護が影響している。身体能力が上がったせいか、全能感に満ちているし、何よりも神が更なる「性悪ムーブ」を求めているのを感じる。その要求に突き動かされているのだ。

 

 

 先へ急ぐ。

 

 

 

 

「グギャギャギャ!」

 

 もうすぐ第三階層というところで、ゴブリンの笑い声がダンジョンに響いた。まだ姿は見えないが声の感じからしてすぐ近くだ。

 

「いやぁぁぁぁ!」

 

 女の声がゴブリンの笑い声の後に続いた。俺は声のした方に進路を変えて駆け出す。一歩毎にテンションが上がっていく。これは面白イベントに違いない。

 

 角を曲がるとぼんやりとゴブリンの姿が見える。それも3体。そして別の姿も。あれは人間の女だ。きっとさっき、悲鳴を上げたやつだろう。

 

 俺は状況を探るため、足音を殺してゆっくり三体と一人に近付いた。

 

 ゴブリン達は行き止まりに追い詰められた女エクスプローラーに夢中だ。こっちのことは全く気付いてない。

 

 さて、どうしたものか。エクスプローラーってのは基本的に自己責任だ。もちろん俺に助ける義理はない。だがしかし、ここを性悪ムーブで切り抜けた時にどんなドロップがあるのかは非常に興味がある。

 

 俺は一瞬で考えを纏めると、あえて足音を鳴らしてゴブリン達に存在を知らせた。そして、努めて軽薄な声を出す。

 

「お、お楽しみか。羨ましいな。俺も混ぜてくれよ」

 

 ゴブリン達が弾けるように振り返り、警戒した表情を見せる。

 

「おいおい、勘違いするなよ。その女とやるんだろ? ちゃんと順番は守るから続けてくれ。俺は最後でいい」

 

 俺はショートソードを放り投げ、両手を上げて敵意のないことを示す。

 

「ちょっと! 何言ってるんですか!! 人でなし! 助けてくださいよ!」

 

 壁に追い詰められた女が喚いた。

 

「俺はモンスターに女が襲われてるのを見るのが好きなんだ。じっくり見させてもらう」

「いや、いやいやいやいや」

 

 ゴブリン達が嬉々として女に飛び掛かり、地面に組み伏せる。

 

「いやぁぁぁぁ! 助けて! 助けてよ!!」

 

 さて、そろそろいいか。俺は剣帯につけたポーチから紫に輝く珠を取り出し、今にも始まりそうな奴等に向かって投げつける。

 

 

 バフン! と珠は地面で弾けると紫の煙となって広がり、ゴブリンと女を覆い尽くす。ゴブリン達が何事かと声を上げるが、直ぐにそれも弱々しくなる。女の声もしない。

 

「おー、さすが高いだけのことはあるな。麻痺珠。ここまで即効性があるとは思わなかった」

 

 ショートソードを拾い上げ、重なり合って痙攣している奴等の方にゆっくりと歩いて行く。

 

「汚いミドリムシが人間様に手を出してタダで済むわけないだろ」

 

 ゴブリン達をブーツで蹴り上げ、女から剥がす。女は恐怖で引き攣ったままの表情で固まり、瞼だけが動いていた。

 

「大丈夫だ。一時的に手足が動かないだけだ。呼吸までは止まらない。しばらく寝てろ」

 

 女にそう言い置き、俺はゴブリンへと向かう。ゴブリンは憤怒の表情を此方に向けてきた。

 

「それ! その表情だよ! 騙されたゴブリンの表情は最高だな! さて、どいつから殺そうかな?」

 

 こいつら、よく見ると元気になったまま麻痺してやがる。ゴブリンてのはとんでもないモンスターだ。見るに耐えない光景。さっさと終わらせよう。

 

 俺はゴブリン達の首に次々とショートソードを振り下ろした。

 

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