性格の悪さを神様に買われて加護を得ました   作:フーツラ

6 / 44
第6話 私の名前は

 やっと首が動くようになり、男の方を見た。私を助けて? くれた男は少し離れたところに座って何やら必死にスマホを弄っている。

 

 鋭い目つきと鋭利な鼻梁からサディスティックな印象を受けるけど、イケメンだ。10人いれば10人、そう言うだろう。

 

 少しすると、更に麻痺珠の効果は弱まった。まだ手足は動きそうにないけれど、声は出せそう。

 

「……あ、あの」

「10万だ」

 

 えっ!?

 

「なんのことですか?」

「お前を助けるのに使った麻痺珠の値段だ」

「……あっ、払います! 払いますから! 助けてくれてありがとうございます!」

 

 何この人怖い! いきなりお金のはなし! さっきのイケメン認定取り消しだ!

 

「いや、金はいい」

 

 えっ、ちょっと、何するつもり? まだ身体は動かない。

 

 男は立ち上がり、私の横に歩いて来てしゃがんだ。首に視線を感じ、鳥肌が立つのが分かった。やばい! 何かされる。

 

「お前はなんで1人でダンジョンに来ているんだ?」

「ほ、本当はサークルの友達とくる予定だったんですけど、急に都合が悪くなったみたいで……」

「サークルってのは大学のエクスプローラーサークルとか?」

「ええ、その通りです」

「ふむ。使えそうだ。当たりだ」

 

 男は顎に手をやって思案を始める。

 

「使える?」

「いや、なんでもない。気にするな」

 

 考えが読めない……。

 

「で、なんでゴブリンなんかに追い詰められていた?」

 

 私の首の刻印を見ている。

 

「……いや、あの、調子に乗ってゴブリン狩りをしていたらレイピアが折れちゃって」

「素手でなんとかならないのか?」

「わ、私の加護はそんなに身体能力上がらないんです」

「なんの神様なんだ?」

 

 なんか尋問されてるみたい。

 

「……ど、読書の神様です」

「プッ」

「ちょっと! 何がおかしいんですか! この加護を得たら、モンスターを倒せば倒すほど、読んだ本の内容を忘れなくなるんですよ! 学生には垂涎の的! の加護なんです!」

「死んだら何にもならんな」

 

 ぐぬぬ。さっき死にかけただけに何も言えない。

 

「名前は?」

 

この男に名前を教えるのはマズイ気がする。

 

「おいおい、命の恩人に名前も教えられないのか?まだ立てないみたいだけど、このまま置いていってもいいんだぞ」

「わっ! 言います、言いますから! 五条美里です」

「五条だな」

 

 男の口角がニヤリと上がった。ひょえええ。やっぱり名前言うんじゃなかった!

 

「俺は根岸三郎という。仲良くしよう」

 

 根岸さん、全然目が笑ってないよおおおぉ。

 

 

#

 

 

俺は五条を第二階層の転移石にまで護衛し、ついでに初級ポーションを10本ほど売りつけてから見送った。

 

初級ポーションならサークル内ですぐに捌けるらしく、むしろ感謝された。なんでも100人を超えるサークルらしく、他の大学とも交流があるので全く問題ないらしい。

 

ドロップアイテム目当てだったが、良い拾いモノをした。情けは人の為ならずだ。もちろんエクスプローラー用アプリ「冒険しよう!」でフレンド登録もさせた。抜かりなし。

 

さて、五条と一緒にダンジョンを出てもよかったのだが、一つ試したいことがある。

 

 俺はマップを見ながら人が来ないであろう、どん詰まりまでやって来た。そしてポーチから何やら文字の書かれた珠を取り出した。

 

 召喚オーブ。

 

 五条を助ける時に倒したゴブリンの一体からドロップしたものだ。スキルオーブのようにスキルを覚えるわけではない。その代わりに、オーブを落としたモンスターを召喚出来るらしい。

 

 ごく稀にモンスターからドロップするらしく、いくつかの事例が協会のサイトに載っていた。ただ、所有者からの情報提供が乏しいので詳細は載っていない。

 

 使い方は簡単。そのモンスターのことを念じながらオーブを握るだけでいい。

 

 周囲に気配がないことを確認し、ゴブリンのことを念じながらオーブを握る。身体から力が抜けていき、オーブが輝き始める。思わずオーブを手放すと、オーブからより一層強い光が放たれ、それが収束するとともに見慣れたやつが現れた。

 

 ゴブリン召喚成功だ。

 

「よう。俺の言葉は分かるか?」

「ゲギョゲギョ!」

 

 ゴブリンは声を出しながら頷く。

 

「よし、これを振ってみろ」

 

 俺がショートソードを地面に転がすと、ゴブリンは恐る恐る手に取る。

 

「振るんだ」

「ギギ!」

 

 ゴブリンはショートソードを振り回すが、まるでなっていない。俺だって素人だが、それでも分かる。酷いと。

 

 俺はスマホを取り出し、Youtobeで適当な剣道の動画を探してゴブリンに見せる。

 

「ギギギ!」

 

 分かった! と言うように声を上げ、ゴブリンはショートソードを大上段から振り下ろす。さっきより随分とマシになっている。召喚オーブで呼び出したゴブリンは他の奴よりも賢いのかもしれない。

 

 ゴブリンに一通り剣道の形を練習させた後、俺は召喚オーブを手に取って、戻れ! と念じた。

 

 するとゴブリンの身体から光が放たれ、次の瞬間には消えた。なんとなくだが、召喚オーブに熱が籠った気がする。

 

 さて、もう一つ実験だ。

 

 俺はもう一度、ゴブリンのことを念じながら召喚オーブを握る。強い虚脱感に襲われるが、今度はオーブを落とさない。

 

 オーブから強い光が放たれ、ゴブリンが現れる。

 

 ゴブリンにショートソードを手渡し、振れと命じる。

 

 するとどうだ。ゴブリンの振りはスムーズ。つまり、召喚オーブで召喚するゴブリンは同じ個体、もしくは記憶や経験を受け継いだ個体ということだ。

 

「これは悪事が捗る」

 

俺は思わず声を上げてしまったのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。