各サイドから「うわっ来たよ」って言われる第三勢力 作:マコモ兄ちゃん
「キャァァァァァァ!!!!」
少女の痛みのこもった苦悶の叫びとともに、少女の身体がコンクリートの地面に打ち付けられる。
少女は全身から湧き上がる痛みを、歯を食いしばって耐えながら、自身の目の前に立ちはだかる敵を見据える。
目の前に立ちはだかるのは、トンボの意匠が点々と身についている怪人だ。
相対する少女は、ピッチリと肌に吸い付くスーツの上から、鋭い刃を持ったメタリックな武装が備えられているサイバネティックな姿をしていた。
「ぐっ……」
少女は地面を転がりながらも何とか立ち上がろうとするが、全身に響く痛みがそれを許さない。
ジリジリと近づくトンボの怪人……少女も立ち上がり、赤いサイバーなエフェクトと共に蛇腹剣を生み出すと、怪人へと叩きつける。
「でりゃぁ!!」
「――!!」
不意打ちにより、怪人も避けれずにその鋭い一太刀を食らい思わず傷口を押さえる。
「せぇぇりゃぁぁぁ!!!」
その隙を見逃さなかった少女は、撓る剣をムチのように相手に打ち付けて、その体をめった切りにする。
怪人もさすがに連続の斬撃に体を痛めたのか、大きく地面を転がってしまう。
「はぁ……はぁ……」
しかし、少女も先ほど地面に叩きつけられたダメージが残っているのか、剣を地面に突き刺して、深く深く息づいてしまう。
(はぁ……結構キツイなぁ……)
少女は心のなかでそんな弱音を吐いてしまう……だが、いま自分が引くことは許されない。
目の前にいる人々を傷つける怪人を退治するために、自分は戰場に立っているのだ。それが、辛いから、なんて理由で逃げるような真似は許されないし絶対にしたくなかった。
だが、このままグダグダにやって押し切れるかも怪しい……しかし、やるしかないと少女は奥歯を噛みして剣を引き抜こうとする。
……その時だった。
次の瞬間カツンとコンクリートと靴が交わり叩かれる音が響き渡る。すると、怪人の後ろから先ほどまでそこに居なかったはずの青年がしゃがみながら現れる。
怪人は唸り声を上げながらゆっくりと青年の方を振り向く……少女は、頭を抱えて地面にしゃがみ込みながら思わず言葉を漏らしてしまう。
「うわっ……来たよ……」
「――!!」
青年は、そんな少女の反応はさておいて頭を掻きむしりながら天を仰いで呟く。
「――――オイオイ、つまんねぇ祭りだなぁ……」
青年はそう言って首を回しながら怪人へと近づく……怪人は指をゆっくりと折りたたんで握り拳を作ると、地面を蹴り上げて、猛スピードで目の前の青年へと拳を叩きつける。
「……!!??」
「しっかりしろよ、祭りはもっと景気よくやるもんだぜ……」
しかし、その拳は青年の異形と化した腕によって押さえつけられてしまう。
青年はそのまま怪人の腕をつかみ、その腹に何度も何度も蹴りを打ち付けて蹴り飛ばす。青年は、転がした怪人に目を向けるよりも先に、その異形の掌を太陽へとかざす。
「俺が祭りの手本を見せてやんよ……!!」
そう言って青年はゆっくりと握りこぶしを作ると、青年の胸から炎をまとった羽のついた竜蛇のような怪物がが現れる。
炎を纏った蛇は青年へと噛みつき、青年の身体を変化させる。
炎と共に現れるのは、赤いエネルギーを頭から尾にも見えるような髪のように伸ばし、龍鱗や角を生やした……まさに竜人と呼べるような姿をした青年だった。
青年は高笑いを上げながら声を荒げる。
「ハハハァッ!!!こっからが俺の祭りだァッ!!」
そう言って青年は怪人へと駆け寄り、スピードと体重を乗せた拳を怪人へと打ちつけ、それをはじめにまるで格ゲーのコンボのように蹴りや拳や頭突きを織り交ぜた連撃を繰り出した。
少女はその光景を見ながら苦虫を噛み潰したような顔をしていた……その間にも、青年は完全に怪人にマウントポジションを取ってタコ殴りにしていた。
そして、先ほどまで少女が苦戦していた敵をいとも容易くとどめの一撃まで追い込む。
青年は拳を握りしめて力をためる……すると、青年の掌から炎が噴き出て腕全体にまとわりつく。
次の瞬間青年は、頭から伸びる尻尾のようなエネルギーで地面をたたきつけ加速を付けて、その拳を怪人へと必殺の掛け声とともにたたきつけた。
「怒涛のドラゴフィストォォォォォォ!!!」
「!!!!!」
打ち付けられた拳は、怪人の身体をいとも容易く貫通しその拳が引き抜かれると、怪人は地面に倒れながら火花を上げて消滅する。
青年は手応えを確かめるように腕を握りしめる……すると、青年は大きく息を吸って、脱力するように肩をすぼめる。
そんな青年に、漸く体力が回復してきた少女は何とも言えない表情をしながら青年を見つめて声を掛ける。
「……あ、ありがとう……助か「足りねぇ。」……えっ?」
少女が、危機を救ってくれた青年に対してお礼を述べようとするが、それよりも先に青年が呟きいた。
少女は嫌な予感をさせながら、少し後退りすると……青年の頭がグリンと少女の方を向き、その鋭い瞳から赤い光がバチバチと放たれる。
「まだまだ足りねぇぜぇぇ!!!次はテメェだァァァァァ!!!!」
「やっぱ来たぁぁぁぁぁぁ!!??」
そう叫び追いかける青年に対して、少女は漸く回復してきた体力を消費して逃げることになるのだった。
この世界には、魔獣と呼ばれる人に害をなす怪人や化け物が、世界の裏側――異世界から現れる。そんな化け物に対応できるのは、同じ魔獣の力だけだ。
人類は、一部ではあるがその魔獣の力を抽出し人にまとわせる
それを用いて戦う戦士たちは、世間ではヒーローのようにもてはやされているのだ。
先ほどトンボの怪人と戦っていた少女――コードネーム:スカーレットこと、椿シュウも、そのギアを纏い魔物を倒す覚悟を決め、世間からヒーロー扱いされる者の一人だ。
人類は唯一と言っていい魔獣へと対抗手段を手に入れたのだ……そう思われていた。
しかし、そこにとある小石が一石投げられたのだ。
それはギアを通さずに魔物の力を見に宿している者だ、魔獣のエネルギーを直に身にまとい変身する……魔人と呼称された一例。
それこそが先ほど戦闘に乱し場を引っ掻き回していた青年……コードネーム:ヒガンだ。
彼は、ギアを通すことなく魔獣の力を見に宿して戦う……ギアが改造された魔獣の力の養殖だとするならば、ヒガンは天然物の魔獣の力を直に操れるのだ。
魔人を研究すれば、ギアの能力も大きく上がる……しかし、それは難しい。魔人自体現在確認されているのはヒガン一人だけ。
そして彼は決して魔獣側ではない……が、かといってギアを扱う者達の味方でもない……完全なる第三勢力だ……その行動理念は――闘い、喧嘩、祭り。
魔獣とギア使いが現れ戦闘を始めれば乱入して、双方をボコボコにして帰る。血湧き肉躍る闘い、それを彼は望んでいるのだ。
……そう、究極的に面倒くさいのだ。おまけに無駄に強いから迎撃にも一苦労。
迎撃に成功したら目をつけられるし、八方塞がりというやつだ。
シュウも、一度迎撃に成功したからこうして付きまとわれている。
故に彼は魔獣達からも恐れられ、ギアを使う者達にもトラウマを植え付け、現れればその瞬間魔物も人間も嫌な顔をする。
そんな荒らし、嫌がらせ、混乱の元……それこそがヒガンである。敵か味方か……人か魔物か……
何も分からないが、強いて確信して言えることが一つだけある。
彼は、人類側からも魔物側からも嫌われていると言う事だ。
「ハハハァァァァァァ!!!待ちやがれぇェェ!!!祭りだ祭りだァァァァァ!!!!!」
「ちょっ!?しつこい、本当にしつこい!」
荒らし、嫌がらせ、混乱の元系主人公。