ハイスクール・フリート~Sophomore Season~ 作:梯子田カハシ
明乃・ましろの船旅と大和の先輩たち
3月21日 本州と九州の狭間、関門海峡近海にて
東京港発の福岡港行きの移動客船の艦首にある展望ブリッジに横須賀女子海洋学校の制服を着た2人の少女が並んでいる。栗色の髪を2つに結んだ小柄な少女と長い黒髪をポニーテールに括っている長身の少女は仲良く船からの景色を眺めている。
《~本船はまもなく下関に到着します。The Next Stop is SHIMONOSEKI~》
「あっ、シロちゃんっ!! もうすぐ下関だってっ!!」
「聞こえていましたよ、艦長。下関港の次は福岡港、もうすぐですね」
「うんっ!! 先輩たちの卒業式、楽しみだねっ!!」
「そうですね、艦長。まずは福岡港で乗り換えミスをしないように……」
「シロちゃんは真面目だな~」
「艦長、この船に乗り遅れそうになったのは誰のせいですか?」
「あはは。ごめん、ごめん」
「もう。我々は学校代表で来てるんですから、遅れる訳にはいきません」
「下関からは呉の代表生徒になった先輩達と合流するから大丈夫なんじゃないかな?」
「それはそうですが……佐世保に着くまでは安心できませんっ!!」
横須賀女子海洋学校所属、晴風艦長の岬明乃と同艦副長の宗谷ましろの2人は3月23日に行われる佐世保女子海洋学校の卒業式に横須賀女子海洋学校の代表として表敬参加するために佐世保へと向かっていた。
「それにしても、佐世保に行くのも初めてだし、まさか先輩たちの卒業式に参加できると思わなかったよ~!! クラス委員会のみんなに感謝だねっ!!」
「知名艦長の推薦は分かるとして、他のクラスの艦長や副長のみんなが
「
「紀伊艦長の千葉先輩と副長の野沢先輩には我々も海賊事件の後処理の時にお世話になりましたからね。まさか競闘遊戯会の帰港前に千葉艦長が
「サニー先輩とまゆちゃんの対決、凄かったなあ」
「あの大人しい内田さんが、あんなに強いとは……来年の競闘遊戯会の模擬戦メンバーには内田さんも参加してもらいましょう」
「そうだね~…去年は海賊に邪魔されちゃって最終スコアが付かなかったし、今年こそ頑張ろう!!」
「次回は後輩もいる訳ですし、負ける訳にはいきません」
「私達もついに2年生か~。佐世保と舞鶴にはどんな新入生が入ってくるんだろう」
「それよりも、まずは卒業式ですよ、艦長」
「むう~。シロちゃんったら、分かってるよ~。ほら、港に着いたよ。えっと、下関は……ヒメちゃんに頼まれた「とらふぐせんべい」とほっちゃんに頼まれた「ういろう」!! さっそく買いに行こう!!」
「ういろうは名古屋港で買ってたじゃないですかっ!!」
「食べ比べたいんだって~」
「あっ、艦長!! 待って下さい!!」
《~本船は下関港に到着しました。お降りのお客様はゲートが開くまでお待ちください。次の出港時刻は20分後の15時30分になります》
移動客船のアナウンスが甲板に響く中、ましろは乗降ゲートに向かって駆けだしていく明乃を追いかける。軽やかな足音と波音が響く下関港の青空は雲一つなく、どこまでも晴れ渡っていた。
△ ▼ △
明乃とましろが乗っていた移動客船に呉女子海洋学校の制服を着用した2人の少女がゲートを通って乗船する。光沢のある長い銀髪を左後頭部で軽くまとめた少女を先頭に、茶髪に近い紅髪を低いツインテールにしている少女がそれに続く。2人とも落ち着いた雰囲気の中にも、どこか堂々とした意志を感じさせる立ち振る舞いが目を引く。
《~本船は5分後の15時30分に下関港を出港します。次の停泊港は終点の福岡港となります。まだ乗船していないお客様はゲートより早めにご乗船ください~》
日頃は呉女子海洋学校で大和の艦長を務める宮里十海と副長の能村進愛の2人もまた、明乃やましろと同様に佐世保女子海洋学校の卒業式に表敬参加するために移動客船に乗船してきたのだった。
普段の艦長服・副長服ではなく、焦茶色の地に紫の線、赤いスカーフが特徴的な呉女子海洋学校指定のセーラー服を着た彼女達は楽しげに会話を交わして甲板を進んでいく。
「みやさんが艦長服を着んとセーラー服着とるん見るのやっとかめだで、新鮮な気分だら!!」
「そうね、のむさん。卒業式の主役は先輩たちだから、私達は目立ち過ぎず、花を添えるだけで十分だと思うよ」
「去年は舞鶴、今年は佐世保で卒業式、横須賀には去年の競闘遊戯会で行ったじゃん、呉《ウチ》の学校で全部の海洋学校に行っとるんはみやさんと私だけやもしれんね〜」
「卒業式の表敬参加は2回目、来年はとうとう私達。気がつけば最上級生ね。……そういえば去年の秋口にこっちに帰省してた武蔵の知名艦長と晴風の岬艦長が
「横須賀っちゅやあ、今回の代表生徒は誰が来るんだら?みやさん、聞いとったりする?」
「いいえ、聞いてないわ。下関港で同じ船に乗るはずだけど……ふふっ、噂をすれば来たみたいだわ」
「ん〜? ああ、横須賀からは晴風の2人が来たんね!!」
甲板から桟橋を眺める2人の視線の先には移動客船のゲートに向かって慌てて走る明乃とましろの姿が見える。彼女たちの両手には袋に詰められたお土産が溢れていた。