ハイスクール・フリート~Sophomore Season~ 作:梯子田カハシ
《こちらの客船は福岡港発、佐世保港・種子島港経由、那覇港行きです。本船は5分後の17時に福岡港を出港します。乗船予定のお客様は早めにゲートよりご乗船ください》
福岡港の埠頭にアナウンスが響き渡って、明乃とましろが移動客船に乗り込む。先に乗船していた宮里と能村の2人も明乃たちに気が付いて甲板に降りてくる。
「間に合ったっ~!!」
「艦長っ!! 間に合った、じゃないです!!」
「え~、でも今度はちゃんと5分前に乗船できたよ?」
「そうですが……お土産を買いすぎです!!なんですか、この量!!」
「えっと……ミカンちゃんに頼まれた「めんたいこ」、レオちゃんたちに頼まれた「うまかっちゃん」、めぐちゃんとつぐちゃんに頼まれた「めんべい」、あとは……」
「そう言うことじゃなくって!! もう……」
「ふふふっ、やっぱり貴方たち、面白いわね。のむさん、私達も
「だら~。羽瀬もそこら辺うるさいでよ」
「去年は時間がなくて舞鶴のお土産を買っていけなかったからね。……そういえば、舞鶴の卒業式には横須賀からは誰が参加しているの?」
「舞鶴にはモカちゃ…武蔵の知名艦長と村野副長が参加しています!!」
「舞鶴校には我々の同期である新2年生もいますから、武蔵の2人が相応しいだろうという話になって。呉女からはどなたが参加されるんですか?」
「
「そうなんですね~。……ねえシロちゃん? 学校代表って意外と重大任務?」
「艦長、なにを今さら……」
「ふふふ、流石は岬艦長、度胸が違うわね」
「だら。……やっぱり艦長になるんはこれくらいの器量が必要かや?気にせんようにしとるけど、性格の問題もあるかや?私生活で気が抜けてるくらいがええんかや?」
「能村先輩……分かります……」
「分かってくれるか、宗谷副長っ!!」
「…………副長同士、気が合うんですかね?」
「そうなのかもしれないわね」
《本船はこれより福岡港を出港します。出港の際に船体が揺れることがございます。ご乗船のお客様はご注意ください。次の停船港は佐世保港、17時40分到着の予定です》
錨が上げられ、低い汽笛が鳴る。移動客船のスクリューが回転して移動客船が移動を始める。いつもは出港指示をする側として、なんとなく不思議な気分になりながら明乃は徐々に傾きはじめた太陽に照らされた九州の海を眺めるのだった。
▼ △ ▼
《~本船はあと10分程で世保港に到着します。お降りのお客様は早めの準備をお願い致します~》
「もうすぐ佐世保だね!!」
「そうですね、艦長。佐世保女子海洋学校は港湾に隣接しているため徒歩10分程度で着けるとのことだったので……18時前には学校に到着できそうです」
「えっと、今夜一泊して、明日は卒業式。明日の夜も佐世保に泊まって、明後日の朝に出発する移動客船で横須賀に帰るんだよね。この感じだと横須賀に着くのは夕方になりそうだね~」
「はあ、やはり移動客船だと時間がかかりますね。小型船なので我々の
「横須賀と佐世保の間が一番時間かかるでよ。仕方がないわ」
「能村先輩、そうですね。先輩たちは何時ごろに呉を出発したんですか?」
「私達は13時に呉を出発したで、佐世保までは5時間くらいだわ。去年、舞鶴に行ったときは姫路港から陸路で向かったじゃん、それでも5、6時間くらいだったわ」
「モカちゃんが横須賀から舞鶴まで6時間ちょっとって言ってたから、そこは同じくらいだね。去年、横須賀から呉に行ったときは9時間くらいだった気がするよ」
「だとすると今年の競闘遊戯会開会校の舞鶴までは半日程度で行けそうですね、艦長」
「そうだね、シロちゃん」
「それがそうでもないのよ。競闘遊戯会の会場には艦隊を組んで向かうから陸路が使えないの。だから日本海を周回して向かう必要があるわ」
「そうなんですね、宮里先輩。そう言えば、カリキュラム変更の影響で競闘遊戯会の日程がズレるって聞きました。9月頭から10月中旬になるって」
「だら。国土保全委員会がRATt事件の再発防止策を策定したじゃん、常に大和型2隻は国内待機しているようにカリキュラムを組みなおすよう指示が出たらしいわ」
「そうみたいね。だから1年生艦の佐世保 紀伊と舞鶴 信濃が体験航海実習に出ている最初の2週間は横須賀と呉の2・3年生は座学を、1年生艦が学校に戻った後に私達2・3年生が航海実習に入る予定よ」
「3年生ですと……噂の地球1周の外洋航海実習ですか」
「その通り。小笠原諸島で貴方たち横須賀の後輩艦と合同演習をした後にハワイにあるブルーマーメイド本部に訪問、そのあとはアメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、タイのブルーマーメイド養成学校の演習に参加して、最後に舞鶴の後輩艦と合同演習をして、呉に帰港。その3週間後には競闘遊戯会に参加する感じね」
「何というか、かなりハードな日程ですね……」
「そうね。それでも、これが
「秋からはそれぞれ進路のこともあるし、長期の航海実習はできんでよ。海洋大や一般の大学に行くなら受験勉強があるし、機関科を中心に直接ブルマーになる子達もおるで、どちらにしても勉強中心になっちゃうのよ」
「でも、その先にみんなの夢がある。ブルーマーメイドだろうと、そうでなかろうと。そして、それを乗り越えたのが佐世保や舞鶴の卒業生の先輩たち。私達も頑張らないとね、岬さん、宗谷さん」
「はい、宮里先輩!!」
《~本船はまもなく佐世保に到着します。The Next Stop is SASEBO~》
「それじゃ、そろそろ行きましょう」
遠くに見えていた佐世保港が近づきアナウンスが流れる。
明乃とましろは顔を見合わせて、前を行く先輩たちを見る。移動客船からの下船準備をする先輩たちの背中が、2人には何だか大きく見える気がした。