ハイスクール・フリート~Sophomore Season~ 作:梯子田カハシ
「呉と横須賀の後輩諸君、ようこそ佐世保へ!!」
移動客船が到着した明乃たち4人が佐世保港に降り立つと、4人を出迎えるように桟橋には佐世保女子海洋学校所属 紀伊艦長の千葉沙千帆と副長の野際啓子の姿があった。
「千葉艦長、お出迎えありがとうございます。ご卒業、おめでとうございます」
「サニー先輩、野際先輩、ご卒業おめでとうございます!!」
「宮里艦長、岬艦長、ありがとう!! 遠路はるばる、疲れただろう?」
「特に横須賀の2人は1日仕事だったでしょうし、宿泊寮に案内するわ」
「野際先輩、ありがとうございます!!」
「いいのよ。明日は朝から卒業式だから、ゆっくりしていってね」
「はいっ!!」
「それじゃ、行きましょうか」
「佐世保校は学食も美味いと評判だっ!! しかも今日は卒業式前日仕様だからな。佐世保バーガーもあるぞ!! 思う存分、味わっていってくれ」
「野際先輩、サニー先輩、ありがとうございます!!」
日が沈み始めた佐世保女子海洋学校に向けて千葉沙千帆を先頭に明乃たち一行が歩き出す。チラリと明乃が学校艦の停泊している桟橋を見ると、そこにはオレンジ色の夕陽が堂々たる威容を誇る紀伊を始めとする佐世保所属の艦船たちを美しく染め上げていた。
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明乃とましろが佐世保女子海洋学校に到着した頃
横須賀女子海洋学校、晴風後部甲板にて
「いや~、まさか本物の釜を作るとはなあ。面白い自主研修だったぜ、なぁクロちゃん!!」
「……そうね。途中から盛り上がって完成させちゃったけど、良かったのかしら……」
「あの艦長なら許してくれるさ。言ったろ、全ては事後報告だって。なーはっはっはっ!!」
「それで、ルナはなんで悔しそうにしてるの?」
「うぅ~、半年前から空ちゃんと一緒にマロンちゃんたちにバレないようにコッソリやりながら頑張っても出来なかったのにぃ〜!!マロンちゃんとクロちゃんってやっぱり凄すぎるよっ!!」
「そうね。ちょっと自信を無くしたわ」
「何言ってんでい、ルナ、空。 ほとんどルナと空の設計図通りでうまく行ったじゃねえか。マロンとクロちゃんがいなくたってそのうち出来てたよ」
「そうよ。ルナの発想自体はマロンに似てかなり光るものがあるし、空だってルナのやろうとしてることを上手に汲み取って図面に落とし込めてたわ」
「ううぅ~、もっと頑張る……」
「そうだ、そうだ。なんだって試しにやってみるに限る、そうだろっ!!」
「はあ、マロンは無茶な改造だけはやめて……って、なにかしら、あれ」
マロンたちが歩く先にポツンとひとつのテントが立てられている。
晴風の艦首甲板に設置されているテントは何となく場違い感があり違和感が凄い。
「なんでい、なんでい。こんなとこで一晩明かすつもりかあ?」
「そもそも誰のテントかな? 私と空ちゃんが来たときは水雷長と砲術長が艦首甲板にいたけど……あの2人はあんまりアウトドアなイメージじゃないよね」
「たしかにそうね……」
「うい~(片手をあげて手を振る)」
「あれ、このテントってマロンちゃんたちの?」
「おっ、噂をすれば水雷長と砲術長じゃねーか……って、これ2人のじゃないのか?マロンたちも誰のか分からなくて困ってんだ。何か知ってっか?」
「うい~(首を振る)」
「2人も知らないってことは、いよいよ誰のものか分からないわね……日中に艦内で杵崎姉妹と砲術員3人娘は見かけたけど、流石に寮に帰ってるわよね」
「う~ん。でも
「みんなスーのテントがどーかしたか?」
「へ?」
居合わせた6人で無造作に設置されたテントを前ににらめっこをしていると、6人の上、艦橋付近から独特な口調が特徴的な声が聞こえてくる。声のした方向を見ると、そこには海賊事件の時に晴風クラスのみんなと出会った少女、スーザン・レジェスことスーの姿があった。
「「「スーちゃん!?」」」
「みんな、ひさしぶりに会えて嬉しい」
「なんでスーちゃんが晴風にいるの?」
「ルナ、それは秘密」
「ええ~、秘密なの~?」
「せっかくだから久しぶりに晴風を見にきた。泊まっていいってシロのお母さんに聞いたから、スーはここで寝る!!」
「え、まじ?スーちゃんここで寝るの?」
「うん!!メイもいっしょに寝るカ?」
「うう~ん、どうしよ。せっかくスーちゃんいるし……でもあたし、寝袋とか持って無いしな~」
「前にミケとシロと一緒にテントで寝た。寝袋、シロが寮から持ってきてた」
「寝袋なら物品庫にあったぜ!! 前に物品庫を漁った時に見たぞ」
「なんでマロンは寮の物品庫を漁ってるのよ……ちょっと待って。スー、あなた今、岬艦長と宗谷さんと3人で寝たことがあるって言った?」
「うんっ!! ミケとシロ、お父さんとお母さんみたいだったっ!!」
「なっ……宗谷さんと、艦長が……!!」
「あー、これは……ねえ、ルナ?」
「うん、そうだね、空ちゃん。クロちゃんが、ショックで硬直してる」
「なんでい、クロちゃん。クロちゃんだってマロンと一緒に寝たことあるじゃねーか」
「てか、そもそもクロちゃんって航海中は私ら機関員と同室で一緒に寝てたじゃん。それに副長だってミーちゃんがいたときは同室で一緒に寝てたわけだし……」
「わかってる……でも、とにかく嫌なの!!」
日が沈みかかって暗くなった横須賀の海に洋美の声が響き渡った。横須賀女子海洋学校の桟橋の一番手前に停泊する晴風の日常は今日も賑やかに過ぎていく。
▲ ▽ ▲
「くちゅんっ!!」
「シロちゃん、大丈夫?風邪かな?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます、艦長。はあ、卒業式の前日に、ついてない……」
「あはは……シロちゃん、相変わらずだね」
「クシャミ如きで後ろ向きになっては駄目ですね。明日も早いですし、艦長、そろそろ寝ますか?」
「そうだね~。せっかく宿泊寮に泊めてもらってるし、もう寝ちゃおっか」
「それでは艦長、おやすみなさい」
「うん。おやすみ、シロちゃん」
佐世保女子海洋学校、宿泊寮の1室の灯りが消える。
横に並んだベットの中で布団にうずまった明乃とましろは横須賀からの移動の疲れか、比較的すぐに眠りに落ちていくのだった。