テラ氷原・PCA中央研究拠点。
灰色の空を裂くように、各国の監査飛行艇が次々と着陸した。
ヴィクトリア、ウルサス、ラテラーノ、ライン生命。
ブラックホール協定第九条に基づく「緊急監査権」の発動である。
疑惑は一つ。
――PCAによる深層無断探査。
アースは静かに言う。
「歓迎する。全ログを開示する。」
その言葉は強気でも弁明でもない。ただ事実だった。
だが監査団の空気は明らかに敵対的だ。
■ 政治対決
会議室。
長机を挟み、両陣営が向かい合う。
ヴィクトリア代表が切り出す。
「深層座標までの侵入記録がある。条約違反だ。」
ドクターが端末を操作する。
ホログラムに表示される“原本ログ”。
侵入深度は規定内。
だが公開ログは改竄されている。
ウルサス代表が低く唸る。
「誰が改竄した?」
ケルシーが即答する。
「内部アクセスキーを持つ者。」
空気が凍る。
■ 内部スパイ発覚
解析結果。
通信中継局に不正コード。
発信経路はPCA内部サーバー。
そして一人の名が浮上する。
若手主任解析官――外部資金提供履歴あり。
ライン生命の下請け企業との裏取引。
だがそれは囮だった。
ドクターが呟く。
「本命は別だ。」
真の侵入経路は門内部からの逆干渉。
“あの存在”によるデータ干渉の可能性。
監査団は動揺する。
これは政治工作ではない。
門そのものが情報を操作している。
■ 第二次遠征決定
その瞬間。
基地全体が震動する。
巨大構造物のエネルギー反応が急上昇。
空間安定指数が急落。
解析官が叫ぶ。
「部分覚醒反応!」
アースは即断する。
「第二次遠征。限定有人突入。」
監査団が反発する。
「条約承認は――」
ヴィクトリア代表が遮る。
「今は生存が優先だ。」
緊急三国承認が即時可決される。
■ 有人突入
突入メンバー。
PCA義体化オペレーター二名。
ロドス精鋭オペレーター二名。
遠隔支援:ドクター。
門を越えた瞬間。
重力が歪む。
空間が鳴く。
巨大構造物は以前より明らかに“目覚めている”。
柱に亀裂。
内部から光が脈打つ。
そして再び現れる光の存在。
だが今回は複数。
《封印が緩む》
翻訳が走る。
《外部勢力が干渉中》
ドクターの顔色が変わる。
「第三勢力がいる。」
■ 覚醒
構造物中心部の“核”が展開する。
幾何学的装置が回転。
空間裂傷が拡大。
地上基地でも振動。
テレジアが呟く。
「封印が、破られようとしている……」
有人部隊は核へ接近。
義体化オペレーターがエネルギー安定装置を設置。
ロドス隊が護衛。
光の存在が包囲する。
だが攻撃はしない。
《均衡を維持せよ》
警告だ。
敵意ではない。
“管理者への確認”。
■ 真相の片鱗
突入部隊が回収したデータ。
構造物は監獄。
封じられているのは「重力異常核」。
それが完全覚醒すれば、テラ規模災害。
そして外部干渉痕跡。
未知の暗号署名。
PCAでも各国でもない。
■ カイザーコーポレーション設立宣言
帰還後。
緊急国際会見。
アースが宣言する。
「PCAは新たに複合企業体“カイザーコーポレーション”を設立する。」
どよめき。
「研究、物流、防衛、インフラ、医療を統合管理する実働機関だ。」
ケルシーが補足する。
「民間協力体制の拡張。条約監視機能も内包する。」
カイザーは単なる企業ではない。
実質的な国際安全保障ハブ。
監査団は理解する。
PCAは防衛組織。
カイザーは経済的実行体。
■ PCAの正体
ラテラーノ。
教皇庁。
イヴァンジェリスタXI世のもとへ極秘報告が届く。
彼は静かに目を閉じる。
「……やはりか。」
PCAの理念。
封鎖。
収容。
均衡。
それは古代文献に記された“星の番人”の再来思想と一致する。
教皇は呟く。
「彼らは守護者を名乗らぬ守護者か。」
だが同時に理解している。
力は必ず対抗勢力を生む。
そして門は既に“観測されている”。
■ 終幕
氷原。
門は再び沈黙する。
だが完全には閉じていない。
第三勢力。
外部干渉。
覚醒の兆候。
アースは空を見上げる。
均衡は保たれた。
だが綱渡りだ。
ドクターが静かに言う。
「次は攻撃かもしれない。」
巨大構造物は眠る。
だが、夢を見始めている。
そして世界は気づき始めた。
PCAは組織ではない。
概念だ。
封鎖という思想。
その思想に賛同するか、対抗するか。
選択の時代が始まる。