アークナイツ メカニカル   作:願望ちゃんねる

17 / 27
観測者の影

テラ氷原・PCA中央解析室。

 

巨大構造物から回収された暗号データの最終解析が進んでいた。

 

ドクターはモニターを凝視する。

 

「署名パターンが一致した。」

 

アースが振り向く。

 

「どことだ?」

 

ホログラムに浮かび上がるのは、既存国家でも企業でもない未知のネットワーク。

 

だが――一つの断片が一致していた。

 

かつて消滅したはずの研究同盟。

 

“アウロラ計画”。

 

ケルシーが低く言う。

 

「源石と非源石技術の融合を強制進化させる思想集団……」

 

彼らは過去、テラ全土で倫理違反実験を繰り返し、壊滅したと記録されている。

 

だが違った。

 

壊滅していなかった。

 

地下に潜り、門を利用していたのだ。

 

■ 第三勢力の正体

 

解析結果はさらに進む。

 

アウロラ計画の最終目標。

 

“重力核を解放し、物理法則を書き換える”。

 

それは革命ではない。

 

世界再構築。

 

封印されている巨大構造物の核を、意図的に覚醒させようとしている。

 

アースは拳を握る。

 

「均衡を壊す気だ。」

 

ドクターは冷静だ。

 

「彼らは門の干渉技術を持っている。だからログ改竄も可能だった。」

 

つまり。

 

政治疑惑も構造物覚醒も、すべて計算された攪乱。

 

ブラックホール協定を崩壊させ、PCAを孤立させるための工作。

 

■ カイザー内部の亀裂

 

同時刻。

 

カイザーコーポレーション内部監査部。

 

新設された複合企業体は急拡大していた。

 

研究、物流、防衛、資源管理。

 

だが拡大は必ず隙を生む。

 

内部監査AIが異常取引を検出する。

 

防衛部門経由で流出した試作安定化装置。

 

流通先はダミー企業。

 

その裏にいたのは――

 

カイザー副総務責任者。

 

彼はアウロラ計画の潜伏協力者だった。

 

理念はこうだ。

 

「封鎖は停滞だ。進化には破壊が必要。」

 

逮捕寸前。

 

だが彼は静かに笑う。

 

「もう始まっている。」

 

■ 教皇庁 ― 極秘会談

 

ラテラーノ。

 

荘厳な大聖堂地下。

 

イヴァンジェリスタXI世は静かに待っていた。

 

招かれたのはアース、ドクター、ケルシー。

 

極秘会談。

 

教皇は言う。

 

「門の向こうの存在は、敵か?」

 

アースは答える。

 

「いいえ。警告者です。」

 

ドクターが補足する。

 

「封印の管理者。少なくとも敵意は確認されていない。」

 

教皇はゆっくり頷く。

 

「古い聖典にある。星の檻を守る者の記述と一致する。」

 

ラテラーノは長い歴史の中で、門に類似した現象を断片的に記録していた。

 

「だが、封印を破ろうとする者がいる。」

 

ケルシーが冷静に告げる。

 

「第三勢力。アウロラ計画。」

 

教皇の目が鋭くなる。

 

「ならば、我々も観測者ではいられない。」

 

ラテラーノは表立った参戦はしない。

 

だが情報網と聖堂騎士団の一部を、極秘でPCA支援に回すことを約束する。

 

■ 真の黒幕

 

カイザー内部の副総務責任者は拘束された。

 

だが尋問中、彼は語る。

 

「私は末端に過ぎない。」

 

本部は門内部。

 

アウロラ計画は既に構造物深層へ拠点を築いている。

 

ドクターの背筋が冷える。

 

「第二次遠征時に侵入された。」

 

有人突入の混乱が、敵の隠蔽に使われた。

 

■ 世界の均衡は揺れる

 

ブラックホール協定は維持されている。

 

だが水面下では緊張が増していた。

 

ヴィクトリアは独自偵察を強化。

 

ウルサスは軍備を再編。

 

ライン生命は技術防壁を強化。

 

PCAは理解する。

 

これは防衛戦ではない。

 

“観測戦争”だ。

 

■ 最後の通信

 

その夜。

 

門から微弱な信号。

 

翻訳開始。

 

《侵入者増加》

 

《封印臨界まで残余時間:不明》

 

アースは静かに目を閉じる。

 

「時間がない。」

 

ドクターは言う。

 

「次は全面遠征だ。」

 

教皇庁からも暗号通信。

 

「均衡を守れ。」

 

灰色の空の下。

 

三つの勢力が動く。

 

PCA。

アウロラ計画。

そして封印の管理者。

 

世界は静かに、決戦へ向かっている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。