テラ氷原・PCA中央解析室。
巨大構造物から回収された暗号データの最終解析が進んでいた。
ドクターはモニターを凝視する。
「署名パターンが一致した。」
アースが振り向く。
「どことだ?」
ホログラムに浮かび上がるのは、既存国家でも企業でもない未知のネットワーク。
だが――一つの断片が一致していた。
かつて消滅したはずの研究同盟。
“アウロラ計画”。
ケルシーが低く言う。
「源石と非源石技術の融合を強制進化させる思想集団……」
彼らは過去、テラ全土で倫理違反実験を繰り返し、壊滅したと記録されている。
だが違った。
壊滅していなかった。
地下に潜り、門を利用していたのだ。
■ 第三勢力の正体
解析結果はさらに進む。
アウロラ計画の最終目標。
“重力核を解放し、物理法則を書き換える”。
それは革命ではない。
世界再構築。
封印されている巨大構造物の核を、意図的に覚醒させようとしている。
アースは拳を握る。
「均衡を壊す気だ。」
ドクターは冷静だ。
「彼らは門の干渉技術を持っている。だからログ改竄も可能だった。」
つまり。
政治疑惑も構造物覚醒も、すべて計算された攪乱。
ブラックホール協定を崩壊させ、PCAを孤立させるための工作。
■ カイザー内部の亀裂
同時刻。
カイザーコーポレーション内部監査部。
新設された複合企業体は急拡大していた。
研究、物流、防衛、資源管理。
だが拡大は必ず隙を生む。
内部監査AIが異常取引を検出する。
防衛部門経由で流出した試作安定化装置。
流通先はダミー企業。
その裏にいたのは――
カイザー副総務責任者。
彼はアウロラ計画の潜伏協力者だった。
理念はこうだ。
「封鎖は停滞だ。進化には破壊が必要。」
逮捕寸前。
だが彼は静かに笑う。
「もう始まっている。」
■ 教皇庁 ― 極秘会談
ラテラーノ。
荘厳な大聖堂地下。
イヴァンジェリスタXI世は静かに待っていた。
招かれたのはアース、ドクター、ケルシー。
極秘会談。
教皇は言う。
「門の向こうの存在は、敵か?」
アースは答える。
「いいえ。警告者です。」
ドクターが補足する。
「封印の管理者。少なくとも敵意は確認されていない。」
教皇はゆっくり頷く。
「古い聖典にある。星の檻を守る者の記述と一致する。」
ラテラーノは長い歴史の中で、門に類似した現象を断片的に記録していた。
「だが、封印を破ろうとする者がいる。」
ケルシーが冷静に告げる。
「第三勢力。アウロラ計画。」
教皇の目が鋭くなる。
「ならば、我々も観測者ではいられない。」
ラテラーノは表立った参戦はしない。
だが情報網と聖堂騎士団の一部を、極秘でPCA支援に回すことを約束する。
■ 真の黒幕
カイザー内部の副総務責任者は拘束された。
だが尋問中、彼は語る。
「私は末端に過ぎない。」
本部は門内部。
アウロラ計画は既に構造物深層へ拠点を築いている。
ドクターの背筋が冷える。
「第二次遠征時に侵入された。」
有人突入の混乱が、敵の隠蔽に使われた。
■ 世界の均衡は揺れる
ブラックホール協定は維持されている。
だが水面下では緊張が増していた。
ヴィクトリアは独自偵察を強化。
ウルサスは軍備を再編。
ライン生命は技術防壁を強化。
PCAは理解する。
これは防衛戦ではない。
“観測戦争”だ。
■ 最後の通信
その夜。
門から微弱な信号。
翻訳開始。
《侵入者増加》
《封印臨界まで残余時間:不明》
アースは静かに目を閉じる。
「時間がない。」
ドクターは言う。
「次は全面遠征だ。」
教皇庁からも暗号通信。
「均衡を守れ。」
灰色の空の下。
三つの勢力が動く。
PCA。
アウロラ計画。
そして封印の管理者。
世界は静かに、決戦へ向かっている。