アストライア外縁。
門が三重展開する。
重力核の出力が臨界域へ突入。
アウロラ計画首魁の宣言通り、封印は強制解除プロトコルへ移行していた。
アースが即座に命令を出す。
「全重力安定塔、同期開始。」
ドクターは解析に集中する。
「核が位相反転を始めている。完全覚醒まで三時間未満。」
ヒルデガルトは歯を食いしばる。
「止められるのですか。」
ケルシーが静かに言う。
「理論上は。」
だがその声には、かすかな迷いがあった。
■ ケルシーの記憶
重力波がアストライアを震わせる。
その衝撃で、ケルシーの深層封印が崩れる。
視界が白く染まる。
――先史文明時代。
研究区画。
若いドクター。
首魁と呼ばれる研究責任者。
そしてケルシー。
彼らは同じ計画に属していた。
重力核制御理論。
文明を飛躍させるはずだった研究。
だが実験は暴走した。
都市一つが圧縮消失。
犠牲数、数千万。
首魁は言った。
「誤差だ。」
ケルシーはその瞬間、決別した。
「あなたは命を数字に変えた。」
封印計画が立ち上がる。
文明は二派に割れた。
進化派――アウロラ。
封印派――ケルシーとドクター。
最終実験。
封印成功。
だが文明は崩壊。
生存者は“固定”され、未来へ送られた。
■ 現在
ケルシーは目を開く。
「私はあの時、あなたを止められなかった。」
ドクターが静かに言う。
「今度は止める。」
アースが告げる。
「重力核の核心に直接干渉するしかない。」
それは自殺行為に近い。
だが選択肢はない。
■ 門内部 ― 最終決戦
有人突入部隊。
今回は逃げ道はない。
アース。
ドクター。
ケルシー。
門を越える。
内部空間は崩壊寸前。
重力が上下を失い、空間が折れ曲がる。
中心に立つ首魁。
肉体は半ば機械化され、重力場と同調している。
「来たか。」
彼は穏やかだ。
「君たちも理解しているはずだ。封印は限界だ。」
ドクターが応じる。
「だから制御する?」
「そうだ。恐れを捨てろ。」
首魁が腕を広げる。
重力核が輝きを増す。
空間が圧縮される。
アースが安定化装置を展開。
ケルシーが重力理論式を再構築。
三人はかつて同じ式を共有していた。
今は敵味方に分かれて。
■ 思想の衝突
「文明は進化しなければ滅びる!」
首魁が叫ぶ。
「滅びるのは傲慢だ!」
ケルシーが返す。
「我々は神ではない!」
ドクターが重力式を再構成する。
「封印強化では足りない。」
「位相をずらす。」
アースが理解する。
「核を“眠らせる”のか。」
危険な賭け。
成功率は低い。
■ 崩壊
首魁が最後の出力を解放。
重力嵐が発生。
アストライア外部にも影響。
地上でヒルデガルトとシルバーアッシュが防衛線を維持。
「均衡が崩れる!」
「時間を稼げ!」
門内部。
ケルシーがドクターの肩を掴む。
「あなたはまだ完全ではない。」
「だが覚えている。」
ドクターは核へ歩み寄る。
重力が肉体を軋ませる。
「文明を守ると決めた日を。」
三人の式が重なる。
かつて完成しなかった理論。
今、再定義される。
■ 結果
光が爆発する。
重力が静止する。
時間が止まったような沈黙。
核の輝きがゆっくり減衰する。
完全覚醒は阻止された。
だが封印は変質した。
より深く、より安定へ。
首魁は膝をつく。
肉体は崩壊を始める。
「……また、負けたか。」
ケルシーが近づく。
「あなたは間違え続けた。」
彼は最後に微笑む。
「進化は止まらない。」
崩壊。
重力核は沈黙する。
■ 代償
アストライアに帰還。
ケルシーは静かだ。
「これで終わりではない。」
ドクターも理解している。
他にも生存者がいる可能性。
封印は永遠ではない。
アースが告げる。
「だが今は守った。」
ヒルデガルトが言う。
「文明は存続しました。」
シルバーアッシュは静かに笑う。
「均衡は保たれた。」
空に浮かぶアストライア。
重力核は眠る。
だが歴史は繰り返す可能性を持つ。
ケルシーは星を見上げる。
「私は見届ける。」
今度こそ。
文明が、自らを滅ぼさない未来を。