■ 極秘合意
アストライア、戦略会議層。
爆弾発言の余韻はまだ残っている。
誰も軽口を叩かない。
イヴァンジェリスタXI世が最初に沈黙を破った。
「我々は祈るだけでは守れない。」
ヒルデガルトが頷く。
「軍事同盟では足りません。」
シルバーアッシュが机に指を置く。
「経済、技術、情報を統合する。」
アースが宣言する。
「極秘共同計画を発足する。」
名称――
オペレーション・セカンドドーン
記録非公開。
参加は各国上層部の一部のみ。
指揮系統はPCAと共同評議会。
ブラックホール協定の“裏条項”が発動された。
■ 役割分担
ホログラムに世界地図。
ヴィクトリア:工業基盤・兵站。
ウルサス:防衛戦力と極地研究。
ラテラーノ:情報秘匿と宗教的安定維持。
ライン生命:理論・応用研究。
イェラグ:資源と高地観測網。
ロドス・アイランドは医療と感染制御。
そしてPCAは中枢監督と重力核管理。
シルバーアッシュが言う。
「情報漏洩は即座に世界崩壊へ直結する。」
全員が理解している。
敵は国家ではない。
“観測”。
■ 第二議題 ― 源石再定義
空気がさらに重くなる。
ケルシーが立ち上がる。
「源石は災厄ではない。」
一瞬のざわめき。
「源石は観測撹乱装置の副産物。」
ホログラムに源石構造式。
内部に存在する微細な重力ノイズ。
ドクターが補足する。
「重力核の痕跡を“汚染”して隠す役割を持つ。」
ヒルデガルトが低く言う。
「では感染症は?」
「副作用だ。」
冷酷な事実。
先史文明は文明を守るため、危険なノイズを世界に散布した。
エリナが拳を握る。
「私たちは、その代償を生きてきた。」
■ 制御研究開始
ライン生命研究責任者が前に出る。
「源石ノイズを人工的に再現し、制御する。」
目的は三つ。
重力異常の隠蔽強化
感染進行抑制
観測反応の予測
PCA研究区画に新部門設立。
源石制御局。
ロドスも参加する。
ドクターは静かに言う。
「源石を“敵”から“防壁”へ。」
ケルシーの目が細まる。
「だが扱いを誤れば、核に匹敵する危険になる。」
■ 現実的な壁
問題は倫理。
もし源石が防壁だと公表すれば?
感染者差別はどうなる?
国家は源石を兵器転用しない保証は?
シルバーアッシュが冷静に言う。
「情報は封印する。」
イヴァンジェリスタXI世が頷く。
「真実は時に人を壊す。」
この知識は選ばれた者だけが持つ。
それが現実。
■ 試験実験
アストライア研究層。
微量重力反応発生装置。
人工源石ノイズ発振。
観測反応測定。
数値が安定する。
ドクターが息を吐く。
「成功だ。」
小規模だが。
制御可能な“隠蔽波”。
ケルシーが呟く。
「これで時間を稼げる。」
時間。
それが最大の資源。
■ 静かな決意
会議終盤。
誰も楽観しない。
だが絶望もない。
ヒルデガルトが言う。
「我々は知らなかった。」
「だが今は知った。」
シルバーアッシュが微笑む。
「均衡は交渉より難しい。」
イヴァンジェリスタXI世が締める。
「これは聖戦ではない。」
「存続戦だ。」
アースが最後に告げる。
「観測されない文明を目指す。」
それは逃避ではない。
賢明な選択。
■ 不穏な兆候
その夜。
アストライア外部センサーが微細な異常を検知。
重力核ではない。
外宇宙方向。
微弱な揺らぎ。
ドクターが静かに言う。
「……早い。」
観測は確定していない。
だが“何か”が動いている。
セカンドドーンは始まった。
だが夜明けは、まだ遠い。