■ 発端
アストライア会議層。
オペレーション・セカンドドーン始動から一ヶ月。
源石制御研究は進展し、人工ノイズの安定出力は向上。
だが問題は残る。
国家間の信頼。
そして権限。
シルバーアッシュが切り出す。
「PCA単独管理では限界が来る。」
ヒルデガルトが同意する。
「国家主権と両立しなければ、内部から崩れる。」
イヴァンジェリスタXI世は静かに言う。
「ならば枠組みを創るべきだ。」
アースは理解していた。
これは必然。
■ 構想提示
ホログラムに新たな名称が表示される。
文明存続評議会(Council for Civilizational Continuity)
略称:CCC。
ブラックホール協定の上位機構。
目的は三つ。
重力核と門の共同監視
源石制御研究の統合管理
観測リスク対応の国際意思決定
ドクターが補足する。
「軍事同盟ではない。」
「存続判断機関だ。」
■ 権限を巡る駆け引き
ヴィクトリア代表が問う。
「最終決定権はどこにある?」
ウルサス代表は軍事権限を主張。
ライン生命は研究独立性を求める。
空気が張り詰める。
ここで失敗すれば、セカンドドーンは瓦解する。
シルバーアッシュが静かに笑う。
「全員が主権を守りたい。」
「ならば拒否権を持てばいい。」
提案。
全会一致原則。
だが緊急時はPCAとCCC共同署名で即時発動可能。
ヒルデガルトが慎重に言う。
「暴走防止機構は?」
ケルシーが答える。
「三重監査制。」
PCA監査。
各国監査団。
独立倫理局。
透明性の担保。
■ 宗教と世俗
イヴァンジェリスタXI世が立ち上がる。
「この機構は恐怖で統治してはならぬ。」
ラテラーノは精神的安定を担う。
公表はしない。
だが各国に「協調の物語」を与える。
戦争抑止の理念を浸透させる。
ヒルデガルトが小さく頷く。
「恐怖を隠し、希望を見せる。」
■ 名称決定
最終投票。
文明存続評議会。
全会一致。
静かな拍手もない。
歓喜もない。
ただ重い合意。
世界は今、目に見えぬ敵と向き合うために結束した。
■ 機構構造
議長職:輪番制。
常設技術局:PCA。
医療統括:ロドス・アイランド。
研究統括:ライン生命。
倫理監査:ラテラーノ主導。
戦略観測局:アストライア内設置。
ヒルデガルトが言う。
「歴史上初の“対宇宙”機関ですね。」
ドクターは静かに答える。
「まだ宇宙と確定したわけではない。」
だが全員が理解している。
相手は空の向こう。
■ 署名
ブラックホール協定改訂条項。
CCC設立文書。
署名が並ぶ。
ペン先が震える者もいる。
だが誰も拒まない。
シルバーアッシュが最後に署名する。
「均衡は山より重い。」
■ 不穏
会議終了後。
アストライア外部センサー。
微弱な外宇宙方向重力波。
以前より明確。
観測局員が報告する。
「ノイズに対する逆位相反応を確認。」
ケルシーの瞳が揺れる。
「……始まった。」
源石ノイズに“応答”している。
まだ干渉ではない。
だが反応。
アースは言う。
「CCC発足は間に合った。」
ドクターは空を見上げる。
「だが時間は少ない。」
■ 終幕
世界は知らない。
争いも差別も続いている。
だがその裏で。
国家は一つの誓約を結んだ。
滅びないために。
アストライアは空を巡る。
CCCは静かに稼働する。
重力核は眠る。
源石は揺らぐ。
そして星の外からの微かな視線。
文明は今、初めて“統合”された。
だがそれは序章に過ぎない。