魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】 作:萩月輝夜
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モチベーションが高い…!
今回少しだけですがダガーが魔改造装備を取り付けられます。
<総員第一戦闘配備!総員第一戦闘配備!>
アークエンジェル艦内にアラートが鳴り響く。
その警報を聞いてエアリスはフレイの父親であるジョージ・アルスターが乗るモントゴメリがクルーゼの部隊に見つかったのだと。
アークエンジェルと先遣隊が合流するまで未だ距離がある。
行動は早かった。キラ達がまだ来ていないのはラクスと会話をしているからというのと恐らくフレイに
出来ることをする、ただ其だけだ。
「マードック軍曹!」
<おうよ!って、マジで"こいつ"を使うのか!?>
MSデッキにて作業をしていたエアリスは床を蹴ってコックピットへ潜り込み【ダガー】の主電源を押しOSを起動させながら通信越しに頷く。
「当然ですよ。ここで使わなかったらいつ使うんですか?」
<馬鹿野郎!だったらパイロットスーツを着ろよ!?…っああもう!?装備接続だ!急げよ!!>
その言葉を聞いて頭を抱えるマードックだったが付き合いで一度言ったら覆さないことを知っている。
彼は部下に指示を出して機体に
<少尉>
シートベルトを閉めながら返答する。
「艦長、状況を教えてください」
<先遣隊がランデブーポイントで敵部隊と遭遇したわ。恐らく…>
「クルーゼ隊、ですね?」
<…ええ、恐らく。先遣隊の行き先を突き止められて彼らは私たちを誘き寄せる撒き餌ね…。先遣隊はネルソン、ドレイク級で構成されてメビウスを備えているけどジンや奪われたXナンバーが相手では歯が立たないわ。先遣隊は此方に引き返せと指示をしてきたけど、近くまでいる私たちがここで反転離脱したとしても追い付かれる⋯当艦はこれより友軍の先遣隊を救援に向かいます。>
「此方から撃って出よう、ということですね?で、あれば“あの装備”の使用許可を願います」
そう告げるとマリューは「本当にあれを…?」という表情を浮かべていたが、エアリスは「許可を」と告げると
<…分かりました、許可します。ですが無理はしないように!レインズブーケ少尉は先行して敵部隊を攻撃、キラ君とフラガ大尉は合流し友軍を護衛して!>
「…善処します。ミリアリア!状況を教えてください」
エアリスはマリューからミリアリアへ通信を切り替えて確認を取る。自分が居ることで敵の人数と構成が変わっている可能性があるからだ、と思っていると案の定
<敵はナスカ級1、ジンが六機、其にイージスがいるわ!気を付けて!>
<エアリス!先遣隊の中にはフレイのお父さんが乗ってるんだ!頼む!>
通信に割って入るようにサイが焦ったように告げる。当然だ、ここで踏ん張らなくてはフレイがキラを戦わせるために悪鬼と化してキラが長きに渡って戦いに囚われることになる。
「確約は出来ない、だけど全力を尽くすよ。」
<頼む…!>
通信越しにサイを見る真面目なエアリスの表情を見てこれ以上は何も言わずに通信をアウトにする。
「…行くよ【ダガー】…!」
ミリアリアの誘導で機体がカタパルトデッキへ運ばれ接続される。
ダガーの背中に接続されるガントリークレーンが運ぶ今回のストライカーは【シャドウストライカー】…そしてこの作戦の肝となる“装備”が機体の腰椎部及び両足のハードポイントに装着された。
<システムオールクリーン!進路クリアー!“ダガー”発進どうぞ!!>
「先行します。エアリス・レインズブーケ、【シャドウダガー】…行きますッ!!」
開かれたハッチの向こうにある漆黒の宇宙を誘導するようにビーコンが輝き、その先を見据えるようにダガーのバイザーが輝き飛翔した。
◆ ◆ ◆
【ラクス・クライン捜索任務】を受け持ったクルーゼ隊は見失ったとされる宙域へ向かう最中地球連合軍の艦艇を見つけるとクルーゼは其がアークエンジェルへ物資を運ぶものだと睨み其を逆手に取って呼び寄せる“撒き餌”として活用するのだった。
ヴェサリウスよりイージスとジンが出撃し先遣隊へ攻撃をし始めるとその宙域は爆発と閃光で彩られる。
迎撃に出てきたメビウスをハエを軽く払うように味方のジンが手にしたキャットゥス無反動砲で撃墜していく。
<そいつの実力見せて貰うぜアスラン!>
「ああ…」
先行して出撃した味方からの通信に低く短く答えるアスラン。
クルーゼが指示した地球連合の艦艇を攻撃するという指針に懐疑的だったのは今自分達がラクスの捜索を請け負っているにも拘らずそんなことをしている場合ではないだろうという想いがあったのとラクスの安否を一刻も早く確認しなくては、キラとは戦いたくない…という迷いがあったが彼はその迷いを一旦心の奥へ押し込め目の前の状況を注視した。
既に敵艦艇からメビウスが発進し展開している。
懸架されたミサイルがイージスに発射されるがヒラリと回避し三機編成で突っ込んできたメビウスを手にしたビームライフルを発射し撃墜する。
そのままスラスターを吹かして敵艦に近づくと対空迎撃などするりとすり抜け機関部にビームを三発打ち込む。
誘爆を回避するために機関部を切り離した艦艇は戦線から離脱していった。
「護衛艦“バーナード”沈黙!X303“ロー”へ向かっていきます!」
「奪われた味方機に墜とされる…?そんな馬鹿な話があってたまるか!!」
“モントゴメリ”のブリッジにてコープマン大佐の隣に座るアルスター事務次官が発狂寸前に陥っていた。
六機あるうちの一機が防空網を抜ける。
「ジンが此方へ向かってきます!」
「回避運動!対空迎撃!ヴァーミリオン小隊を呼び戻せ!」
「間に合いません!!」
「ひっ…!!」
メビウス、ドレイク級の攻撃を抜けてジンが“モントゴメリ”を撃墜しようと迫る。
アルスターは信じられないものを見るような目で迫るジンのモノアイと目が合ってしまう。
ブリッジから逃げ出しそうになるアルスター、そして驚愕に染まるコープマンとブリッジ要因達。
時が止まったのかと錯覚するほどスローモーションになりジンが手にした無反動砲をブリッジへ向けた。
目を閉ざすものそこから逃げ出そうとする者。アルスターは後者だった。しかし。
「何…?」
身を守るために顔を腕で覆っていたアルスターだったがいつまで経過しても身を焼く衝撃と熱が伝わらずにいることに不思議に思い恐る恐る艦橋の外を確認するとソコには此方を狙っていたジンが火球に包まれていた。
射線の向こうには“蒼く尾を引く彗星のようなもの”が此方に向かってきていた。
その光景を見てアルスターか、はたまた艦橋要員の兵士が呟いたのかは分からないがこう言った。
「“蒼い彗星”…」と。
◆ ◆ ◆
「ぐぅ…ッッ!!!?」
ダガーのシートにエアリスは押し付けられ呻いていた。
背面の大推量ブーストによって身体に掛かるその負荷は臓腑を押し付け、まるで荒縄で締め付けられるような激痛が走り血流を圧迫するが、意識を失わぬように必死に奥歯を砕かん程に噛み締め目的地への宙域を見据えている。
科学燃料が燃焼し青白い尾を曳きながら進むシャドウダガーは通常の形とは異なっていた。
その腰椎部ハードポイントにはMSの全頭頂ほどの大きさのテールブースター…
其はエアリスがデブリベルトで見つけたメビウスを流用した宙域突撃用ブースター…【オーバードブースター】と呼ばれるものだ。
「見つけ…たッ!!」
モニターの先には爆発が広がっている。既に戦端は切られてしまっている。
エアリスは躊躇わずにスロットルレバーを押し込む、急激なGに身体の中身をぶちまけそうになるが間に合わなければ意味がない。エアリスは苦痛を紛らわす為に軽口を叩いた。
「…殺人、的な…加速だ…ッ!!」
宙域に突入し射撃の有効範囲内に入ったダガーは科学燃料を使いきったテールブースターをパージして今襲いかかろうとしているジンに狙いを定めた。
ビームカービンがジンの胴体と武装を貫き破壊し火の玉に変えて素早くスラスターを起動させ二機目の機体へ接近する。
<な、なんだこいつは…!?うわぁあああああっ!!?>
そのジンは接近に気がついたが反応遅くダガーの腰に装備されたビームサーベルによって袈裟懸けをまともに喰らって両断爆発した。
“ロー”へ接近していたアスランはレーダーに映るデータと映像に映る機影を確認し操縦桿を握る手に力が入る。
「…ゴーグル付き!足付きもここに……キラッ!!」
“ロー”へ攻撃を仕掛けようとしていたアスランは翻し突入してきたダガー目掛け僚機のジンと共に攻撃を開始した。
確認し対空迎撃を縫って接近しようとする敵部隊に牽制のためライフルを連続射撃しながらモントゴメリへと通信を繋げる。
「此方アークエンジェル所属、エアリス・A・レインズブーケ特務少尉。此れより貴艦を援護します」
「アークエンジェル!何故ここに…援軍、だと…!?」
艦長のコープマンは驚いていたがブリッジにいる兵士達は少ない戦力とは言え味方が援軍を出してくれたことに安堵していた。が、直ぐ様エアリスの声で我に返る。
「戦闘部隊の最上位士官は!」
<あ、ああ…先の攻撃で死亡してしまった。今はネルグ伍長が最上位だ。>
「戦列を建て直します。コープマン大佐。戦闘部隊の指揮権限を私に譲渡願います」
<分かった!各隊へデルタ、ヴァーミリオン小隊はエアリス少尉の指揮下に入り戦線を建て直せ!>
コープマンは躊躇うこと無く【Sound only】となっている女性兵士へ指揮権限を譲渡した。
「此方レインズブーケ少尉。小官が此れより戦闘指揮を取る、各隊メビウスは戦術シチュエーション24に従い行動、尚ミサイルは近接信管に切り替え敵機体を撃墜せよ。味方機、味方艦艇からの誤射に留意せよ」
ここで言う戦術シチュエーション24とは“敵機動兵器への艦艇防御”の事だ。
<りょ、了解…!><了解!><…了解>
「尚、X303に遭遇時は直ぐ様退避、該当機体は小官が受け持つ。艦艇の護衛に注力せよ。」
生き残ったメビウス乗り達は直ぐ様行動を起こす。攻めではなく守りの陣形でジン達を迎撃し始める。
エアリスは接近するジンとイージスへ射撃を行う。
「イージス…アスラン・ザラ!」
<あれがゴーグル付きか!だが、狙いが甘い…ッ>
射撃はジンの隣を通りすぎていくようにして放たれておりパイロットはエアリスが素人だと“油断していた”
「ッ迂闊だぞマルール!!」
<ナチュラルが操縦するMSなんぞに…うわぁあああああっ!?>
誘い込まれまともに攻撃を喰らった機体は直ぐ様爆発した。既にジンは搭載機の半分を切っている。
「マルールッ、このぉ!!…チャップとジャックは敵の旗艦を!このゴーグル付きは俺が押さえる!」
<分かった!>
<譲ってやる!頼むぜアスラン!>
アスランは僚機がやられたことを確認し味方のジンに指示を出しダガーへ狙いを定める。
ライフルより放たれるビームが空間を切り裂きシールドに着弾し耐ビームコーティングの皮膜を剥がすと同時にダガーも複数射したカービンライフルの弾丸がイージスの盾を焼いていく。
「うぉおおおおおおっ!!」
「はぁああああああっ!!」
交差するように打ち合う両機体だったが埒が明かない、と互いに獲物をビームサーベルに持ち替え切り結ぶ。
サーベルがシールドと激突しスパークする。
「お前がキラを…ナチュラルの戦艦に乗せて戦闘を強要させているんだ!」
「ぐっ…!やはりそっちのGの方が出力が強いか…!」
<少尉!>
<援護するぜ!!>
イージスの出力に圧され後退するダガーだったがその背後からミサイルとバルカンが背中を叩き体勢を崩す。
「邪魔するな!」
アスランは左手に装備したサーベルの発振器を振るい接近していたメビウスを払い落とそうとするが直ぐ様回避運動を取り撃墜を免れる。
「隙ありッ!!」
スロットルレバーとペダルを踏んで組み上げたモーションを起動、ダガーは体勢を崩したイージスをその隙に蹴り飛ばす。その攻撃にイージスはよろけてしまう。
「ぐぅうううううっ!…し、しまった!」
「さっさと帰ってくれ!!」
ダガーの持つカービンはイージスの頭部へ向けられた。銃口に緑の光が集まる、が。
「…やっぱり出てくるよね…!」
引き金を引こうとしたまさにその時にダガーのいた場所に弾丸の雨が降り注いだのだ。
たまらず此れにはシールドを掲げその場から退避すると、その正面にはシルバーグレーの機体…シグーが突撃銃とガトリングシールドを此方に向けていた。
「ここで出会ったのも何かの縁だ…その機体とパイロット、ここで潰しておかなければ禍根を残す…死んで貰う!アスラン、ゴーグル付きを仕留める!艦艇は何時でも仕留めることができる、捨て置け!」
「ッ了解!」
「シグー…!これ以上艦艇に近づかせない!」
シグーとイージスが攻撃を仕掛けると同時に“モントゴメリ”に攻撃を仕掛けていたジン達がダガー目掛け殺到する。
マシンガンにバズーカの弾丸の嵐を避けながらエアリスは数を減らすことに専念する。
「コーディネイターと言えどもそんな単調な動きじゃ墜としてください、って言ってるものでしょ!!」
スラスターを吹かしてAMBACで弾道を回避、百八十度ターンを決めて直ぐ様持ち替えビームブーメラン【シュマリツァクリンゲ】を二つ両肩から解除しビームの刃を形成して投擲する。
スラスターを吹かしたままでの反撃に攻撃に専念していた二機のジンが反応に遅れて撃墜された。
「チャップ!ジャック!…うぉおおおおおおっ!!」
「ぐっ…!!」
攻撃後の隙を突き突撃してきたイージスによって体勢を崩されてしまうダガーはシールドを構えて迎え撃つ、が…
「此れで終わりだな…ゴーグル付きのパイロット!」
その背後からシグーが突撃銃で背面を狙う。アラートが鳴り響きロックオンされたとエアリスに緊張の色が浮かぶ…が彼女は冷静だった。
「待ってました!キラ君、大尉!」
「…ッ!なに…ッこの感じ…ムウかっ!」
次の瞬間、シグーのガトリングシールドにビームが降り注ぎ、狙いを外し回避行動に専念せざるを得なかった。
そのせいでガトリングが破損する。エアリスが来た方向からの攻撃…即ち其は。
<エアリスさん!>
<おっしゃ!未だ生きてるな…間に合ったぜ!良くやった嬢ちゃん!>
イージスは手にした対艦刀でシールドごと弾き飛ばし、距離を取りながら頭部バルカンで牽制する。
「なんだあの機体は…新型か!?隊長!くそっストライク…キラ!!」
「その機体…っこの感じは…また貴様か…ムウ・ラ・フラガ!」
「…ラウ・ル・クルーゼ!」
戦場に現れたのはエールストライカーを装備した“ストライク”、そして軽量型の装甲にストライクと似たような頭部を持つ緑色の機体…調整が終わった“アストレイ・グリーンフレーム”が其々にビームライフルを装備し敵部隊を牽制する。
ストライクはイージスに向かいムウの駆るグリーンフレームはシグーへ向かう。
エアリスは二人の相手を任せ、モントゴメリに取り付こうとしているジンへ接近する。
<こいつっ…うわぁあああああっ!!?>
<ナッシュ?ナチュラル風情が…な、なに!?き、機体が…っ!!>
「出てこなかったらやられなかったのに!墜ちろッッ!!」
片手ずつに対艦刀とビームブーメランを保持してビームダガーとして使用し、キャットゥスを装備したジンが吐き出したミサイルを回避し懐に入り込む。ビームダガーがジンのコックピットを貫き、パイロットを蒸発させる。
動きが止まったダガーに狙いを定めるが左手に装備したシールドに阻まれてしまいその下に隠されたアンカーを感じることが出来なかった。
射出されたアンカーがジンの胴体部に深々と突き刺さりその勢いで銃口をそらさせる。向き直り引き寄せて対艦刀で脚部を切り裂き武装を破壊し無力化する。
「アスラン!」
一方でストライクでアスランと戦闘を繰り広げていたキラは鍔迫り合い拮抗していた。
「くっ…キラ!どうしてお前がナチュラルの為に戦っているんだ!?ザフトはお前と同じコーディネイターだぞ!」
「アスラン!」
別の場所でもシグーとグリーンフレームが交戦しているが損壊はシグーの方が激しい。
重斬刀とサーベルが其々シールドにぶつかった。
「ちぃ…ムウめ!この短期間でMSを乗りこなすとは…腐ってもフラガの血、ということか!」
「ここが年貢の納め時か?ラウ・ル・クルーゼ!!」
対峙しながら状況を確認しているとシグーのコックピットで悪態を吐く。
「補充した機体とパイロットが半数以上損失だと…?ちぃっ!!撤退しろアスラン!此方の方が不利だ!打ち合いでは此方が分が悪い!」
次の瞬間、前方の宙域から艦砲射撃が飛びヴェサリウスに被弾、主砲とサブスラスターが被弾し推力低下と戦闘能力が低下したことをアデスから聞かされクルーゼは動けない部下を連れて撤退する。
「…ッ了解……!」
イージスはビームサーベルを弾きライフルで牽制しながら動けない機体を引き連れその場をあとにする。
クルーゼは破損した機体のスラスターを吹かしながらモニターに映るエアリスの駆るダガーに視線を向けて仮面の下の表情に笑みを浮かべ口元の口角が上がった。
「あのゴーグル付きのパイロット…面白い」
暫くして、シグーやイージスが戦闘宙域から撤退し静寂が戻る。
戦闘は終了したのだ、と。この宙域にいる生き残った連合兵士は安堵の息を吐いた。
<お、終わった…………助かったのか…?>
誰が呟いたのかは分からないがその通信にこの場にいる全員が同意する。
その戦闘が終了し、少なくない損害が発生したとは言え先遣隊であるモントゴメリを始めとした艦艇三隻は小破、及び中破、メビウスは3個小隊内1個小隊は損失したが其でも二個小隊は生存した。
「【連合の蒼い彗星…】」
アルスター達の視線は助けに入ったダガーに注がれていたのだ。
◆ ◆ ◆
「命令違反だぞ…と言いたいところだったがラミアス大尉の機転によって救われたのも確かだ。とやかくは言わない。ありがとう、助かった」
「いえ、ご無事で何よりです。コープマン大佐。」
「ああ。アークエンジェルとそのパイロット達がいなければ我々の艦艇は沈められていたからな。」
二人の士官は漸く訪れた安心に微笑み合う。
アークエンジェルのブリッジでは無事に合流を果たした先遣隊旗艦“モントゴメリ”艦長であるトム・コープマン大佐と原作では撃墜されてしまった“ロー”の艦長であるカチス・グラックス少佐、“バーナード”艦長ロメロ・アーキマン少佐が一同に介していた。
「第五特務師団所属、マリュー・ラミアス大尉です」
「同じく、ナタル・バジルール少尉であります」
「ともかく無事合流できて良かった。このまま新造艦であるアークエンジェルとストライク、そしてダガーは月面基地プトレマイオスに降ろす必要がある」
「我々の処置はどうなるのでしょうか…?」
マリューが不安げにコープマンに問いかけると顎に手を当てて「ふむ…」と少し考えてから答えた。
「アークエンジェルの士官達は月本部に到着次第再配置が行われるだろう。避難民は第八艦隊に合流次第解放されるだろう」
その事を聞いてマリュー達は安堵する。マリューは特に技術屋である自分に艦長と言う大任は重すぎると感じており漸く解放されるのか、と荷の肩が降りたと言った感じだ。
そんなマリューをコープマンがじっと見ているのを感じたので直ぐ様佇まいを正す。
「所でGAT-01AとX105のパイロットは誰なのかね?先の救出任務に関して感謝を述べたいのだが…ストライクのパイロットはフラガ大尉か?」
「いえ、その…実は…」
「大佐、其は…」
その事にマリューとナタルはとっさに口をつぐむ。前者は良いとして後者はコーディネイターの、しかも訓練を受けていない民間人が動かしているなどとどう説明して良いのか分からなかったが、そんな二人に助け船を出すように艦橋の艦長席に通信が入る。
『艦長失礼します…ってどうされたのですか?』
「エアリス少尉、戦闘後で悪いのだけれど艦橋まで上がってくれる?」
『え?あ、はい了解しました。』
数分後、身だしなみを整えたエアリスが艦橋に上がると注目が集まる。
無理もない…ここにいるマリュー達を除く士官達は驚いていたが当の本人は驚きもせずに堂々と自己紹介をする。
ここに集まった佐官と尉官が注目を集めるのも無理はなかったのは先の戦闘で証明されてしまったからだ。
「兵器開発局第七技術班所属、エアリス・A・レインズブーケ特務少尉であります。お会いできて光栄でありますトム・コープマン大佐」
その所属と
「君のような可憐な少女がMSに…いや、其は些細なことだな。君がストライクに乗っていたのか?」
「いえ、その機体に乗っていたのは小官ではありません。コープマン大佐⋯少しお話を聞いていただけないでしょうか?」
「…聞こう。」
真剣な表情を浮かべるエアリスに真摯に耳を傾けるコープマン。
彼女の口からもたらされたのはストライクのパイロットが正規の軍人ではなく民間人、其も“コーディネイターの少年”であると言うこと。
「…彼はコーディネイターでありながら同胞と戦う決意をしてくれました。彼は友達であるナチュラルを守るために戦ってくれたのです。その事を考慮していただけませんでしょうか」
エアリスは頭を下げてコープマンに頼み込む。自分より年下の少女が自分に頼み込んでいる姿を見た佐官達は口をつぐみコープマンは切り出した。
「…分かった。この件に関しては閣下に報告させて貰う。悪いようにはしないと君に誓おう。」
彼もまた“ザフト”と戦う地球連合の兵士であり“コーディネイター”を憎む者ではなかった。
そう告げるとエアリスは年相応の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます大佐。」
「ふっ…命の恩人に不義理なことは出来ない。コーディネイターの少年も心を砕いて同胞と戦ったのだろう。その心証は計り知れないものだ。子供が戦っていると言うに…情けない話だ。」
「…ストライクのパイロットが“コーディネイター”…だって?其に私たちを助けてくれたダガーのパイロットがフレイと同じ年頃の女の子だと…?」
アークエンジェルのブリッジに入る扉の前では一人の男がその言葉を聞いていた。その表情には驚愕の色が浮かんでいる。
「……コープマン大佐。もう一つお耳にお入れしたいことがあります」
「ッ少尉、其は…」
「遅かれ早かれですよ。」
自分達を助けてくれた機体に乗っていたのがコーディネイターの少年と愛娘と同じ年齢の少女が戦場で戦っていた、と言うことにひどくショックを受けていたのだった。その男はブリッジ前の通路から立ち去る。
そのタイミングはまるで見計らったかのようにアークエンジェルが抱えるもう一つの“爆弾”…を信頼しコープマンに告げると驚いた表情を浮かべていたが…
「とんでもないことを聞いたが…分かった。その案件許可しよう。恐らく閣下も同じようなことを言うだろう。許可しよう」
「ありがとうございます。……?」
「連合きってのエースパイロット
幸いにもここにいる士官達は良識的な常識を持っていたため反対されなかった。
がエアリスは
◆ ◆ ◆
「………」
アークエンジェルの展望台にてキラは一人佇む。
漆黒の宇宙、恒星が輝く光を見つめながら先ほどの戦闘の事を思い出していた。
ストライクに乗ってアスランが乗っているイージスに銃口を突きつけた時は何ともなかったが、戻ってきてから其を思い出すと恐怖に支配される。
戦場浄化、と言う言葉…全てが“戦争だったから”と言うので許されて其は人殺しさえ許容される。
キラは恐ろしかった、自分が何時か銃口を向け引き金を
友人や仲間を守る力が大切な親友を殺してしまうビジョンを幻視する。
その手に握ったナイフが血に濡れている。その幻視を見たキラは展望台の壁をバシン、と握りこぶしで殴り付けた。
戦わなければ⋯と
「うぅう…ああぁああっ…」
その現実に打ちのめされ、未だ十五歳の少年であるキラの心は崩れそうになる。
「どうしました?キラ君」
声を掛けられキラは肩を震わせる。涙を流していたのを隠したかったが其を許さないと言わんばかりに現れた人物に肩を掴まれその正面を向かせられた。
「…エアリスさん?」
やってきたのはエアリスだった。
「先刻の作戦、援護ありがとうね。キラ君が助けに入ってなかったら私撃墜されてたよ」
そう感謝を告げるとキラの反応が乏しくないその理由をエアリスは知っている。
その辛そうな表情を見たくないので吐き出させる為に導線を作り誘導した。いや、“カマを掛けた”と言うべきだろうか。
「キラ君。話したくないのなら話さなくて良い。へリオポリスから気になっていたんだ。
「そ、れは…」
キラは言葉を詰まらせる。
エアリスは「ズルいな私…」と自罰的な感情を覚えたが今は其を知りながらこの溜まった感情を吐き出させる為にこのタイミングで告げたのだ。少し黙っていたキラだったがこの短い期間で信頼関係を築けたのかゆっくりと話してくれた。
「…イージスのパイロットは…僕の幼馴染み、なんです……」
キラの口から告げられたのは小さい頃から兄弟のように育ってここに来る一年前迄一緒にいてペットロボット『トリィ』を作って再会を約束したーーが、再び出会ったのは戦場だった、と。
その事を告げてキラは再び涙を流すのを見てエアリスはキラを抱き締める。
「良く言ってくれたね。ありがとうキラ君、辛かったね…」
「う、ううう、わぁああああっ…!!!」
エアリスはキラの頭を撫でながら引き寄せ胸元で泣かせる。しばらくの間嗚咽を漏らしながら泣くキラの背中を擦りながら落ち着くまでそうさせた。
「その…エアリスさん…すみませんでした…」
落ち着かせたあと離れたキラは顔を赤くしてエアリスを見ているのを確認してイタズラに笑みを浮かべる。
「良いよ。辛かったんでしょ?……でも私よりフレイやラクスの胸の方が良かったかな?」
「え、いや、その…」
「誰の胸が良い、ですって?」
「?何のお話だったのですか?キラ様、エアリス?」
茶化すようにそう告げると更に顔を赤くしてわたわたと慌てると声が聞こえる。エアリスは苦笑いを浮かべ後ろを振り返るとソコには怒ったような表情を浮かべるフレイと何の事だか分からない、と言う表情を浮かべるラクスの姿がそこに立っており二人はキラ達の所へ歩いてくる。
立ち止まりフレイはキラとエアリスに抱きついた。
「ふ、フレイ…?」
「と、突然一体何を…?」
「ありがとう…本当にありがとう。約束守ってくれて…エアリスには言えなかったけどサイから『守ってくれ』って伝わってて…本当にパパの命を救ってくれてありがとう。其に無事に帰ってきてくれたことが本当に嬉しいの…」
「…え、いやその…」
「…まぁ私は仕事で出撃しただけだから気にしなくて良いよ」
「私が感謝してるんだから受けとりなさいっ」
フレイはエアリスとキラの頭を軽く小突く。頭を軽く押さえながらフレイを見る。その表情は晴れやかで彼女がキラの傷跡になる兆候は見られない。ある意味で救えたのだとエアリスは達成感を覚えていた。
ラクスはその光景を見てニコニコ、と笑っている。本来ラクスがキラを慰める役目だったのを自分が奪ってしまったかな?と少しずつ後悔が沸き上がってきたが後でどうとでもしようと考えた。
「フレイ!」
そんなことを考えていると展望台へ続く通路から声を掛けられる。その方向に全員が視線を向けるとスーツを来た男性が此方に近づいてくる。その姿を見てフレイは花が咲いたような笑みを浮かべ男性の胸に飛び込む。
男性も飛び込んできたフレイを抱き締める。
「パパ!」
「あぁフレイ…!無事で良かった…」
「パパも無事で良かった…!」
その光景を見てどんな表情をして良いか分からないキラと微笑ましいものを見るような目でアルスター家の再会の場面を見ているラクスだったがエアリスはスーツを着た男性…ジョージ・アルスターを見据えていた。
再会の抱擁を終えてジョージがエアリスに向き直る。
「君が…」
エアリスは連合兵士としてある意味で上官に当たる事務次官だ。敬礼し所属と官姓名を応答する。
「はっ、地球連合装備開発局第七技術班所属、エアリス・A・レインズブーケ特務少尉であります。ジョージ・アルスター事務次官殿とお会いできて光栄であります。」
歩み寄るとジョージはエアリスに握手を求める。突然の握手に戸惑うが断るわけにはいかず、ジョージの手を敬礼した手を解いて握手すると固い成人男性の手の厚みが伝わる。エアリスを見るジョージの表情が「信じられない…」という表情を浮かべていた。
「君のような少女がMSのパイロット…こんな可憐な少女が【蒼い彗星】とは…驚くだろうな」
「はい?」
コープマンにも似たような事をジョージにも言われ驚いていたが其よりもジョージがキラに視線を向けていることに気になった。
「…そして君がストライクのパイロット…コーディネイター…だね」
「パパ!?何を…!」
「退いていなさいフレイ!…コーディネイターが危険な存在だということは教えているだろう?」
そういってジョージが懐から黒光りするもの…拳銃をキラに突き付けたのだ。
庇うようにエアリスはキラとラクスの前に立ちふさがると同時にフレイも父の言葉を無視して立ちふさがる。
「ふ、」
「彼はストライクの情報を知りすぎている…しかるべき処置の後」
「ふざけないでよ!」
「ふ、フレイ…?」
展望台にフレイの怒声が響き渡る。ヒステリックなところを父として見ているが、心からの怒号をジョージは聞いたことがない。フレイは肩を震わせてわなわなとジョージに向き直る。
「キラはコーディネイターだけどザフトじゃない…!コーディネイターだけど私たちナチュラルを守るために戦ってくれているのよ!?其がどれだけ辛いのかパパ分からないの!?銃を突き付けられれば怖いし、コーディネイターだって人が亡くなったら悲しくなる!楽しければ笑うし、辛いことがあれば泣く!…私たちナチュラルと一緒じゃない…其なのにどうしてパパは分からないの?…どうしてなのよぉ!!?パパがブルーコスモスだから?…キラ達を連れていくなら私、嫌いになっちゃうから!撃ちたいのなら撃てば良いじゃない!!」
アークエンジェルの艦外作業を手伝っていたフレイはユニウスセブンで実際に亡くなっているコーディネイターを目の当たりにして”彼女達は自分と同じ人間だったのだ”と。
「フレイさん…」
心から思ったことをジョージへ吐き出すと感極まって泣いてしまうフレイを宥めるラクス。その光景を見てジョージは頭を金槌で殴られた衝撃を感じていた。何も知らない大切な娘が此程までに感情を露にするのを初めて見たと同時に今、娘の命を救ってくれた少女少年に銃を突き付けている自分の”浅はかさ”に嫌気が差した。
「アルスター事務次官」
そんなことを考えているとエアリスから声が掛かりセーフティを掛けたままの拳銃を降ろす。
「…何かね」
「失礼な物言いだとは思います。考えを改めてくださいとは言えません、ですが娘さんの、フレイのコーディネイターへ対しての想いを汲み取ってくださいませんか」
「……ブルーコスモスのメンバーにそんなことを言えるとは…君はずいぶんと胆力があるな」
力無く苦笑いを浮かべるジョージはエアリスを見つめるが真面目な表情で切り返した。
「私は地球軍兵士として市民の命を脅かす“ザフト”と戦うだけです。」
そうキッパリと言い切るとジョージは拳銃を仕舞いその場から立ち去る、その前に背を向けながら告げた。
「そうか…
そう一言だけ告げてジョージは通路の奥へ消えていったのを見送ってフレイは呟く。
「パパ…」
「きっとフレイ様のお父様も分かってくださいますわ。ありがとうございますフレイ様。格好良かったですわ」
「や、やめてよちょっと…」
後ろではラクスがフレイの頭を撫でて微笑み、恥ずかしそうにしている光景が見える。
エアリスは一先ずの危機を脱したことに安堵しながら次の事を思案していたのだった。