魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】 作:萩月輝夜
ジョージとの会話の後、フレイは部屋に戻った。父親と対面し再会も束の間…銃を”友人”に突き付けられ激怒し、この航海の最中で知ったことをぶつけたため精神的に疲労してしまったからだ。
静寂を戻した空間で残された三名は展望台で会話を続ける。
ラクスはふと気になったことをその当人に問いかけた。
「ところでなのですが…どうしてキラ様は泣いておられたのですか?なにか辛いことがありましたか?」
「あ、いや…其は…」
キラは困り眉になっているラクスの表情を見て困ってしまった。
其を見てエアリスは助け船?を出すことに決めた。
「ラクスはキラ君がこの艦に乗っている友達のために戦っている、ってのは知ってますね?」
「ええ。其はとても素晴らしいことで辛いことですわ。」
「…その戦っている陣営に…うば、いや運用しているMSの一機にキラ君の友達が乗っているんです」
そこまで言うとキラが話す。そこまで来たら導線が出来上がったので自然と原作の会話になった。
アスラン、と溢すとラクスが反応した。
「そうですか…彼も貴方もとても良い方ですもの。戦うのはお辛いですわね…」
「アスランを知っているんですか?」
「はい、アスランはいずれ私が結婚するお方ですわ」
ラクスから帰ってきたその一言にキラは固まりエアリスは
「優しいんですけど、とても無口なお方…」
「ハロハロ!」
「でも、このハロを下さいましたの!私がとても気に入ったと申し上げましたら、その次も別の色のハロを…」
その事を聞いてエアリスはアスランがクライン邸にお邪魔したときハロによる攻撃を受けていたのを思い出した。
ラクスなりの反撃という意思表示だった事をまさか二十年越しにその真実を突き付けられたのは笑ったが。
アスランがパトリック顔になるのは血なんだろう。
「そうだったんだ……そっか、相変わらずなんだなぁアスラン。僕のこのトリィも作ってくれたんです」
「トリィ」
そういってキラの肩に乗る鳥形のペットロボットが反応を見せる。その事にキラとラクスが笑い合うがふとその柔らかい表情に影が差した。
「あぁ…でも貴方達が戦わなくても良いようになれば良いですわね…」
ラクスからしてみれば一応“必要であるから愛する”…後に親友となるアスランと未だだが“愛しているから必要である”キラが目の前で戦うのは気まずい、何て話じゃない。
ラクスの考えにキラは同じ事を覚えて顔を伏せる。エアリスはその光景を見て戦争の悲惨さを実感するのだった。
◆ ◆ ◆
「ミトメタクナイ、ミトメタクナァーイ!」
「しーっ、ハロ」
深夜、下士官達が寝静まったその夜アークエンジェルの廊下を三人の男女がひっそりとある場所へ向けて歩みを進めていた…泥棒足、いや忍び足で物音を立てないように。
「なぜこんなに忍び足なんですの?」
「ラクス、そのピンク色のハロを黙らせてください。うるさいです。キラ君も音を出さないようね?」
「はい」
「は、はい…」
エアリスは跳び跳ねるハロを捕まえ、持っていた特殊な密閉袋の中に放り込み音を出さないようにした後ラクスに手渡し、人差し指を口に当て「しー」のジェスチャーをして見せると、キラは口をつぐんでラクスも小さく手で口を塞いだ。
「だけど…大丈夫なんですか?その、ラクスを勝手に連れ出してザフトに返す、なんて…」
小声で話ながら目的地へ向かう。
「あら?誰でしたっけ?『ラクスをザフトに返したい』って言い出したのは?」
「うっ…其は…」
困ったように良い淀むキラ。そう…ラクス返還の件を話そうとしたエアリスだったが、後に「話がある」と言われ再び展望台に呼び出されたエアリスはキラから「ラクスをザフトに返したい」という切り出しがあったのだ。
その事にエアリスは驚いたが直ぐ様了承し今に至る、と言うわけだ。
その事はアークエンジェルの士官と話し合って了承を得ている。ムウは艦隊の防衛のためお留守番だ。
「大丈夫だよ。この件についてはラミアス大尉とコープマン大佐から許可を貰ってる。一応名目上は此方の船を追っかけて来ているナスカ級の威力偵察、って名目だから」
「なるほど…あっ、だから格納庫に」
「そういうこと…だけどこの事はサイ君達に伝えてないから見つかるわけにはいかないんだ」
ラクスをザフトに返還する、と言うことは敵の母艦とMSに接触する形となる為ストライクとダガーが適任である為と乗せるために丁度良いという理由だ。
暫く静かに移動していると差し掛かった途中食堂に明かりが点っていることに気がつく。既に消灯時間になっている筈なのに誰が…と考えていると意外な?組み合わせにエアリスは驚いた。
「え?エアリス?」
「…こんな深夜に何してんだお前達…?」
突如としてラクスに手渡していた袋からハロが飛び出して食堂のドアが開いてしまう。深夜で誰も出歩いていない時間帯に扉が開けばイヤでも視線が注がれる。
咄嗟にエアリスとキラは後ろにいる少女を隠すがその後ろに隠した少女は何食わぬ顔で挨拶する。
「ごきげんようフレイ様、サイ様」
手をヒラヒラ、と動かし挨拶をするラクスを見て食堂にいたフレイとサイが「何してるの…?」と困惑した表情を向けていた。
「エアリス、一体何をしてるんだ…?」
サイは直接問いかけてフレイは頭痛を覚えるように額に人差し指を添える。
「ラクスを…どうするつもりなの?」
フレイはエアリス達が此からどんなことをしようしているのか察しがついた。ラクスはザフト、いやプラント出身のコーディネイターなのだからこんなにひっそりと深夜連れ出そうとしている光景を見れば、だ。
エアリスがコーディネイターもナチュラルも皆等しく平等に考えているのなら此からする行動も不思議ではない。
行動を起こしたのはキラだが。
「一つ聞かせて」
「なに?」
フレイはエアリスに鋭く問いかけた。
「その子を連れ出す許可は…ちゃんと取っているのよね?」
「…勿論。艦長と大佐の許可は取ってるよ。」
うそ、パパの許可は貰っていないのね…とフレイは言わなかった。恐らく父はラクスの存在を知らないのだと理解した。
あの場面でキラに銃を向けていただけでラクスには向けていなかったのを気がついた。
「そう…じゃあなら手伝ってあげないとね。」
「フレイ?」
サイが驚いたように声を掛けるがフレイは笑みを浮かべる。
「さぁ!さっさとラクスをプラントに送るわよ!この艦にいたらまた攻撃を受けちゃう…元いた場所に帰らなくちゃこのままいたらラクスが地球軍の人質になっちゃうわ」
「そうだな…人質を取る、なんてのは悪役のやることだし…手伝うよ」
その事にサイが、キラが、エアリスが笑みを浮かべる。
「ありがとうフレイ様、サイ様」
そういってラクスは笑みを浮かべるのだった。
◆ ◆ ◆
「あれ…エアリスさんパイロットスーツを…?」
MSに乗るためにパイロットスーツに着替えたキラが出てくると、既に着替え終わったエアリス達が会話していたのだが、何処と無く女性陣達の様子がおかしい事に気がついた。
「あ、キラ丁度良いところに…」
「エアリス…あんたって着痩せするタイプだったんだ…って、サイは見ない!」
「エアリス…とても…大きいですわ…」
「…だからあんまりパイロットスーツを着たくなかったのに…あ、キ、キラ君着替え終わった?」
「あ、はい…でもどうして後ろを向いて」
いるんですか?と問いかけようとしたら二名の女性から阻まれた。鬼気迫る其にキラはたじたじになる。
「キラは本当になんと言うか…はぁ…」
「あはは…キラ、後ろを向くんだ」
「キラ様?エアリスのパイロットスーツ姿を見てはいけません絶対です。」
「え、え、え…?あ、はい……ッ!!?」
キラは見てしまった。その女性陣が壁を作っているその向こうでエアリスが所謂トランジスタグラマーと呼ばれる身体を青と白のカラーリングの専用パイロットスーツを着用し士官服を着て白衣を羽織っているその姿からは想像できないほどに
「あまり見ないでくれる?………///」
キラはエアリスの視線に同調するように突き刺さる女性陣の視線にひどい冤罪だ!と思ったがここにはサイ一人しかおらずそれも援軍を期待できる状況ではなかった。
◆ ◆ ◆
格納庫に到着しマードックが着々と準備を進めている中エアリスはダガーのコックピットに潜り込み普段着けないヘルメットを被るとその閉鎖感と息苦しさに思わず外したくなるがグッとこらえる。何故そんなことを思ったのかは“勘”としか彼女にも説明できないのだが。
そうしているとストライクに乗ろうとしたラクスがフレイの手を借りてダガーのコックピットに潜り込んでくる。
「ラクス?」
「エアリス…」
ラクスは悲しそうな表情を浮かべて此方を見つめている。笑っている表情が似合っている筈なのにどうしてそんなに悲しそうな表情を浮かべているのかと問いかけるとラクスは口を開いた。
「また…私達お会いできますよね?」
「…うん、きっと再会できるよ。そう遠くない近い内に…ってラクスなにを…」
ラクスを落ち着かせるためにそう告げると突如身体を引き寄せられた。視線を動かす前にコツンと音がする。ラクスがノーマルスーツを着用しているのとエアリスがパイロットスーツのメットを被っていることを忘れていたのでぶつかったのだ。その抜けた行動に恥ずかしくなったラクスは顔を赤くするのを見てエアリスは小さく吹き出して微笑んだ。
「あはははっ…ラクス、こう言うところでは抜けてるんですね?」
「ううっ…エアリスはやはりイジワルです。」
「…うん。約束する。きっと会える。私から会いに行くよ。ラクス」
「はい、さようなら…エアリス。私のお友達…あっ…」
エアリスは寂しそうにしているラクスを抱き締め返しストライクがある方向へ押し返す。押し返されたラクスは名残惜しそうにしたがフレイが受けとりコックピットに押し込むとハッチが閉まる。
エアリスもそれを確認した後ダガーのコックピットを閉める。
「良いか!そろそろハッチを解放する!嬢ちゃん達はさっさと退避しな!!」
フレイとサイが安全な場所にまで退避したのを確認したマードックは制御盤を操作してエアロックを開く。開いたエアロックにストライクとダガーが運び込まれた。
オフラインでの発進のためカタパルトは使えない。スラスターを吹かしてアークエンジェル所属の二機は出撃した。歌姫を返還するために。
◆ ◆ ◆
武装が破損しスラスターの一部が大破したヴェサリウスは応急処置を終えて追跡を行おうと考えていたが、搭載機はほぼ全滅の上、向こうは無傷の艦艇が三隻にMS・MAと…とてもではないが攻撃を仕掛けられる状況ではないため微速で後ろを追い掛けつつ後続艦艇との合流を待っていたのだが突如としてアークエンジェルから発進した二機のモビルスーツを確認したヴェサリウスは大騒ぎになっていた。
艦長のアデスは指示を飛ばす。
<やはり此方を潰しにきたか…!対空迎撃用意!MS隊発進急げ!>
<コンディションレッド発令!コンディションレッド発令!パイロットは搭乗機にて…>
「うん…良く聞こえる…こんな時のために難破したナスカ級からくすねておいて正解だったね」
ダガーのコックピット内部にはヴェサリウスの艦内通信が聞こえていたのはユニウスセブン近くに難破していたナスカ級からザフト艦艇の周波数帯を割り込むことが出来る機材と波長帯を入手し調整していたためだ。
「キラ君、いけるね?」
「はいッ」
「それなら後は宜しくキラ君。あ、メモ書き通りに読めば良いから」
「分かりました…ッ」
エアリスの指示のもと同じくストライクにも同じく搭載した周波数調整機から発せられたストライクの通信…キラの緊張した声がヴェサリウスに届く。
<此方地球連合軍、アークエンジェル所属モビルスーツ、ストライク!>
突如とした敵軍からの通信にヴェサリウスのブリッジではざわめき立った声が静まり返る、と次の言葉に困惑の声が上がる。
<訳あって我々は今、プラント最高評議会議長、シーゲル・クラインのご令嬢ラクス・クライン嬢を保護している。>
エアリスとキラの搭乗機内部にはヴェサリウス艦橋の困惑、混乱した声が響いていたが無視しながらメモ書きの通りキラは話す。
<我々は彼女の保護を貴艦へ要請したい。応じる場合はナスカ級の停止をしてください。それと引き取りは此方が指定する相手…イージスとそのパイロットが受け取りに来ることが条件だ!この条件が破られた際には此方は貴艦を撃墜し……保護している彼女の責任放棄と判断し、当方は自由意思でこの案件を処理するものだ!!>
敬語と命令口調が入り交じった文章だが仕方ない。
ともかく即ち、従わないのなら今ここでお前ら撃沈してラクスを殺すよ?と脅しを掛けたのだ。
その事に艦橋にいるアスランがアデスに「行かせてください!」と嘆願するが他の声がそれを許してくれないようだ。
<ダメだ!敵の意思が分からん!それに本当にクライン嬢が乗っているのかどうかも分からんのだぞ!?>
<隊長…行かせてください!>
アスランはアデスでは話が通じない…と思ったのか直属の上司である人物へ声を掛ける。エアリスはその声を聞いて気を引き締めた。
<分かった。許可する。>
若い男の声がした。通信に乗る艶やかな低い思考を奪いそうな甘い声を聞いてエアリスは正面に映るヴェサリウスを見据え操縦桿を握った。
◆ ◆ ◆
「ありがとうございます!」
敬礼しその場から離れて搭乗機へ向かうアスランを見送るアデスとクルーゼ。
「宜しいのですか?」
「ふむ…まぁストライク一機だけであれば幾らでもやりようがあったが隣を見てみろ。随伴機にあのゴーグル付きがいる。向こうはどうも本気のようだ。」
そう言ってクルーゼはコンソールを操作し望遠映像を写し出す。
ソコにはストライクに随伴してエールストライカーと“ガモフ”のスラスターを吹き飛ばした巨大な砲身を肩がけ装備したダガーが周囲を警戒している。いつでも此方を狙い撃てる状態になっていた。
「まさか…」
「ああ。ここで下手を打って攻撃を仕掛けようものなら向こうは容赦無く潰しに来るだろうな」
歴戦の猛者、エリート達が集まったクルーゼ隊だったがその看板に泥を塗るようにMSと兵士を葬ってきたゴーグル付きとストライクがそこにいる…その事にアデスは背筋に嫌な悪寒を感じる。
「…今までの私なら連合が作ったモビルスーツに乗ったナチュラルなど…と笑うでしょうが、今の私にはあれが“死神”に見えます。」
アデスのその所感にクルーゼは薄い笑みを浮かべる。自分の想像した以上の返答が帰ってきて満足げに艦橋の床を蹴って格納庫へ向かう。
「私も同じだよアデス。ヴェサリウスは停止!シグーを用意しろ!私も出る」
「隊長。受け渡しはアスランのイージスだけだったのでは?」
格納庫へ向かうエレベータへ入る前に翻りクルーゼは少し高揚していたがアデスは気付いていない。
「アスランを受け渡し先にしていたが別に
それを聞いたアデスは少し呆れながらも薄く笑って敬礼しクルーゼを送り出した。
◆ ◆ ◆
アスランはストライクの手前でスラスターを吹かして制動を掛け停止した。
目の前にストライクと“ゴーグル付き”…緊張するアスランだったがそれよりも目の前にストライクがいること意識を向ける。同時にキラは接近したイージスを確認し武装を装備しているが隣にいるエアリスがビームカービンを突き付けている光景に少し怖さを覚えたが信頼してる彼女が突然撃ったりしないことを理解していた。
<アスラン…ザラ…か?>
「そうだ…」
緊張し掠れた声で問いかけるキラに固い声で反応するアスラン。
<…コックピットを開け!>
キラの指示に従いアスランはコックピットを開く。開いた先にはストライクがビームライフルを突き付けているが絶対に発射しないという信頼がありアスランはキラが此方を罠に嵌めて撃墜しようだなんてことは絶対にあり得ないと、そう確信している為に出撃許可を願い出たのだ。イージスのコックピットが開くと1拍遅れてストライクもコックピットを開くと二人の人影が視界に入る。その会話が聞こえていた。
<話して>
<はい?>
<顔が見えないでしょ?本当に貴女だってことを向こうに分からせないと>
キラの膝の上に乗った人物が此方を向いて自分に手をヒラヒラ振る
<ああ。そう言うことですの。お久しぶりですわ。アスラン>
ヘルメットの宇宙線を保護するための防護機能が働いていて顔までは確認できなかったが通信越しに聞こえる柔らかな声は間違いなく自分が知っているラクス・クラインだった。
「…確認した」
<なら、彼女を連れていけ>
アスランはイージスのコックピットから出てハッチの上で身体を固定。同時にキラもハッチに出てラクスの身体を押し出すようにイージスに向けて押し出すと無重力空間を滑るラクスの身柄はアスランがしっかりと受け止めた。
ストライクに向き直るラクス。
「ありがとう、キラ、アスラン。そしてエアリス」
<向こうでも元気でね>
「女の声…?」
別通信が入りエアリス…?と頭には疑問符を浮かべるアスランだったがそれよりも目の前にいるストライクに乗っている友人が変わっていないことに嬉しさを覚えるが衝動的に叫んでしまう。
「…キラ!お前も一緒に来い!」
その言葉にコックピットに戻ったキラが握る操縦桿に力が入る。同時にアスランのヘルメットにアデスからの通信が入るが切る。邪魔だったのだそれを無視して声を掛け続ける。
「お前が地球軍にいる理由が何処にある?!一緒に来い!ラクスだって…」
<ありがとうアスラン>
アスランの必死の問いかけにキラは優しく微笑んだ。
「キラ…?!」
「………」
戸惑った表情を浮かべるアスランをダガーのカメラ越しに見たエアリスは何も言わずに見つめる。
戦場で友人同士が敵味方になる光景なんてアニメでしか見たことがない…だが、ここは現実であり、撃たれれば死ぬ。それが当たり前の現実であり、見せつけられ、それをただ見守ってキラの意思を尊重する。見届けなければならない。
<僕だって君と戦いたくなんて無い……僕が引いた引き金で君を傷つけてしまうそんなことを考えると震えが止まらないんだ…でも……>
涙目になりながらキラはアスランに本心を告げる。
<あの船には…守りたい人達や友達…大切な人がいるんだ!!>
その言葉に残っていた希望が砕かれる。アスランは目の前にいる友人が本当に優しい親友なのだ、と再確認しラクスを連れてコックピットに入る。
「ならば…仕方がない。今度戦場で会うというのなら…今度は俺がお前を討つ…!」
<僕もだ…アスラン!>
二人の親友達は其々“白”と“赤”が離れていく。それは確実に心情と今の二人の距離を表していた。
◆ ◆ ◆
キラとアスランが対話を見守ろうかと思って周囲を警戒しているとエアリスの脳内に閃きが走った。
「何…?」
イージスと共にヴェサリウスからシグーが現れた。
どういうつもりだ…と思ったエアリスだったがシグーが武装を装備しておらず光通信で「イージスの護衛のため出撃」と通信してきた…のだがその護衛対象であるイージスをほっぽって真っ直ぐにエアリスの元にやってくる。
「無視してやろう」と思ったエアリスは警戒しつつイージスを見ながらシグーに目配せする。すると目の前で止まったシグーは装備を隠している様子もなく修理が間に合っていないのか装甲は煤付きボロボロ、腕部は応急処置する有り様だった。
「な、なんでこっちに来るの…?」
一体何のために近づいてきたんだ…と思っていると不意にシグーのコックピットが開いた。
そこにはSEED最終回でプロヴィデンスに搭乗した際にしか着用していなかった白いパイロットスーツを着用したクルーゼの姿がそこにあった。ここまで接近していると通信が繋がるようになる。
《聞こえているかね?君と直接話をしてみたかった。ゴーグル付きのパイロット》
ゴーグル付き?となっていると合点が行ったエアリス。ダガーがバイザー付きのメインカメラだから、ザフトではそう呼ばれているのかと。
話しかけられているが答える必要はないと思っていたが脳内に閃きのようなものが迸るのを無視するわけには行かずに予知した通りの展開にエアリスは普段着ないパイロットスーツを着ていて良かった…とダガーのコックピットを開く。
コックピットから出て外を確認するとクルーゼが装備すら持たずに此方を見据えている。通信はクリアだ。
此方を見て意外だな、と言わんばかりの言葉を掛けてくる。
<ほう?あのゴーグル付きのパイロットが少女だったとは…意外だな?>
「意外でしたか?貴方方の部下を殺した存在が女なのは。そう言う貴方はラウ・ル・クルーゼですね?」
<ああ。君のような存在に覚えて貰って光栄だよ。しかし……まさか我々を苦しめた《蒼い彗星》いや
「何ですかその呼び名…流行ってるんですか?」
ザフトでの二つ名を貰ったエアリスはバイザーの裏でイヤそうな表情を浮かべる。いや、彗星の魔女…ってそれ近年の作品の名前だし別に私水星生まれじゃない。witch from Mercuryでもねぇしそれにガンダム乗ってない!と声を大にして反論したかったが無意味、次からザフトにはそう呼ばれるのか…と頭を抱えた。
<君は少し特別な様だな>
その言葉に少しムッとしたエアリスは意趣返し、と言わんばかりにクルーゼに返す。
「貴方も私ほどじゃないですけど
出生、経緯、コーディネイターの軍隊で才能と努力で成り上がった人物…そして世界の破滅を目論むラスボス…とあげればキリがないのだが。
<…ッ!ほう…!>
仮面で見えなかったクルーゼの仮面の後ろにある瞳が怪しく光った気がしたエアリスは身構える。
戦闘が始まるか、と思ったがクルーゼはその高揚を押さえ込む。
<我々は既に手痛い状況だ。クライン嬢を回収した後撤退するとしよう>
「さっさと帰ってください。出来れば二度と逢いたくないです。回収後襲ってきたら容赦無く艦橋毎潰しますからね?」
心底イヤそうに答えるとクルーゼは愉快そうに口を開く。
<ふふふ…クライン嬢がいるというのに…本気らしい。が、そう邪険に扱わないでくれゴーグル付きのお嬢さん……次会うのはまた戦場だ。>
クルーゼがコックピットに戻る前にエアリスが呼び止めた。
「ゴーグル付き、じゃありません。ダガーです。連合軍の傑作量産機予定の!ちゃんと名前があるんですから覚えてください!あとお嬢さんじゃなくてエアリスって名前があります」
そう告げると乗り込もとしていたクルーゼが振り返る。その表情は非常に嬉しそうにして言う。
「エアリス……ほう、良い名前だな《彗星の魔女》。ダガーという名前も…確り覚えておこう。」
<覚えなくても結構です!んもう……はぁ……ラウ・ル・クルーゼ…さっさと帰ってください。消えてください>
そう告げるとクルーゼは愉快そうに笑ってコックピットに戻った。それを見送ってコックピットに戻り腰を降ろす。外ではクルーゼとアスランのシグーとイージスはヴェサリウスへ戻っていく。
反転し現宙域から離れていく姿を確認し構えていたライフルと【アーキバス】を下ろした。
姿が見えなくなるまで立ち去った宙域を見つめていたエアリスだった。