魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

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感想コメント高評価ありがとうございます。評価バーが埋まった…!
誤字脱字報告助かっています…と同時に申し訳ございません。




低軌道会戦

「“G”の開発はなんとしても軌道に乗せねばならん」

 

ハルバートンの憤りがマリューの胸に伝わる。

ストライクとダガーが登場する前にザフトのモビルスーツに続々と撃ち落とされていく友軍…彼女の心がもたげ決意を受け取ったマリューは敬礼して答えた。

 

「わかりました…閣下のお心しかとアラスカへ届けます!」

 

ムウも同じく横で敬礼する。

 

「アーマー乗りの生き残りとしてはお断りできませんな?」

 

いつも通りのひねくれた物言いにマリューは笑みを浮かべた。

そしてエアリスも上官の顔とその心持ちを思い出して敬礼して答える。

 

「私もハベンナー少佐の遺志を必ずや届けます」

 

エアリスも普段通りの感情の薄い表情を浮かべてハルバートンに敬礼する。

それを見たハルバートンは深い目で三人を見つめ頭を垂れる。

 

「頼む…!」

 

◆ ◆ ◆

 

トール達が除隊許可証を受け取りフレイとジョージが言い争いをしている最中。

キラは格納庫に佇むストライクを見上げていた。

 

「……」

 

付近でメネラオスに向けて発進準備を進めているランチがあり避難民はあれに乗って移動し乗り換え地球にあるオーブへ降りる、という算段だ。が、それを眺めて不思議とキラは直ぐに帰りたいと言う想いが沸いてこなかったのはここに来るまでに様々な経験をしてきたからだ。

 

へリオポリスでストライクに乗り、戦い、引き金を引いて殺したーーー。

 

同胞というコーディネイターと戦ったと言うだけでなく殺してしまったことに恐怖を覚えたがそれも慣れてしまったことにキラ自身辛い想いをした。だがアークエンジェルに乗り込んだことで“エアリス”という少女と出会うことが出来たのは不幸中の幸いであった。

ナチュラルで地球軍でありながらコーディネイターへの偏見は無く寧ろ親身になって此方を気遣ってくれる…そんな彼女がいたから戦えたのだと…、その事実がキラの心を揺り動かす。

 

「降りる、となると名残惜しいかね?」

 

ふと、横から声を掛けられて、キラは泡を食ったように振り向く。そこには優しげな笑顔をしたハルバートン提督がいた。

 

「キラ・ヤマト君、だね?なに、驚かんでくれ。報告書に目を通している、しかし改めて驚いたよ君たちコーディネイターの力に」

 

その言葉にキラは身を固くしたが目の前の大人からはごく普通の子供をみるような眼差ししか感じなかった。

 

「ザフトのモビルスーツに対抗せんとしようとして造り上げた物だが…全く君たちが扱うととんでもない怪物となってしまうようだな此は?」

 

「え、いや…ええと…」

 

「それにあの少女…エアリス君もナチュラルでありながらモビルスーツを扱う才能…近頃の子供というのはいやはや…恐ろしいものだ」

 

「……えっと…エアリスさんは本当にナチュラルなんですか?」

 

「?ああ。彼女は正真正銘のナチュラルだよ。本来の役職は技術士官の筈なのだがな…適正というものがあるようだ。」

 

「異常の一言だがね」と笑いながらそう言ってハルバートンの優しい目がキラを射貫くその言葉に思わず身構えてしまった。

 

「君のご両親はナチュラルだそうだね?」

 

「え!あ…はい…」

 

「どんな夢を託して君をコーディネイターにしたのだろうな?」

 

「恐らく混迷したこの世界でなに不自由無く生きられるように“希望”を込めてコーディネイターにしたんだと思いますよ?」

 

ハルバートンの言葉に返答したのはキラ…ではなくもう一人のMSパイロットだった。

 

「え、エアリス、さん…?」

 

「おお…君か。レインズブーケ少尉。」

 

エアリスの登場に面食らったキラとハルバートンだったがその表情は明るい。

格納庫の地面を蹴ってキャットウォークに着陸するエアリスは敬礼を向ける。

 

「お話し中申し訳ありません閣下。ホフマン大佐より至急メネラオスにお戻りくださいと言付けを持って参りました。」

 

「やれやれ…君たち若い者と話す時間もない…わかった」

 

ハルバートンは肩を竦めて入ってきた通路へ戻ろうとする。

 

「少尉、そしてキラ・ヤマト君。ここまでアークエンジェルとストライク、そしてダガーを守ってくれたこと礼を言う。良い時代になるまでーーー死ぬなよ?」

 

「はっ!」

 

敬礼するエアリスを尻目にキラはハルバートンに問いかける。

 

「あのっ…アークエンジェルとエアリスさんは一体…どうなるんですか?」

 

「“アークエンジェル”は地球に降りる。ラミアス大尉もレインズブーケ少尉…彼女達は此からも戦場だよ」

 

当然のようにハルバートンは答える。当然だ、彼女達は軍人で戦争をしているのだから。戦える人は沢山いる。ムウに連合のパイロット…だがエアリスさんを誰が守ってくれる?

キラは知らず知らずにエアリスに対して親愛の情…以上のモノを抱いていた。

彼女を守りたい…!

キラの逡巡を感じ取ったハルバートンが口を開いた。

 

「君がなにを悩むのかは分かる…確かに君の力は魅力的だ。軍にはな!」

 

その言葉にキラはハルバートンの表情を探るがその言葉とは裏腹に物欲しそうな感情を窺い知ることは出来なかった。その様子に彼は笑って言う。

 

「君がいれば戦争に勝利できるものではない!戦争はそんなに甘いものではない、自惚れるな?」

 

「でもっ…!」

 

「その意志があるのなら、だ。」

 

彼はキラの言葉を遮る。

 

「意志の無いものはなにもやり抜くことは出来んよ?」

 

そう言った男の目にはエアリスが感じさせた強い意志を宿した光が込められていた。

ハルバートンは部下の下士官と共にメネラオスに戻っていった。

 

「キラ君」

 

「………」

 

ハルバートンが立ち去った後に残ったエアリスはキラをみて声を掛ける。

 

「無理に残らなくて大丈夫」

 

「で、でもエアリスさんはまた戦場に…」

 

「大丈夫。私強いの知ってるでしょ?そこらのザフトになんか負けないから」

 

何時ものように薄い笑みを湛えて自分を見ているがその言葉はここでキラを安心させるための言葉だけでなく実力に裏付けされた“本心”だった。

だからこそ、とエアリスはキラに対して本音を告げた。

 

「若い内から戦争を経験してると終わった後大変になるよ。戦争は大人達に、本職の人たちに任せれば良いよ。未だカレッジの学生でへリオポリスは…戻れないけどオーブで勉強は出来る。キラ君には学生生活を満喫して欲しいんだ」

 

「そ、それじゃあエアリスさんだって僕と同じ」

 

「一応此でも大学卒業して博士号持ってるから。飛び級なんだ私。それに軍人だから。それに、君が幾ら力があったとしても振るうべきじゃない。その力は予想だにしない力を発揮する可能性もあるしだったら眠らせておいた方が君のためだよ。君の力を見て大人は『出来る力があるのなら出来るだけの事をしろ』って言うかもしれないけど無視して良い。戦わなくて済むのならそれに越したことは無いから。親御さんに早く「ただいま」って言って安心させてあげなよ。きっと心配してる…………生きていようがいまいが(エアリス)の親は興味持ってないみたいだし、ね…

 

年齢で“子供”じゃないですか、と言い掛けた所で遮るように告げられてしまいその後の言葉は小さく不穏な言葉が聞こえたような気がした。

 

「え…?」

 

戸惑うキラにエアリスは先程の薄い笑みを潜ませて感情の起伏が薄い表情を現す。

その表情は起伏が薄いが妙に鬼気迫るものをキラは覚えた。

 

「…トール君達と一緒にオーブに帰りなさいキラ君。此は地球連合とザフトの戦い…オーブの国民である君には関係の無い”遠い所の話”だよ。」

 

「で、でも…」

 

困惑するキラに先程とは打って変わって笑みを浮かべるエアリスをみて咄嗟にストライクの正面から降りて手を伸ばすが踵を返すその動作は「もうこの話は終わり」と言わんばかりに通路に向かっていく。キャットウォークに降り立ち後ろから声を掛けようとしたがエアリスが「ああ、そうだ…」と言って振り返った。

 

「約束…というか絶対とは言えないけど君の友達のアスラン、だっけ?…出来る限り“撃墜”しないように頑張る。状況が許してくれれば、だけどね?こっちが、アークエンジェルが墜とされそうになったらーーーーー」

 

振り向いたエアリスは苦しそうに告げた。

 

「御免なさい。約束守れないかもだから。それじゃ…」

 

そう言ってエアリスは通路の奥へ消えていく。キラは立ち去った通路を一瞥した後にストライクを見上げる。そこには鉄塊色になっている巨人が迎え入れるべき人物を探しているように見えた。

自分がこの艦を去れば正規の軍人が此を動かすだろうがきっと扱えない。恐らくエアリスが乗り込むことになる。

そうなればアスランとエアリスがーーーーー。

 

キラは顔をあげた。同時にその瞳に強い意志を宿りかけるのだった。

 

「エアリスさん…僕はーーーーーー。」

 

◆ ◆ ◆

 

(さっきのは言いすぎたかな…でもあのくらい言わないとキラ君降りてくれないし…うーん。頭の中身全部ぶちまけちゃうと“お前頭可怪しい”って言われるだけだからなぁ…)

 

此からの物語全部知ってるよ!と言えば精神病院一直線だな…とエアリスは自嘲した。

 

(私、一体どうしたいんだろう…?物語を視聴者として見る第三者?それとも入り込んだ登場人物?…分からない、でも…)

 

自室に戻る通路で立ち止まる。

 

(キラ君が主役のこの“物語”…途中で死亡してしまうトールやフレイ…それにアスランの友達であるニコルの死を回避したいけど……それは虫が良すぎるかもね。でも…彼らは“傷つく”確実に。)

 

既にこの手でアスランとキラの同胞を撃ってしまっている。SEEDという作品を見ているだけだった筈なのに巻き込まれて“戦争”をしている。既に“嫌悪感”は薄れてしまっていた。

戦わなければ自分がやられる…そんな世界にいるのだから何時か自分が殺す可能性すらある。逆も然りだ。

躊躇いは既に無くミゲルをその手で殺したのは殺されそうだったから。やらなければやられる…そう黒く染められそうな意志を頭を振って払い飛ばすのは飲み込まれそうだったから。

そんなことを考えていると不意に艦内の警報が響き渡った。

 

<総員第一種戦闘配備!総員第一種戦闘配備!パイロットは搭乗機にて待機せよ!>

 

エアリスは直ぐ様女性用ロッカールームへと走り出す。

キラ達が乗るシャトルを護衛するための戦いが始まり下手を打てば此方が大気圏を単騎で突破する可能性がありPS装甲を搭載していないダガーでは大気の断熱摩擦で燃え尽きてしまう。

 

(今回はダガーじゃなくてストライクで出撃するしかないよね…)

 

ムウもアストレイで出るとは言えキラがいないので原作通りG兵器を押さえなければならない。

それに出撃も第八艦隊が数を続々と減らしてきたタイミングでありその事も含めて良い具合に説明し早期に出撃、メネラオスを撃沈させない、ガモフを沈めて特攻を阻止させる。そしてシャトルを撃沈させないようにしないといけない。

やることは山積みだが出来る筈だ、とエアリスは自分を鼓舞させた。

そんなことを考えながら着替えを終えて制服を格納したロッカーを閉じ部屋を後にし進み到着した格納庫で自分の考えが甘かったことと積み重ねてきた予想外の”好感度”に内心舌打ちをせざるを得なかった。

 

◆ ◆ ◆

 

第八艦隊が大事に仕舞い込んでいるアークエンジェルを撃墜するためクルーゼ率いるザフトの小規模な艦隊は艦艇からジンを続々と発進させていた。

それに対応するべくランチが到着したメネラオスのブリッジにてハルバートンが指示を出す。

 

<全艦密集陣形にて迎撃体勢!“アークエンジェル”は動かずに本艦の後ろに付け!>

 

“アークエンジェル”の艦橋では重苦しい雰囲気を感じながら正規クルーとなった皆がモニターを見つめている。

敵艦は三隻、発進しているMSは十四機…内四機は奪われたXナンバー達であり間違いなく襲撃を仕掛けてきているのはへリオポリスから追撃をしてきてるクルーゼ隊に他ならない。

今“アークエンジェル”は無数の友軍艦艇に囲まれているにも関わらず不安でしかないのは先の戦闘でその能力を知っているからだ。

後方に付け、と指示されたが戦闘準備を怠るわけには行かずに正式に副艦長と砲撃長を兼任することとなったナタルが続々と指示を出していく。

 

「“イーゲルシュテルン”起動!後部ミサイル発射管“コリントス”装填!“ゴットフリート”並びに“ローエングリン”発射準備!」

 

その指示を受けながらトノムラが続々とシステムを立ち上げていく。多少の配置変更があったとは言えアークエンジェルに割ける人員は少なくCICは今まで通りの少ない人数で回すことになり「くそっ」と内心で毒づく。

アラスカまでこの人員で本当に行けるのかーー?と思ったその矢先に艦橋へ続く扉が開いた。

 

「スミマセン遅れました!」

 

扉が開き明るい声が響いたと同時にマリュー達が振り返り困惑する声を上げるとソコにはここに到着するまで協力してくれた学生達…サイ、トール、カズイ、ミリアリア…そして新たに軍服を身に纏ったフレイとへリオポリスの学生達がそれぞれに自分が担当していた席に着いた。

困惑するマリューを尻目にナタルが淡々と説明した。

 

「彼らは志願兵です。ホフマン大佐が受領し、私が承認いたしました」

 

その事にマリューが目を剥くがCIC席に座るサイがその返答をする。

 

「あ、キラには除隊許可証持たせて降ろしました。」

 

「俺たちじゃキラみたいな代わりにはならないと思いますけど居ないよりもましだと思いますよ?」

 

トールは空いていた副パイロット席に滑り込み隣に居るノイマンに親指を立てて合図を送りトノムラ後ろに座るサイ、そしてミリアリアが背面に居るトノムラにウインクを送ると笑みを浮かべる。

 

そして空いていた席にフレイが座りヘッドセットを装着する。

 

「あなたは事務次官殿の…」

 

「パパと喧嘩しちゃったけど…こうしないと後悔する、ってそう思ったんです。私に大切なことを教えてくれた友人を…エアリス一人だけを戦わせちゃいけないってそう思ったんです」

 

「あなた達…」

 

困惑するマリューを尻目にフレイは笑って見せた。

 

「それに女子が多い方がみんなのやる気も出るでしょう?」

 

そう言ってフレイが笑って見せるとはじめは呆気に取られていたクルー達も嬉しそうに彼ら彼女らを受け入れている…が、マリューの胸中は複雑だった。

彼ら彼女なりにエアリスに思うところがあって協力してくれているのだろうがそれは幼く、甘いものだとマリューはそれがこの学生達にどんな影を落とすのか…と考えずには居られなかった。

 

◆ ◆ ◆

 

アークエンジェルからは機体が発進していない。いや、許可されていないと言うべきか。

むず痒さを覚えながら戦況は刻一刻とじわじわとザフト側に傾いていく。

“ヴェサリウス”他各艦艇から発進した“ジン”各機体が散会し連合軍艦艇が浮かぶ漆黒の海に華を咲かせる。

発進した“メビウス”と“ジン”が会敵し“メビウス”が放ったミサイルを回避し“ジン”が持つキャットゥスが火を吹き一機、また一機と撃墜されていくその中を特徴的な赤い機体が戦場を飛び交う艦艇の滞空迎撃を回避しながら“イージス”がMA形態に変形し股間に当たる部分から580ミリ複合相位エネルギー砲【スキュラ】を発射し三機のメビウスを撃墜して見せる。それに続けるように“デュエル”と“バスター”がその機動性をいかしてすれ違いざまに“メビウス”を撃墜し連合軍の艦艇へ迫る。

その状況を“メネラオス”のブリッジで確認しているハルバートンが苦しげに呻いた。

 

「くっ…Xナンバーか」

 

「確かに見事なモビルスーツですな…だが、敵に回れば厄介なだけだ。接近を許すな!実弾は効かない、Xナンバーにはビームで対抗しろ!対空迎撃!ジンの接近も許すな!ワルキューレ、オルトリンデ、エイレーン各小隊は戦術パターン24に従い行動せよ!」

 

副官のホフマンは嫌味混じりに冷ややかに告げた後メネラオスに所属するメビウス小隊に指示を飛ばす。

機銃とミサイルで敵機体を牽制する駆逐艦にイージスが優雅に回避し敵の懐まで入り込んでエンジンユニットを破壊する。破壊された駆逐艦はエンジンブロックを切り離し誘爆を阻止、移動力を失った駆逐艦は戦線を離脱していく。

 

そして確認されていなかった“ブリッツ”も一隻の巡洋艦に接近していた。接近を関知したその艦のオペレーターが反応し艦長に報告しようとするがレーダーから消え失せてしまう。

気のせいだった…いや確かにいた筈だ!とそう思った矢先に反応が消えたレーダーに再び機影が現れる。

“ブリッツ”は【ミラージュコロイド】を展開しレーダーの索敵範囲から消え失せ艦橋付近に移動し解除、左腕に装備したアンカー、【グレイプニール】を射出し艦橋を潰し火の玉に変えていく。

 

“バスター”も背面に装備していた【350ミリガンランチャー】と【94ミリ高エネルギー収束ライフル】をドッキングさせて【超高インパルス長距離射程ライフル】でネルソン級の横っ腹を撃ち抜くと火だるまに変えていった。

“デュエル”も本来であればジン用の装備である“アサルトシュラウド”を再設計し装備しているお陰か右肩に【115ミリレールガン:シヴァ】左肩に【五連ミサイルポット】を装備し火力が増加していた。しかし追加装甲で防御が向上したものの機体重量の増加で機動力が低下してしまっていたがそれを補うためのスラスターが増設され宇宙空間を素早く移動して火力を駆逐艦に叩き込むと穴が空いてソコから赤い炎が吹き出し撃沈していく。

 

メネラオスの艦橋に続々と友軍の艦艇が沈んでいく報告を受け最初は冷静だったホフマンも思わず立ち上がり上ずった声を上げる。

 

「なんだと…!?たった戦闘開始六分で…4隻をか!?」

 

沈んでいく連合軍の艦艇を尻目に“新たな機体”で出撃しているクルーゼがMAを屠りながら動きの無い艦隊中央を見ながら詰まらなそうにクルーゼが一人ごちる。

 

「ハルバートンめ…どうあってもあれを地球に降ろすつもりだな?大事に奥に仕舞い込んでなにもさせないとは…」

 

クルーゼの駆る機体に接近するメビウスを両肩のビームライフルで撃墜し戦場を見渡しているとヴェサリウスに搭乗するアデスから通信が入る。

 

<隊長。ストライクとダガーの姿が見えませんね。それにあのフレーム剥き出しの機体も…>

 

「ああ。何があってもハルバートンはあれを地球に降ろしたいらしい。だから余計な傷が付かぬように守っているのだろう。愚かなことだ。」

 

<そのお陰で此方は楽ですな。“ストライク”と“ダガー”が出てこないだけでも此程とは…やはりあの機体とパイロットが恐ろしいということですか…>

 

アデスが半ば冗談交じりにそう答えるとクルーゼが笑みを浮かべる。

 

「既にMAでモビルスーツに勝てないと知っているだろうに…だからこそ彼がその計画を推進した…とのことだしな。」

 

そうクルーゼは笑みを浮かべながら氷のような温度の声で告げた。

 

「ふははっ…さぁ早く来い“彗星の魔女”…さもなければ友軍が次々と沈むことになるぞ?」

 

◆ ◆ ◆

 

待機を命じられたアークエンジェルの艦橋では続々と味方が目の前に沈められる光景が広がっている。

 

<おい!なんで俺達は発進待機なんだよ!?>

 

焦ったようなムウの声が艦長席に座るマリューが取った格納庫に繋がる電話から聞こえている。

 

<流石に第八艦隊って言っても四機相手じゃヤバイぞ!?>

 

「フラガ大尉…」

 

<俺や嬢ちゃんが出たところで対して変わらねぇかもしんねぇけどさぁ…!>

 

<ラミアス大尉。その件に関してはフラガ大尉に同意です。このままではクルーゼ隊になぶり殺しにされます。出撃の許可を!>

 

ムウの通信に割り込むように意見具申してきたエアリスも流石に焦っている表情を浮かべている。

しかし…

 

「本艦への出撃許可は出ていません!引き続き待機してください!」

 

<艦長!><ラミアス大尉!>

 

受話器の向こうで二人が問い詰めようとしたそのタイミングでマリューは一方的に受話器を置いて切った。

ムウが苛立っているのは折角急いで修理させた機体を出撃させず味方の危機に指を加えて手をこまねいている状況に歯がゆいのだろう。エアリスも焦っている…それはマリューも同じだ。

この艦を守って本部に送り届けることが任務…ではあるがそれでこの艦が落とされようものなら意味がなくなってしまう。命令を遵守することが軍人としての在り方だ。しかし、それで本当に良いのか…彼女は暫く悩み決断に至り受話器を取ったーーーー。

 

「メネラオスへ繋いで!」

 

メネラオスへ繋ぐとモニターには慌ただしげな表情を浮かべるハルバートンが映る。その背後にはブリッジ要員達が怒鳴り声を上げながら敵機への対応をしている。

 

<なんだ!!>

 

「本艦は此より艦隊を離脱し、直ちに降下シークエンスに入りたいと思います!許可を!!」

 

<なんだと!?自分達だけここから逃げ出そうと言うのか!?>

 

ホフマンはその言葉に横から割り込むがマリューは然として答える。

 

「彼らの狙いは本艦です。本艦が離れない限りここのままでは全滅します!!」

 

その事にハルバートンは苦虫を潰したような表情を浮かべるのはそれが事実だと知っていた。

実際に三隻とモビルスーツ十数機に持ちこたえれないことに。

 

「…アラスカは無理ですがここから降下すれば地球軍制空権に入ります。突入限界まで耐えきれればジンとナスカ級達を振りきれます!閣下!!」

 

<相変わらず無茶な奴だな。マリュー・ラミアス>

 

「部下は上官に倣う、と言いますから」

 

そうマリューが笑みを浮かべながら告げるとハルバートンは諦めたように同じく笑みを浮かべた。

 

<良いだろう!“アークエンジェル”は直ちに降下シークエンスに入れ!限界点まできっちり送ってやる!此から先一匹たりとも送り狼を送らせんぞ!>

 

“アークエンジェル”は地球へ降下するために準備を開始するのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

「降りる!?この状況でか!?」

 

「俺に怒鳴ってしょうがねーでしょう?まぁこのままずるずる、って言うのよりいいんじゃねぇですか…って嬢ちゃんなにやってんだ?」

 

この激しい戦闘の中アークエンジェルは見ようによっては味方を見捨てて地球降下の準備を進める…ということにムウはマードックに当たり散らすように怒鳴るが普段通りに聞き役に徹し受け流していた。

が、パイロットスーツに着替え終わったエアリスが“ストライク”に向けて地面を蹴って翔ぶ。

 

「この状況じゃあの四機に抜かれます。迎撃しないとハルバートン提督のメネラオスが沈められます!ここであの人が墜ちると大変なんですよっ!だから迎撃に……っ!?」

 

ストライクに搭乗しようとしたエアリスの行く手を遮ったのはよく知る人物だったからだ。

その表情に驚愕の色が浮かぶ。

 

「ーーザフト艦とジンを振りきったとしてもあの四機が問題ですよね?」

 

「ッ…!ど、どうして…!?」

 

その割り入ってきた声と姿に気がついたマードックとムウが驚いた表情を浮かべる。

 

「坊主!?」「坊主ぅ!?」

 

パイロットスーツを着込んだキラが普段通りの表情でやってくる。その表情に唖然とする二人だったがキラはエアリスの手を取る。

 

「此には僕が乗ります」

 

「なんで…」

 

「エアリスさんは僕たちを守ってくれたけど…エアリスさんを守る人は居ないでしょ?…僕が戦います」

 

「キラ君…」

 

真面目な表情でそう告げて乗ろうとしていたエアリスをダガーへ送り返しコックピットへ乗り込むキラ。

 

「まだ第一種戦闘配備ですよね“ストライク”で待機します。」

 

コックピットへ入り込むキラの姿を見送ってダガーのコックピット付近に立ち止まるエアリスは悔しそうな表情を浮かべる。

 

「私の力じゃキラ君を…キラ君達を戦場から遠ざけることは出来ないっていうの…!?」

 

コックピットの外装に拳を打ち当てて鈍いガンッ、という音が響く。

その表情は後悔に満ち溢れ碧眼の瞳が淡く潤んでいるその光景をムウとマードックがみやる。

その姿は普段のような年不相応の態度ではなく年頃の若さゆえの過ちを後悔する女学生のようだな、と二人の大人はやるせない思いで見ていた。

 

“メネラオス”から第八艦隊全艦へ通信が入る。

 

<激しい戦闘ではあると思うがかの艦は明日の戦局の為に決して失ってはならぬ艦である。陣形を立て直せ!我らの後ろに一隻、一機たりとも敵を通すな!>

 

ハルバートンが発する言葉に連合兵士が士気を高めていく

 

<地球連合宇宙軍第八艦隊の底力を連中に見せてやれ!!>

 

アークエンジェルでは降下シークエンスが進むなか味方艦隊はそれを成功させようと烈火のごとく攻撃を進めそれを阻止せんとザフトが猛攻を仕掛ける。

ジンが落とされメビウスが散る。まるで戦場に命の華が開くように真空の闇を照らしていく。

 

「“足付き”が降りる!?」

 

戦闘中のイザークがヴェサリウスから届いたレーザー通信に驚いた後にぎりりと歯軋りさせた。

 

「させるかぁ!!」

 

密集して一機も通さないと意気込む陣形に“デュエル”のスラスターを吹かして切り込んだ。

他の三機もそれに続けと追従する。

駆逐艦がミサイル、機銃、主砲を開き迎撃するがそれを問題ともしない四機がお構い無くと言わんばかりにその火線を掻い潜りMAを、駆逐艦、護衛艦を次々と撃沈していく。

唯一ビーム兵器を搭載するメネラオスが発射するがそれらを止めるための決定打にならなかった。

“デュエル”が一陣を突破し続けてバスターがガンランチャーを発射しながら蹴散らしていく。

 

◆ ◆ ◆

 

艦内にチャンドラの驚愕する声が響く。

 

<デュエル、バスター先陣隊列を突破!!>

 

エアリス、キラ、ムウに緊張が走る。続けざまのその言葉に一番緊張が走ったのはエアリスだろう。

 

<メネラオスが交戦中>

 

状況を告げるその通信にダガーからムウへエアリスが通信を繋いだ。

 

「フラガ大尉!」

 

<ああ。わかってる>

 

エアリスに声を掛けられて頷いたムウは艦橋へ呼び掛けた

 

<艦長!俺達をギリギリまで出せ!限界まで何分ある?!>

 

<何を馬鹿な……『俺達』…?>

 

ムウが先程と同じことを言ってきたので反射的に反応を見せたマリューだったがその最後の文言に怪訝な色が混じる…と同時にキラが割り込んだ。

 

「カタログスペック上ではストライクは単体でも降下可能です」

 

<ーーーキラ君…!?>

 

マリューの反応に艦橋にいたミリアリア達が「「「「「「キラ…!?」」」」」」と反応をしているのを聞いたエアリスは複雑な胸中だ。

 

<キラ君…あなた、どうしてそこに…?!>

 

「このままじゃメネラオスもアークエンジェルも危ないですよ艦長!」

 

キラの声にマリューは判断を迫られた…というのを感じ取ったエアリスは不承不承…と言わんばかりにマリューに告げる。

 

「…艦長、キラ君の言う通りこのままでは第八艦隊はなぶり殺しにされます。私とキラ君、大尉のMSがあります。状況を覆すことは可能です」

 

<………>

 

最後の一押し、と言わんばかりにエアリスは笑って見せ自分でも名乗りたく無い“二つ名”を敢えて使って見せる。

 

「へリオポリスからここまで誰がアークエンジェルを守ってきたと思いですか?【蒼い彗星】と【エンデュミオンの鷹】、そしてストライクがいれば降下まで時間を稼げます。…許可を!」

 

そのエアリスの言葉には裏付けされた“実力”が確かにあった。搭載機である三機とパイロットがいればこの状況を打開できるかもしれない…だが大気圏突入間近で“メネラオス”と“アークエンジェル”を救うためだけに彼ら彼女に戦えと言うのか?一歩間違えばこの重力の井戸に落ちる可能性すらあると言うのに。

 

マリューのその逡巡はナタルによって打ち壊された。

 

「…分かった!フェイズスリーまでには絶対に戻れ!」

 

サイのヘッドセットを引ったくり何時ものような口調…と言うには少し感情が乗っているのは彼女も不安であったからだ。

 

「ストライクはスペック上問題ないがフラガ大尉とレインズブーケ少尉の機体は大気圏を突入できる能力はない!それに大気圏突入なんてやった人間はいないんだ!中の温度がどうなるか知らないぞ!タイムと高度は常に気を付けろ!」

 

<はいっ!>

 

<了解…!>

 

「バジルール少尉ッ!!」

 

マリューは艦長席から立ち上がりCICにいるナタルへ怒りの感情をぶつけるが怯みもせずに受け止める。

 

「ここで本艦が墜ちたら第八艦隊の犠牲が無駄になります!!」

 

その言葉にブリッジにいる全員が納得せざる得ないものでありそれを受け入れることが出来ないマリューとナタルのにらみ合いは続いていた。

 

◆ ◆ ◆

 

「キラ・ヤマト、“ストライク”行きますッ!」

 

エールストライカーを装備したストライクが先んじて大気圏間近の宙域に射出されていく。

続けてムウの機体もスタンバイが完了しカタパルトへ接続された。

 

<フラガ機スタンバイ。ストライカーパックは“ガンバレルストライカー”を装備します。>

 

調整が終わったムウの機体…アストレイ・グリーンフレームはエアリスが魔改造…もとい改良し背面にコネクターを搭載してストライカーパックを搭載できるようにしていたが従来のストライカーシステムではパーツが干渉してしまうので新たな装備が作られた…それが“ガンバレルストライカー”…エアリスがデブリベルトで回収したモノだ。

時間がなく全てをビーム発射口に変更できなかったがそれでも十分Xナンバーに渡り合うことが出来る性能になっているしムウでも扱えるようにキラがOSを改良し火器管制部分をエアリスが調整した専用機になっている。

ムウにしか扱うことが出来ないワンオフ機体だが。

 

「大気圏突入の最中に戦闘するなんて俺でもやったこと無いが…やるしかないよな…!よっしゃ!ムウ・ラ・フラガ、“アストレイ・ゼロ”出るぞッ!」

 

< APU起動、カタパルト接続、ストライカーパックは“シャドウストライカー”を装備します>

 

アナウンスするミリアリアの顔がモニターに映るそれに複雑な気持ちになるエアリスだったが思考を切り替えた。

反対側のゲートが開く。

既に目の前の景色は青い景色…地球が目前に広がりその青い星に吸い込まれる錯覚すら覚える。

感動すら感じているのはそれがとても尊い光景だからだろう…しかし今から出ていく場所は命のやり取りを行い怨差や狂気が渦巻く“地獄”だ。

エアリス達を重力の井戸に叩き込もうとその青い星は手招きしている。

シャドウを選択したのは重力に引かれないようにブレードスラスターでエール以上の推力を得ることが出来るためだ。バーストストライカーでは動きが鈍くなってしまう。がそれでは“これからすることに火力が足りなくなる”のは明白だった。

 

「マードック軍曹!【アーキバス】のスタンバイを!」

 

<分かった!>

 

“ダガー”は背面と肩に“シャドウストライカー”を装備し右手にビームカービン…を威力を上げるために換装パーツであるヘビィーバレルを装備しヘビィービームライフルに変更し左手にダガー用のシールド、ビームランチャー【アーキバス】を装備する。

準備が整いカタパルトに接続したダガーが構えた。

 

<レインズブーケ機、発進どうぞ!>

 

「…宇宙が…青い………。エアリス・A・レインズブーケ、“シャドウダガー”行きますッッ!!」

 

カタパルトがエアリスの乗る“ダガー”を宇宙へ叩き出す。

淡く白い雲を纏いオゾンの層に守られた地球が宇宙線に照らされて青く輝いている。

重力の井戸へ引き込まれそうな機体をフットペダルを押し込み無理矢理急上昇させエアリスは“虚空の戦場”へ誘われた───────。

 




今現在のアークエンジェルの戦力。
MS:ストライク、ダガー、アストレイ【グリーンフレーム】
MA:メビウス・ゼロ、スカイグラスパー×2

整備中:アストレイ【グレーフレーム】

…あれ?多くね?
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