魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】 作:萩月輝夜
「ペダルが重い…此が地球の重力か…!」
アークエンジェルから発進したエアリスは地球重力圏からの“歓迎”を受け、直ぐ様操縦系統を微調整、フットペダルを押し込み背面のブレードスラスターを吹かせて体勢を立て直した。
火線入り乱れる戦場に向かうと直ぐ様コックピット内部にロックオン警告が鳴り響くのは向こうから見つけてくれたからだろう。
「ッ“デュエル”か!」
X-102の表示がされ目視で敵の姿を確認すると装備が“アサルトシュラウド”に換装されていることに気がついたエアリスはその理由がへリオポリス襲撃後に腕を切り落としているためその修理を兼ねてだろう。
ヘビービームライフルに換装した狙撃でデュエルの肩部分を狙うが宇宙での機動性が上がっているのか避けられてしまい接近を許す。
「流石は重装備…機動力は上がっているみたいだ!」
目前に迫ってデュエルがサーベルを振り下ろすがエアリスは冷静にその場でターン回避し腰部へライフルを左手に持ち変えて振り向き様にサーベルを抜刀する。
<見つけたぞゴーグル付きッ!今度こそ引導を渡してやる!>
「装備を貰ってはしゃいでいるのか…調子に乗るなッ!!」
其々の機体が持つサーベルが保持するシールドにぶつかり耐ビームコーティングを剥がしていく。
一方で“メネラオス”の艦橋では降下シーケンスのカウントダウンが刻々と進行していた。
バスターの攻撃により艦が揺れるとホフマンが撤退を進言するがハルバートンは「まだだ…」と意地でもここを動かないつもりのようだ。このままでは…と思った矢先にオペレーターからの報告に思わず耳を疑った。
「“アークエンジェル”からX-105“ストライク”、“ダガー”、“アストレイ・ゼロ”、発進!」
「なんだと!?」
その報告を受けハルバートンはその姿をモニターに求めると地球光を反射させてその白い機影が見つかる。
“ストライク”は“イージス”と“ブリッツ”、其々が交戦しお互いのサーベルをシールドにぶつけ合い火花を散らしている。時にはビームを回避しシールドで受け止めるあれに誰が乗っているのか…ハルバートンの脳裏にあのキラ・ヤマトと呼ばれる少年が乗っていることは想像に難くないことを思い付き胸を痛めた。
彼が結局戦うことを選んだのは軍が彼を利用するしかないとわかっていると聡い彼はわかっている筈なのに…とハルバートンは彼が戦う理由に思い当たった。その理由がどんなに尊いものだとしてもその言葉は着飾っても変わりはしない。
ムウの“アストレイ・ゼロ”も背中に背負った彼の専用になってしまった機体“メビウス・ゼロ”を改造して背負物としたストライカーが四つに分離し実弾とビームをばら蒔いて“バスター”と“ジン”相手に大立回りを演じていていた。Xナンバーと随伴機から放たれる攻撃を危なげなく回避するその光景に流石は【エンデュミオンの鷹】だ。だが、“バスター”の動きが目に見えて鈍くなっているのは地球の重力に引かれているからであり背負った“ガンバレルストライカー”のスラスターが無ければ鈍くなっているのはムウの“アストレイ・ゼロ”も同じだった。
そしてエアリスが乗る“ダガー”は“デュエル”と“シグー”…の強化改造型相手に立ち回っており背面のスラスターを小刻みに吹かして手にしたビームサーベルをデュエルのシールドに叩きつけ背後に迫ったシグーを吹かしているブレードスラスターにレーザーを発生させ反転した勢いで迫った“シグー”と“デュエル”を弾き飛ばすその戦闘方法と大胆さは本当にあの少女士官が戦っているのか…と少し戦慄を覚えていた。
突如、前方からビームを撃ち込まれ掛けてハルバートンは目前で戦うMSから目を離す。そして目を見張った。
「ローラシア級接近!」
ここがハルバートンとメネラオスの分岐点となる。
◆ ◆ ◆
「しつこいッ!」
「くそっ!なんでこいつ墜ちないんだよ!いい加減に墜ちろ!!」
「邪魔だって……言ってるでしょうがッ!!」
切り結んでいる内に距離を取り“デュエルアサルトシュラウド”がライフル、レールガン、ミサイルポットを一斉射撃し“シャドウダガー”へ襲いかかる。
スロットルレバーを押してフットペダルを踏み込んで背面のブレードスラスターを吹かしながら回避し肩部のビームブーメランを投擲、反撃に反応したデュエルが盾を構えるがそれはエアリスの狙いで大きく体勢を崩され隙を晒した。
「うわぁああああっ?!」
「どけッ!!」
スロットルレバーを押し込みフットペダルを踏んで背面のブレードスラスターを吹かし一気に急接近、その勢いのまま飛び蹴りを見舞い後方へと吹き飛ばす。
「装甲がいくら頑丈でも中身はシェイクされるでしょうが!!」
戦闘能力を奪うために素早く左手のヘビーライフルを構えようとした。
「…ッ!!」
咄嗟にその場からスラスターを吹かして回避する。
すると先ほどまでいた場所に二条のビームが通りすぎていくのを確認しその方向に視線を向けた。
その先には…。
「ようやく現れてくれたな…“彗星の魔女”ッ!」
エアリスの前に現れたのはスラスターを吹かし此方に向かってくるシルバーグレーに塗装された“シグー”…と呼ぶには改造され過ぎた機体で機体のシルエットが大きく変更されていた。
両肩には大きなビーム砲…背面と脚部には高機動を実現するためのスラスターユニットが増設され、両腰にはレーザー重斬刀と手には突撃銃を手にしてガトリングシールドは無くなりゲイツのような複合防盾を装備していた。
近づく機体に似通ったシルエットに思い当たるものがあったが記憶と違う。
そしてこの状況で自分に突撃してくるパイロットは一人しかいないと結論付けた。
「“シグーディープアームズ”…か?!変わりすぎでしょ!?…ってことはあれに乗ってるのはクルーゼか!ぐぅっっ!!?」
“シグーディープアームズ”…では無く正確には“ゲイツ試作改良運用型”であるが知るよしもない。
回避し凄まじい速度で追従してくる”ディープアームズ”がレーザー重斬刀を抜刀し振りかぶってくるのを確認したエアリスは咄嗟に盾を構え防ぐが質量があるため大きく吹き飛ばされる。
「君のために誂えた機体だ…存分に味わってくれ!!」
持ち変えたライフルで牽制するが当然ながら“ディープアームズ”に当たらない。推力は向こうの方が上であり軽々と回避されてしまう。連射出来るカービンに変更するべきだった、と内心で毒づく。
「ソコまでして私たちを地球に降下させたくないかッ!!」
突撃銃の弾丸が殺到しシールドで防ぎ反撃しようとするが両肩のビームがそれを許してくれない。がこのままではじり貧だと判断しシールドの除き穴からライフルを構え“シグー”へ射撃するが装備されたシールドに弾かれてしまうのを見て舌打ちせざるを得なかった。
「ッチ…!ビームコーティング…までも…くうぅぅぅっ!!し、しまった…!?」
攻撃を回避しながら射撃をしてたせいか蹴られた反動から復活した“デュエル”に背後を取られてしまっていた。
ビームと実弾が殺到し次第に追い込まれ体勢を崩された所にロックオンを告げるアラートが鳴り響く。
「隊長!俺がトドメを刺しますッ…良くもやってくれたな…!終わりだな“ゴーグル付き”!!」
手にしたライフルの発射口からビームの粒子が迸ろうとして此方を撃ち抜こうとしているのがコックピットの警告音が響いているこの状況は正に
(死ぬ…?こんなところで…?)
今になってそれを強く自覚する。
脳裏に浮かぶは自分がビームの直撃を食らい細胞レベルでこの世から抹消され一瞬の痛みの後燃え盛りエアリスは文字通り“無”へ還るのだ。
その事を自覚しエアリスは強い渇望に襲われた…“死ぬことはまだ出来ない”と。
(駄目だ…駄目だ駄目だ駄目だッ!!未だ………私はッーーー“死ねない”ッ!!!!)
◆ ◆ ◆
撃墜を確信していた、筈だった。
「な、なにぃーーーッ!?うわぁああああっ?!」
突然の事にイザークは驚く声を上げるしかなかった。
クルーゼが気を引いている間にダガーの背後を取りロックオンを決めトリガーを引こうとしたその瞬間に“ダガー”が背面にあるスラスターを吹かし射撃を回避した…其だけでなく背中を向けながら所謂“背面撃ち”で“デュエル”のレールガンを破壊されてしまいその衝撃がコックピットに伝わると同時に目前には駄目押しと言わんばかりに再び頭部に蹴りを見舞われて吹き飛ばされた。とどめを刺さなかったのは少しの理性が働いたからか。
「イザーク!…動きが変わった…!?」
硬直する“ダガー”に腰に懸架したレーザー重斬刀を抜刀し迫るが頭部が動き咄嗟にバルカンを発射するが難なく“シグー”は回避した。
が、エアリスは分かりきっていたことで手にしていたヘビーライフルを手放しバルカンの射線上に
「どこに……なにッ…?!」
銃弾がヘビーライフルのエネルギー変換器に直撃し爆発、目眩ましになったその隙に“シャドウダガー”が肩部のビームブーメランを抜刀し肩部ビーム砲に一発食らわせると大きく爆発を引き起こす。
クルーゼも反撃しようとしたが爆発の反動で動けず抜刀したビームブーメランを投擲されレーザー重斬刀を保持していた左腕ごと破壊されてしまい今の一瞬で攻撃オプションが失われてしまう。
今の一連の流れで二基の武装オプションを奪ったのだ。
ー邪魔をするな…ッ!!ー
コックピット内部ではエアリスの視界…世界はゆっくりと動いていた。
敵がどんな動きを見せるのか、どう動けば対応できるのかというのが手に取るように理解できる。いや
「どけぇええええッッ!!!」
獣のように叫びその場で機体を反転させブレードスラスターを初めから組んでいるモーションパターンを起動させると背面の武装が展開し横を向きレーザーが迸り
次の瞬間“シグー”と“デュエル”のシールドに接触しその質量差から大きく吹き飛んでしまい隙を晒すことに成功する…が“ダガー”はそれを気にもせずに別の場所へスラスターを吹かして移動する彼女の視線の先には“メネラオス”に接近する“ガモフ”の姿があった。
「……ふふっ」
蒼く尾を引きながら進むその姿を見て先の攻撃で肩部のビーム砲の冷却装置が破損し攻撃続行が難しくなったクルーゼはその姿を見送りながら笑っていた。
その最中“デュエル”が後を追いかける。
「ふははははっ、流石だ…!エアリス君…やはり君は…!」
姿は普段の様子からは想像できないものだろうその仮面の下に破顔しそうなほどな笑みを浮かべ“ヴェサリウス”へ帰投するのだった。
◆ ◆ ◆
エアリスとクルーゼが戦闘を行っている最中、“メネラオス”目掛け“ガモフ”が隊列から離れ接近をしていた。
「“ガモフ”、出過ぎだぞ!何をしている――ゼルマン!!」
“ヴェサリウス”の艦橋ではアデスが突出しすぎている“ガモフ”に身を乗り出して叫んだ。
元より突出しすぎで今では完全に敵の包囲網に入ってしまっている。通信が入った。
<元はと言えば…我らが…ここまで…引くことは…>
“ガモフ”の艦長であるゼルマンが通信を開くがNジャマーで音声が酷く乱れている。ノイズに混じる声色は妙に冷静であり映る表情は冷静であったことにアデスはイヤなモノを感じ取ってしまった。
<“足付き”は…かなら…>
通信が途絶え画面が完全にブラックアウトする。
へリオポリスから足付きを追い続け仕留める機会はあった筈だが向こうの方が上手だったというのもある。
追撃を引き継いだゼルマンの隊は見つけることは出来なかったのは失態ではあったがそれはゼルマンだけの責任ではないだろう。
アデスはやりきれない気分になりながらこの作戦を成功させるために部下へ指示を出す。
仲間の行動を無駄にしないために。
一斉射撃をしながらがむしゃらに突っ込んでくる“ガモフ”を止めようと駆逐艦が“メネラオス”の前に出て激しい応射がなされたがローラシア級とドレイク級では火力が違いすぎたため炎を上げて沈み行く。がそれが無駄だったと言うわけではなく被弾する。
「“メネラオス”が…!くっそぉーーーーッ!!!」
“バスター”と“ジン”を相手に大立回りしていたムウが“メネラオス”に接近する“ガモフ”に気がつき“ジン”を一機撃ち抜いた後ガンバレルをバックパックに戻しスラスターを吹かして射程距離まで接近し再度展開、ビームと実弾をばら蒔いて撃ち抜くが止まらない。
“メネラオス”に“ガモフ”が放った砲撃が着弾し装甲を抉り炎を吹き出した。
「刺し違えるつもりか!?」
揺れる艦橋でホフマンが立ち上がる。そしてキツく歯を食い縛っていたハルバートンが指示を下す―――――。
「直ぐに避難民を乗せたシャトルを――」
脱出させろ、と命じようとしたその時ブリッジを横切る赤と白の荷電粒子砲が“ガモフ”の艦橋を貫いた。
艦橋を貫いた荷電粒子がバイタルパートに誘爆し“メネラオス”の目前で爆発。残骸が横へ逸れるように流れ装甲を叩き艦内を揺らす。
その光景に虚を突かれ顔色を無くしていたホフマンであったが助かったことを知り脱力しかけた。ハルバートンも立ち上がった席に脱力して座り掛けるが今はまだ戦闘中だ、と再認し佇まいを正す。
<…ご無事ですか、閣下?>
“メネラオス”の艦橋にマニュピレーターを置いて接触通信での通話をしている“ダガー”の姿を見てクルー達が安堵しているのが手に取るように分かるハルバートンは代表して感謝を述べた。
「ああ。助かったレインズブーケ少尉…もう駄目かと思ったぞ」
流石のハルバートンも死を覚悟したようだが表情が緩むのはご愛敬だろう。それを見たエアリスは“メネラオス”が無事なことを確認し年頃の少女らしく笑みを浮かべて直ぐに真面目な表情に変わる。
<閣下が仰いましたね?“良い時代が来るまで死ぬなよ”と。その良い時代を作るのは閣下のような“良い大人”が作るものだと…小官は思います。>
真っ直ぐな強い意思を宿る碧眼の美しさにハルバートンは真っ向から受け止めた。
「……生きろ、と言うのかね?」
そう返答すると再び柔らかい笑みを浮かべた。
<生意気かもしれませんが、閣下のようにコーディネイターやナチュラルの種族関係なく“人”として見れるお方はそういません。戦後そういった人が世界に必要ですから…それに若者を導くには“大人”が必要です>
世界の全てがエアリスやハルバートンのように種族関係なく両者を“人”としてみることは出来ない。
今ここでハルバートンが散れば世界の道筋は“原作通り”となってしまう。齟齬が出る、後から代償を払うことになるかもしれないが関係なかった。エアリスは散る命を“救いたかった”ただそれだけで、そのために自らが業を背負うことは構いはしなかった…既にこの手は血に濡れている。躊躇いはない。
機体を“メネラオス”から離し“アークエンジェル”付近で戦闘している“ストライク”へ向けて移動する。
<そろそろ行きます。…閣下もお元気で>
スラスターを吹かして飛翔するその後ろ姿を見てハルバートンは呟いた。
「若者を導くために“大人”は生きろ…か。その導く先の若者も生きなければならんぞ?エアリス少尉」
蒼く尾を引く若き戦乙女の姿を見送りハルバートンは第八艦隊全艦に撤退指示を出した。
◆ ◆ ◆
「艦長!フェイズスリー、突入限界まで二分を切ります!融除剤ジェル、展開用意!」
「“ストライク”、“シャドウダガー”、“アストレイ・ゼロ”を呼び戻せ!」
艦橋のモニターには“メネラオス”が特攻を阻止され健在の姿のまま宙域から離脱する姿が見られ安堵するマリューだったが別の問題が発生していた。
「坊主達は!?」
ジンとバスターを退けたムウの“アストレイ・ゼロ”が“アークエンジェル”後部甲板に着き振り落とされないようアンカーを撃ち込み滑り込むように艦内ハンガーに着陸しコックピットハッチを開いた。
その格納庫に収まっている筈の二機がいない。
<艦、大気圏突入!>
ノイマンが告げると“アークエンジェル”は大気圏を突入した。艦底部から特殊なジェルが展開され包み込むと摩擦熱がじわりじわりとラミネート装甲の表面温度が上昇していく。
だが、アークエンジェルへ所属する二機はもどってきていない。
◆ ◆ ◆
「コイツ…ッ!」
「…っキラ!」
「ええいっ!」
打ち込んできた“ブリッツ”のサーベルをキラはシールドで受け止めて力一杯押し返す。
一方で跳ね飛ばされながらもブリッツはグレイプニールを放ち、向かってくるそれをキラは機体を退かせながらもバルカンを撃ち返す。
大気圏を突入してしまい重力の影響は先程よりも重く、機体が重い!と思いながらキラは焦っていた。
既に大気圏突入限界時間はとっくに到達しフットペダルを踏み続けても機体が下へ引っ張られている感覚を覚えていた。
今すぐにでも離脱すべきなのだが取り付く機体達がストライクに追い縋り続ける。
その光景をアスランはイージスから見てむず痒い気持ちになりながらストライクへ向けてライフルを構える――。
<アスラン、ニコル!そろそろ大気圏に突入する。戻れ>
寸でのところで“ヴェサリウス”から機体を収容したクルーゼがアスランに指示を出す。
「ですけど…っ!」
<このまま降下すれば地球軍制空権に突入する。戻るんだ。>
「了解…!」
「くっ…了解しました」
ニコルは通信越しに仕留めきれなかったことに悔しさを滲ませながら復唱し“ストライク”から距離を取る。
アスランも赤くなりゆく“ストライク”の姿を見ながら此方へ銃口を向けていたがあちらも離脱するためにスラスターを吹かし離脱するその姿を尻目にスラスターを吹かし母艦へと帰投する…その際に心の何処かで親友に銃口を向けずに済んだのだ、と安堵していた。
しかし。
「ッまだ来るのか!?もう限界だぞ!?」
「逃がすかぁ!!」
「さっさと墜ちろよ!」
“ストライク”が“アークエンジェル”へ向け着艦を急ぐ最中“デュエル”と“バスター”が追いかけてきた。
此方に向かってきて攻撃をしてきたのだ。その執念は凄まじいものでありこのまま逃げても“アークエンジェル”が攻撃を受け大気圏突入中に撃墜されてしまう。やるしかない…!とキラの握る操縦桿に力が入る。
「ええいっ!」
“デュエル”が接近しサーベルと“ストライク”のシールドでぶつかり合い火花が飛び散る。
お互いに撥ね飛ばされながら“デュエル”はライフルを取りだし撃ち込み“ストライク”も射撃した。
“デュエル”がバーニアを吹かして突っ込んでくるが“ストライク”は引かずにスラスターを吹かしシールドバッシュしてライフルを弾き飛ばし相手の体勢を崩したところでスラスターを点火して回し蹴りの要領で蹴り飛ばすと“デュエル”が地表へ落ちていく。
「イザークッ!だが貰った…ッなっ?!」
大きく隙を晒してしまったキラはコックピット内部にアラートが鳴り響く。
「くっ…!?え………?」
チャンスと見た“バスター”が超高インパルス砲を向けていたが突如として爆発する。その瞬間にコンソールには友軍機のシグナルが示され機体が赤く染まりながら此方に向かってきている。エアリスの“ダガー”だ。
「エアリスさんッ!」
『帰るよキラ君!もう作戦活動限界時間だ!構ってなんか居られない!』
「はいっ!」
そう言いながら“ダガー”も“バスター”に飛び蹴りをぶちかまし地表へと叩き込んだのを確認すると“ダガー”は“ストライク”の手を握り“アークエンジェル”への帰路へ急ぐ。
「くそっ!逃がすかぁ!!」
吹き飛ばされて激情に駆られるイザークは逃げようとするエアリス達に“デュエル”のビームライフルが向けられるがその時遮るモノがあったのだ。
「はっ…!?」
“メネラオス”は撃沈を免れハルバートンも生き残った。が、しかし下士官が格納していた避難民を乗せたシャトルが降下していたのだ。それも戦闘宙域を避けてのタイミングであったがストライク達MSの戦闘領域が拡大しその航路が被ってしまったのである。
その避難民を乗せたシャトルが“デュエル”と“ストライク”、“ダガー”の間を通過したのだ。
「なんで…ッ!?間に合えええええッ!!!!!!」
その事にエアリスが反応し“ストライク”の手を離して踵を返し絶叫しながらスラスターを全開にする。
あのシャトルが撃墜されたらキラは…ッ!!
「…ちっ!この腰抜け兵どもがぁああッ!!」
当然、と言わんばかりに“デュエル”のライフルがビームを放った。
一射…は外れて、二射撃目は…シャトルの真ん中に直撃すると
次の瞬間だった。
「きゃあああああああああっ!!!?」
コックピットが大きく揺さぶられアラートが鳴り響き堪らず悲鳴を上げるエアリス。
その原因は背面のバックパックがミサイルの攻撃を受け吹き飛んだのだ。その下手人は直ぐに判明する。
揺さぶられた影響か、何処かで頭を打ったようで脳震盪をおこし視点が定まらないがモニターに映るそれは“デュエル”…肩部のミサイルハッチが展開しそこから発射された一発が直撃したのだろう。と理解した。
「あぐ、ッ……………」
誘爆し撃墜されないだけ助かった、とエアリスは他人事のように思い気を失った。
「エアリスさんッ!!!…っ間に合えッッ!!」
それは他から見れば他人事ではなく一大事だった。
エアリスの“ダガー”が攻撃を受けてダメージが入っているのが見て取れるそれは機体制御を失い地球の重力へ引かれ頭から地表へ落ちていく。
“ダガー”の装甲スペックでは大気圏の突入で燃え尽きてしまう…!
キラは迷うこと無く“アークエンジェル”から離れて堕ちていくエアリスの元へ向かっていった。
「エアリスちゃん!」
「エアリスッ!」
ミリアリアとフレイが叫ぶ。
艦橋のモニターには地球の重力に引かれて黒い煙を上げながら墜落する“シャドウダガー”の姿が映し出されていた。
そしてそれを追いかけるように”ストライク”が手を伸ばす。
「まさか…あのまま降りるつもりか!?」
ナタルが焦ったように呟く。だが今さら回収することは出来ない。回収しようとして艦艇のハッチを解放すれば大気の熱で焼け落ち姿勢制御を行うことが出来なくなってしまう。
その時ロメロ・パルが声を上げる。
「本艦と“ストライク”、“ダガー”の突入角に差異が発生!このままでは突入地点が大きくずれます!」
その報告にフレイが冷や水を掛けられたような感覚を覚え必死に呼び掛ける。
「エアリス!キラ!戻れないの!?艦に戻ってお願い!応答して!!二人とも!!」
「無理だ…!“ストライク”はともかくとしてレインズブーケ少尉の“ダガー”は…!」
ナタルが沈痛な面持ちで告げると艦橋に沈黙が支配する…がそれを破ったのはマリューだった。
「曹長!艦を“ストライク”と“ダガー”に寄せて!!」
「しかしそれでは艦の降下地点が…!」
ノイマンから上がった抗議をねじ伏せるようにマリューは封殺する。
「“ストライク”と“ダガー”を失って本艦だけ降下しても意味はないわ!早く!」
その言葉の通りノイマンは艦を操艦し“ストライク”達に近づいていく。
「降下地点測定!急いで!」
「ちょっと待ってください……っ降下予測地点算出完了…こ、此は…っ!?」
パルが叫んだ。
「アフリカ北部、ですっ!北緯二十九度、東経十八度!…完全にザフトの勢力圏です!」
その言葉に艦橋にいるメンバー全員が凍りついた。
◆ ◆ ◆
「エアリスさん!エアリスさんっ!!」
<………………>
キラがエアリスに呼び掛けるが反応が無い。もしかしてさっきの攻撃で怪我を……!と最悪の状況を考えたがこの場面を打開しなければ焼け死んでしまう。“ダガー”が破損しているのなら尚更だ。
(考えろ考えろ…この時点で出来る最大限のことを…!!……これかっ!)
キラは思考を集中させコックピットに備えられているキーボードを叩きこの状況を打開できる“方法”を閃いた。
“ストライク”が“ダガー”のマニュピレーターを握り掴み引き寄せる。
反対側のシールドを保持している腕を前面に付き出して構えた。
「大気圏突入開始…入斜角調整6.1、シータプラス3……機体駆動部の冷却システムを直結…冷却シフトオン、耐熱フィールド…全回路を接続……!!」
次の瞬間“ストライク”と“ダガー”の前面を守っていたシールドが断熱圧縮の赤い色から青白い光へと変わっていく。
機体駆動系を冷却するシステムがシールドに集約し機体全体を包み込んでいるのだ。
揺れる機体に乗りながらキラは早くエアリスを医務室に連れていかなければ…と考えていた。
白亜の大天使と二機のモビルスーツはその行き先を本来の場所から変更しザフト勢力圏“アフリカ”へと降下するのだった―――――。