魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】 作:萩月輝夜
「なんとか間に合った…かな……ふぅ…」
“アストレイ・グレーフレーム”のコックピット…その中にはパイロットスーツを着用したエアリスが一人ごちる。
目の前には“ストライク”を取り囲むように戦闘バギーがいて“アークエンジェル”も戦闘地帯から少し離れた地点に着陸している。
「まさかこの子に乗るとは思わなかったけど…機体レスポンスは悪くないから少しお世話になるよ。宜しくね“アストレイ”」
“アストレイ・グレーフレーム”…“アストレイ”に乗ったエアリスはモニターを撫でるように触った後、コックピット内部の望遠モニターで外を確認するとディアクティブモードになっている“ストライク”…の周りにいたアラブ系の男達のなかに一際目立つランボースタイルの色黒な筋肉マシマシの男の側に華美な金髪の少女…カガリがいることに気が付いて苦笑いを浮かべ武装を背中に背負い機体を立ち上がらせた。
エアリスは彼女が問題を起こさないように…と祈りながら機体を彼らの元まで移動させるのだった。
一方“アークエンジェル”艦橋にて。
「敵、と判断されますか?」
「少なくとも、銃口は向けられていないわね…」
ナタルの問いかけにマリューは少し困ったように答えエレベーターへ向かう。
「ともかく話してみるわ。向こうも此方が気になっているようだし。上手く転べば色々と助かるわね?」
マリューが冗談交じりに言って見せるとクルー達の纏う雰囲気は穏やかなものになった。そしてナタルに微笑んで見せた。
エレベーターを降りてスカイグラスパーから降りたムウとマリューが艦の外へ出るゲートに集合しその周りを連合の保安要員がアサルトライフルを装備し固める。
ゲートが開いて外とのひんやりとした空気と砂が舞い込み足を踏み出した。
マリュー達がその男達の前に立つと男達の集団の中から恰幅の良い顔に傷が付いた男が鋭い眼光で見定め値踏みするように見つめた。
「助けていただいてありがとう、と言うべきなのかしらね?地球連合軍第八艦隊所属マリュー・ラミアスです」
「あれぇ?第八艦隊ってのはぁ…全滅したんじゃなかったっけ?」
彼女の名乗りを聞いて嘲るような声を出す少年をマリューは睨み付けようとした──。
<艦隊において損耗率が三十パーセントを突破すると“全滅”という言葉が用いられますが、先の戦いでの損耗率は十パーセント…。全滅には程遠い数値です。知ったかぶりの知識で恥を掻くのは貴方ですよ?>
その瞬間にマリュー達の近くで風が揺れる。“アストレイ”が着陸し外部スピーカーで話しかけてきていた。
先ほどのマリューの言葉に嘲るような言葉を掛けた少年はばつの悪そうな表情を浮かべ“アストレイ”を睨み付けるがその前にいた大柄な男が「アフメド」と言って制止した。
(!?な、なんでここに“アストレイ”があるんだ…!?)
降り立った機体を見て金髪の少女が少し動揺していた、がそれを隠すように筋肉質の男が隠す。
「?」
ムウは頭に疑問符を付けるが今は関係ない、と考えを改めレジスタンスを見た。
マリューの言葉を代弁したエアリスの声を聞いて大人げない、と思いながらスカッとしたマリューは小さく吹き出した。それを見たムウも小さく笑みをこぼす。
「…俺たちは『明けの砂漠』だ。俺の名前はサイーブ・アシュマン。……礼なんざいらんさ、分かってんだろ?別にアンタ達を助けた訳じゃない」
サイーブはマリュー達の目をみてニヤリ、と笑みを浮かべた。
「…こっちもこっちの敵を討ったまで、なんでね?」
「砂漠の虎相手にずっとこんなことを?」
ムウが問いかけるとジロリとみた。
「まぁな…。それとあんた何処かで会ったことが?」
「ムウ・ラ・フラガ、だ。悪いけど此方には知り合いはいないんでね」
「…成る程、『エンデュミオンの鷹』か。こんなところで出会えるとはな…」
「様々な情報をお持ちのようね?では、私たちのことも?」
「地球軍の新造戦艦“アークエンジェル”だろ?クルーゼ隊に追っかけられて地球に降りてきた。で、あの機体が――」
サイーブが声を上げようとしたその時、少女の高い声がソレを遮った。
「“X-105ストライク”…地球連合が開発した新型機動兵器…そのプロトタイプだ。」
その詳細を知る少女にマリューの興味が映るがサイーブが前に出て遮るように隠す。
「さて、お互いに何者か分かってめでたし…。と行きたいところなんだが、アンタ達これからどうするんだ?俺たちも厄災の種が突然降ってきちまって困惑している。ま、そっちも予想外にこんなとこに降ってきちまって災難だろうが…」
「力になっていただける、と考えて宜しいのかしら?」
すると男は喰えない笑みを浮かべる。
「話がしてえ、って言うなら先ずは銃を下ろしてもらわねぇとな?」
どうやらこの男は此方の意図を既に察知しているようだ。念のために控えていた兵士達も物陰から此方を伺ってたクルーに向かい手で合図をする。
「…で?」
「あれのパイロットもだ。顔を見せて貰おう。」
顎で刺したのは会談を仲介人宜しく見守っていた“ストライク”と“アストレイ”の二機だった。
ソレを知ったマリューは溜め息を吐いて向き直り機体に搭乗しているパイロット達に指示を出した。
其々に通信が入る。
<ヤマト少尉!レインズ中尉!降りてきて!>
コックピットハッチが開いてパイロットがラダーに足を掛けると自動降下してくる。
キラはマリューの元へ向かいヘルメットを外すと同時に降りてきたパイロットに驚いていた。
濃青と白パイロットスーツ…。なぜここにエアリスさんがいるのか…!未だ医務室にいるはずじゃ…?と思ったキラだったがその視線をエアリスが見て優しく微笑む。
同じくマリューの元へ歩み出すエアリスもヘルメットを脱ぐとさらりと流れる栗亜麻色の髪が砂漠の風に乗ってふわりとたなびいた。
現れた彼、彼女を見てレジスタンスが一瞬どよめいた。
「ああ?あれがパイロットだぁ?」
「未だガキじゃねーか…」
「おい、一人は女のガキだぜ?…かわいいじゃねーか」
「子供があれに乗ってたって言うのか?」
「いやガキかと思ったが結構いい線行ってるぜ…」
と様々な言葉が隠すこともなく向かってきているの聞いたのと男達の視線が身体の一部に熱視線を注がれていることにエアリスに苦笑いを浮かべさせるしかなかった。
「…お前っ…とお前っ!?」
咄嗟に金髪の少女…カガリが前に飛び出してきたのを確認しエアリスが前に立つ。
案の定、激情に任せた拳が上がった。
「おまえ達が…なぜ
素早い拳であったがエアリスは反射的に拳を受け止め…反射的に
その行動にレジスタンスの連中がざわめきキサカが今にも此方を引き剥がそうとしているが碧眼の瞳が彼らを射貫き“プレッシャー”を与えた。動けばこの子の命は保証しない、と。
が。
(あれっ?みんな動き止まっちゃったけど…どうしたんだろ?)
プレッシャー…を発しているとは思わずに目の前の皆が身じろぎしないことに疑問に思うエアリスだったが丁度良いと動きを制止し戸惑う両者を無視しエアリスは砂の地面に組伏せられているカガリの耳元で彼女にしか聞こえないように囁いた。
「いきなり軍人に殴りかかるとか何を考えているんですか?無鉄砲も行き過ぎると感動すら覚えますね…ご実家から世界を見てこい、って言われて砂漠でゲリラの仲間とは…
カガリの耳間近に艶やかな甘い声と吐息が掛かり顔を真っ赤にするカガリだったが目の前の少女に自分の素性を知られていることがソレを帳消しにするほどに衝撃的だったのだ。
「ひうっ!?…なっ、お、お前…ッ!?なんで…ッ」
エアリスを見る褐色に近い金が混乱に揺れてる。
「くっ、離せ………このバカッ!」
「…カガリ」
その隙にカガリの手を取って立ち上がらせると不満げな表情を浮かべ引き上げた手を振り払われた。そしてカガリは呼ばれ男達の集団の中に戻っていったのを確認しなんだったんだ、と戸惑うキラをみながら此方を睨み付けるキサカを見ながら苦笑いを浮かべるしかなかった。
◆ ◆ ◆
『明けの砂漠』の拠点に入港することになった“アークエンジェル”はその白色の艦艇を切り立った岩山の中に隠し、上空からの索敵を抑えるためにエアリスとキラは装甲に迷彩ネットを被せるのを人の手を借りながら作業を進めていた。
マリュー、ナタル、ムウ達は司令部となっているレジスタンス作戦室に向かったためここにはいない。
原作であった“協力”を提案していることだろう。
「ふぅっ…」
モビルスーツでの迷彩ネットを“アークエンジェル”に掛け終わり一仕事終えて“アストレイ”から降りたって一息吐いた。
機体の影に隠れているので直接日光が当たっているわけではないがジリジリと身を焼くような温度が肌を突き刺すと同時に通気性の悪い連合制服と白衣のダブルパンチで汗だくになってしまっていた。
「…暑い」
パタパタ、と襟と胸元を開けて風を送り込むが来るのは生暖かい風だけだ。
じっとりとした汗がサラサラとした亜麻色の髪を纏め上げて張り付いておりソレも更に不快指数を上昇させていきエアリスは暑いのが苦手だった。右舷半休となっているのでこのままサボっていても良かったのだが愛機である“ダガー”の修復をしないとな、と思い機体へ戻ろうとすると先程の少女…ではなくカガリが此方に向かってきているのが分かった。
「あ」
「っ、白々しいなお前…その…さっきは殴り掛かって悪かったな…その…許せ」
「ぷっ…」
「わ、笑うな!」
うがー!となっているカガリを見てエアリスは小さく吹き出してしまう。謝っているのに謝っているように見えないソレは可笑しさに拍車を掛けていた。
真面目なんだろう彼女は自分が笑われることに我慢ならない。だが怒ったその表情も小動物のようで愛らしい雰囲気を出しているのは難儀だな、と思ったが拍車を掛けてからかった。
「ごめんなさい…。でもあれは貴女が私に殴り掛かろうとしたから反応しただけで…、普通軍人に近づいて殴り掛かろうとしたら反撃されるって分かるでしょ…?で、ソレで何の用かな?オーブのお姫様?」
そう言うとカガリは顔を真っ赤にして怒り出した
「お姫様って言うな!…そもそもなんでお前私の名前を知ってるんだ!?そもそも!なんでお前があの機体に乗っているんだ!」
「質問多いな…私はショウトクタイシじゃないんだけど…」
名前を知ってる。いや、アニメ見たから…とは言えない。そんなことを言ったら頭のおかしい奴だと言われかねないのでエアリスは”前もって用意していた“ソレらしい理由を目の前のカガリに告げた。
「貴女、有名人だもの。そりゃ…『オーブの獅子』の娘である貴女の顔を知らない訳ないでしょ“重要人物”としてね?此方は正式な連合兵士だよ?知っていて当たり前じゃない」
まぁ嘘なのだが。敢えて、悪い笑みを浮かべるエアリスに「うっ…」と怯んだような態度を見せるカガリに少し楽しくなった気分になったがそれ以上やると後ろに控えて此方を物陰から見てるキサカさんに殺されるので自重する。
「なんてね」
「へっ?」
「ヘリオポリスで会った時に“まさかなー”って思っただけ。さっきのはカマ掛けただけだよ。そしたら見事に引っ掛かって面白かったけどね?因みにこの子はオーブから正式に借り受けているものだから後で返すよ」
顎で“アストレイ”を指す。
「な、な、なっ…!」
ワナワナ、と震え出すカガリを見てエアリスは何処かで「弄ると楽しいなこの娘…」となっていたが後ろに隠れているキサカが此方へ向かって歩き出す。
「ソレに…心配なら本来はここに連れてくるべきじゃないと思いますよ?レドニル・キサカ一佐殿」
「ほう、私のことも知っているのか…?流石は連合の蒼い彗星、と呼ばれるだけはあるな。何が目的だ?」
鋭い眼光を此方に浴びせ返答次第によっては此方が
カガリを見ながらただ一言伝えたかったことを口に出した。
「…命のやり取りしてるところに自分のその幼稚な行動を持ち込まないでください。いつか自分が死ぬか他人を殺しますよ?」
砂漠編の行動は目に余る行動が多い。ましてや主権国家のお姫様が率先して“人殺し”をするという行動は今のエアリスには見過ごすことは出来なかった。
「っ…!」
顔を真っ赤にして食って掛かろうとするカガリ。しかしエアリスのその言葉と表情にその勢いはなく、此方の威圧に飲まれているようだ。キサカは此方が言いたいことが理解できたのか拳や銃弾が飛んで来ることはなかった。
「ソレに情報の出所はお教えできませんが…、色々ルートがあります。オーブの国家元首の御令嬢をレジスタンスの争いに捲き込むのはどうなんですか?お家の問題になると思いますけど…」
「………」
そう告げるとばつの悪い表情を浮かべるキサカを見て「だったら初めからそんなことするな…」と思ったが口には出さない。
「…すまないがこの娘の事を黙っていてくれないか?この通りだ」
大の大人が頭を下げるのを見てエアリスは悪者になっている感じがして申し訳ない気分になった。
別段彼女…カガリを利用してどうこうしよう、と考えていない。ただ、
「誰にもこの事は言いませんキサカ一佐。約束します……。ただ余計なことをしないでください、と釘を刺しておきたいだけですから。それと戦争は…カガリさん、貴女が考えているほど甘くないんですよ」
「お前…」
なにか言いたそうだったカガリに背中を向けエアリスはラダーに捕まってコックピットに戻る。
眼下には勇ましい金の少女が此方を見上げていた。その瞳が何を自分に伝えたかったのはエアリスには分からなかった。
格納庫に戻りエアリスはその後医務室から抜け出して戦闘を行った件でマリューとナタルに怒られた。