魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

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「…なんでこの装備がここに既にあるんだ」

 

格納庫にある第八艦隊から補給された装備を今になって確認していたエアリスはあからさまに()()()()()()()筈の装備がここに有ることにボソり、と呟く。しかし、見た目は違っているがその性能は明らかにここに有って良いものではないだろう。

 

「?嬢ちゃん何か言ったか?」

 

「…いいえ。なんでもないです…しかし、“ダガー”は修理できないのですか?」

 

そう問いかけるとマードックは困ったような顔を浮かべ頭をガシガシと掻いた。

 

「まぁ資材がなくてなぁ…そいつのコックピット周りがウチと同じくラミネート装甲使ってるのは知ってると思うがソレがなくてなぁ…普通の装甲材じゃ防御力がさがっちまうぜ?」

 

資材がなくて…、と言うことだがヘリオポリス脱出前に沢山積んでいた筈なのだが、あくまであれは武装の資材であって装甲の類いは無かったのである。

そもそも試作品で修理することを前提としていないしスペアがない。それにコーディネイター相手に大気圏突入まで被弾しなかったのが可怪しかったのだ。

と、ここでエアリスは“アークエンジェル”の装甲材がラミネート装甲であることを思い出して閃いた。

 

「…“アークエンジェル”からひっぺがして修理できません?」

 

「嬢ちゃんサラッと怖いこと言うよなぁ!?…ダメだダメだ。しょうがねぇから嬢ちゃんはあの灰色をつかってくんな」

 

「仕方ないですね…まぁ【シャドウストライカー】も壊れちゃいましたから…。しかし私から“ダガー”を取り上げたら意味がないような…。名前負けするような…」

 

格納庫にて“ダガー”の修理をしていたエアリスとマードックだったが、資材が足りず完全な修理をすることは出来なかった。

その事に不満を漏らすエアリスをたしなめるマードックだったが、呟いた言葉に苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「何言ってんじゃ嬢ちゃん…。ほら仕事だ仕事!」

 

そしてエアリスの視線の先には、半壊したメインで使用していた【シャドウストライカー】が転がっていた。

 

「壊れてしまったものは仕方ないですからね…。取り敢えず、こいつを使えるように調整しないと」

 

そしてエアリスは第八艦隊の補給品である新型ストライカーパックの調整に向かうと同時に“アストレイ”も“ゼロ”と同じように背面ストライカーコネクターの設定、武装を調整し始めた。

 

◆ ◆ ◆

 

「では、此よりレジスタンス拠点に対する攻撃を行う!…昨晩は“おいた”が過ぎた。悪い子にはきっちりお仕置きをせんとな?」

 

夜、“レセップス”の前にて兵士達の前で告げるバルトフェルドの余計な一言にへつらったり、不満を漏らすものはいなかったのは目の前にいる上官の実力を認めているからである。ダコスタもその一人だ。

 

「総員搭乗!目標はタッシル!」

 

部下達が“バクゥ”に乗り込んで目標地点であるレジスタンスの住処であるタッシルを見渡せる丘に到着すると、眼下に広がる砂漠の町はエネルギー問題もあるせいか光は疎らに点在している。

 

「静かですね…。もう住民は寝静まる頃でしょうか?」

 

「…そのまま永眠して貰おうか」

 

らしくもない上官の酷薄な台詞にドキリとした…が。

 

「なんて、そんな酷なことは言わないよ僕は」

 

思わず顔面から砂に顔を突っ込みそうになったダコスタだったが、既で踏み留まるがバルトフェルドは至って真面目な表情で告げた。

 

「警告十五分後に攻撃を開始する」

 

「は……?」

 

「ほら、早く言ってきたまえ」

 

困惑していたダコスタにバルトフェルドから手を「しっしっ」とされ、本気なのだと理解したダコスタは敬礼して砂の斜面を転がり掛けながら走り出した。

 

◆ ◆ ◆

 

“アークエンジェル”の格納庫にもキャンプからの鋭い笛の音が響いたのが聞こえた。

バルトフェルドがレジスタンスの街を焼いているのだろうと理解し、工具を置いてロッカールームに向かいラダーに足を掛けてコックピットに潜り込み戦闘待機状態にしていると通信が入る。キラからだった。

 

<エアリスさんその…>

 

「?どうしたの?」

 

<昼間の事なんですけど…、さっきの女の子と知り合いですか?>

 

「え?」

 

<艦長達が話している時と艦にネット掛け終わったときに親密そうに話していたので…、その…>

 

画面越しにキラが不満そうにしているのを見てエアリスは一瞬頭に「?」を浮かべたが、拗ねているのだなと理解し微笑ましいなと思い薄い笑みを浮かべると、ハッとしたのか気まずそうな、恥ずかしそうな表情を浮かべているのを見て事情を説明することにした。拗ねている、と言う理由が良く分からなかったのだが。

 

「あぁ、カガリさんね。あの子のこと覚えていない?」

 

<カガリ…?覚えてない…?会ったこと有りました…?>

 

「あの子、ヘリオポリスで一緒に軍事ブロックに逃げたでしょ?帽子かぶってたけど見覚えない?」

 

<あ、あの時シェルターに押し込んだ…>

 

「そう。無事に脱出したみたいだけどまさか砂漠にいるとは思わなかったんだ。知り合いではないんだけど何となく、ね?」

 

<そうだったんですか…>

 

納得した、というような表情を浮かべるキラを見てエアリスは再び柔らかい笑みを見せた。

 

「言いそびれてたからここで言うね…キラ君。君のお陰で燃え尽きないで済んだよ。」

 

<あっ…>

 

その言葉にキラはむず痒そうな、それでいて誇らしげにしているのが印象的だった。

自分の事で出来るだけ背負い込まないで欲しいと思ったが優しい彼の事だ。自身が倒れてしまったことで昨晩の戦闘…、恐らく烈火の如きソレは<SEED>が覚醒してしまったのだろうと想像に固くない。

が、彼が今後戦っていく上で必須となる能力なのは間違いない…。その発現をさせてしまったことにエアリスは罪悪感すら覚えたが今は生き残ることを考えなくてはならないだろう。

 

<気にしないでください…守りたかっただけですから>

 

「そっか…、ありがとう」

 

警戒体勢中だというのに通信で言葉を交わしていると艦橋から通信が入る。

 

<ヤマト少尉、レインズ中尉聞こえる?>

 

「はい、聞こえています。どうされました?」

 

キラとの通信をアウトしマリューの通信に応答する。

 

<先ほどレジスタンスの街がザフトによって焼かれたわ。ソレでレジスタンスの皆さんが追撃に出てしまったの>

 

「…MSに戦闘バギーと無反動砲で?死にに行くようなものですよ」

 

<一応は協力者、人道的な視点で見殺しには出来ないわ。少尉と中尉には出撃して撤退途中のザフト駐留軍の排除とレジスタンスの救助を>

 

「…艦の護りはどうされるので?」

 

同時に出撃したら艦を守れる人がいなくなってしまうのでは?と疑問に思ったがマリューがその疑問に答えてくれた。

 

<フラガ少佐と入れ換えです。少佐には“アストレイ・ゼロ”に搭乗して護衛を頼みます。向こうも住処を失った難民に追撃を仕掛ける残虐性は持ち合わせていないでしょうね>

 

エアリスもその考えには同意した。バルトフェルドが意味もなく人を殺すことはあり得ないからだ。

 

<で、ですけどエアリスさんは病み上がりで艦に残った方が…>

 

が、キラが心配して食い下がろうとしているのを見て苦笑いを浮かべてしまう。心配性だなと思っていたが。

此処で直援がいなければ“アークエンジェル”は沈んでしまう。奇襲があった描写はなかったが万が一、ということもあり得る想像をしたのは“自分”という存在がいるのでイレギュラーが無いわけではない、がムウがいるならソレも解決できるだろう。

 

そして丁度良いタイミングで上官が通信してきた。

 

<艦長今から帰投する。今街の皆さんをエスコート中だ。元気な子供が多い…。お菓子の用意宜しく!>

 

その通信に緩い空気が広がる。

狼狽えるキラを安心させるために通信を繋げる。

 

「大丈夫だよ。もう体調も良くなったし。忘れた?私強いんだよ?…艦長、了解しました。レインズ機発進します」

 

<病み上がりで申し訳ないのだけれど…、よろしくね>

 

此方に申し訳なさそうにしているマリューを見て「優しすぎますよマリューさん」…と内心で思いながら発進準備を進める。

 

“アストレイ”の背面ストライカーを装備する際にサーベルを折り畳み格納しなくてはならない為、遠距離武装を装備するストライカーは論外。高機動ストライカーである『エールストライカー』を装備した。

ハッチが解放され目の前には砂の海が広がった。

 

「エアリス・レインズブーケ、“アストレイ”行きますっ!」

 

カタパルトから勢い良く吐き出され背面の“エールストライカー”の飛行ウイングが展開しスラスターを吹かして飛翔し追撃を仕掛けようとしているレジスタンスの救助へ向かうのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

「隊長、もう少し急ぎませんか?」

 

ダコスタは襟を寛ぎさせながら隣に座るバルトフェルドに提案する。

 

「そんなに早く帰りたいのかね?」

 

「違いますよ。早く帰投しないと街の旦那達が此方に追撃されますよこれじゃ…」

 

ダコスタの懸念を他所にバルトフェルドが目を閉じボソリ、と呟いた。

 

「…運命の分かれ道、だな」

 

「えっ?」

 

「自走砲とランチャー程度じゃバクゥの相手にならん。…死んだ方がマシ、という言葉があるが本当にそうなのかねぇ?」

 

「はぁ…?」

 

突然何を言い出すのか、とダコスタが思っていると後方を走るバクゥに乗る部下から通信が入る。

 

<隊長、後方より接近する車両有り。六…、えー八。レジスタンスの戦闘車両のようです>

 

その事を聞いて隣に座る指揮官の視野の広さに思わず感嘆した。ソコまで見越してレジスタンスの街を焼いたのか、と隣にいるバルトフェルドを見ると当の本人は抜けるような砂漠の青空を目を細めて見上げボソリ、と呟く。

 

「…やはり、死んだ方がマシなのかねぇ…?」

 

次の瞬間バルトフェルドが乗るバギーの車線上が爆発したのは後方より接近したレジスタンス達がランチャーを発射したためである。ダコスタは危なげなく回避して見せた。

 

「…仕方がない。応戦する!」

 

◆ ◆ ◆

 

「カガリ、アフメド!ダメだ、戻れ!!」

 

バギーの上からサイーブが声を飛ばすとアフメドはソレを笑い飛ばした。

 

「こないだ“バクゥ”を倒したのは俺たちだぜ?」

 

「今回地下の仕掛けはない!戻るんだ!アフメド!!」

 

「サイーブ!あんたは何時から臆病者になったんだ!?」

 

煮え湯を飲まされていた敵を逆に飲ませたことで有頂天になっているアフメドは笑い飛ばす。

その隣に座っているカガリも

 

「倒し方は幾らでもある!仕掛けがなくともな!」

 

アフメドはアクセルを踏み込みサイーブの乗るバギーを追い抜いていく。グッと唇を噛み締めていると同じバギーに搭乗していたキサカと視線が合った。

 

「キサカ!」

 

キサカは「分かっている」と言わんばかりに黙ったまま頷いた。

砂丘を越えた辺りで“バクゥ”の機影を捉えたレジスタンス達はその四足の鋼鉄機獣にランチャーを発射した。が“バクゥ”はその攻撃にモノともせずにモノアイがジロリと彼らを見つめる。

別動隊のレジスタンスのジープがバルトフェルドを討つためにそちらに急行するが“バクゥ”が迫り割って入る。

ジープ目掛けて発射された擲弾が遮るように“バクゥ”に直撃したのはメインカメラでありその四肢が一旦止まってしまった。その隙にキサカがランチャーを構え打ち込み他車両も続けざまに鋼鉄の機獣に打ち込んだことで膝を折る。

 

「やった!」

 

アフメド他のレジスタンスが喜びの声を上げるが彼らの快進撃はソコまでだった。

攻撃を受け動けない一機を除いて他の二機は攻撃を幾ら受けてもびくともせず逆にレジスタンスを追い詰め始めた。

四本足で追いかけていた一機が飛び上がり宙でキャタピラに切り替え踏み潰す。

 

「うわぁー!?」

 

その横を走っていたバギー達は咄嗟に回避し逃げるようにその場から退避するが追いかけていた“バクゥ”が素早くターンし速力の遅いバギーでは逃げきれることは出来ずに前肢がバギーを引き潰し、踏み潰す。

 

「ジャアフル!アヒドーッ!」

 

サイーブが悲痛な声が響く。

 

「くそぉっ!!」

 

アフメドがハンドルを切って三台目に近づこうとするバギーを援護するために接近し“バクゥ”の懐に入り込んで其々が武器を構え発射、炸裂した威力で一瞬動きが止まりその隙に股の間から走り抜けようとするが止まったのは一瞬だった。

 

「飛び降りろ!」

 

言う方が早いかキサカはカガリを抱えて車両から飛び降りた。

 

「えっ?」

 

アフメドはその理由が分からずに一瞬戸惑ったがソレが運命の分かれ道となる。

反応が遅れたアフメドは背後より迫る“バクゥ”の一撃が叩き付けられる。

金属がぶつかり擦れ合うような音が響いたと同時にバギーが木っ端微塵に吹き飛ばされた。

その光景をキサカに抱かれ砂地に着地したカガリの視界に、鉄屑となったバギーと共に宙を舞う身体の一部が逆方向に曲がったアフメドの身体が入った。

 

「アフメドッー!!」

 

駆け抜けた“バクゥ”がターンしカガリ達を睨み付けようにモノアイが輝く…、がその注意を引くように隣からサイーブがランチャーが発射し直撃させる。

キサカはカガリを抱き抱えその場から退避していた。

“バクゥ”は新たなターゲットを見つけた、と言わんばかりに四肢での歩行からキャタピラに切り替えて突進を始める。サイーブが乗ったバギーはソレを回避しようしたが追い付かれるのは確定だった。

 

「ちっきしょうーーーー!!」

 

サイーブが迫る敵に向かって両肩にランチャーを構えようとしたその時。

一条のビームが“バクゥ”のすぐ側に着弾し衝撃によって足を止める。ソレと同時にカガリが我に返り顔を上げて空をみる。

砂丘から昇る太陽を背負いブレードアンテナを備えた特徴的頭部を持つ赤、青、白の三色の機体が出現する。

 

「ーーーー“ストライク”!…ッ!?」

 

そして後方から接近する太陽の光がその灰色の装甲を照り返される機影が現れた。

 

「ーーーーと“アストレイ”!?」

 

 

◆ ◆ ◆

 

「やっぱりキラ君のプログラミング能力可笑しい…って。でも此方もビームだったら熱対流で逸れてたかもしれないけど…ねっ!」

 

隣にいる“ストライク”は一発目を外したが直ぐ様対応して見せた。

エアリスは引き出したスコープを再び覗き込み操縦桿のトリガーを引き絞る。

砂漠は温度が上がっており熱対流によってビームの射線が曲げられて狙った相手に当たらない…と言うことを()()()()のでエアリスはこの出撃において“ビーム射撃兵器”は置いてきて実弾兵器を持ってきたのだ。

戦場に到着し今再び飛翔して死角となる頭上に到達しセンサーリンクしたスコープから送られる情報を元にターゲットロックした照準を確認しトリガーを引いた。

“アストレイ”が手にしている対MS用ライフルから発射された弾丸がミサイルユニットの箇所に着弾し爆発させた。武装は奪った。攻撃をする手段を失った筈だ。

 

「着地狙いはルール違反だって言ったでしょ!」

 

撃ち抜き砂原に着陸した“アストレイ”だったが、その直後放たれたミサイル群が迫るがスラスターを吹かせその場から退避することを選択し、別の場所へ着地するが体勢を崩さなかった。

 

「…キラ君から接地圧変更プログラム貰ってて良かったよ」

 

“アストレイ”が体勢を崩さなかったのはキラから接地圧変更のプログラムの事を聞いており、既に全機体に搭載してるのだった。

 

再びミサイルが襲いかかりシールドを掲げその表面に着弾、衝撃が襲うが被弾していないのを確認し動き出そうとしたエアリスが見たモニターに映し出された人影を見た。

ソコには横たわった既に虫の息となっているアフメドを抱え座り込むカガリの姿が視界に入りその顔に苦いものが浮かぶ。

 

「だから言ったでしょう…」

 

短く吐き捨ててエアリスはライフルを腰に懸架してサイドアーマーに増設したピストルホルダーから対MS用ハンドキャノンを抜いてスラスターを吹かした。

 

◆ ◆ ◆

 

「ほう…?」

 

戦闘を見ていたバルトフェルドが感嘆を吐いて双眼鏡を下ろした。

 

「何故“ストライク”とあの“灰色の機体”が…救援に来たのか?地球軍がレジスタンスを…?」

 

「先日とは装備が違うな」

 

「は…あ、確かに…」

 

「ソレにビームの照準、即座に熱対流をパラメーターにいれて対応したのか…」

 

既にバルトフェルドの頭のなかには「どうしてレジスタンスの救援に連合軍が来たのか」ということは頭から抜けていた。

ソレは既に知的好奇心…連合のパイロットについて知りたい、ということに思考を埋め尽くされており彼の行動は早かった。

攻撃を受けキャタピラが不調だったがジョイント部分を確認するために何度も動かし問題なく復調したことを確認したカークウッドは「良しっ」と呟き戦線へ復帰しようとしたそのタイミングで通信が入った。

 

「カークウッド代われ」

 

<はっ?>

 

「“バクゥ”の操縦を代われと言ってるんだ聞こえるか?」

 

<はっ!聞こえておりますが…>

 

「今度一杯奢ってやる!」

 

<アルコール入っているものでお願いします…>

 

「隊長!」

 

「心配しなくても大丈夫だダコスタ君!撃ち合ってみないと分からないこともあるんでね」

 

◆ ◆ ◆

 

“バクゥ”がミサイルを発射するのを見て“ストライク”がそれをジャンプすると敵機がそれをおって飛翔する。

勢いを付け前肢で殴り付けようとするがシールドで押し返した。体勢を崩した“バクゥ”は隙を晒して地上へ降りてくるのを確認した“アストレイ”はハンドキャノンで狙いを付けようとする───。

 

「ッ!」

 

咄嗟に“殺気”を背後から感じとりシールドを掲げると“ストライク”とシールド両方にミサイルが着弾する。

 

「やっぱりこうなるよね…うわっ!?」

 

間を置かずに二発目がやって来て“ストライク”もメインカメラに直撃し、視界を封じられ防御に専念せざるを得なくなってしまった。

“バクゥ”が三機編成で此方に突っ込んでくる。不調で動けなくなったそれが復帰してあの一機にバルトフェルドが乗っている…とエアリスは冷静に見て今、ストライクを執拗に攻撃し続けている“バクゥ”に乗っているのがバルトフェルドだろうと。

 

(だったら…!)

 

幾ら“ストライク”にPS装甲が搭載されていたとしても通常弾頭七十六発でその効力が失われる…と“砂漠の虎”も言っていたように、この時期のバッテリー駆動MSのPS装甲は長く持たない。ビーム兵器を搭載しているのなら尚更だろう。この状況ならばキラが再び<SEED>が覚醒すれば楽に切り抜けられるだろう…がそう考えている内に“アストレイ”のコックピット内にアラートが鳴り響くのを確認すると左右から接近するミサイル群が近づく。“ダガー”であれば未だ生き残れるかもしれないが乗っている機体は装甲が薄い…

 

(私は…!)

 

その瞬間、エアリスの脳天に“閃光”が迸った────。

 

スロットルレバーを押しフットペダルを押し込み操縦桿を後ろに倒し、背面のストライカーをパージし瞬間左右挟まれていたミサイル達がストライカーにぶつかり爆発し視界を奪うと腰のライフルを解除、同時に爆風の中から飛び出す。

 

仕留めた、と思っていたのだろう“バクゥ”達は突如現れた“アストレイ”の姿に硬直した。

その俊敏さを生かしてハリウッドガンアクションのように飛び出して手にしたハンドキャノンの引き金を数度引く。

次の瞬間に数発放たれた大口径HEAT弾が着弾し装甲が食い破られ炎を上げて砂漠に倒れ伏し、反対側の“バクゥ”が反応し攻撃を仕掛けようとしたが着地と同時に腰部から解除したライフルを頭部に投擲し突き刺さった。

“アストレイ”がマニュピレーターが指を引くと有線がトリガーを引っ張りアンダーレールに装備されたビームバヨネットが起動、そしてコックピットごと貫き動力部を爆発する手前にライフルを回収した。同時に爆発し囲んでいた二機は砂の海原にその骸を晒すのだった。

 

(終わった…)

 

二機を撃墜したエアリスはキラの方向を見てサーベルを振り抜いた“ストライク”が“バクゥ”の前肢を切り裂き転がって撤退する光景が目に入り操縦桿を握る力を弱めた。

 

◆ ◆ ◆

 

「エアリスさん…」

 

“ストライク”から降りたキラは“アストレイ”から降り立ったエアリスを見て、彼女が普段見せないような憤怒の形相でレジスタンスのメンバーの元へ歩んでいくそれを受け入れていた。

 

エアリスにしかその本心は分からないが苦言を呈したその直後にカガリが自信満々にMS相手にランチャーを持ち出し戦い、辺りにはひしゃげたジープに黒こげになり身体があらぬ方向に曲がった死体が転がっているその光景が心を逆撫でする。自分がうまく出来ていれば彼らが死なずに済んだのかもしれない、と後悔しているのかもしれないがその結果がこれであることに苛立ちを募らせた。

 

今にも泣き出しそうな表情のカガリと気まずさや恐れを見せている大人の男達はばつが悪そうにエアリスから視線をそらそうとしていた。

彼女はその透き通った声を低くして呟いたがやけに通った。

 

「だから言ったでしょう。貴方のその幼稚な想いが誰かを殺す、って」

 

「なんだとっ!?」

 

直ぐ様カガリが噛みつくとエアリスの襟首を掴み、片手を指差した。

 

「この状況を見てそんなことを言えるのかっ!見ろっ!」

 

そういって彼らが遺体となったレジスタンスの彼らを横たわらせていた。そこにはキャンプで見たエアリスとキラ、カガリとも変わらない年齢の少年達の変わり果てた姿があったがそれをエアリスは冷ややかに見つめていた。その事にカガリの感情の抑揚が限界を越えたのだろう。パイロットスーツを壊す勢いで襟首を力一杯掴み吼えた。

 

「みんな必死に戦った!戦っているんだ!大事な人や大事なものを守るために必死で…!」

 

この少女は未だに自らの甘さのせいで失敗してその結果横たわる少年が骸になったことを理解していない。

目の前の少女はこの自らの“愚かさ”を理解せずに同じことを繰り返そうとしているのを聞いて、これから改善されるであろうが我慢がならなかった。ここは“空想の世界”ではなく“現実”なのだと。

エアリスは自分の苛立った気持ちを押さえることが出来ずに平手でカガリの頬を張り倒す。

 

「想いだけ先走った力の無い理想論に一体どれだけの価値があるって言うの!!?」

 

カガリは涙目になり張り倒された頬を押さえ震える拳を下ろし哀しみに溢れた瞳を浮かべ震えるエアリスを見つめることしか出来なかった。

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